注)これは私が書いている『破滅の中の堕ち鴉』シリーズのオリジナル設定の話です。

DUEL SAVIOR本編のどのシナリオにも属していませんので、ご了承を。

オリジナルな展開がお嫌いな方は、どうぞお引き換えしを。

見てからの批判は極力おやめください。

それでもよろしいかたは、どうぞ……

 

 

 

 

 

 

 

 

つい先日、新しい救世主候補が召喚された。

その情報が、イムニティから恭也へと伝わっていた。

「ほぅ……新しい救世主候補か……」

「えぇ、ジョブは魔法使いで見た目は小柄な少女って話よ」

イムニティの言葉に、恭也は考える。

「……待て、その情報は正しいのか?」

ふと、何かを思ったのか、恭也はイムニティに尋ねる。

「えっ、えぇ……学園に侵入させた使い魔からの情報よ」

戸惑いながらも、イムニティは言う。

大体、イムニティが恭也に嘘を教える事など絶対似ない。

ただ冗談や、平時の時には言う事もあるが。

「おかしくはないか? 救世主候補を呼び出す召喚の塔は破壊したはずだ……なのに、なぜ新しい救世主候補が‘召喚’される?」

「あっ……」

恭也の言葉に、イムニティもハッとする。

「そうね……確かに、おかしいわ……召喚の塔は破壊したし、こんなに短期間で直せる物でもない……」

「だろう……ならば、嘘の情報をつかまされたか、あるいは……」

恭也とイムニティ、揃って考える。

「召喚能力を持つ救世主候補で、オルタラの力と連動して召喚されたか…巨大な魔力を召喚に変換して召喚されたか…」

少し考える仕草をし、恭也は目を閉じる。

「……少し、興味があるな」

「恭也っ!?」

その言葉に、イムニティは驚く。

「どうやって召喚されたかは兎も角この時期に新たに呼び出された救世主候補だ…今までの候補達とは違うだろう」

破滅との戦いが激化する中、戦闘も出来ないような役立たずは救世主候補の資格を持とうが呼びはしない。

それが、恭也の考えだった。

「次の戦闘の時、俺は別行動をとる……お前とロベリアを護れないのは痛いが……」

「恭也……」

その恭也の気遣いが嬉しいのか、イムニティは幸せそうな顔をする。

「心配しないで、私もロベリアも早々簡単には死なないわ」

真剣な目で、イムニティは恭也に言う。

ロベリは死霊を操る妖術剣士であり、死体によってその体の傷を癒すことができる。

イムニティは、殆ど救世主候補から攻撃される事はない。

なにしろ、イムニティを殺してしまうと、自動的に救世主が誕生するからである。

それは、リコの望むところではない。

それに、二人とも一般兵にやられるようなことはない。

だから、大丈夫だとイムニティは言う。

「だが、用心は怠らないようにな……何かあれば、すぐに駆けつける」

恭也はそう言って、歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

黒き兄妹

 

 

 

 

 

 

 

そして、破滅の軍勢と王国軍・救世主候補達との戦いが始まった。

度々こうやって戦いを繰り広げ、一進一退をくりかえしている。

「よっし、行くぜぇっ!!」

大河が叫び、トレイターを構えて破滅へと走り出す。

その後ろにカエデ、ナナシが続く。

その後ろ、大河達の少し後ろにリコと未亜が入り、更にその後ろにリリィとベリオが行く。

「あれ、あの娘は?」

走りながら、周りを見てつい最近新しく召喚された少女がいない事に気付いたベリオが、隣を走っているリリィに尋ねる。

「さぁね。 大方、どこかでいるんでしょ」

大して気にせず、リリィはそう言い魔法の詠唱に入る。

「そうね……あの娘も、召喚器を持っているし」

ベリオもそう自分を納得させ、補助魔法の詠唱に入った。

前方では襲い掛かるモンスターを次々と倒していく大河、カエデ、ナナシの3人。

その後ろでは、リコが召喚したスライムがモンスターを飲み込み、大河達に襲い掛かろうとしているモンスターに未亜が牽制の弓を放っていく。

幾つかの戦闘を経て、大河達はかなりの纏まりを見せてきていた。

新しく召喚された少女の事を……少しだけ忘れて……

 

 

 

「ふむ……遠くから見る限り、増えていないが……別行動か?」

そんな大河達の動きを、恭也はモンスターが映し出すスクリーン越しに見ていた。

「しかし、いい動きをするようになった……それでこそ、戦い甲斐がある」

薄く笑い、恭也は小太刀、飛針、鋼糸の全てを確認する。

「恭也、行くのかい?」

その後ろで同じように剣の状態を見ていたロベリアが尋ねる。

「あぁ、もしかすると偽の情報という線もないとは言いきれんからな」

「新しい救世主候補が召喚されたって情報は嘘だと?」

ロベリアの言葉に、恭也は頷く。

「召喚の塔が破壊されたこの状況だ……俺にも、どうなるかはわからん」

「苦し紛れの策って事かい? 私達の放った使い魔を感知しながらあえて無視して情報を教えるって言う」

恭也の言葉に、ロベリアは言い返す。

「そう思わせておいて不意打ち、なんていうこともあるが……とにかく、確認しない事には満足に動けんだろう」

常に最悪の状況を想定して戦う。

それが恭也の心情だった。

楽観視して戦いに挑む事など、今まで一度もなかった。

だから、今回もそう言う考えで出陣()る。

「判った……気をつけておくれ」

「ふっ、お前達を残して死ぬ事はできんからな」

共に苦笑し合い、恭也は大河達の元へと走って行った。

そこに、衝撃的な出会いがあるとは……知らずに……

 

 

 

「ハァ…ハァ……結構倒したな……」

肩で息をしながら、大河が呟く。

「そうでござるな……」

「ですの〜〜」

カエデとナナシも、意気がかなり荒い。

「でも、もう殆ど終わりだね」

「そうですね」

その後ろから、未亜とベリオが少し安堵したように言う。

「ふん、手応えがないわね」

リリィにいたってはまだやる気があるようだ。

しかし、その後ろにいたリコは神妙な面持ちで何かを考えているようだった。

「どうした、リコ?」

そのリコを不思議に思ったのか、大河が尋ねる。

「マスター……その、変な感じがするんです」

戸惑い気味に、リコが言う。

「変な感じ……例えば、どんな感じだ?」

「いつもなら、もう少し抵抗があるのに……今回は、あっさりと破滅が退きすぎているんです」

いつもより抵抗というのか、そういうものが少ない。

それが、リコには引っかかっていた。

「破滅の連中も疲れたんじゃないのか?」

少し場を和まそうと、大河が言う。

「そうだと……良いんですけど……」

しかし、リコは今一釈然としない。

 

「ほぅ……あれだけいたモンスターが全滅か」

 

そこに、男の声が響く。

「てめぇはっ!!」

声がしたほうに全員が振り返ると、そこには……

「不破っ!!」

大河が、恭也の名前を叫ぶ。

「強くなったようだな、救世主候補達」

小太刀の柄に手を回しながら立つ恭也が、そこにはいた。

「モンスターなんざ、数いたって大した事はねぇからな」

トレイターを構え、大河が叫ぶ。

同じように、リリィ達も構える。

「救世主候補が増えた、という情報を聞いたのだが……やはり、あれは嘘だったかな?」

「っ!?」

恭也の言葉に、全員が驚く。

なぜなら、新しい救世主候補が召喚されたのはまだ最近で、破滅との戦いには来た事がない筈だったからである。

「なんで、てめぇがそんな事を……」

恭也を睨みながら、大河は言う。

「その口振りからすると、やはり新しい救世主候補はいるのか……姿が見えん所を見ると、別行動か」

目を閉じ、恭也は一瞬思考する。

「ならば、その救世主候補を探そう……戦ってみんことには、対策も立てられんからな」

「逃がすとでも思ってるのかっ!!」

退こうとする恭也に、大河は叫びながら斬りかかろうとする。

しかし……

 

「アストライアッ!!」

 

幼い少女の声が、その場に響いた。

その瞬間、まるで金縛りになったかのように、全員の動きが止まった。

いや、正確には大河達は本当に体が動かなくなっているのだ。

そして、恭也自身は……その声に、驚いて体が動かないのだ。

「この束縛呪文は……!」

恭也を除く全員が先ほどの声の人物に思い至っていた。

新しく召喚された救世主候補………

「あんたっ!!! どういうつもりっ!!!」

リリィが、叫ぶ。

そして、恭也の目線の先に……一人の少女が姿を現した。

全身白で、青いラインが特徴的な服を着、髪には白いリボンが二つ、風に揺られていた。

手には杖のような召喚器……

ベリオの召喚器の宝玉を包む部分が、少し長くとがった形をしていた。

救世主候補達が、その名を叫んだ……

 

「不破 なのはっ!!!」

 

怒気と、困惑を含むその言葉に……少女、なのはは曖昧な笑みを浮かべた。

「やっと……やっと、見つけたんだもん……」

そして、恭也を見るなのはの眼に、涙の雫が溜まる。

「おにいちゃ〜〜〜〜んっ!!!」

叫び、なのはは恭也へと走って行き……そのまま恭也に抱きついた。

「なの…は…………?」

対する恭也は、信じられないといった風に、抱きついてきたなのはを見る。

それもそうであろう……信じられるはずなどなかった。

あれから……恭也自身がアヴァターに‘召喚’されてからすでに千年もたっているのだから……

「会いたかった……会いたかったよぉ、おにいちゃん……」

涙をポロポロと零しながら、なのはは恭也にしがみつく。

「何…故……ここに……?」

動揺を抑えられない恭也が、なのはに尋ねる。

「おにいちゃんに会いに決まってるよ……だって、もう10年も行方不明だったんだから」

その言葉に、恭也は驚く。

10年だと……俺がこのアヴァターに来たのは千年前……だが向こうでは、まだ……10年……?)

相当困惑する恭也に、なのはは説明を始める。

「おにいちゃんがいなくなって10年……皆でおにいちゃんを探したんだけど全然見つからなくて……そこでね、一つの結論がでたの」

恭也がいなくなってから全員が出した結論……それは……

「おにいちゃんは、きっと別の世界に跳ばされたんじゃないかって……」

リスティやフィリスが出したその結論に、皆は驚き……そして、呆然となった。

「もう、おにいちゃんには会えない……そう思ったけど、リコ・リスさんがね」

リコの名前を聞いて、恭也はリコを見る。

「私には、救世主の資格があるから……アヴァターに来ないかって……」

その時、なのはは思った。

もしかすると、そのアヴァターに兄がいるかもしれない。

いなくても、もしかしたら別の世界に行く手段があるかもしれない。

そう思い、なのははアヴァターへとやってきた。

幸いにも、リコの話ではなのはには強大な魔力が備わっていたと言う。

魔法使い十数人分という強大で、莫大な魔力量である。

だからこそ、なのははこの世界へと召喚される事ができた。

そして、その結果……なのはは、恭也と再会した……

「王国で、おにいちゃんが敵なんだって聞いたときは……驚いたし、哀しかったよ……」

戦いの前日に知らされた事実……自分の兄はこの世界にいるけど、今自分がいるところとは敵なんだと……

それは、ショック以外の何物でもなかった。

でも、兄の戦いを見て……気付いた。

「おにいちゃんは、護るべき御神の剣を振るってるって……判ったから」

たとえ、周りから見れば馬鹿げたことだろうと、なのはにとってはそれはいつも見ていた兄に違いはなかった。

「だからね、おにいちゃん……私も……連れて行って……」

その言葉に、全員が息を呑んだ。

「私だってもう戦えるんだよ? 絶対、おにいちゃんの足手まといなんてならないから……」

懇願するように、なのはは言う。

自分を追ってこんな所まで来たなのは……だか、恭也の中でなのはは護るべき者……

そんななのはを、連れて行くことは……

「嫌だって言っても、ついて行くよ……だって、だって私……おにいちゃんの事が、好きだからっ」

時間が、静止したようだった。

(あの想いが、なのはさんの心の闇…未亜さんに似ていると思っていましたが、なのはさんの方が純粋で、深いっ!)

リコがなのはを召喚した時に感じたなのはの心の闇……それが今、鎌首を擡げ現れた。

(油断していました……名前を聞いた時に疑うべきだった……何故、あの‘不破’と言う苗字に反応できなかったの!?)

自問自答をするリコ。

なのはを召喚し、名前を聞いた時に訊いた不破と言う苗字。

気にしていなかった、と言えば嘘になるが……そんな事はないと思っていた。

恭也と千年前から知り合っているがゆえに、肉親、または親類と言う事を考えなかったのだ。

そしてなのはも、恭也の事を愛しているがゆえに……昔聞いた、恭也の旧姓を名乗った。

この世界で、自分と兄の事を知っている人はたぶんいない。

そう考えて、なのはは自分の事を不破と名乗っていた。

「おにいちゃんと一緒なら……どこだって構わないよ……」

そして、揺ぎ無いその想いが、恭也には判ってしまった。

痛いほど、伝わってきてしまった。

そんななのはを、捨てて置けようか……

「…………判った」

「おにいちゃんっ!!」

恭也の言葉に、なのはは体中を歓喜で震わせる。

こんな幸せが、今まであっただろうか……

兄が、自分の側にずっといてくれる……

ここなら、回りに気兼ねなどしないでいい……堂々と、兄を好きでいられる。

絶頂の幸福感が、なのはを包んでいた。

「くっ!! 不破っ!! てめぇ自分の妹を戦いに巻き込むつもりか!!」

動かない体だが、大河は何とか動かそうともがきながら、恭也に向かって叫ぶ。

「なのはちゃんっ!! 考え直してっ!!」

そして、同じように未亜も叫ぶ。

「大河……俺は、なのはを危険な目に合わせるつもりは毛頭ない……これは、俺が俺に課した誓いの一つだ」

はっきりと、恭也は言った。

「未亜さん……あなたは私に近いと思ったけど……どうしてそんな事を言うの?」

不思議そうに、なのはは言う。

「私は、私はおにいちゃんと一緒に居たいだけ……ただ、それだけだよ」

言葉の後、なのはは召喚器を前に翳す。

「アストライア……セット、アップ」

そして、なのはの呟きと同時になのはの服に変化が訪れる。

全身の白が全て黒へと変化し、青いラインは真紅に染まる。

そして、金色の金具なども、全て銀色へと変わった。

「おにいちゃんと、お揃いだね」

嬉しそうに笑いながら、なのはは恭也に言う。

「あぁ、そうだな」

恭也も、小さく笑いながら言い返す。

「大河……そして救世主候補達よ、また会おう……」

「次にあったときは、敵同士だね」

その言葉を残し、恭也となのは、二人は消えていった……

 

 

 

それは、新たな戦いの始まり……

狂乱の兄妹との戦いの、始まりだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


あとがき

 

 

堕ち鴉シリーズの第15作品目ということで、ちょっと異色なものにしてみました。

フィーア「なのはの性格じゃないような気がするわ……」

言うな、書いていて何度もボクもそう思った……

フィーア「それに、恭也が違う世界から来たって事がわかったわね」

うむ、どうやってきたかはまだ秘密だけどね。

フィーア「これから、なのはもこのシリーズにずっとでてくるの?」

まぁ、一応はそのつもり。

フィーア「でも、何でこんな話になったわけ?」

う〜ん、某絵貼り掲示板でダークなのはを見たから、かな。

フィーア「まぁ、DUEL TRIANGLE ANOTHER STORYの時の美由希みたいなものね」

なのはの方は、恭也に会いたいためにこっちの世界にきただけどな。

フィーア「これから、ロベリアやイムニティを交えて恭也の取り合いが始まるのね」

う〜ん……どうだろうねぇ……

フィーア「次回作は?」

未定だっ!!

フィーア「威張るなっ!!」

あべしっ!!

フィーア「やれやれ……皆さん、ではでは〜〜〜」

 

 

改正版あとがき

 

 

前回指摘された修正点をふまえ、加筆修正しました。

フィーア「なのはの召喚器の名前、変わっているわね」

うん、アラストライア、正義と純白、純潔を司る女神の名前にしてみた。

フィーア「純白、純潔は判るけど……破滅側だと正義じゃないんじゃない?」

そこは、またのちの布石だよ……たぶん。

フィーア「考えもしないからそんな事になるのよっ」

ぐはっ!!

フィーア「やれやれ、加筆修正のあとがきは長々としちゃいけないし」

そ、んなルールがあったのか……?

フィーア「私が決めた、ではでは〜〜〜」




なのはも破滅側に。
美姫 「それだけ、恭也を想う気持ちが強いって事ね」
これはこれで、面白い展開だと思うけれどね。
美姫 「このシリーズで、今後もなのはが出るのかどうかも楽しみな所よね」
うんうん。次はどんな話になるのか、楽しみにしてます。
美姫 「それじゃ〜ね〜」
ではでは。



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