とらいあんぐるハート×魔法少女リリカルなのはA's









魔法少女リリカルなのは〜守りたいものありますか?〜A's

第五話 それぞれ











 フェイトが昼から恭也とデート(街案内)に出かけてる頃、それを尾行した一行も居たが
 まぁ、何も無く、フェイト的には残念で周囲の者たちとしてはほっとして
 そんな他愛無い一日もあり、皆、それぞれに過ごしていく
 魔導師としての修行も積み、杖の能力強化などもあって、フェイト、なのはの双方とも強くなった
 そのたびに疑問に思っているようだが、恭也の力である
 リンカーコアの魔力は普通の人と変わらない
 それは、クロノたちが調べて出た結果なので、襲われる心配は無い
 じゃあ、どうして魔法を使えるのか? 魔導師としていられるのか?
 その二つの問題が出てくるのだ

「分からないね」
「自分の周囲に結界というか、魔法を解除する粉みたいなのをまいてるのと一緒だからね
 ある種、これがある限り襲われることは無いよ」
「それって凄くない? 常日頃からそれを出していたとしたら」
「いや、それは無い……でもね、あることが分かったんだ」
「あること?」

 クロノとエイミィは話続ける
 恭也の能力を根底から探ってるのだ

「これが通常の恭也さんで、こっちが変身後……で、通常の恭也さんの気配は一般人のそれと同じ
 剣士としてというのが恭也さんらしいけど、そういうのなら分かるけど
 例えばこれで気配をある程度消したとすると
 これは魔法じゃなくて、普通にだよ
 探査魔法を使えば見えるはずなんだけど……鍛錬の様子がこれだ」

 探査魔法を使ってさえも消えた恭也
 早く動いてようが見えるはずだし捕まるはずなのに逃げられた
 それを考えたなら……恭也の気配を消すというのは、魔法でも消してると言うことだ
 動物的感覚が無い限り見つけられないのではと思えるほどの差があるということ

「で、それを踏まえて考えると、恭也さんの意思一つでその気配なんかを変えられる
 勿論、それが出来るということは、魔力を消すことも可能なんじゃないか?」
「それって……S級でも」
「ああ、多分というより間違いないだろうけど、恭也さんはS級以上の能力を持つ者なんだ」

 それ相応の対応や時間、訓練をつめば、魔力を消す方法なども自然と出来てくるが
 その頃になれば、大概が執務官より上の位についてる人がほとんどだ
 だからこそ、ごくごくたまに戦場に出る人も居るが、それでいうなら、恭也の実力はクロノの上になる
 それは確定しているのだ

「S級以上だよ、きっと」
「まぁ、そうだろうね……で、今回のことには出てきてないみたいだし」
「うん」

 闇の書の事件がおきて、なのはの事があっても恭也は何もしなかった
 いや、動きがなかった
 実際は動いてるのだが、クロノたちに分からないように動いてるのだから仕方ないだろう

「ほんと、敵じゃないのが唯一のすくいだね」
「まったくだよ」

 クロノが数名居ても勝てるかどうか微妙という位置づけの恭也
 なのは、フェイトでは無理だろうというのもすでに分かっている
 何より肉親のなのはは特に無理として、フェイトは間違いなく恭也を特別に思っている
 そういうのにまだ対応が取れないだろうし無理だと判断しているから
 それにそんなことは絶対にさせないつもりだ

「正直なところ戦うのは避けたいよ」
「そんなに嫌なの?」
「嫌だね……まず、接近戦が得意というわけじゃないが、それなりに出来るんだぞ、ぼくでも
 それを、ああもあっさり覆されたら、ぼくだって苦手になるよ」
「ああ、なるほど」

 苦手意識というものが植え込まれたということだ
 それでも、修行という名目でフェイトと戦う時でもクロノは余裕がある
 そんな会話をしてるさなかもヴォルケンリッターの騎士たちは魔力を集めてるのだった





 恭也ははやての家で料理を習ったり、ザフィーラを洗ったり
 そんでもって、回りから相変わらず振り回されてるようで振り回されてないように動く
 何気に夜天の魔道書をチェックしてるが、まだ神風が出てくる気配は無い
 出てくることになるなら、念話を飛ばすとは言っていたが
 それなりに心配はしてるのだろう……というよりも、先に完成させたほうが良いのかどうかも

「恭也さん、すみません」

 ちょうど来たとき、車椅子から落ちたのかはやてがベットの横にこけていた
 立ち上がることも可能なのだろうが……したたかにぶつけたためか動いてない

「手首をねじったのか?」

 ちょうど恭也が来て、それで移動しようとしたのだが
 シャマルたちが居ないのでって事だ

「今日はシグナムかシャマルが居ると思ったのだが」
「それが、何でも用事で出かけてしまって、申し訳ありませんって」
「そうか……」

 恭也ははやてを抱き上げると車椅子に座らせる
 逞しいというのとは違うが、お父さんのような恭也の行動にはやては少し驚く
 だけども、その行為が嬉しくも思う。お姫様抱っことか色々あるが
 優しく抱きしめるような感じがして、はやては何となくだが嬉しかった

「見せてくれるか?」
「はい」

 軽い怪我だと恭也はふんで、すぐに手当てをしていく
 その様子に手馴れてるんだなぁと感心するはやて

「慣れてるんですね」
「まぁ、怪我をよくする妹が居るからな」

 なのはの事ではなく、美由希のことだ
 怪我をよくするではなく、させてるの間違いもあるが、今は突っ込みする人も居ないし
 美由希もいないので関係は無いだろう

「すみません……それで、皆が帰って来る前に夕飯をって思ってたんやけど」
「その手だと危ないな……連絡は取れないのか?」
「皆に『お帰り』って言いたいから」
「そうか……俺が作るから隣で見てるというのはどうだ? 歯がゆいかもしれないが」
「お願いしてもええですか?」
「ああ」

 台所に立つ恭也とはやて
 といっても、はやては少し離れた場所で恭也の手つきを見ている
 師匠としては心配なのだろう
 そして、恭也は料理をいくつか仕上げていく

「あ、恭也さん」
「ん?」
「忘れてました、ありがとうございます」
「……気にしないで良い……俺が料理を教えてくれって頼んで、食べてもらえるのもありがたいからな」

 はやてに恭也は言うと、少しだけはやてに振り返って紅茶を差し出す
 いつの間にか入れていたのだ……多分、恭也なりの優しさだろう

「でも、ありがとうございます」

 異世界で魔力を集めてる、ヴィータ、シグナム、シャマル、ザフィーラ
 その四人がいないのだから、寂しい思いをするのははやてだ
 何より、管理局が動き出してるので、固まって動かないと危険なことには変わりはないのだ

「受け取っておこう」

 感謝を受け止め、恭也はのんびりと料理を作っていく
 はやてもその様子を楽しそうに見て、一筋の涙を流す
 お母さんやお父さんの影がちらほらと見えるからこその涙
 泣き出してしまいそうになるのを一生懸命に抑えるはやて
 恭也はその様子に気づいて、包丁を置いて、手を洗い、はやての前に来て抱きしめた

「うっあぅ……」

 今までが騒がしいとか色々あったから、寂しさに襲われ
 怪我をして動けない自分が悔しくて、色々な思いが混雑して混乱して……
 恭也が優しくはやてを撫でる
 恭也に抱きつくはやては、恭也の肩に顔を置いて泣き続ける
 恭也は早く帰ってこいと考えていた

「えっと、恭也さんがお父さんみたいに見えて」
「俺、そんなに年取って見えるのか?」
「そうじゃなくて、なんていうか、家族みたいな、お兄さんとかそんな感じです」
「そ、そうか」

 恭也危うく地雷踏んで、どつぼにはまりかけていた
 気にはしてるのだが、まさか『父親』というのがかなり痛かったようだ
 年齢を多少は気にしてる恭也……以前は20代後半とか30代前半も堪えていたのだ

「いきなり泣き出して、すみません」
「いや、構わないさ……それだけ気を許してくれてるということなんだと思うし
 悪い事をしていたわけじゃないんだから、気にするな」

 と、ちょうど此処で玄関のドアが開いて、皆が帰って来た
 それぞれ手を洗ったりするのだが、恭也とはやては抱き合ってるように見える
 行ってるほうははやてなのだが……
 シグナム、ザフィーラ、シャマル、ヴィータが入ってきて
 その四人は固まる
 どうやって見ても抱きついてる図『はやてが恭也に抱きついてます』

「え、えっとお帰り」

 涙の跡のはやて
 恭也は、にらまれていた

「ま、まさか、はやてちゃんに手を出したとかじゃあ」

 シャマルは頬に手を当てて、そんな、どうしてっていうふうに頭を振り言う
 その言葉に過敏に反応したのはヴィータだ
 あわや魔法を使おうとしたが、変身してないので止めてはやてを引き離しにかかった
 それに、恭也は一般人というのが頭によぎってすぐさま、引き離すほうが良いと考えたのだ

「はやて、こっち」
「え、ヴィータ?」

 はやてはとっさのことで驚き、されるがままだ
 恭也は立ち上がった

「お邪魔してます」

 挨拶が先立った……そして、シグナムを見て、シャマル
 その後ザフィーラを見て、はやてとヴィータを見る

「はやての手首が怪我して、料理してたんだが、いきなりはやてが思い出したのだろうな
 泣いてしまって、それを泣き止むまで傍にいたのだが、問題があったか?
 それから、誰かいたほうが良いぞ……家というのは段差が結構あるものなんだから」

 いくらバリアフリーで加工しようが、結局少しでも段差があれば
 車椅子の生活するものでも辛いものなのだろう

「あ、えっと、ごめんなさい」
「大人であるシャマルさんとシグナムさんがしっかりしないでどうするんですか……
 まぁ、俺がどうこう言っても仕方ないですし……いくらはやてがしっかりしてるといってもですよ」

 恭也はそういうと、小さくため息をついた
 料理に戻る恭也……はやてはヴィータに頼んで車椅子で恭也の近くに居て手つきを見る
 危ないところは無いだろうが、それでも、料理の味付けなどを教えていく
 シャマルたちにはお茶が出されているが、それぞれに反省しなければと考えてるし
 早く夜天の魔道書を完成させたいという思いがあるのだが……考え物である

「恭也さんって意外といじめっ子ですよね?」
「そうでもない」
「うちはそんなに怒ってないんですし」
「そうなんだがな……これは俺の個人的な感想もあるからな」
「そないなんや」

 はやてはそう漏らし、恭也は最後まで作り終えて、味見をはやてに頼む

「うん、美味しい」
「師匠が良いからだ」
「えっへんです」

 料理を運び、恭也は厳しく言い過ぎたことを先に謝る
 食事のときまで暗い顔をしていたは、はやての精神にも宜しくないだろうという
 恭也の配慮だ
 それぞれが料理を食べていく……早い夕飯なので、恭也は家に帰るのが少し遅れるということを伝えていた

「そういえば、恭也さんは食べなくて良いんですか?」
「うちの母さんが作ってくれるから……なんていうか、俺もつくれるようになったら
 負担減るかと思ってですけど、かなり前作ったときは怒られはしなかったんですけど
 その、美味しくなくて」
「じゃあ、その時から作ってないとか?」
「というよりもその前に帰ってきてくれて、作ってくれるようになったんですよ
 子供に負担かけて何してるんだって、両親も反省したんです
 逆に俺はいつか大きくなったら料理を作れるようになってって決心したんですけどね」

 それがはやてから料理を習うということだったのだ
 年下から教わるのは確かに抵抗はあるだろうが、恭也にとってはどっちでも良かった
 年上だろうが年下だろうがどっちでも
 恭也の話を聞いて、恭也のちょっとした人柄などが分かってきたシグナムたち
 悪い人ではないというくらいは分かっていたつもりだが、こうやって話をしてもらえるというのも
 そうやって外のことや中のことを話してもらえてちょっと嬉しかったりしたのだ

「まだまだですけど、いつかは両親に恩返しみたく作っておきたいものです
 紅茶を入れたりは教えてもらったんですけどね……お店で」
「じゃあ、恭也さんが入れた紅茶が美味しかったのって」
「ああ、それは、一応お店で出すのと同じ要領で作ってるからですよ」

 シャマルがそう聞いて、恭也が応えた
 シャマルたちにとってもその紅茶がほっとして美味しかったのだ
 ヴィータは甘い飲み物とかがメインで紅茶やコーヒーなどは苦手だが
 恭也の入れた紅茶は飲めていたのだから、ある意味効果はでかい
 シグナムたちにもすっとなじんだ
 寒さが厳しくなってきて、外は冷える
 それを考えれば、やはり恭也のおかげともとれることが多すぎて、シグナムたちもお礼をそれぞれにいう

「それじゃあ、またな、はやて、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ」
「はい、それじゃあ、またです」
「また」

 玄関のところで、全員が送り出し恭也を見送る
 そして、夜に動き出す面々
 朝早くには戻ってこなくてはと決意を新たに
 夜天の王として……目覚めてほしいから






 つづく








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