ルビナスの叫び声が、響く。

「ルビナスか……ロベリアは、どうした?」

振り向かずに、恭也は尋ねる。

「私なら生きているぞ、心配をかけたな」

ルビナスの後ろから、その声が聞こえる。

「良かった……ぐっ」

そう言って、恭也は膝をつく。

「恭也っ!!?」

叫びながら、ロベリアとイムニティが恭也に向かっていく。

「心配するな……プレアデスに、魔力を詰め込みすぎただけだ……」

苦しそうな、だけどちょっとした苦笑を浮かべ、恭也は言う。

「恭也……」

そこに、ルビナスが声を掛ける。

ルビナスの後ろにはミュリエルもいる。

「ルビナスか……久しぶりだな」

その黒い瞳が、ルビナスを捉える。

「えぇ、1000年ぶりかしら」

ちょっと微笑んで、ルビナスは言う。

「ルビナス、感動の再会はいいけど……これをどうにかするほうが先決ではなくて?」

ミュリエルが、ルビナスの後ろから言う。

「皆……さがれ」

言って、恭也は立ち上がる。

「どうする気だ、恭也?」

その恭也に肩を貸しながら、ロベリアが言う。

「赤の主を、このガラクタから引っ張り出す」

その言葉に、皆が驚く。

「恭也ッ、お前……」

驚きの表情で、ロベリアが言う。

「ロベリア……これは俺の考えだ……お前やイムニティを護る為には、こいつは、破壊しなければならん」

恭也の中での優先順位として、ロベリアとイムニティを護る事がかなり上にある。

そして、それを実行するために……

「こいつを、破壊するんだ……俺は、世界の破滅には余り興味はない……お前達二人を護るために、こっちについたのだからな」

少し微笑んで、恭也は言う。

その微笑みを目の前で見たロベリアは、かなり顔を赤くする。

その後ろでは、イムニティは当然ながら……何故かルビナスとミュリエルも面白くなさそうな顔をしていた。

「メラペ・ケライノ……」

呟くと、小太刀が光り輝く。

「さぁ、さっさと起きろよ……当真 大河っ!!!」

言って、恭也はロベリアから離れ、そのまま救世主の鎧へと再び小太刀を振るった……

 

 

 

 

 

 

 

千年の時間(トキ)を超えて

(後編)

 

 

 

 

 

 

 

眩い閃光が、辺りを覆い尽くす。

皆咄嗟に目を押さえ……そして、閃光がおさまってくる。

「砕け……プレアデス」

小さく呟かれた言葉と共に、救世主の鎧の全身に皹が走る。

「目覚めの時だ……お前を心配している者達の元へと、帰ってくるがいい……」

言って、恭也は倒れた。

その瞬間、恭也の持っていた召還器も、消えていった。

「「恭也ぁっ!!!」」

それを見たロベリアとイムニティは叫び、恭也に向かっていく。

「なっ、なんでござるかっ!!?」

そして、それと同時に通路の奥からベリオとカエデがやってくる。

「ベリオッ、カエデッ、無事だったのね!」

二人を見たリリィが嬉しそうな声を出す。

「えぇ……私達は無事ですけど……大河くんはっ!?」

ベリオの言葉に、リリィと未亜は前を見、つられる様にベリオとカエデも前を見る。

全身に皹が入った救世主の鎧と、その前に倒れふす恭也…そして、その恭也に近づいているロベリアとイムニティ。

そして、次の瞬間……救世主の鎧が…砕け散った……

砕け散る救世主の鎧の中から……大河が倒れてくる。

「お兄ちゃんっ!!」

未亜が叫び、大河に向かっていく。

それに続くように、リリィ達も大河の元へと走っていく。

「ぐっ……ここは……」

未亜に支えられながら体を起こしながら、大河が言う。

「ガルガンチュワの中だ」

その大河に、ロベリアに肩を貸してもらいながら立ち上がった恭也が言う。

「お前はっ」

恭也の存在に、大河は驚く。

今まで、幾度となく刃を交わらせてきたのだ、当然警戒心も出てくる。

「大河、信じられないかもしれないけど、あんたをこの救世主の鎧から救い出したのはそいつよ」

そんな大河に、リリィが説明する。

「イムニティを救うついでだ……感謝してもらいたくてやったわけじゃない」

恭也はそう言って、大河から離れる。

「お前は、本当に昔から……感謝されるのが苦手だな」

ちょっと苦笑しながら、ロベリアが言う。

「散々人の命を奪ってきたんだ……感謝されるような、偉い人種でもないさ……」

つられるように少し笑って、恭也は答えた。

「これからどうするの、恭也?」

ロベリアの反対側にいるイムニティが尋ねる。

「今回の救世主戦争も、俺達破滅の敗北だろう……認めたくはないかも知れんがな」

現状を見れば、もはや決着はついたのだ……

「ルビナス、ミュリエル……俺は潔く王国に罪人として降ろう……しかし、ロベリアとイムニティの安全は、保障してくれ」

「「恭也っ!!?」」

その恭也の言葉に、ロベリアとイムニティは声をそろえて叫ぶ。

「頼む……」

「恭也……私は……」

ルビナスが何かを言おうとした瞬間……

 

「はぁぁぁっぁあぁぁぁぁあっ!!!」

 

男の叫び声が木霊する。

「何だっ!!?」

それに驚き、全員が声のしたほうを見る。

「ダウニー先生っ!?」

ミュリエルが声をあげる。

其処には、先ほど恭也とミュリエルに倒されたダウニーがいた。

「かかかか、神よ…私の体を使って、こここ降臨なさるのですねぇぇぇぁぁあああ」

その言葉に、全員が息を呑んだ。

「ああぁぁぁぁぁぁっ!!」

そして、ダウニーの体を光が包み、その姿が段々と変わっていく……

「どうやら、ハッピーエンドはまだなようだ」

言って、恭也はロベリアから離れる。

「赤の主、お前達は下がっていろ……まだ、戦えんだろう」

後ろを振り向かずに、恭也は言った。

大河はまだ救世主の鎧に取り込まれたときに負った疲れが癒えてはいない。

ベリオとカエデも、破滅の将と戦って負った傷が癒えていないし、リリィと未亜もかなり体力を消耗している。

「恭也、私はお前と共に戦うぞ」

「私もよ、恭也」

ロベリアとルビナスが、恭也の両隣に立って言う。

「後方からの支援はまかせなさい」

「私とイムニティで、援護します」

その後ろにリコとイムニティが並ぶ。

「ふっ……駄目だ、と言っても聞かないだろう」

薄く笑って、恭也は後ろを見る。

「ならば指示はお前に任せるぞ、ミュリエル」

「えぇ、勿論そのつもりです」

恭也の言葉に、ミュリエルもライテウスを構えながら答えた。

「アルストロメリアがいないが……1000年前の旧メサイアパーティーが、揃ったな」

時空断層超えて、死の淵より甦り、対立しながらも……

大河達の前の救世主のパーティー……メサイアパーティーが、揃った。

ダウニーを包んでいる光が、徐々に形を帯びてくる。

その姿は、禍々しいものであった。

「あれが神とはな……随分と、禍々しい」

言って、恭也は手を突き出すような格好をする。

ルビナスは手を上に上げる。

ロベリアは静かに、手を前に差し出す。

 

「応えろ……プレアデスッ!!!」

 

「来たれ……エルダーアークッ!!!」

 

「来い……ダークプリズンッ!!!」

 

刹那……空間が振動する。

眩い光と共に、恭也の両腕には煌く銀色の小太刀が……

ルビナスの腕には金色の刀身を持つ大剣が……

ロベリアの腕には緋色の刀身をした剣が、握られていた。

「エレクトラ……全員を癒せ……そして、癒し続けろ」

応える様に、恭也達を光が包む。

「これは……」

「失ったはずの魔力が……溢れてくる……?」

皆を白い光が覆い、それが体を包むように姿を変える。

「これで、魔力が底をつく事はないだろう……多少の傷も、癒してくれる」

言って、恭也は構える。

「恭也……その召還器は……」

ルビナスが、驚きの声を上げる。

「嘗て、神に愛された女達だ……神の愛を拒み、その結果死んだ……神は、それだけでは飽き足らず、この者達を召還器へと変え、時空断層の中へと封印した」

誰にも見られないように……誰にも、呼び出されないように……

「ルビナス、お前達に時空へと飛ばされた時に、俺はこの召還器に呼ばれた…そして、この時代へと辿り着いたのだ」

導かれるように、この召還器を手にした。

恭也自身、身体能力もそうだが、武器の性能でも負けている事を自覚していた。

こちらは普通より少し強度の高い小太刀だが、向こうは特殊な製法により生み出された召還器。

打ち合いを続ければ、性能の差が必ず出てくるのだ。

だからこそ、恭也は今この時のような事態の為に、召還器 プレアデスを手にした。

そして、召還器を手にした瞬間……恭也は今この時代へと辿り着いていた。

己がいた、千年後のアヴァターに……

「神の愛を拒んだが故に召還器にされた女達か……救世主とはまた別の神の犠牲者ね」

ルビナスが、哀しそうに言う。

「あぁ、だからこそ……神を倒す……それが、この召還器となったプレアデスに対する最高の手向けだ」

恭也の言葉の後、光が弾けた。

すでにその姿に、ダウニーの面影など欠片も残ってはいなかった……

「まるでモンスターだな、とても神には見えん」

恭也の言葉通り、目の前にいるのはかなり大きく、そして禍々しい瘴気を放つモンスター以外の何者でもなかった。

「さぁ、この時代……最初で最後の、旧メサイアパーティーの戦いだ」

その言葉に、5人は頷く。

「ルビナス、またこうしてお前と一緒に戦うとはな」

ダークプリズンを構え、ロベリアが言う。

「そうね……でも、私は嬉しいわ……またこうして、あなたと共に戦えることが」

ルビナスもエルダーアークを構え、そう答えた。

「ふん、私はそうでもないけどね」

そうロベリアは言うが、顔が少し笑っていた。

それをみたルビナスはちょっと笑って、前を見る。

全ての元凶……倒さなければならない、相手。

「神よ…因果、因縁……その全てを、貴様ごと切り伏せるッ!!!」

叫びと共に、恭也・ルビナス・ロベリアが神へと向かっていった。

その後ろで、リコ・イムニティ・ミュリエルが魔法を唱え始める。

今まで起こった戦いの全ての意味を決する戦いの……幕が、上がった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


あとがき

 

 

後編終了〜〜〜

フィーア「そうね、でもまた変な終わり方ね」

う〜ん、この続きを考えるとどうしてもリリカルなのはA’sの最後の戦いが思い浮かんでねぇ。

フィーア「まぁ、似てなくはないわね……」

ルビナスとリコがなのはとフェイトで、ロベリアとイムニティがシグナムとヴィータかな。

フィーア「でミュリエルがはやてで、恭也がクロノ?」

そんな感じだね、まぁ予想ではだけど。

フィーア「結局この後どうなるわけ?」

一応考えはあるんだ、また書くかもしれないけど……一応は前編・中編・後編の3部構成の予定だったから。

フィーア「なら元から足して書けばよかったのに」

いやね、そうすると凄く長くなって自分でも文章がおかしくなりそうだったからねぇ。

フィーア「まぁいいわ、どうせ書かせるし」

やっぱりね……

フィーア「クスクス、当然よ」

まぁ頑張ります。

フィーア「そうしなさい、ではでは〜〜〜」





ほうほうほう〜。
美姫 「うーん、面白かったわ」
うんうん。この後、旧メサイアパーティによる戦いがあるんだろうな。
美姫 「戦場とはいえ、昔のような雰囲気に一時でも戻れて、ルビナスも嬉しいでしょうね」
いやー、本当に面白かった。
美姫 「それじゃあ、今回はこの辺で」
ではでは。



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