とらいあんぐるハート×マリア様はみているSS









設定……
恭也は三薔薇を知っています(以上)
恭也が高校3年生の秋頃だと思ってください
一応オールエンドで完治してます(何ていうか適当だよなぁ)
というわけでレッツラゴ〜(ちょっと頭が飛んでます)







『薔薇は優雅に咲き誇る9』










「恭也さん、ごきげんよう」
「おはようございます」

 朝の挨拶をして、同じ様に話し始める
 そして日常が始まる……そんな光景をこの人たちと見ていけたらどれだけ幸せだろうか?
 ふと、そんなことを考えてしまう
 それは、自分が今まで無かったことだから……
 だからこそ、人としての幸せを……戦闘という行為をしないでいい幸せを
 みていならが幸せを感じたいのかもしれない
 俺とは全く違う道を進む彼女たちを見ていきたい……
 それを本音なんだろうと思う





 そして、俺は昨日と同じように朝方は小笠原家の周囲の探索と俺自身の鍛錬
 他にも色々とこなしていく……全く出来ないことをしようとしてる訳じゃない
 でも、彼女たちを守るために必要なことだから……
 自分が何とかしていこうと決めたことだから

「お待たせして申し訳ありません」
「いえ」

 俺が薔薇の館で待っていると祥子さんたちが足早に着ていた
 というよりも、早く動いてという事だが……

「掃除当番が全員当たるなんて珍しいね」
「仕方ないわよ……とりあえず、今日は通しを一度して、恭也さんも大変でしょうけど
 お願いします」
「はい」

 蓉子さんに言われて、俺は彼女からある服を渡される
 白を貴重とした王子服と動きやすいプレートメイルを催した服だ
 俺がそれを見て、周りを見渡すと

「どっちか選んできてくださいね」
「私達が昼を使ってつくったので」

 笑顔で言われてしまい……俺は頷くしかなかった
 下のズボンも着替えるという事で、一度部屋を出てもらって俺も着替える
 腰の短刀や小太刀を後ろの背中に隠していく
 あ、かなりの数入るな……つくってくれた彼女たちに感謝だな
 これだったら何かあっても何とか守れそうだ
 美沙斗さんクラスが来たら、辛いものがあるが、彼女たちを逃がすくらいは出来るだろう
 俺が犠牲になろうとも……

「着替え終わりました」

 プレートメイルの方を選んだ……白銀を基調とした色合いで中に色々と隠せるからだ
 といっても、本当のプレートメイルとかでは無くて、中に針金みたいな物で固めてあるだけだ
 だから、動くのにも差し障りが無い
 便利だな……

「うわ〜」
「かっこいい〜」
「絵本の中とかで出てくる王子様よりかっこいいよ」
「うん、本の中から出てきたみたい」

 それぞれに賛辞が送られる
 俺はそれに「ありがとうございます」と応えると彼女たちの所に行くと声をかけていく
 残された女の子たちは何故か頬を真っ赤に染めて頷くだけだった
 俺が体育館につくと、中では聖さんと優さんの喧嘩が見えていた

「あ、恭也さん、そちらにしましたか?」
「ええ、何かあっても何とか出来そうなので」
「そうなんですか……祥子のためにありがとうございます」
「蓉子さん、違いますよ……俺は、祥子さんたちを守りたいんです
 遠く離れてしまった理想のような日常を俺は憧れてるのですから」
「??」
「ま、深く考えなくても大丈夫ですよ……だから、成功させましょうね」
「ええ」

 お互いに笑顔で頷くと、最初から通して稽古を行うという事で話
 しばらくの間、俺は祐巳さんと踊りの稽古に付き合ってもらう

「えっと、私なんかでいいんですか?」
「一応、パートナーになるかもしれませんし」
「そ、そうですけど……(うう〜、視線が気になるよ〜、祥子様も恐いし)」
「すみません、無理を言ってしまって」
「そ、そんなことないです」

 顔を真っ赤にして多少話しながら、そのまま踊り続ける
 ワルツ……クラシックダンスの1つだったと思う……ティオレさんのおかげかな
 フィアッセにも教えてもらったっけ? 歌だけだと思ったら踊れるから驚いたな……あの時は

「う〜ん、私って上手くないのに」
「そんなこと無いですよ、徐々に上手くなってますよ」

 俺はそう言って上手く笑顔を浮かべられたかどうか分からないな
 それでも、彼女にとってはプラスになったのか、多分

「さてと、王子様役の恭也さんの役目ね」

 じろりと見られる……江利子さん、不機嫌ですか?
 そうねと相槌を打ちながら、更にじろりと見られる
 何ていうか、俺が悪いのか?
 祐巳さんは俺の後ろに隠れる
 全員名前で呼んでくれと言われるし、痛いことだらけだ

「とりあえず、恭也さん、舞台に」
「はい……祐巳さん、誰かと変わってくださいね」
「はい」

 舞台に上るとお互いに呼吸を合わせて、キャスティングを変えた状態で演技に入る
 俺は王子という事で王様の隣で座って頷いたり、手をふったりするだけだ
 踊りの相手というのも祥子さんだけなので、振るのがほとんどである
 何ていうか、呵責というのか、頭で少し惜しいなと思ったり
 蓉子さんや江利子さん、聖さんと踊りたいなと思ってしまうあたりダメなのだろうか?
 以前踊ったが、今度も踊って欲しいものだ……
 そのドレスで……前の時よりあでやかで綺麗なドレスで……我侭なのかもしれない
 ただ、楽しいだろうという思惑だけなのだから

「恭也くん、この後一緒にドライブでもどうかな?」
「いえ、俺は蓉子さんたちに誘われてますので」
「うっ、そうかい……」

 優さんから休憩中に声をかけられる
 先ほどからずっと演技だったから、息抜きと称して休憩を入れたのだ
 祥子さんのことを思ってだろう……そして、すぐに稽古を再開する
 そういえば、志摩子さんとあまり話してないな
 由乃さんも体調が悪いのか、少し調子が悪そうに見える
 疲れてるだけかもしれないが、心配である……令さんがとても心配してるが
 お姉さんだからだろうな……
 稽古再開を言われて、それぞれの位置につく
 一応、魔法使った瞬間の変装シーンは後でも練習が幾らでも可能だから
 続けてという事になった……だから、王様と王子様でのんびりと私事的なことを話してても問題なしだ
 といっても、優さんのいう事を逃げてるだけだが……

「王子様、一曲踊っていただけませんか?」
「いえ……すみまぜん」

 目に適うことなく去っていくという構図
 ただ、俺には彼女たちと踊るのもまた一興かと思ってしまうものであり
 悲しい性である……頭の中のひとつが彼女たちと踊ればいいじゃないかと叫んでる
 それが分かる……悲しいほどに

「ふぅ〜」
「王子、どうしたのだ? 気分が悪いなら別室で休むと良いぞ」
「いえ、そういうわけじゃありません……次の方は?」
「もう、居らんぞ」
「……」

 と、扉が開く音がする
 効果音だけである……そして、シンデレラ然とした祥子さんが現れる
 俺はさっと立ち上がると彼女の傍まで寄る

「お美しい姫よ、私(わたくし)と踊っていただけませんか?」
「はい、喜んで」

 このときからダンスが始まる……さすが祥子さん
 俺があの時と同じように踊る……出来るだけリードが俺を取ってうかのように
 見る人が見れば、間違いなく俺が足を引っ張ってると分かるのだろう

「似合ってますよ……その姿」
「ありがとうございます」

 静かなライトアップと音楽の中踊る
 そして、話す

「シンデレラの衣装、綺麗に合ってます」
「ありがとうございます……でも、合わないかもしれないですね」
「そうですか?」
「恭也さんがかっこよすぎるから」
「そんなこと無いですよ……」

 俺はそう言って踊りに集中する
 テンポが少しだけ変わった……多分、スピードが速くなったのだ

「んっ」

 祥子さんの声があがる
 俺が足を踏んだとかそういうのではない……単に疲れたという事だ
 俺はさっと彼女を抱き上げるようにして腕に力をこめる
 背を抱き上げてる感じで腕に体重が掛かる
 大丈夫だな……

「!!?」

 驚いた表情を向けるが、俺はそのまま踊り続ける
 足が届くか届かないかの所……下にはついてるが、歩いてるのは俺だ
 しかし、足は同じように動かす
 そして、曲が終わりに近づき、そのまま踊りが終わり時計の音が鳴る
 12時の鐘の音だ……
 祥子さんは俺から離れて走っていく
 俺は追いかけるが、彼女はガラスの靴を脱いで走っていく
 彼女の靴を持ちあげる

「あの方を妻として迎えたい」

 目は彼女を追いながら、夜空を見上げる
 そして、次のシーンへと移る……祥子さんを見つけ、そして抱きしめるシーンだ
 このとき、鎧を外し彼女を抱き上げるという事となった
 迎えに行くのに騎士王というような格好はダメだろうという事になったのだ
 そして……

「お迎えに上がりましたよ、姫」
「あ!!」

 驚いた表情で彼女は俺を見て、俺は彼女を抱きしめる
 そして、幕が閉じる……これで終わりだった……

「はい、OK」

 離れて、聖さんたちに合図を送られる
 ふぅ〜、疲れた……というか、次もあるんだよな

「次は祐巳ちゃんの番だね」
「あ、はい」
「緊張しなくても大丈夫だよ」
「そ、そうですよね」

 むちゃくちゃに固まってる
 俺はぽんと肩を叩くと

「ひあっ!」

 驚いたように此方を振り向く

「緊張しないでとは言いませんけど……失敗しても直せばいいんです
 だから、頑張ってね」
「あ、はい」

 笑顔一杯に応える祐巳さん
 だが、何故か周囲の視線が冷たいような気がする
 というよりも……蓉子さんたちが睨んでるように見える

「えっと、江利子さん、どうかされたんですか?」
「ん〜、何ていうか、恭也さんの鈍感さを改めて知ったって所かな」
「うん……だから気にしないで」

 そういって離れていくとなにやら小声で話す
 だが、俺には聞こえていて……

「天然は強いね」
「でも、あれ、絶対祐巳ちゃん落ちたわ」
「ええ」
「でも、あれね……ああやって励ますっていうのは凄いわ」
「本来なら落ち込むよね」

 いや、そんなこと言われても……

「惚れてる相手だと勝手が違うのかしら」
「多分」

 そんな風に思われてるのか? まさかな……彼女たちの勘違いだろう
 それに、俺に惚れてるなんて彼女たちくらいだろう
 俺は無愛想で無表情のあまり良い人でもないだろうから

「さてと、恭也さん、さっきさ、何か残念そうな顔してなかった?」
「分かりますか?」
「うん、じっと見てたし」
「あ……言ってもいいんですかね」
「??」

 俺の言葉を聞いて不思議そうな顔をする聖さん

「蓉子さんや聖さん、江利子さんと、その衣装で踊りたかったなと思ってしまっただけですよ
 だから、気にしないで下さい」
「……」

 聖さんの顔が真っ赤に染まった……
 俺は驚いて彼女を見ると、聖さんはボーとしている

「聖が真っ赤になってる」
「本当ね」
「お姉さまはどうかされたのでしょうか?」
「どう思ってるのかしら? 志摩子は」
「私ですか……からかわれて赤くなったというよりも、ストレートに言われて照れたという所でしょうか」
「良い線ね」
「ま、そこらが妥当かな」

 なにやら向こうで話してるようだが、聞こえなかった
 微妙な部分だな……しかし、聖さんは大丈夫だろうか?

「聖さん、大丈夫ですか?」
「え、う、あ、はい」

 そういって、俺を見ながら、頷く
 顔は赤いが大丈夫そうだ……心配なのは確かだが
 赤い顔の人が増えてるような気がする

「皆風邪か?」
「そんな訳ないでしょう」
「祥子さん?」
「はぁ〜」
「えっと、休憩してて良いのですか?」
「祐巳が主役の場合、私はあまり役柄としての仕事は無いですから」
「そうなのですか……」
「そうなのです……で、今先ほどのことですけど
 風邪じゃありません……ちょっと照れてるみたいなものです」
「あ、そうなんですか……さすがに男性が居たら恐いですもんね」

 なるほど恐怖で赤くなってるのか……そういう事もあるってかあさんから聞いたな
 父さんもそう言ってたし……青くなったり赤くなったりすると
 此処はお嬢様学園だから、俺みたいな男が居たら恐がるのは無理ないか

「絶対勘違いしてる」
「うん」

 聖さんと江利子さんがなにやらうんうんと頷きながら言っている
 どういう事だろうか?

「さて、祐巳ちゃん、踊るよ〜」
「あ、はい」

 ため息をつきつつも、お辞儀をして、手を取り踊りだす
 あまり近づくと恐がるだろうと思い、ある程度距離をとる……
 といっても、手を合わせてるので、恥ずかしいのには変わりないが

「ゆっくりで大丈夫ですから」

 今度は俺がリードする形で踊りを踊っていく
 あまり得意じゃないダンスといえるが、日舞よりマシだろう
 あれはあれで難しいものがあるからだ

「あ、はい」

 顔を赤くしながら、踊っている様子は可愛い妹のようだ
 祐巳さんって瞳子さんと繋がるものがあるな
 根本が似てるのかもしれない……ということは、なのはにも似てるのか
 なるほどな……でも、慌て具合なら美由希に似てるか……酷いいいようになってしまったな
 祐巳さんに失礼か……
 と、足を踏まれた……少し痛いが翠屋でしている笑顔で誤魔化す
 これかくらいの痛みはなんとも無い……

「踏まれたね」
「ええ」
「恭也さんは大丈夫かしら?」
「さぁ……でも、恭也さんがフォローしてるから祐巳ちゃん自身の方が大変じゃないかな」
「ですね」
「志摩子、どうかしたの?」
「い、いえ……」
「恭也さんと踊りたいなぁ〜とか?」
「……そうですね、踊りたいです……あの方と」
「志摩子がそういうなんて珍しいね」
「本当に」
「……以前であった人かもしれませんから……どこか記憶と重なる部分があるんですよ」
「へ〜」
「志摩子、恭也さんと会った事あるの?」
「……分かりません、確認を取りたいんです」
「なるほどね〜」

 そして、曲が終わり……ダンスを終える
 そのまま走り去っていくのを同じようにして、演技を終える
 祐巳さんの場合は手をとり、連れて行くだけというので終焉を迎える
 シンデレラとしては普通の終わりだと思っている

「恭也さん、少し休憩にしますので」
「ありがとう」

 俺はうっすらとかいた汗をタオルを借りてふき取る
 助かるな……と、志摩子さんが此方にきていた

「えっと、少し個人的なことで話しても良いですか?」
「ええ……どうかされましたか?」
「此処だと人の目がありますから、その違う場所の方が……」

 そういって周囲を見る
 俺は、蓉子さんに一言声をかける

「蓉子さん、ちょっと薔薇の館に戻ってても良いですか?」
「そうね……此処を少し片付けたら、私達も戻るから良いわよ」
「すみません」
「ええ」

 そして、志摩子さんと薔薇の館に戻ると、薔薇の館の一階奥の部屋に入る
 ほとんど物置として機能してるようだ

「それで、話というのは?」
「もう8年前でしょうか……それくらいの頃に会いませんでしたか?」
「志摩子さんとですか?」
「はい」

 考えてみる……志摩子さんと会ったことがあるかどうか?
 頭の片隅で考えるが分からない

「……分からないというのが正直な感想ですね」
「……藤の花が咲き乱れる頃、ある旅館の庭に迷い込んだ一人の男の子の話
 そして、そこで出会った女の子とある約束をしてたんです」
「……してましたね……名前が思い出せませんが
 藤の花の精として覚えてます」
「やっぱり恭也さんだ」

 俺の胸に涙を流しながら抱きしめる
 胸の服をきゅっと掴み、嬉しそうに抱きつく
 彼女の涙が胸に吸い込まれていく
 俺はそっと抱き寄せると、上を見上げる

「すみません……約束を守れなくて」
「いえ、会えてよかったです……恭也さんと会えて良かったです
 あのとき、心配でした……純粋に恭也さんが生きてるかどうか心配だったんです」
「志摩子さん」
「前の呼び方で良いです」
「志摩子で良いのか?」
「はい、恭ちゃん」

 昔の呼び方……あの頃、出会ってすぐの頃に志摩子は俺の様子を見て両親に知らせた
 そして、俺は彼女の両親に保護された形でしばらく面倒をみてもらった
 といっても、父さんが向かえに来るまでだが……父さんが俺を置いて山を降りていたのが悪かったらしい
 迎えに来たときは必死に謝っていたのを覚えている

「良かった、恭ちゃんと出会えた」

 志摩子はそういって涙を流しながら抱きついてる
 俺はあの時、別れを惜しんだ彼女を思い出していた
 あの時は俺の背中に抱きついていた……それこそ、諦められないように
 今生に別れになってしまいそうなのを恐れるように……

「此処よね」
「ええ、確かそこに」

 声が聞こえて、俺は慌ててしまいドアを見た
 すると、ガチャとドアが開いて、祐巳さんと由乃さんと令さんが見ている
 えっと、どうしましょう?
 俺を見て口をパクパクと開いたり閉じたりしてる
 金魚みたいというのは言いえて妙だが、あってるだろう

「し、志摩子さんと高町さんが抱き合ってる」
「し、志摩子、何があったの?」
「泣いてるし」

 怒涛のごとくということばが合うのだろうが
 何ていうか、俺は周囲を見る……扉が開け放たれて、外まで丸見えだ
 蓉子さんと江利子さんと聖さんは俺達を見て、ため息を吐いてる
 祥子さんは頭を抑えると……

「令、由乃、祐巳、こっち手伝って」

 そういって声をかけて、こちらの扉を閉める

「恭也さん、志摩子、ごめんなさいね……語らうこともあるでしょう
 此方は任せてください」
「ああ、頼む」

 祥子に事を頼むと、俺は目を閉じる
 暗いというわけでは無いが、室内の光は電灯だけだ
 志摩子は驚いたのか、少し固まっている

「俺も志摩子が元気そうで嬉しい……忘れていたのは悪かった
 ただ、許してくれ」
「……許してくれなんていわないで下さい
 私は恭也さんを怒ってなんていませんから」
「そうか」
「ええ、でも、約束、守って欲しいな」

 指を絡ませて言う志摩子は可愛いと思う
 仏蘭西人形を思わせるような顔立ちと綺麗さ……
 彼女は俺を見て、にこりと笑う
 「ねっ」という感じで俺を見て、微笑みを浮かべる
 俺は……

「そうですね……でも、まだ誰とも付き合うとは言ってないので
 後で、蓉子さん、江利子さん、聖さん、祥子さんに聞いてみてください
 彼女たちに決定権もありますから」
「そうですか……聞いて見ますね」
「はい」

 そして、志摩子が俺の腕を抱くと頬に柔らかなものが押し当てられる

「でわ、戻りましょう」

 顔を赤くしながら、志摩子はそういう
 俺は頬を指先で掻くと……

「志摩子」
「はい?」

 声をかけて、頬に同じく返す

「返杯のキスだ……また会えて嬉しかった
 忘れていたけど、その思いは本当だからな」
「はい」

 そして、お互いに部屋を出て、何時もの会議室みたいなところに戻る
 そこでは、全員というよりも、不機嫌そうな祥子さんが居た

「恭也さん、聞いても良いですか?」
「祥子、機嫌悪いわね」
「本当ね」

 いや、そんな風に俺を見られても……聖さんも江利子さんも止める気がないみたいだ
 俺は頼りの綱である蓉子さんを見るが、無視して祐巳さんと話している

「志摩子との事だったら、志摩子から聞いてくれないか?
 俺は、ただ彼女と出会っていた……それで命の恩人なだけだ」
「へ〜、何かあったの?」
「恭ちゃんとは小さな頃、両親と旅館に行った際に出会ったんです
 そこで、恭ちゃんと……」
「きょうちゃんって?」
「あの、恭也さんの愛称で、恭ちゃんって呼ばせて貰ってたんです……」
「可愛いわね」

 俺はそっぽを向く
 何ていうか、聖さんが楽しげだ……

「恭ちゃんね……祥子、私達もそう呼びましょう」
「私は遠慮します」
「江利子は?」
「良いわね……恭ちゃんなんて呼べる事はほとんど無いでしょうし」

 何故か決まり、志摩子が続きを話す

「そこで、もしもまた出会えたら、今度はデートしようねって
 恭ちゃんのお父様の仕事を知ってましたから、恭ちゃんが居ないかもしれないと不安だったのですが
 今回は凄く安心しました」

 胸に手を置いて、ふぅとため息をつく彼女は綺麗だ
 ただ、それが綺麗で絵になる

「じゃあ、志摩子は私達に宣戦布告というわけ?」
「いえ、何か恭ちゃんが言うには、まだ選んでない
 でも、考えてみるとの事です」
「それは分からなくも無いわ……恭也さん、まだ私達のこと選んでませんから」

 意味がわからず首をかしげる、祐巳さんと令さんと由乃さん
 どういう事か分からないという事なのだろう……
 俺も首を傾げたいぞ……

「恭ちゃんはプレイボーイだね〜」
「というよりも天然で落としていくのだから、罪作りの人よね」
「でも、私達はそういう恭也さんを好きになった……それは否定できないわ」
「そうね」

 そして、お互いに何か話すと、それぞれの仕事に戻る
 彼女たちの分担の仕事を俺も分けてもらい(主に力仕事)手伝う
 あまり出来ないので悪いなと思い、紅茶を入れたりもした

「恭ちゃん、ありがとう」
「いえ、気にしないで下さい……でも、聖さんたちは大丈夫なのですか?
 もう、夜も遅いですし」
「そろそろ帰るわよ」
「そうですか……安心しました」
「そんな気にしなくて良いわ」

 そして、文化祭のプログラムなどを聞いていく
 明日にはシンデレラをする……祐巳さんと祥子さんの姉妹関係がどうなるか
 それにより、俺はどちらと踊るか決まる
 ただ、祐巳さんは揺れ動いてる……祥子さんも同じくだ
 お互いに分かってるのかもしれない
 多分、明日は祥子さんと踊るだろう
 そして……祥子さんは、その後に……祐巳さんと話すであろうことも




 この日も俺は勉強を教えてもらいながら、台本も覚えていく
 途中でとちったのだ……皆さん完璧だから俺が外すと悪くて悪くて
 蓉子さんと祥子さんに何度も台詞あわせをしてもらう

「恭也さん、そこは……」
「うっ」
「あ、もう少し優しく言った方がいいかもしれません」
「そだな」

 そして、色々と稽古しながら夜もふけていくので時間を考えて
 夜中11時には寝ることにした……明日の朝が早いそうだからだ
 祥子さんは寝起きが悪いし、低血圧からだろうということが、本人は辛そうだ
 清子さんがよく祥子さんの髪の毛を櫛で梳かしてる……

「あの、後は1人で頑張ってみますから」
「すみません」

 全員の体調なども考えると、とても、そういうしかなくて……
 俺は夜中12時に鍛錬なども終えて、すぐに寝始めた
 というよりも、寝ないと持ちそうに無いからだ
 明日は人の多いところで演技をする……彼女たちと交換条件で受けた事だし
 それに、これからもあるから……蓉子さんたちと一緒に居るなら大学の方にも付いていかないといけない
 難しいことだらけだが、何とかしないとという思いが頭の中によぎる
 彼女たちの平穏で静かな生活を脅かす者を許すつもりもない
 ただ、彼女たちに危害をなすものが居るなら斬るだけだ







 そして、夜がふけていく
 俺は、少しの間目を閉じて考えていた……
 彼女たちとあって、俺は変わったと思う
 でも、誰に惹かれ、誰を好きかという事を
 どうなんだろうか?
 悩みを持ちながら、日はそぞろに昇っていく
 寝る間を惜しんで考えた結果は全くといって良いほど出なかった
 ただ、彼女たちを俺自身が好きだという事以外は……












 つづく









 あとがき
 恭也の心に決着がつく
 シオン「ということは、次でラスト?」
 さぁ……
 ゆうひ「……さぁってあ〜た」
 だって、分からないんだもん……考えても理解できないし
 シオン「で、最後は決めてるの?」
 う〜ん、何も
 ゆうひ「ダメじゃん」
 そうだから、悩んでるんだよ
 シオン「そういえば、何で何も考えてないの」
 この作品だけに言えば、特殊なことが多いから
 ゆうひ「へ〜、じゃあ、何とかならないの?」
 難しいところだね
 シオン「手は?」
 先が読めないストーリーなんだよ
 ゆうひ「よくそれで書けるよね」
 ま、自分は腐ってもSS作家だからね
 シオン「なるほど」
 ゆうひ「でわでわ、また〜」
 ほなね〜(^^)ノシ



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