『DUEL SAVIOR リリカル』




第二話「廻る根の世界」

ボォォゥ。火のはぜる音。

意識を取り戻してまず始めに聞こえてきた音。
どうやら室内で松明を焚いているようだ。

ここはいったいどこなのか?
確か、無限書庫でなのはと一緒に……。
「なのは!」

体を起こして、あわてて周りを見回す。
閲覧規制のかかった書物をユーノに見せて、そしてなのはに渡したらその本が光って、そして!
そんなことを頭の隅で思い出しつつなのはを探す。

「うっ、うぅん」
「なのは!」

すぐそばに、私と同じように倒れていたなのは。

「なのは、大丈夫?」
「フェイトちゃん?」
「うん、私。なのは、どこか体に異常は無い?」
「平気。大丈夫。どこもおかしくないよ。
 でも………。ここ、どこだろう?」

私たちがいるのは、明らかに時空管理局本局にある無限書庫ではない場所。

「少なくとも、無限書庫の中じゃないね」
「原因はやっぱりあの本かな?」
「たぶん。ロストロギアの一種なのかも知れない。
 何らかの魔法がかかるような仕掛けがあったのかも」

となのはとフェイトがそんなことを話していると、部屋の外から男の声がした。

「おやおや、今日召喚の儀があるとは。リコ=リスは何も伝えては来ませんでしたが」

そして男はなのは達の目の前へと現われる。

「これはまた…、ずいぶんと可愛らしいお嬢さんが召喚されましたね。
 ようこそ救世主。根の世界“アヴァター”へ」

聞きなれない言葉<キーワード>を耳にして不思議がるなのはとフェイト。

「あの?ここはどこですか?」
「はい?」
「私達、今どこに居るのかわからないのですけど、いま確か“アヴァター”と言っていましたが…」
「赤の書からの説明は何も受けては居ないのですか?」
「はい、いきなり“本”が光って、気がついたらこの場所にいました」
「それに“赤の書”って?」
「ふむ。これは今までとは異なったケースですね」

「良いでしょう。まずは学園長に報告に行きましょう」

そう言って、歩き出す男。
戸惑う二人。
と、思い出したように振り返り、

「自己紹介がまだでしたね。私はこの学園の学科授業を受け持っている、ダウニーと申します」
「あっ、高町なのはです」
「フェイト・T・ハラオウンです」
「では、高町さん、フェイトさん、着いてきてください。学園長室へと向かいます。
 そして、そこで色々と説明をしてあげましょう。まずはさしあたって…」

いきなり二人を抱えて飛び上がるダウニー。

なのはとフェイトの眼前に広がる景色。
それは見慣れた海鳴市の景色でも、ミッドチルダの景色とも違った。
あえて言うなら、なのはの世界の、それも中世ヨーロッパのような景色。

「なのは……」
「フェイトちゃん……」
「やっぱり違う世界に飛ばされたんだね。私たち」
「うん…、そうみたいだね」

となのはとフェイトがそんな会話を交わしながら目の前に広がる景色に呆然としていると、

「現状認識をしていただけるのは助かるのですが…、
 二人を抱えてのレビテーションは魔力の消耗が激しいので、そろそろ着地したいのですが」
「あっ、すみません」

あわてて謝るなのは。

「でも、離してもらっても大丈夫ですよ」
「えっ?」
「はい。私たち、飛べますから」

そう言って、ダウニーから離れる二人。

「レイジングハート」  <All right. my master.>
「バルディッシュ」 <Yes, sir.>

そしてそれぞれの愛機に声をかけ、飛行魔法を展開させる。

二人が展開させた飛行魔法を見て、驚くダウニー。

「これは驚きましたね。レビテーションはそれなりに魔力制御の難しい魔法です。
 それを、失礼ながらあなた達のような幼い方が習得しているなんて」

「なにはともあれ、期待できそうな人材が召喚されてきたものです」

そう言ってダウニーは降下し始める。
二人もそれに倣って地上に降りていった。



場所は変わってフローリア学園の学園長室。

「時空管理局ですか」

ダウニーに案内されて行った学園長室に静かだが、よく通る声で驚きの声があがった。
そこで二人が紹介された女性、ミュリエル・シアフィールドはこの学園の責任者であった。
二人は、彼女から根の世界“アヴァター”に関しての説明を受ける。

約1000年周期で破滅と呼ばれる勢力によって、滅亡の危機を迎えること。
根幹の世界であるアヴァターが滅べば、他の次元の世界も連鎖して崩壊すること。
破滅から世界を救う救世主と呼ばれる存在があること。

これらの説明を行い、二人が完全に理解していることが分かったミュリエルは驚きを隠せなかった。
どのような世界から召喚されたかはまだ知ってはいないが、大抵の者は現状認識に時間がかかるものであった。

にも関わらず、二人は状況を把握していた。

これらの事と、二人の服装、時空管理局より支給されている制服、を見てミュリエルは、

「あなた達ふたりは、どこかの組織に所属しているのではないのですか?」

その問いかけに二人は答える。
“時空管理局”に所属している、と。

『時空管理局』
魔法を主軸とし、科学も同様に発達した世界“ミッドチルダ”を中心とし、
隣接する次元世界を監視し、世界の崩壊に繋がるような事件を防ぎ、時空の、次元世界の安定を保つ組織。

そこに二人は所属しているということであった。
しかも、見習い的な所属ではなく、それぞれが将来を期待されているポスト、
“執務官候補生”
“武装隊士官候補生”
にあたることも。

このようなやり取りがあり、冒頭のミュリエルの驚きの声の場面へとつながってゆく。

それぞれの話が一通り終了し、ミュリエルは、

「今までの話から、お二人が今、この世界の現状を完全に認識していると思ってもかまいませんか?」
「はい」
「問題ありあません」

「では、このアヴァターに留まり、破滅を防ぐために戦うと」
「「はい」」

「“破滅と戦う”と言うことは当然、命の危険性があります。それを理解したうえで私たちに協力していただけるのは、
 正直ありがたいことではありますが…。」
「いくら貴方達がその管理局に所属し、実戦も経験しているとはいえ、その年齢で戦いへと身を投じると言うのは…」
「でも、このアヴァターが滅びれば、そこに繋がる全ての次元世界が崩壊するのですよね?」
「だったら私も戦います。このアヴァターの為にも、自分達の世界の為にも!」

「本当によいのですね?今ならまだ、貴方達を元の世界へと送り返すことは可能ですよ」

無言で、しかし決意を秘めた表情でうなずく二人。

「わかりました」

「では、あなた達に二人に一つ、試験を受けてもらいます」
「試験?ですか」
「そうです。破滅から世界を救えるのは“救世主”と呼ばれる存在。
 あなた達はその救世主たる資格があるから召喚されたのです」

「そして、その救世主は“召喚器(インテリジェントウェポン)”と呼ばれるものを呼び出し、心を通わせる存在です。
 その召喚器を呼び出す為の試験です。その内容としてはモンスターと戦ってもらいます」
「戦いの中でその召喚器を呼び出す、と言うことですか?」
「その通りです。召喚器は武器の一種です。あなた方に救世主の候補たる資格があるなら、呼び出すことができるはずです」

「では準備がありますので、お二人は別室の方で待機していてください。
 ダウニー先生、お願いします」
「分かりました。ではこちらへ」

そして別室に通される二人。

「では準備が出来次第、呼びに来ますのでそれまで待機していてください」

そういってダウニーも部屋から退出する。
残される二人。

「やっぱり、まったく別の世界に飛ばされたんだね、私たち」
「うん。しかも破滅によって滅び去る危険がある次元世界に」

「でも、一人じゃなくてよかった。フェイトちゃんが一緒で」
「私も。なのはが一緒でよかった」
 
「たとえどんな事があっても、私はなのはを護るよ」
「私も、フェイトちゃんを護る」
「どこまで出来るかわからないけど、二人でがんばろう。なのは」
「うん」


こうして舞台はアヴァターへ。
白と黒の魔法少女はこの先、どのような物語を紡いで行くのか。


続く










あとがき

「ふぅ〜。ようやく第二話を書き上げることが出来ました」

「お疲れ様です」

「あっ、学園長先生。あとがきへのご足労、感謝します」
「今回はあとがきにフローリア学園の学園長であるミュリエル=シアフィールドさんに来ていただいてます」

「ご紹介に預かりました、ミュリエルです」
「今回のお話は大河君が活躍した"DUEL SAVIOR"本編とも、
 高町なのはさんのお兄さんである恭也君が活躍した"DUEL TRIANGLE"ともまた別の話なのですね」

「ええ。最終結末は同じになりますが、過程がかなり変わります。
 といっても、最初のほうはある程度一緒にせざるおえませんが」

「それにしても…、恭也君といいなのはさんといい、高町家の方々はすごい方ばかりですね。
 お兄さんが凄腕の剣士。妹さんが強力な魔法少女。戦乱のない世の中で過ごしているにもかかわらず、
 これだけの実力を備えているとは。まったくもってすごい兄妹です」

「あー、氷瀬浩さんの"DUEL TRIANGLE"の恭也と、私の"DUEL SAVIOR リリカル"のなのはちゃんは厳密には兄妹ではないです」

「厳密には、と言うと?」

「同じ世界であって、異なる世界。つまりは並列世界の住人どうし、と言うことになります。
 ここでは、"とらいあんぐるハート3 〜Sweet Songs Forever〜"の世界と
 "魔法少女リリカルなのはA's"の世界との差、ですね」

「どれくらいの差が出ているかは、こちらの資料を参考にしてください」

そういって設定資料を渡しながら。

「登場人物、時代背景、場所はほとんど変わりありませんが、現在に至るまでの過去の状況にかなりの差がでています。
 ゆえに並列世界。 この言葉は今回の物語における一つのキーワードでもあります」

「なるほど。並列世界からの何らかの干渉があると?」

「舞台は根の世界、ですから別の並列世界にも繋がっているのは想像に難しくないかと。
 まぁ、これ以上は後々のお楽しみ、ということで」

「分かりました。また別のDUEL SAVIORになる、と。どのような物語になるか、楽しみです」

「次回は、ついになのはとフェイトの召喚器が登場します。
 どうぞご期待ください。それでは!」









閑話休題

「それにしても……。随分と第二話を書き上げるのに時間がかかりましたね」

「うっ、それはある意味仕方ないかと…。DUEL SAVIORを再プレイして確認を取っていたのもありますし」

「他にも何かやっていたのではないですか?」

「"SHUFFLE!"シリーズの"Tick!Tack!""Really?Really!"をプレイしていました。
 そのせいで時間が削られていったのも事実です」
「また一応、仕事もしておりますし」

「でも決定的に違うのは、今までの執筆量かと。そしてそれに伴う執筆力の差と」

「仕事や学生時代に書いたレポートなどを除いた、まったく私的な文章の数など、
 データにして実に300KBを下回るほどしか書いていないもんで」

「たったこれだけなので、かなりの速さで更新できる方とは歴然とした差がでるわけです」

「なにはともあれ、がんばってくださいね」

「精進します」



白と黒の少女の戦いが、今幕を開ける!
美姫 「でも、レイジングハートもバルディッシュも召還器みたいなものよね」
まあ、ちょっと違う。いや、かなり違うけど。
意思持つ武器という意味では一緒だけどな。デバイス程、召還器は意志を持ってるわけじゃないだろうし。
美姫 「根源の力を源にもしてないわよね」
そうそう。何より、能力の向上ってのはないからな。
美姫 「……ねえ、あの二人の魔力が召還器で更に向上されたらとんでもないんじゃ」
魔導兵器並になったりしてな。
美姫 「うーん、どうなるのか楽しみね」
うんうん。次回も楽しみにしてます。
美姫 「待ってますね〜」
ではでは。



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