『紅き翼と漆黒の剣士』




  第6話 〜早い再開〜




 ここは三年菊組、教室内はざわついていた。まぁざわついていると言ってもお嬢様学校である。教室からは「・・・・・・・・・・ですわ」や、「ごきげんよう」と言った普通の家庭で過ごしていれば恐らく聞くことはないであろう言葉達が飛び交っている。
 だが、担任の教師が入ってくるとすぐに静寂に包まれる、そこら辺は流石である。

「さて、皆さんごきげんよう。いきなりですが、今回我がリリアン女学園に視察としてやってこられた生徒をご紹介します。これからしばらくの間皆さんと共に勉学に励む仲間になりますので、仲良くしてあげて下さいね。」

そう言い、教師は廊下の方に手招きをしていた。

その生徒、紅 蓮が教室に入った瞬間、先ほどまでとは比べモノにならないくらいの静寂に包まれた。

「今回、視察としてここでお世話になることになった紅 蓮と言います。宜しくお願いします」

と、軽く会釈をする蓮。

それから一瞬の間があって

「あの人カッコ良くない?」、「素敵・・・・・・・」、「・・・・・・・・・・・・ぽっ(赤面)」

と、教室の各地で夢の世界へ旅立っていく人が続出した。

(確かこのクラスにも一人いたはず・・・・・・・)

そうつぶやいて視線をクラス中に巡らせていたが、一人の女生徒と目があった。

(「・・・・・ん?今私と目があったような・・・・・・・・?にしても面白いことになったわね)

「さて、紅さんあなたは・・・・・・・・・そうですね鳥居さんの隣に座っていただけますか?あのはじっこの女性徒の隣です」

そう、教師に言われ江利子の隣で座ることになる蓮。

「よろしくね、紅さん私、鳥居江利子」

「はい、こちらこそよろしく。紅です」

そんな感じで互いに自己紹介をしているうちに一時間目の授業が始まった。


〜数時間後〜

(ふぅ、流石に休み時間になるたび女生徒に囲まれるとは思わなかった・・・・・・・やっぱり珍しいんだろうな)

ちなみに現在は昼食時間で今蓮が居るのは中庭にある木の下である。

(鳥居さんには感謝しないとな。)

実は昼食時間になり、外に出ようとした蓮に、休み時間と同じように女性徒が話しかけてきたのだ。

「蓮様、ご一緒にランチでもいかがでしょう?」
「私たちともご一緒して欲しいですわ」

と、こんな感じの会話内容だったんだが、

「まぁ、皆さん、紅さんが困ってるではないですか。初登校で少し疲れているでしょうし、今は1人で休ませてあげた方がよろしいと思いますよ?」

という江利子の助け船によって何とか教室から出ることが出来たのである。

(さて、昼飯食べて午後にそなえますか・・・・・・・・・)

そうつぶやいて弁当を食べようとすると

「にゃ〜」

茂みの中から1匹の猫が出てきて、蓮の近くに寄ってきたのである

「ん?猫か・・・・・・まぁ1人で食べるのもあれだし、お前も食べるか?」

と、弁当の中から魚のフライを出すと近くに寄ってきた猫に差し出してみた。

「お、食うか。まぁまだあるし気にしないで食べてな」

初めはおずおずと言った様子で近付いてくる猫だったが、蓮を怖くないと思ったのか

1口貰うとそのまま傍で丸まりながら魚をかじっていた。

「割となつっこいんだなお前。さて俺も食べるか」

自分も弁当を食べながら少しずつ、隣にいる猫にも分けてあげるとすぐに弁当はなくなった。

「うん、完食。にしても眠いな。幸い木漏れ日にいるし軽くよこになっておくか」

蓮はそうつぶやいて、少し足を伸ばし木にもたれかかるようにして目を閉じた。

傍でもくもくと食べていた猫も蓮が眠るのを見て、何を思ったのかその膝に乗り自らも丸くなる

「ん?お前も一緒に寝るか?すっかり懐かれてしまったな」

こうして、1人と1匹は眠りについた。



 その昼食時間、薔薇の館に行こうとしてふと中庭で誰かの身体の上で丸くなっているゴロンタを見つけ、珍しい事もあるものだと思った。ただ、あの猫は自分にしかなついていなかったため、その一緒に寝ているであろう人物に興味が出て覗いてみることにした。

「ん〜、ゴロンタと一緒に寝てる人なんて初めてみるなぁ・・・・・・・・・・・ん?あれもしかして男の人じゃない?」

近付くにつれて後ろ姿から性別がわかり、少し不思議に思う。だがすぐに

「あ!、噂の転入生か。にしても初日からこんな所で寝てるなんてある意味大物ね」

と、いたずらを思いついた子供のような目をしてつぶやいた。

「ゴロンタもずいぶん無防備に寝てるわね〜可愛い。んで、その噂の転入生はと・・・・・・・・・」

と、蓮の顔をのぞき込むようにして見る聖

「・・・・・・・男の人にこんな事思うのもなんだけど・・・・・・・・・・この人の寝顔ちょっと可愛いかも」

聖の存在に気がついたのかゴロンタがふと顔をあげ聖を見上げている

「ん?起こしちゃったか、ごめんねゴロンタ。」

と、聖がつぶやくとゴロンタが足下に来てすり寄ってきた。

「お、私にも甘えるの?もう、可愛い奴だなぁ」

と、ゴロンタが膝から降りたのに気付いたのか男の方が目を開けた。

「ん〜、もう起きたのか?猫」

「にゃ〜」

「・・・・・・・・・・・・」

その言葉を聞き返事をする猫ゴロンタ。それとは逆にその声と起き出した顔を見て言葉を無くす聖

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「どうかしましたか?」

少し、不思議に思い蓮はそう尋ねた・・・・・

所で両方とも気付いた、というより思い出した

「「あ!」」

ハモりながら声をあげる2人、それにびっくりするゴロンタ

「あの時助けてくれた人・・・・・・・だよね?」

「あぁ、あれは助けたと言うほどのものでもないですよ・・・・・・・」

「良かった、また逢えて。前は名前聞くの忘れてちょっと後悔してたの。」

「ん?名前なんて聞いて何をするんです?」

そう蓮に聞かれると少しバツが悪そうにする聖だが

「助けてもらったお礼がしたかったの・・・・・・・・」

「・・・・・・・・そうでしたか。でも気にする必要無いですよ。前も言いましたが俺が勝手にやっただけですから」

そう言って、首を横に振る蓮だが

「じゃぁ、あたしも勝手にお礼をさせてもらうわ。だから名前教えて?」

少し、面食らって黙っていた蓮だが、彼女の言葉に観念し

「蓮です。紅 蓮と言います。」

と、簡単な自己紹介をした。

それを聞き、聖も微笑みながら

「一応、前にも言ったけど改めまして、私は佐藤聖。この学園の3年生で今は”白薔薇様”なんて呼ばれているわ」

「”白薔薇様”・・・・・・・・」

その言葉を聞き蓮は一瞬言葉をなくしてしまったが、あまりに一瞬なため聖には気付かれなかった

「ところでここにいるって事は噂の転入生の正体って蓮君の事だよね?」

「噂になっているかどうかは知りませんが一応、視察という形でここに来ています」

と、ここでふと疑問に思った蓮はその疑問をぶつけてみることにした。

「ところで佐藤さん?その蓮君というのは?・・・・・・・・・」

「あぁ、ここではみんな人のことを名前で呼ぶの。名字で呼ぶ事なんてほとんどないから、もう習慣になってるのよ。だから蓮君。ちなみに私のことも聖って呼んでね、佐藤ってありふれた名前だしね」

少し考えたような顔をしたが

「いきなり女性を下の名前で呼ぶというのは慣れないのですが、まぁ善処します聖さん」

その言葉を聞いて満足したのか

「よろしい!」

と、そう言って今まで忘れていたゴロンタの存在を思い出しなでてあげている。

「そういえば、その猫人なつっこいですね。さっきも俺から弁当食べてたし、昼寝しようとしたら乗っかってきたし」

それを聞いて聖は改めて驚いた

「え?ご飯まで食べたの?こいつ、とりあえず3年生の間ではゴロンタって言われてるんだけど、私にしかなつかないんだよ。それで君の膝の上で丸くなってるのを見てめずらしくって様子を見に来たら蓮君だったと言うわけ。」

「そうだったんですか。てっきり人なつっこい奴だとばかり思ってました。」

そうしてゴロンタとじゃれている聖を見ていたが、しばらくして

「そう、蓮君今暇よね?」

と、そう尋ねてきた

「えぇ、昼寝してるぐらいですから暇と言えば暇ですね」

「今から私、薔薇の館に行くつもりなんだけど一緒に行かない?みんなに紹介しなくちゃ」

「・・・・・・・みんなって?」

もしかしてクラスの友達かな?と考えたが

「いんや、山百合会って言って私もそうだけど他の薔薇の子達もいるんだ。そのみんな」

(山百合会・・・・・・・他の薔薇達・・・・・・・・・・まぁいいか手間が省けたか・・・・・・)

「わかりました。ご一緒させていただきます。」

そうして、2人はゴロンタにじゃぁねと言い、薔薇の館に向かうのだった。



聖との再会〜。
美姫 「会話の内容からすると、次回は山百合会たちとの対面かしら」
多分な。さて、一体どんな出来事が待っているのやら。
美姫 「次回も楽しみに待ってますね」
待ってます。



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