それは、いつもの朝の風景。
貴明と雄二とこのみと環と雫の5人で登校している時である。
「ホゥ、環……綺麗ニシタワネ」
「うん、キラキラしててすっごく綺麗だよタマお姉ちゃん!」
雫とこのみが環を見てそういう。
「そう? ありがと、ふたりとも」
そんな2人に、環も嬉しそうに言い返す。
「雄二、タマ姉どうかしたのか?」
「んぁ? さぁなぁ」
そんな3人の会話を聞いて、貴明が雄二に尋ねるが雄二も首をかしげる。
「ハァ、全クウチノ男共ハ……」
それを見た雫が、呆れたと言う風に溜息をつく。
「タカくんってば、見て分からないの?」
「……え、なにが?」
このみの言葉にも、貴明は首を傾げる。
「もぅ、あのね」
「「このみ」」
何か言おうとするこのみに、環と雫は自分の口に人差し指を当てる。
そして環はウインクして、雫は苦笑する。
「あ、うん」
意図が分かったこのみは、先ほどの続きを言うのを止める。
「じゃ、タカ坊に質問です。 私は昨日、ある所に行ってきました。 どこへ行ってきたと思う?」
環は髪を手でなびかせながら尋ねる。
「当ててみて」
期待を込めて環は貴明に言うのだが……
「……さぁ?」
考えるまでもなく、貴明はそう答えた。
「……」
「ハァ……」
環の眉が一瞬動き、雫が小さく溜息をついた。
「そうね……ちょっとだけヒントをあげる」
「いや、別に知りたいわけじゃ……」
「黙ッテ、聞ケバイイノヨ」
環の言葉に反論をしようとする貴明に、雫は貴明のおでこにでこぴんを喰らわせる。
「ってぇ……」
「そこは、女にとって命の次に大事なものを扱う所です。 そういえば分かるかしら?」
環は苦笑しつつ、再び片手で髪を軽くなびかせて尋ねる。
「……銀行?」
「どうして銀行になるのかしら?」
「いや、女が命の次にって言うから」
貴明の答えに呆れたのか、環は小さく溜息をついて、雫は盛大に溜息をついて、このみは苦笑いを浮かべた。
「バカだな。 最初にこのみと雫がキラキラして綺麗って言っただろ。 んで、命の次に大事なもの。 となったら、宝石店に決まってるだろ」
「あっ、なるほど」
得意満々に言う雄二と、素直にそれに同意する貴明。
「あ〜……」
このみが、一種哀れみにも似た眼差しを2人に向ける。
「コノ阿呆共」
雫もこめかみを押さえて、2人に対して言った。
「2人とも、ちょっとそこに直りなさい」
その環の声に、2人も間違っている事を悟ったのだろう。
素直に、そこに直った。
そして……怒られた。
それは、偶々校門で見た景色。
貴明が下駄箱から出てくると、そこには見知った顔ぶれがあった。
「私ハ、鵬 雫よ……るー」
「るー☆」
「るー」
雫と珊瑚とるーこ。
3人揃って両手をばんざいのようにあげて宇宙人的挨拶をする。
「なんで、噛み合ってるんだろうな」
その光景に、貴明は一人溜息をつき、イルファと瑠璃の方へと歩いていった。。
「まぁまぁ、貴明さんも悩んでも仕方のないことですよ?」
そんな貴明に、苦笑しながらメイドロボのイルファが言う。
「そやなぁ、さんちゃんもなんや嬉しそうやし」
その隣では珊瑚の双子の妹、瑠璃も同じように笑っていた。
「るー、るるー、るーるーるー」
「るー? るーるー、るー」
「るー、るーるー」
微妙にアクセントが違うのだが、どう聞いてもるーとしか言っていない。
「なんやぁ、貴明も混ざりたいんか?」
小さく溜息をついていた貴明を見て、珊瑚が尋ねる。
「そうなのか、うー?」
同じように、るーこが貴明に尋ねる。
「いや……まぁ、何話してるかは興味あるけど……」
「トイウカ、女ノスリーサイズノ話、聞キタイノ?」
雫が先ほど話していた内容に貴明に言う。
「ばっ、いいいいい、いいってば!」
顔を真っ赤にして、貴明はあとづさる。
「なんやぁ、貴明ウチのスリーサイズやったらもう知ってるでぇ。 ついでに、瑠璃ちゃんのもや」
「あっ、あの……私のも、知っております……」
「確か、るーのスリーサイズも知っているぞ、うーは」
珊瑚の言葉の後、イルファも顔を赤らめながら言い、るーこも無表情ながら言う。
「ホホゥ、良イ身分ネェ貴明」
ビビリながら貴明が雫の方を見ると、顔に青筋が一つ……
「貴明のすけべーっ!!」
「ぶべらぁっ!!!」
雫の強烈な一撃と、瑠璃の強烈な蹴りが、貴明に見事に決まった……
「うー、お前の配慮の欠如が原因だ」
薄れ行く意識の中で……貴明はそんなるーこの言葉を聞いていた。
「うむ、私の事はまーりゃん先輩と呼ぶがいい」
「独裁者先輩ト呼バセテモラウワ」
それは生徒会室での出来事。
前生徒会長のまーりゃん先輩と、現生徒会長のささら、そして何故か副会長職についている雫。
そんな3人の、のどかな一コマ。
「おおぅ、それは中々酷い名前だよぅ」
笑いながら、まーりゃん先輩は雫に言う。
「ダッテ、ささらダケジャ飽キ足ラズ、私ニマデしーりゃんナンテツケルカラ」
優雅に、笑いながら雫は言い返す。
「くぅぅぅ、なんでしーりゃんもたかりゃんも、気に入ってくれないかなー」
「先輩……さすがに、私もしーりゃんはどうかと……」
まーりゃん先輩に、ささらが控えめに言う。
「さーりゃんまでそんなっ!」
よよよよよ、と泣き崩れるまーりゃん先輩。
「独裁者先輩、泣キ真似ハ上手イケド、騙セテナイワヨ?」
苦笑しつつ、雫は言う。
ささらも、小さく微笑を浮かべていた。
「ぶー、その名前やめようよぅ」
バシバシと、雫の背中を叩きながらまーりゃん先輩は言う。
「ジャア、留年先輩?」
「もう卒業できてるよっ!」
雫の言葉に、まーりゃん先輩はキーッ、とハンカチを噛みながら言う。
「芸ガ細カイワネ、ツルペタ先輩」
「身体的特長で精神攻撃かっ!?」
もはやどっちがからかっているのかも分からない言い合い。
だけど、どっちも笑ってるから、ささらは止めなかった。
逆に、心地よいこの空気が、とても好きになっていた。
大好きな先輩と、こんな自分でも大好きだと憚らずに言ってくれる友達。
それが、ささらには嬉しかった。
「はいはい、まーりゃん先輩ね」
「うん、判ればいいんだよ」
やっとまーりゃん先輩と呼ばれて、まーりゃん先輩は満足げに頷く。
「全くぅ、しーりゃんは照れ屋だなぁ」
「照レテナイワヨ」
雫の首元に抱きつき、そう言うまーりゃん先輩に向かって、雫もしれっと言い返す。
「さーりゃん、カモン」
そんなまーりゃん先輩に呼ばれて、ささらはまーりゃん先輩の横に来る。
「えいや」
そして、まーりゃん先輩は雫とささらを両方の手で抱き寄せる。
「ちょっと、まーりゃん先輩?」
突然の行為に、ささらは驚きながら尋ねる。
「うん、さーりゃんもしーりゃんも、良い抱き心地だねぇ」
そう言って、まーりゃん先輩はあからさまに二人の胸を触る。
「きゃっ、まーりゃん先輩っ!!」
驚いて、ささらはまーりゃん先輩から離れる。
「いやぁ、やっぱりさーりゃんの胸の触り心地は良いですなぁ」
そう言って、まーりゃん先輩が再び雫の胸を触ろうとしたとき。
「アウチっ!」
雫のでこぴんが、まーりゃん先輩のおでこにヒットする。
「女同士デ乳繰リ合ウノハ趣味ジャナイワ」
笑いながら、雫は言ってまーりゃん先輩の手を離す。
「うぅぅぅ、軽いジョークじゃんよー」
まーりゃん先輩も笑いながらおでこをさする。
それにつられるように、ささらも笑う。
春先の生徒会室、そこから笑い声が耐えることはなかった。
変わらない日常……変わってゆく平穏。
九条院から、西音寺女子校から。
二人の人物が帰ってきたことにより、物語は始まる。
九条院からは貴明やこのみの姉的存在、向坂 環が。
西音寺女子校からは皆の母的存在、鵬 雫が。
いつものメンバーは、懐かしいメンバーに。
そして、出会いによって増えていく……友情の輪。
悩みと苦しみの果てにある笑顔を信じて。
TRIANGLE To Heart XRATED
いつか遠くない未来に連載開始!
今回はToHeart2だったね〜。
美姫 「一体、片言娘は何処まで行くのかしら」
まさに神出鬼没。何処に行くのかは分からない。
美姫 「次は一体、どこの世界へ」
それは次回のお楽しみだろうな、うん」
美姫 「それじゃあ、またね〜」
ではでは。