『乃木坂春香と高町恭也の秘密』





第四話 その3













 春香が注意したのだが、美夏の方が聞かなかった
 それに、春香も強く言えないみたいだ……春香も楽しいから強く言えないって所だろう

「美夏、恭也さんはお勉強をしにいらっしゃったのですから……」
「えー、いいじゃん、ちょっとくらい。おにーさんは私と遊ぶのー」
「もう……
 ごめんなさい、恭也さん。美夏が初対面の人にこんなに懐くのは珍しいんです。
 よろしければ、お相手をしていただければ……」

 そう言われてしまえば、仕方ないものもある

「分かった」

 それに、ずっと勉強というのも疲れるし、ゲームって何するか分からないから

「わーい、じゃあ次はトランプね」

 そういってトランプを取り出してる
 俺自身もカードゲームなどしてなかったし、人生ゲームなどもはじめてな部分もある
 一時的に葉月さんも加わっていたのだけど、仕事があるとの事ではなれた



 それからはずっと遊んでいたわけだけど、それでも三時間ほどだ
 夕方になり、俺は帰る事にした
 途中運ばれてきた御菓子や飲み物も飲み終わり食べ終えてる
 2人にとってもそろそろ夕飯の時間だろう

「夕食を食べていかれては如何ですか?」

 それはそれで嬉しい申し出なのだが、この時間の前に連絡しておかないと家の連中が困るだろう
 そう言う事で、やんわりとだが断った……言葉を選んでだが

「すまんな」
「いえ、それじゃあ、お昼に出した御茶、お持ちいたしましょうか?
 大分お気に入りだったみたいですし」
「良いのか?」
「お父様はあまり飲みませんし、飲むのお母様が殆どで多分大丈夫だと思います」

 秋穂さん……あの方なら分かる
 秋穂さんが俺に御茶の美味しいの教えてくれたし……

「次は分からないが、来る前に言っておけば大丈夫だろうから」
「それじゃあ、御土産包んできますね」

 そういってパタパタと駆け出していった
 ああ見てると春香もやはり年相応の女性なんだと思う
 普通の学生……『白銀の星屑』などではなく

「ね、おにーさん、ちょっとちょっと」

 そう言って近づいてくる美夏
 どうかしたのだろうか?

「おにーさん、この前のアキバ楽しかった?」

 やはり知っていたのか……会った時に色々複雑な表情を浮かべていたし
 何となくだが分かった

「お姉ちゃんと2人でデートしていたんでしょ? い〜な〜。
 ね、もう手は繋いだの? キスは?」

 そう言われて少し驚いてしまった
 いや、流石にそう聞かれておいそれと応えるのは難しいからだ

「手は繋いでない、キスもしてないな」

 それ以上の行為というか、抱っこは、したけど

「楽しかったといえば楽しかった」

 美夏は少し驚いたような表情をしたが、直ぐに真顔になる

「じゃあ、ついでにもう1つ訊いてもいいかな?」
「応えられる範囲なら幾らでも」

 そう言うと頷いて訊いてきた

「おにーさんは、お姉ちゃんの秘密を知ってるんだよね?」

 その言葉に頷いた……俺は知ってる
 ただ、逆に彼女も俺のことを知っている……俺がクラスメートや学園で秘密にしてることを
 そちらも注意深く観察はしてるが、そのあたりは大丈夫っぽいと思ったり思わなかったり
 まだまだ不安げな部分は残る

「そっか」

 美夏は頷いて、小さく「良かった」と言葉をつなげた
 といっても、俺には聞えてない……唇を読んだだけだ

「美夏はどうして、俺が春香の秘密を知ってると思ったんだ?」

 少し考えて

「お姉ちゃんの顔見たら分かるよ……それに何よりおにーさんと会ってるお姉ちゃん見て直ぐに分かった」
「俺と会ってるときの春香を見て?」
「うん」

 こくりと頷いて、俺の前に立っている
 少し見上げる形だ

「あんなに幸せそうな楽しそうな顔してるお姉ちゃん見るの、初めてだもん。あれは完全に心を許してる顔だった。
 あれはきっと全てを許した女の顔ね。これもきっと、おにーさんの前だと
 本当の自分を見せられるからなんだと思う」

 確かに素の春香は、先ほどの春香だろう……学園に居てる時なんかは、一歩引いたように見える
 俺の前ではそんな風に見せないが、実質どうなのか分からない

「きっとお姉ちゃんは、おにーさんのことを憎からず思ってるんだと思うよ。
 でもそれも何となくだけど分かる気がする。わたしから見ても、おにーさんっていい人っぽいし。
 これでもわたし、人を見る目には自信あるんだよ」

 姉妹そろって『いい人』といわれてしまった

「おにーさん」

 真剣な目

「お姉ちゃんを……どうか見放さないでやってください」
「見放すって」

 俺の方が見放されるだろう……きっと
 俺のある一面を知れば

「おにーさん、鋭いから分かるかもしれないけど、お姉ちゃん、あの趣味がバレたせいで
 昔に結構辛い思いをしてるの。見た目とか雰囲気がああだから、周りの人たちはみんな
 清楚で落ち着いた完璧なお嬢様みたいなものをイメージをお姉ちゃんに押し付けて、それが破られると
 勝手に幻滅して離れていくって感じで。本当はドジで抜けてて、
 ちょっと変わった趣味を持ってるだけの普通の女の子なのに」

 その言葉には頷ける……確かに、春香の趣味がバレたら辛いだろう
 勝手なイメージの押し付け……それは誰しもあるものだし、俺も遠くから見たらそんな感じに捉えていた
 だが、実際付き合ってみると完璧なお嬢様から程遠い
 忍も似たり寄ったりだし変わらないだろう

「お姉ちゃんには、お姉ちゃんのことを色眼鏡なしで見てくれる人が必要なんだと思う。ありのままの、
 自然体のお姉ちゃんを見てくれる人が。そして何となくだけど、おにーさんにならそれが出来ると思う」

 美夏は俺の目とあわせた

「勝手なこと言ってるのは分かってるけど……でも、どうかお姉ちゃんと仲良くしてあげてください。
 わたし、もうだれはに裏切られて泣いてるお姉ちゃんみたくないから……」

 ぺこりと頭を下げる
 本当に美夏は春香を大事に思ってるんだな……だからこそ、知っていても黙っている事もある
 美夏の頭に手をやり優しく言葉をつなげる

「……心配しなくても大丈夫だ。春香のことは大事な友達だと思ってるし……」
「え?」
「それに、見放されるなら俺の方かもしれないから……何より真剣に頼まれて断るほど俺は駄目な人じゃないつもりだ」
「あ」

 嬉しそうな顔をこちらに向ける

「おにーさん……うん、おにーさんはやっぱりわたしの見込んだとおりの人だ」

 そのままふわりと抱きついてくる
 こけることは無かったが、そのまま抱きしめる形になってしまった……髪の毛からふわりと良い匂いが届く
 女性特有の柔らかさも手伝ってる部分がある

「お待たせしました」

 ドアが開いた。春香が戻ってきたのだ

「御土産ばっちり準備できました……あら?」

 こちらを見ている春香

「春香」

 こちらを見ている眼と合う
 ごろにゃ〜んと甘えてる美夏……
 客観的に見れば美夏を襲ってるように見えるわけで

「春香、いや、これは」

 流石にこんな現場を抑えられると言い訳が出来ない

「美夏も何とか言ってくれ」
「おにーさん、いくらわたしがカワイイからって、いきなり抱きしめるのは早いと思う。
 物事には順序ってのがあるんだから。きゃっ♪」

 いや、何が『きゃっ♪』なのだろう?
 それ以前に解決してないし……というか誤解されていたら更に悪化を辿りそうだ

「もう美夏、そんなに恭也さんに甘えちゃあダメですよ。恭也さんが迷惑してます」
「は〜い」

 良かった、甘えてるだけって判断されたのか……これでロリコンとか言われたら
 流石にこれ以上は勘弁してほしい……ただでさえ、最近視線がたくさん感じるのに

「って、おに〜さんも違う意味で捉えてたんだね……はぁ〜」

 何故か美夏がため息をついて頭を抑える
 どうかしたのだろうか?

「どうかよろしくお願いします。お義兄さん」

 最後のおにーさんが違うニュアンスに聞えた







 そして玄関まで送ってもらった……車で送ろうかと言われたが、断った
 歩いて十分くらいだし、何より迷子になることは無いだろう、きっと
 流石に着くまでに道も覚えたし……

「恭也さん」

 歩いてると後ろから葉月さんが追いかけてきた
 買い物をするとの事らしい……てっきり業者が運んでるのかと思ったが

「といっても私用ですけどね」

 葉月さんはそう言って、微笑を浮かべる
 分かる人には分かる表情

「駅前まで出るのでご一緒して良いですか?」
「ああ……そういえば、葉月さんは春香のこと、気付いてるんだよな?」
「ええ」

 即答だった……当たり前か

「恭也さんとお嬢様が一緒にお出かけされていたのも知ってます」
「だろうな」

 知らない方が可笑しい
 春香は必死に隠してるつもりで隠せてないわけだし

「是非またお越しを」
「また寄らせてもらうこともあると思う……また、葉月姉さん」

 過去の呼び名……葉月さんとはそれくらいの旧知の仲
 勿論、会ったのは、前の時が再会になるのだが……

「ええ、恭也さん」

 だからこそ、彼女から様付けなしで呼ばれる
 駅前で別れて帰る……かあさんが残念そうに『な〜んだ〜』って呟いてたけど
 流石に勉強会なのに、なんなのだろうか?
 更に周りにもため息をつかれた……何なんだ?










 つづく












 あとがき
 第四話終了でっす
 シオン「でっすって元気ね〜」
 んな訳あるか!! 結構疲れてるって
 ゆうひ「そうなの?」
 そうなの
 シオン「そういえば、前から気になってたけど、あなた何で眠そうなの? お昼寝とかしてるんじゃないの?」
 してないよ……寝てるつもりで眠れてない時も多いし睡眠が浅い
 ゆうひ「なんだか大変ね」
 なんでだろうなぁ
 シオン「でも、眠ってる時は眠ってると」
 数時間は寝れてるはずだ……きっと
 ゆうひ「最近寒いし、顔だけ冷たいからとか?」
 かもな
 シオン「そうかもね、それはそれで顔だけ冷凍だし、面白いけど」
 面白くないって
 ゆうひ「またね〜」
 ほなね〜(^^)ノシ







▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る


inserted by FC2 system