『乃木坂春香と高町恭也の秘密』










第一話 その1



















 この日、いつもの用に家を出て、いつものように授業を寝て過ごし(半分くらいは起きてるぞ)
 そして、放課後、寝続けたために、少し皆と遅れて放課後を迎えてしまっていた
 誰も起こしてくれないんだなぁと密かに想ったのだが……

「そういえば、借りていた本を返さないといけないんだったな」

 昼に美由希が渡してきた本だ
 何でも、借りたは良いが、返す日までに読めたものの、今日返す日らしい
 しかし、俺を顎で使うとは良い度胸をしている
 といっても、その代わりといっては何だが、少しだけこちらも頼み事をしたのだが

「むっ」

 図書室に入って、まず目についたのは怪しい人……というより、凄い怪しい
 カバンで顔を隠して、本棚から本棚へと隠れている
 女子生徒であるのは分かるが……怪しすぎて目立たないか?
 本を返す籠のところに入れる
 頼まれたことはこれで終わりと……たまには俺も何か読もうか
 怪しい人は居るが、単に本をかり
 …………ふむ、確か、あの人は乃木坂さんだったかな
 たまたま起きていた始業式で何かの発表会の金賞だかなんだかを取ったとかで居たような気がする
 とりあえず、返す手続きをしておかないと、後で美由希が呼ばれる事になるな
 隣には乃木坂さん……なんで此処で何を借りてるんだか……
 見えた本は光りの加減で見えなかった
 そして、お互いに目があった
 そりゃあ、確かに顔を上げたら俺が居るわけだから、目も合うよな

「……」
「……」

 たっぷり十数秒の余白……思考が纏まらないのだろう

「み、見ましたか?」
「いや……」
「そ、そうですか……ほっ」

 安堵の表情を浮べる乃木坂さん
 どうかしたのだろうか?

「あの?」
「あ、い、いえ大したことじゃないんです
 どうか気にしないで下さい。 えっと、高町先輩ですよね?
 そ、それじゃあ私はこれで」

 優雅に挨拶とお辞儀をすると、歩いていく
 俺はその時、彼女が前に目が行ってないことに気づいた

「あ、乃木坂さん、そっちは……」
「え!?」

 椅子にぶつかっていた……俺は瞬時に駆け出して、彼女の体を支えていた
 片腕で……しかし、カバンは落ちて、中身が散らばっていた

「え、え?」

 不思議そうに体と周りを見ている
 そして、自分の体のおなかあたりにある腕を見る

「す、すみません」

 慌てて起き上がる

「いや、怪我は無いか?」
「はい、大丈夫です」

 俺は彼女を下ろし、カバンの荷物を集めていく

「だ、駄目です!!」

 それを誰が言ったのか一瞬分からなかったが、再びノートや教科書、雑誌を集める

「だ、だから駄目ですってば!!」

 必死の形相でパタパタと手足を動かし、割り込むように俺の足元にある雑誌へと手を伸ばす

「え? え、え、えええ!!」

 乃木坂さんが踏んだものは、本人のノートで……図書館の床との摩擦が減った結果だった
 彼女の体が本棚へと飛ぶ……俺は本とかを放り投げるようにとは行かないものの足元に置いて
 彼女と本棚の間に挟まる

「くっ」
「きゃあぁぁぁぁぁ!!」

 先ほどのより遙に酷い状態になってしまった……本棚はドミノ倒しの要領で遠慮なく倒れ
 そして、沈黙……

「大丈夫か?」

 声をかけながら、荷物を集めるのをする
 彼女は床に座って確認してもらう
 図書室の惨状は、見ないことにした……俺のせいじゃないと考えよう、そうしよう
 そして、俺はそのまま教科書とノートを集め、そして、最後に見てしまった
 彼女が何で絶叫を上げ、だめと言った物の理由が

「う……うっ……ぐす……見られた。見られちゃいました」

 乃木坂さんは泣いていた……これを見られたくなかったのか……
 泣いてる乃木坂さん

「もう、オシマイです……ぐす……」

 ギャラリーが増えている上に……この状況でオシマイといわれると、俺も同じ気がする
 周囲がこちらを見ている……俺は本とか教科書を全て彼女のカバンに丁寧に入れる

「怪我無いか?」
「え?」
「先ほど聞いたが、怪我無いのか? 足を捻ったとか、ぶつけたとか」

 小さな声で彼女だけに聞えるように言う
 逃げる口実を得られたらいいのだが、彼女にそんなことを言う事は無い

「いえ」

 手を差し出して立ってもらう
 カバンを持つ

「それじゃあ、ちょっと違う場所に移動しよう」
「え?」
「目立ちすぎていて、気になるから」
「あ、はい」

 手を取り合い、走る
 というか、彼女足遅いんじゃないか?

「すみません、失礼します」

 こちらの方が速そうだ
 カバンを持ってもらい、そのまま彼女の膝裏に腕を入れて、背中に手を入れる

「え、え、え?」

 混乱の顔……なんとなしに見えてきた

「すみません、足をくじいてもたれかかった本棚が倒れてしまったんです
 先に彼女を運びたいので、そのまま通してください」

 そう言って、俺はスタスタと曲がり角まで曲がり、走って上にあがる
 怪我ないのに保健室連れて行っても意味がないからだ

「あの、何処に?」
「しっ」

 静かにしててもらうのがベストだ
 屋上まで走り、俺はそのまま彼女を下ろす

「あ、あの」

 ベンチに座り、俺を見上げる

「高町先輩ですよね?」
「ああ、そうだが……乃木坂さんだよな? 何で俺の名前を?」
「えっと、有名だからです」
「そうか」

 いまいち意味が分からないが、納得しておこう

「乃木坂さんはこういうのが好きなんだな」

 驚いたように固まる乃木坂さん
 何となくおしまいといった理由は分かる

「今日見たことは、忘れるように努力するから」

 彼女は固まったまま、こちらを見ている
 大丈夫なんだろうか? そんなことを心配してしまう
 上手にキャッチはしたつもりだが、如何だろう? 頭をぶつけていたとか?

「あの……高町先輩は、私のこと馬鹿にしないんですか?
 変な目で見ないんですか?」

 不思議そうに見て言う

「変な目? 何でだ?」
「だって……その、あの、こういう趣味に対して、大抵の人は否定的な感情を向けるものです
 だから……」

 何か嫌な思い出があるのだろう、辛そうに言う乃木坂さん
 否定的と言われても、俺は良く分からないが……

「そういった趣味を持っていても、変な人は変な人だし、いい人はいい人だと想うのだが
 それに、趣味だけでその人を見るわけじゃないから」
「で、でも……」

 納得がいってないようだ

「ふむ……乃木坂さんは乃木坂さんだろう……どんな趣味を持ってようとも」
「私は……私?」

 呟いた彼女に俺は言った

「結局のところ、趣味はその人の心における一つのおまけみたいなものだと俺は考えてる
 大切なのはもっと根幹部分だとも……個性の一つに俺は何か言うってこともないから
 それに……」
「……それに?」
「上手く言えないが乃木坂さんにそう言う一面があると分かって、少しだけほっとしたというか」
「え……」
「乃木坂さんが、ちょっと近くに感じて嬉しかったから」

 乃木坂さんの顔が真っ赤になる
 自分の正直な気持ちだが、恥かしさもある
 それに、能天気に言いすぎたかもしれない

「そんなことを言ってくれた人は……初めてです」

 どこかこういうことを話せる場所も無かったのだろう……だから、初めてなのかもしれない
 乃木坂か……覚えてる限りで言えば、一度だけ行った事があるくらいか……

「ま、そういうことだから、気にしなくていい」

 俺はカバンを渡す
 自分のカバンもチェックする……間違って混じっていたら問題だからだ

「……」

 乃木坂さんは固まったまんま……
 カバンを手に握ってもらい、そのまま走っていく
 昇降口まで来て、思い返す……う〜む、これ以上関わることは無いだろうが
 ちょっと嫌な予感がする










 つづく











 あとがき
 というわけで、これが始まりの第一話
 シオン「恭也と春香ちゃんとの出会い」
 強烈な出会いだな
 ゆうひ「でも、恭也大活躍だね」
 神速連発したけど
 シオン「そっか、助けるために」
 そう言う事
 ゆうひ「でも、話があまり変わってないと想うのは気のせい?」
 気のせいじゃないぞ、変えないように努力してるんだから
 シオン「まぁ、そうだけど」
 でも、恭也は淡白な反応だなぁ……女性の甘い匂いと柔らかな体で落ちないとは
 ゆうひ「というより、そんなことが気にならなかったんじゃない?」
 かもね……人助けに老若男女問わずな恭也だし……犬猫も変わらないだろう
 シオン「多分ね……さて、この後どうなる!!」
 どうなるんだろう? 話が続くかなぁって所だ
 ゆうひ「ま、続けてみたら、かけるなら……」
 ちょくちょく考えて書いていくよ
 シオン「そうしなさいな……さ、お仕置きいくよ、この前不思議な子に頼んで」
 あ、あれは
 ゆうひ「でわ、これより、遊び人を倒してきます……またね〜」
 いや、倒すって、それは倒すじゃなくて、ローラーでひきつっぶっ!!



変な趣味と言えば、恭也の盆栽も良い勝負だよな。
美姫 「確かにね。高校生で盆栽は珍しいわね」
まあ、恭也と春香の初見はこんな感じだったと。
美姫 「さてさて、次回はどんなお話かしらね」
次回も楽しみにしております。
美姫 「それじゃあ、まったね〜」



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