『乃木坂春香と高町恭也の秘密』










第二話 その1













 あの時のことを思い出していた……彼女の姿を見たのは小さな頃に一度
 そして、大きくなり、高校生になってから一度
 その前にも何度か会ってると思われる……

「はぁ〜」

 思い出さないで欲しい……いや、彼女が思い出すという事は
 彼女の辛い想い出も思い出してしまうことになる
 それだけは、ちょっと嫌だな
 彼女の笑顔が曇らぬよう……そう、願っている
 GWを近くに俺は学校帰り
 ため息も漏れると言うものだ
 あの時のことを、あの場を思い出し、そして、あの時、俺は彼女を意識していた
 身分違いもはなはだしい
 そんなことを考えていた幼少の頃……今ではそんなこと気にするなというのが良くわかる
 家について、ちょっと道場で瞑想をする
 図書室の怪談のことが終わり、それ以降、たまに会えば話すくらいはしている
 乃木坂さんの絵を見せてもらったりした
 まぁ、上手い下手で言えば下手……でも、それはそれで楽しくもあったりする
 俺に絵の才能は無いから
 一生懸命に可愛く描こうとしてるのが分かるから
 彼女なりに一生懸命なのだろう
 しかし、それでも、俺は彼女の笑顔を忘れていなかった
 思い出したのは、彼女が『春香』と呼んで欲しいと言われたとき
 その前から徐々にだけど思い出していた
 彼女は覚えてないだろう事……そして、思い出せないで居るだろう事
 乃木坂春香と俺の何度目かの邂逅だった

「恭也さん、おはようございます」

 そんな声やら

「恭也さん、こんにちわ」

 とか

「恭也さん、一緒に帰りませんか?」

 と、純粋な目で見られながら言われたら、断るのやら何やらが大変なのだ
 とりあえず、分かれ道が近いことが唯一の救いとも取れる所
 しかし、俺の学園生活、大人しく平和に過ごそうは、春香の出現によりいらない方向へと変わった
 というか、学園内部の実情は、俺に平穏は無い
 教師ですら、春香と話していたら睨みつけるほどだ
 俺、もう此処を出たいです……というか、ティオレさんに雇ってもらうとか?
 いやいや、そうなったら、エリスか……それも良いかもしれない
 しかし、春香は俺と関わるのを喜んでる所が見られるし……
 俺の平穏な生活は、春香の出現により闇へと葬られ、いまやデンジャラスゾーン突入だ
 なんせ、乃木坂春香は超が付くお嬢様
 天然だけど、それを超えるほどの才色兼備、容姿端麗、文武両道という、まさに絵から出てきたような人
 はっきりといえば、俺は逃げたいのだ……というより、逃亡して良いですか?
 いやいや、今の高校を卒業くらいは……
 って、何で春香のことを考えてる、俺!
 確りしろ、今日は折角何事も無く、瞑想をと思っているのに……
 ダメだ……俺、もしかして、剣士としてダメかもしれません
 父さん、静馬さん、一臣さん、琴絵さん、美沙斗さん、美影さん……俺、いい剣士になれないかもしれません
 神棚を見て、そんな事を考え、否定する
 すでに剣士として終ってる俺が、何を言うのだか……全くやれやれだ

「恭ちゃん」
「ああ、美由希か、どうした?」
「いや、何でもないけど……どうしたの? 珍しい」
「まぁ、ちょっとな」

 瞑想をしてることは珍しくないのだが、美由希が珍しいといったのは
 瞑想してるはずなのに、瞑想できてないところがって言ったところだろう
 美由希も瞑想くらいは出来るはずだし、そう言う意味では、まぁ、強くなったものだ
 立ち上がり、美由希に木刀の小太刀を渡す

「ちょっと付き合え」
「え〜〜〜、私、これから読みたい本があるのに〜〜〜」
「何、安心しろ……手加減は出来ると思う」
「恭ちゃん、もしかして、何かあったの?」
「気にするな……単なる憂さ晴らしだ」
「いや、それ、違う言葉で言うなら八つ当たり」
「俺は優しいからな、行くぞ」

 小太刀と小太刀が合わさり、音が鳴る
 ん、若干小太刀が軽く感じられる……何かあったのだろうか?
 もしや、腕の力が上がったとか……
 美由希がなにやら叫んでるような気がしないでもないが、気のせいだろう
 と、貫を使い、美由希の防御を掻い潜り、一撃が頭に入った

「はぅっ」

 そのまま意識が無くなった……あれ?

「こら、美由希、何を寝ぼけてる!! というか、倒れたふりなんかするな!! 起きろ!!」

 声をかけても無反応……ふむ

「屍か?」
「……」

 寸止めし忘れて、結構当たったけど、たんこぶになってるな
 ということは……思いっきり攻撃が当たったのだろう

「お兄ちゃん、どうしたの? さっき声が聞えたけど」
「なのはか……美由希とちょっと鍛錬してたら、間違って美由希が頭から木刀に突っ込んだんだ」
「あ、そうなんだ〜、ってお姉ちゃん大丈夫!?」
「大丈夫だろう、多分……ほら、こっちは俺が連れて行くから」

 美由希の手から落ちた木刀を拾って、少し汗が流れた
 もしかしなくても、俺、結構大変なことしたかも……練習用の小太刀なんだが
 木刀で鉄心入りは数本ある
 俺も先ほど使っていたのはそれなんだが、美由希の方が重たい
 もしかしなくても俺のせいだな
 許せ、美由希……俺も我が身が可愛いのだ

「お兄ちゃん?」
「気にしなくて大丈夫だ……軽い脳震盪だろう」
「そっか……でも、お姉ちゃん、なんで突っ込んだんだろう」
「滑ったか何かだろう……色々試してみたいって言ってたから」
「そうなんだ」

 そんなことを話しながら美由希を背負い投げの要領でベットに横にし
 俺となのはは大人しくリビングへと移動

「なのは、何かすることってあるか?」
「ん〜、今日は宿題も出てないし」
「じゃあ、レンや晶は?」
「お買い物だって……なのはもついて行こうかなぁって思ったのだけど……
 ついでだから、DVDの整理してようって」
「整理?」
「うん、ほら、前撮った奴を少しね」
「ああ、誕生会の写真とかをか?」
「うん」

 そういって、なのははテレビをつけて、DVDとやらを操作し、色々としていく
 さすが、我が家の機械を把握する子だ……
 俺も隣で見ながらなのはの手つきなどをチェックしていく
 ラベルを貼ったり、確りとしてるものだ
 ある程度覚えていくと便利かもしれない
 父さんも機械は強かったからな……なのはにその辺りは遺伝したんだろう
 俺には一切そんなものが遺伝されなかったけど

「あ〜、レンちゃんと晶ちゃんがもう少し仲良かったら」
「そうだな」

 そんなことを話しながら、写真を見ていく
 俺が写っているのも数枚ある……しかし、俺が写ってるというのも不思議な話だ
 あまり写真とか好きじゃないからかな

「なのは、この写真消しておいてくれないか?」
「え、これ? うん……でも、何で?」
「ほら、これ、俺だけしか写ってないから……俺よりも違う人が写ってるほうが良いだろう?」
「違うよ、これ、なのはが、お守りみたいな感じで撮った奴だよ
 も〜、お兄ちゃん、もう少し女心ってのを覚えた方が良いよ」

 俺、一番下の妹にまで乙女心云々を言われた?
 赤星あたりが聞いたら、笑い飛ばしてくれるだろうけど、それはそれで恥かしい気が
 なのはと2人で写真をプリントアウトしたりして、時間が過ぎていった
 しかし、かあさん、こういうのだけはちゃんと買っておくんだな
 父さんと似てるか……まぁ、でも、毎回没収されてたけど
 静馬さんたちからお金を借りてるからだからだけど
 今までの借金の方にこれを貰うみたいな……大変だなぁ






 そして、なのはとの作業も終わり、夕飯になった
 レンと晶も帰ってきて、準備をしてくれた……かあさんも帰ってきて夕飯となった
 美由希はいまだお休み中
 美由希の今日の鍛錬は止めておいた
 木刀に突っ込んだという話は普通に皆信じてくれた……
 美由希、不憫な奴だ
 俺は夜の鍛錬に出ていた……神社まで走ってると、声が聞えた
 知っている人の声に似ている……でも、ほんの小さな動く気配
 何が起きてるんだ?
 そんなことを思いながらも騒がしいというより、暗い人が少ないところを走っていく

「!!」

 目の前では、女性を取り押さえて車に連れ込もうとする男
 周りに似た男が2人ほど倒れている……如何いうことだ?
 どっちが強いのか弱いのか分からん
 ただ、連れて行かれるのを見ているほど、俺も優しくない
 相手の背後に立ち、背中を強打
 車のタイヤをパンクさせる

「なっ!!」
「おそいっ!」

 銃口が向けられたが、瞬時に飛針で相手の手へと投げた
 刺さり、そのまま拳銃を落とす
 そのまま相手に変形背負い投げ

「ぐえっ」

 声が漏れて、そのまま意識を失ったようだ
 そして、他の奴らもこれで終了か……しかし、この人、会った事があるような…………
 口のテープを外し、手足のロープを外す
 月明かりが丁度差す……

「「あっ」」

 目が合う……お互いに言葉を無くす
 というか、何で此処にいるのですか?
 同じ想いかもしれないけど

「えっと」

 飛針を回収して、そのまま立ち去ればよかった……って、それだとヤバイし
 女性をそのまま放置ってのがかあさんにばれたら、かあさんが激怒するだろうし

「とりあえず、その落ち着いてますよね?」
「えっと、違う意味では落ち着いてません」

 そら、そうだよな……というか、落ち着けるか!!
 俺だって困ってる

「うっ」

 起きようとした奴の頭を揺さぶった
 というより、思いっきり蹴った

「ふぅ」
「あの、そこまでしなくても」
「逃げられたら困るから……とりあえず、えっと、警察関係者に連絡しますので
 事情を説明しますから」
「あの、さっきの……拳銃を向けられても落ち着いてましたし」
「あ、あれは……」
「それに、さきほどの動き……私、あれ、見たことが」

 あるだろうなぁ……

「とりあえず、春香は俺と知り合いじゃ無いって事で頼めないか?」
「お断りします……何より、お父様やお母様がそれで乃木坂の娘ですかって怒るに決ってます」
「いや、俺は単なる人助けが趣味な」
「嘘です」

 即答……春香、頼むしそこまで突っ込まないでくれ
 リスティさんが歩きながらこちらに来た

「お見事だね、恭也」
「リスティさん、後頼みます……俺はこのまま」

 ぐいっと引張られる手
 えっと……

「んと、僕お邪魔?」
「いえ、この人にお礼とかしたいのに逃げようとするんです」
「それなら、今度翠屋で何か食べていってくれたら」

 それで勘弁してくれ……結構本気で

「そんなことで良いなら、幾らでも寄らせてもらいます
 あそこのシューや紅茶は美味しいですし
 でも、それとこれとは別問題ですから」
「いや、俺、ほら、あそこでバイトみたいな事してるし、だから」

 わたわたという感じだろう
 リスティさんが意外そうに見ている

「恭也もそういう表情するんだね〜、普段は無表情なのに……
 ほら、彼女もあまり恭也を苛めないでやってくれ
 あいつが鈍感なんだ」

 本人居る前で、正直に言いますか?
 春香は春香で考えてるし

「いえ、でも、私は何か本人にお礼しないと、誘拐は幾度かありましたけど
 お礼くらいは確りしたいですし……何より気になる事がありますから
 それに、私のお迎えもそろそろ」

 俺とリスティさんは車が止まった方向を見る
 そちらにはメイド服……メイド服を着て、チェーンソーを構えてる女性

「お嬢様、大丈夫ですか!?」

 それを持ちながら走ってくる
 一言で言うなら、ノエルさんに似てるけど
 チェーンソーが違う気が……

「私は大丈夫です……この人が助けてくれました」
「SPが全員倒されたとあって、すぐさま集められるだけ集めて来たのですけど」

 ああ、それで車が二台か……

「それでは、この人に用事があるというわけですね……それでは、参りましょう」
「恭也〜、こっちの連中は任せて、とりあえず行け
 私の所のお得意さんだし、悪いね〜、断れないわ」

 ……そっか、リスティさんが居る会社のお得意さんか〜
 納得……

「かあさんたちに連絡お願いします、今は翠屋に居ると思うので」
「そうさせてもらうよ……ま、何かあっても大丈夫だろうけど
 何かあったら連絡してやりな」
「ああ、分かった」

 そして、俺は乃木坂春香と共に車に乗ることになった
 リスティさんが手を振って、後で何か奢れよ〜って言ってる様だった








 つづく









 あとがき
 さてさて、第二話です
 シオン「恭也の秘密って、アレだよね?」
 うん、小太刀のこと……それに、他にも暗器のこともね
 ゆうひ「そっか……確かに武器として使っていたなら、春香も気づくと言う事だね」
 うん、だって、乃木坂春香は武術に置いても納めてるから
 シオン「薙刀とか色々ね」
 ま、それで最初3人係で襲ったのだけど、残り1人までかかったんだ
 ゆうひ「ああ、素手で2人を伸したけど、その後捕まったと」
 そう言う事……何があったかは書かなかったけどね
 シオン「でも、次回で恭也の秘密が明らかになるんだよね」
 そのつもり……難しい限りだ
 ゆうひ「ただ、これはその2当たりか、その3までだよね」
 うん
 シオン「両親は出てくるの?」
 報告は行くかもしれないけど、報告だけかな……まだ出番じゃないよ
 ゆうひ「との事です、またね〜」
 でわでわ、また〜(^^)ノシ




またしても可笑しな場面で出会う二人。
美姫 「それにより、今度は恭也の秘密がピンチ!?」
どうなる、どうする!?
美姫 「いったい、 どうなるのかしらね」



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