KanonSS





設定……
みんな生きてるendで、舞と佐祐理は一緒に暮らしてます
奇跡から2ヶ月が経ち4月中ごろからの話です……
栞は1年からやり直し……香里と北川が付き合ってます
真琴は美汐に引き取られてます……あゆは水瀬家に引き取られてます
祐一は心の中では決めてるものの、告ってもいません
5人の奢ってという行動は続いてます
以上です……







『佐祐理は、お姉さん♪』前編







 新しい学年になってもクラスが変わることは無かった
 大体のことは1年生の進路決定で2年のクラスと変わらないのだそうだ
 まぁ、そうは言っても、俺も前の学校では同じだったので驚くことも無く受け入れている
 あの、奇跡から2ヶ月……遊んだり、歩き回ったりした
 童心に返って、色々としていた
 香里と北川が付き合いはじめた頃は意外とからかいがいがあった
 今はそんなことしたら、香里から拳が飛んでくるが……痛いのでやめてるだけだ
 で、そんなさなか、俺は佐祐理さんに携帯で呼び出された
 しかも、1人で来てくれという内容と地図が載せられていた
 俺はその言葉に何かあるのかと思いながら、その場所まで放課後に向かうのだった
 佐祐理さんもそれくらいになると返信で戻ってきた
 そして、放課後になって、俺はみんなから隠れるように駅前のビルへと入っていった
 此処の6階の喫茶店で待ち合わせなのだ……佐祐理さんって意外といいところ知ってるんだな

「いらっしゃいませ」
「あの、1人後で来ると思うので……それと目立たない席が」
「こちらになります……お連れ様が来られましたら、着ますので」
「はい」

 ウェイトレスさんに案内されて、俺は席についた……落ち着いた感じの雰囲気で
 百花屋は女の子のお店で考えると、此処は少し大人な感じのお店である
 シックな曲が流れている……多分、クラッシックだろう
 あまり詳しくないが、こういう雰囲気なら聞き易い

「祐一さん、お待たせしました」
「あ、佐祐理さん、別に待ってないよ」
「そうですか……でも、先に来ていらして助かりました」
「はぁ」

 何がどう助かったのだろう?
 佐祐理さんは俺の隣に座る……前の席が空いてるのだが……

「あの、対面席に座らないのですか?」
「此処は混雑したら、相席とかありますから」
「そうですか……なら、いいですけど」

 少しドキドキしてしまう
 春物のコートを膝の上に置いて、佐祐理さんは俺の方を向く
 その目には決意みたいなものがある……

「あの、いきなりで悪いのですけど……祐一さんの貯金通帳の残金とお財布の残金教えてもらえませんか?」
「へ!?」

 佐祐理さんの言葉に驚きながら、俺は貯金通帳とサイフを出す
 そして、佐祐理さんに見せた……
 ま、奪われても大丈夫だろうし
 佐祐理さんはじ〜とサイフと貯金通帳の残金を見ている
 唐突に涙が伝っていた
 え!?

「さ、佐祐理さん?」
「ごめんなさい!! ごめんなさい!!」

 佐祐理さんは一生懸命に謝っている……

「いきなりどうしたんですか、佐祐理さん?」
「ごめんなさい、ごめんなさい」

 佐祐理さんの涙は見たくないので、俺はそのまま手で佐祐理さんの頬を覆う
 涙を何度となく指で弾いていく

「落ち着いて……とりあえず訳を話して……」
「……はい」

 佐祐理さんは落ち着いてきたのか、ポツポツと話し始めた

「祐一さんもご存知の通り、舞と一緒に暮らし始めました
 最初はお父様のお金で2週間は持っていたのですけど……舞が牛丼を食べたいとかで
 結構お金を最初から使っていたら……」
「なくなったのですか?」
「……はい」

 佐祐理さんのお父さんがどれだけ娘に甘いと言ってもやはりお金に関しては厳しく教えると思う
 今不況だし……それに、何もできない子より、何かできる子の方がいいに決まっている

「それで……佐祐理さんはどうしたの?」
「舞が、祐一さんの所で食べてくるとか言ってたから……
 それで祐一さんのサイフとか貯金が……佐祐理のせいです
 佐祐理が……」

 佐祐理さん、自己犠牲だけは俺以上だからなぁ……
 しばらく止まらない上に、大変なんだ
 涙がまた溢れていたので指で何度も弾く

「で、佐祐理さんはどうして俺にメールを?」
「祐一さんのお金を現段階で佐祐理や舞が払えないのは分かってますよね?」
「まぁ……それくらいは」

 今の佐祐理さんに冗談でも嘘は禁句だろう
 それに、佐祐理さんから来る気配みたいなのが嘘などは許さないと示しているのだ
 佐祐理さんが俺の手に手を当てる

「祐一さんにも買いたいものとかあったと思います
 それで、佐祐理はお金のことを考えてきたんです」
「あの、具体的には?」
「佐祐理は祐一さんを護れるような人になりたいです」
「はい!?」

 更なる疑問が……というか、どっからその論法に達するのだろうか?

「あの、佐祐理さん、意味が……」
「とりあえず、舞の方はすでに説得しました……佐祐理たちのせいで好きな物も買えないし
 祐一さんは多分自立した女性の方が好きだろうから
 お金にも確りとした人がいいだろうなぁって言ったら舞は聞いてくれました
 今もバイトを探してます」
「そ、そうですか……」

 何気に俺が勝手に使われてるのはスルーなんですね
 まぁ、確かに舞に奢ってる回数が減ってると思ったけど、そういうことか……

「それで、祐一さん、佐祐理は祐一さんにお願いがあるんです」
「は、はぁ」
「それぞれ奢ってるって人の所に連れてってください」
「今からですか?」
「はい、ちょっと時間が急で悪いのですけど」
「まぁ、構いませんが……」

 そして、喫茶店を出るとすでに5時をまわっていた
 ここから一番近いのは美坂家だろうなぁ……

「一応電話をしてからって事でいいですか?」
「はい……佐祐理も舞に連絡しておきます」

 お互いに携帯を取り出して、それぞれのところに電話をかける
 それがどう言う事か分からないけど、それでもおごりが減るのなら俺には喜ばしいことだ
 前、香里はいいのかって聞いたら、北川くんの役目がなくなるからって頬を赤らめて言ってたっけ……
 ま、女性にとってはいいことらしい……今一俺には分からないが

「でわ、行きましょう♪」

 佐祐理さんが俺の手をとって歩く
 どこに行くか知ってるのか?

「で、祐一さん、どちらに向かえばいいんですか?」
「こっちですよ」

 俺は佐祐理さんを引くように歩いていく



「此処です」

 美坂家の前についた
 電話では、栞は家にいるそうだ……このえ(香里と栞の母親)さんがそう言っていた
 インターフォンを鳴らすと、このえさんが出てきた

「どうぞ……あなたが倉田さんね……
 栞に用事ということらしいので、リビングで待っていてくださいね」

 そういって、案内してもらって、リビングで待つと栞がやってきた

「なんですか……女性同伴で女性の家に来るなんて……」

 栞は佐祐理さんを見て、明らかに不機嫌そうな顔をする
 そんな栞に佐祐理さんは悪びれもせずに……淡々としていた

「倉田佐祐理です……えっと、美坂栞さんですね」
「はい、そうですけど……」

 栞は返事をすると、ソファに座る
 怒っているのが顔に出てるのですぐに分かる
 しかも俺を睨むのは辞めてほしいものだ

「忙しいので要件だけ言いますね……
 祐一さんに軽い悪戯されたからと言って、アイスを奢らせるのは止めて下さい」
「な!! そんなの貴方には関係ないです〜」

 栞は明らかに怒っていた
 というか、少し声を荒げている

「あらあら、栞、どういうことなのかしら……お母さんも聞きたいわ」

 このえさんが加わる
 そして、佐祐理さんが話し始めた

「祐一さんにちょっと言われただけでアイスを奢ってもらい
 更には名雪さんたちが一緒だと、その分も奢ってもらってます
 1人を奢れば自分も〜自分も〜って……お金は有限です
 無限ではありません……それに、祐一さんに相応しい女性になりたいなら……
 自分を律してください……佐祐理は祐一さんにとって疫病神です
 でも、今だけでも手伝えることをしたいから……」
「そんなの倉田先輩たちだって……」
「だからこそです……佐祐理はもう祐一さんに奢ってということはないですから」

 栞が沈黙した……

「確かに祐一さんに非があるときもあるかもしれません
 でも、あまりにも理不尽です……それでは祐一さんが欲しいものも買えず
 誰も誕生日にも何も渡せません
 好きな女性にも……親友にも……」

 佐祐理さんが俯いて着ている
 俺はそっと佐祐理さんの手を栞に見えないところで握る
 頑張れと思いを乗せて……

「祐一さんは自立した女性の方が相応しいです
 佐祐理や、祐一さんたちの周りに居る女性で言えば
 一番近いのはこのえさんや秋子さん、佐祐理のお母様、舞のお母様に当たります」

 いや、うんな年齢層上な人を……(祐一さん、逝きますか?)……ごめんなさい、十分若い方たちであられます

「栞さんは確かに奇跡が起きて、治りました
 でも、それで恋人という関係でもないのに奢ってもらっているのは可笑しいんです」

 佐祐理さんはそう言うと、俯いた
 もう、いう事は無いのだろう

「で、でも……それは……」
「栞、貴方、奢ってもらっていたの?」
「えっと、それは……」
「お母さん言ってたわよね……奢ってもらうだけじゃ人としての成長は望めないって
 それに甘やかしてたのは私の責任……でもね、お金のことに関しては確りと言っていたはずよ
 気づきもしないで……嫌われて無いだけマシね」

 このえさんははっきりと言った

「そ、そんなお母さん!!」
「栞、私は……そこまで物知らずだとは思わなかったわ」
「でも……私だけのせいじゃ」
「でもじゃないでしょ……奢ってもらってたのは事実なんでしょ
 なら、帰ってこないお金よりも先に心を返しなさい
 それと、祐一さん、ごめんなさいね」

 このえさんが謝っていた
 しっかり腰を折って

「いえ、そんな気にしないで下さい……俺も少し責任はありますから」
「ううん、祐一さんは悪くないのよ……栞」
「ごめんなさい」

 栞は謝っていた……別に怒ることもないので、そのままだが
 佐祐理さんは自分で人を傷つけてることに傷ついてるのかもしれない
 ただ、手をぎゅっと握ってやれず……俺は立ち上がる
 大分時間を浪費してしまっていたからだ……

「えっと、このえさん、後はお願いします」
「ええ、任せて」

 そして、美坂家を去った……次は天野家だな
 あそこ、あまり行きたくないんだよな……なんせ平屋建ての日本家屋という感じの家だから
 畳が当たり前で天野はよく和服を着ているからだ
 何かお母さんが教えてくれたそうな
 お茶の先生をしているらしいのだそうだ……
 電話をかけて、真琴がいるか聞くといるそうで、今から向かうといった



「此処だよ……」
「祐一さん、早く入りましょう」

 すでに6時をまわっている……確かに急ぐ方がいいかもしれない
 ま、後は真琴、名雪、あゆだけだから、早いかもしれないけど
 インターフォンを押すとしばらくして足音が近づいてきた

「祐一!!」

 真琴が俺に飛び掛ってくる
 佐祐理さんを抱き寄せながら、体を捻る
 真琴はそのまま門柱に激突していた

「真琴、あまり迷惑をかけてはダメですよ……で、祐一さん、そちらは倉田先輩ですね
 で、どうしたんですか? こんな時間に……」
「ま、ちょっと話があってな」
「真琴とですか?」
「真琴と天野双方だな」

 佐祐理さんに確認を取ると、佐祐理さんは頷いた
 そして、中に入れてもらって、居間に連れて行った貰った

「粗茶ですが」
「ありがとうございます」

 天野はお茶を出す
 そして、天野がざぶとんの上に座るのを確認してから話を切り出した

「今回は、俺が話すってわけじゃないんだけど……佐祐理さんが話があるって」
「えっと、真琴さんでしたよね……」

 すでに自己紹介も終えているのだが、人見知りの激しい真琴は佐祐理さんが少し怖いらしい
 ま、毎度のことなので気にしないでと声をかける
 そして、佐祐理さんも頷くと……

「あぅ」

 真琴は頷く
 隣で天野が真琴の腕に腕を当てていたのだ
 多分返事をしなさいってことだろうな

「えっと、時間もありますし、言うべきことだけ言いますね
 真琴さん、祐一さんに肉まんを奢ってもらうのは、もう止めた方がいいですよ」
「貴方なんかに関係ないわよ〜!!」

 真琴絶叫!!
 耳が痛いです……天野も耳を抑えてる
 佐祐理さんはのほほんと微笑みを浮かべていた
 先ほどので慣れたのだろうか?

「祐一さんの彼女になりたい、結婚したいと思うのなら
 自立した女性になることをオススメします……佐祐理からは以上です」

 短っ!! 栞の時はあれほど長かったのに……

「えっと、祐一さん?」
「ああ、ごめん……」

 佐祐理さんが俺の変化に気づいたのか、見ていた
 さすがというべきなのだろうなぁ……
 天野が震えていた

「真琴……私は言いましたよね?
 祐一さんを夫して迎えるなら自立しないとダメだって
 奢ってもらってるようではダメだって」
「あぅ〜、だって、みんな奢ってもらってるの羨ましいもん」
「真琴……皆が奢ってもらってるから羨ましいとか言ってる時点で自立もへったくれもないですね
 お金は有限なんですよ……だから……」

 天野、叱りモードに入ったなぁ
 コレになると数時間はこのままだ……真琴もそれに気づいたのか、しょぼ〜んとしている

「倉田先輩、相沢さん、真琴にはちゃんと言っておきますから
 時間あまりないのでは?」
「そうですね……すみません、お願いできますか?」
「あの、倉田先輩は何で気づいたのですか?」
「舞の行動によりですよ……佐祐理のせいで祐一さんを貧困させたのは間違いないですから」
「そうですか……でわ、またあったら話し掛けますので」
「はい〜♪」

 佐祐理さんはいつものように手を合わせて言う
 笑顔だった……ま、毎回同じような笑顔だ

「でわ、また」
「またな」

 真琴は堪えてるのか、何も言わずだった
 そして、次は水瀬家へと向かうのだった
 すでに7時という時間だ……

「佐祐理さん、飯どうするの?」
「どうしましょうか?」
「家って言っても、水瀬家だけど、食べていく?」
「ん〜舞も呼んでいいですか?」
「聞いてみないと分からないけど……」

 そして、お互いに携帯を取り出して電話をかける
 秋子さんは了承してくれた
 最初しぶるかと思っていたので意外だった

「さ、次が最後ですよね」
「はい……」

 そして、歩きながら説明するのだった
 一番現状で酷い人のことも……
 佐祐理さんの笑顔が固まっていた





後編に続く……あとがきも無しです……



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