『三日月の表情3』











 恭也と出かけて、墓場まで到着……此処には、恭也のお父さんであり
 桃子さんの夫、そして、なのはちゃんのお父さんが眠っている場所……
 私の師匠は、私しか知らない場所に埋めた……土葬してくれと頼まれたから
 もしも、あの人と本気で戦うなら、相手が死者繰術を使ってきたら、私が戦うしか無いだろう
 結界も張って、ばれないようにしたけど……不安は残ってるし、龍が相手なら
 私も戦う決意はしてる

「父さん、この人が、最近家に居る人で、滝川蛍さんだ」

 なにやらぶつぶつ呟いて手を合わせてる恭也
 私はそっと瞼を閉じて、左手をイヤリングへと手をかける

「初めまして、不破士郎さん……滝川蛍と言います
 少しだけ気になる点があるので、調べさせてもらいますね……」

 羽を展開……真白き羽根が広がる

「蛍?」
「話し掛けないで」

 検索……該当目的
 恐ろしい計画では無いが、龍がしていたことと掛け合わせても
 もしも、この人が該当していれば、間違いなく次にはこいつが当たってくるだろう

「!!!!!」

 やはり……検索ヒット……今、この近くに居る
 そして、年齢は18歳……会った事あったな
 なるほど、顔見知りを連れて来たというわけか
 美沙斗さんの知らない事だけど……それでも、美沙斗さんも居るしあっちは大丈夫だろう
 多分だけど……それに、引っ掛かった
 この近く……私を見張っていたのか? それとも、恭也を見張っていたのか……

「恭也、武器とか持ってきてるよね」
「ああ」
「戦闘になるよ、広い場所は?」
「あっちだ」

 お互いに歩いて、そのまま山の中腹辺りの草原に出る
 確かに広い場所だ……それに、此処なら相手が誰であれ、逃げることも出来る
 そこまで来て、私は恭也を見て、一言

「これから闘う相手は、強い……御神流を使う奴だから
 それと、もう1つ……私はそこまでお手伝いは出来そうにない
 外気で攻撃しても良いけど、相手はあんたの知ってる人に似てるけど、あんたじゃない
 分かった」
「あ、ああ」

 良く分からない顔をしているけど、出てきたら分かるだろう

「出てきたらどうかしら? 不破士郎くん」
「分かってたか……さすがという所だな……リア」
「その名前で呼ばないで欲しいのだけど」

 小太刀の一刀を持ち、もう一刀は腰にさしている
 恭也と同じ構えか……しかも、此方の方が慣れてるだろう
 戦闘経験の移譲と強化……

「ふっ、だが、お前は殺す」

 笑っているな……黒い服
 似ている恭也と士郎

「なっ」
「恭也、邪魔になるなら、退いてなさい……私は、勝たないといけないのよ
 相手があんたの親の遺伝子コピーでも」
「なにっ!?」
「全く龍もやってくれるわ……成功例は少ないものの、遺伝子コピーを作り量産計画
 すでに、私のもので立ち消えしたけどね」
「お前が全て破壊したからな……まさか、自分を見つけた龍に自分の生まれた場所を全て吐かせて
 その場所を一つ一つ丁寧に全て消し去ったからな」

 恭也は着いていけないだろう
 でも、私は……士郎を殺すか、倒すかしないといけない
 多分、こいつが敵だという事は……

「リア、もしもお前が此処で敵だというなら、やはり倒さなくてはならない
 お前を好きだったんだがな……1人の女性として」
「知らないわ……暗殺者同士仲良くはしていたつもりだけど」
「そうだったな」
「士郎だって気づいてるでしょ……龍は敵だと」
「気づいてても、他の生き方を知らないからな」
「そうね……あなたと私の違いは、人の心が読めるか読めないか
 それだけだものね」

 ……それでも、相手としての力量は……私の方が弱い
 いや、純粋な戦闘力という点では私のほうが強いが
 こと体術に置いては、並べない……一歩も二歩も後れてる

「恭也、お前がどっちを助けようとするか関係無い……俺はこの娘を連れ帰る」

 言ってのけた……しかも、連れ帰ると
 士郎の言葉は正直嬉しい……まさか、私を此処まで必要としているとは思わなかったし
 何度か二人して無茶しあったことは覚えてる
 だからこそ、神速などの原理も分かっているのだ

「なっ!」
「リアは渡さない……」

 剣の力というべきだろうが、如何いうことだろう?

「恭也……邪魔になるから、本気でどっか行ってなさい
 それと、すぐに美沙斗さんと合流後、なのはちゃんたちの護衛を」
「なっ!?」
「士郎、私は帰るわけには行かない!
 これ以上人を殺すのはごめんだわ……だから、あなたを倒す!」

 私はフィンを展開する
 この人と戦うのは正直な話、嫌なのだ
 この人なりの愛し方……それが全て私に向いてるから

「涙を流してでも、俺との敵対を選ぶのか?」
「そうしないと、私はまたキリングドールに戻っちゃうから」
「……何故、そこまで龍を嫌う
 普通に生きてくなんて俺たちには不可能だろう
 どうせ、普通に戻ろうとしても、所詮人殺しだ」
「それでも、普通の生活を体験したい、見てみたい……そんな思いすら浮かばない士郎に
 浮かばなかった私にけじめをつけたい」
「そうか」

 恭也はすり足で距離を測りながら、走っていった

「追いかけないのね」
「目的がお前だからな」
「助かるわ……他の人まで手を出されたら、私は士郎を本気で殺さないといけない」
「さすがだな……その気迫
 そして、そのフィンも」
「あなただけは私を受け入れてくれた……血塗れの堕天使と言われ恐れられていた私を受け入れてくれた」
「まぁな」

 お互いの目には、お互いの体しか映っていない
 もう、戦闘をするのは避けられない
 私はここで死ぬかもしれない……

「最初から飛ばさせてもらうわよ」
「当たり前だ……俺だって、お前と離れていた間、凄く寂しかったんだからな
 お前と会っていた時だけが、一番安らいだのだから」

 篭手で相手の斬撃は受け止められない
 徹があるから……そして、貫やら斬……そのあたりも正直恐ろしいほどの技だ
 しかも、相手はそれを縦横無尽に作っていくのだから
 横に後ろにと避けながら、隙をうかがう
 あるわけもない隙……戦闘能力の移譲で士郎が体験した戦闘経験を全て受け継がれ
 そして、次に士郎くんの経験は積まれてる
 私との戦いも想定していただろう

「優しいのね」
「傷つけたくないだけだ」

 ぶっきらぼうだけど、それでも恭也と同じ優しさ
 だから、恭也と会った時には、少しだけ驚いた
 士郎と再会したような気がして……でも、そんな事は頭の片隅だ
 すでに、幾度も小太刀が通り過ぎてる

「くっ」

 バックステップで距離が開いた
 でも、相手のあの構えは……突進系の奥義か

「射抜」

 小さく呟いた声は風に乗って私まで聞える
 その瞬間にバリアを展開……後ろに流されたままだ
 まだ、1分も経ってないだろう
 しかも、神速の発動もしてない……経験の差か

「バリアを破らないと駄目か」
「そうね」

 お互い手の内を知り尽くしてるからこそ、士郎は下手に近づかない
 私に間接を極めさせないつもりだ
 しかも、私の攻撃が届く瞬間、全て後ろに飛ぶという徹底振り
 こちらの手詰まりは決まりだ

「時間を稼いでるのか?」
「まさか」
「そうだな……お前が、そんな奴なら死んでる」
「そうね」

 時間を稼いでるとかそんなのは心外だ
 持っている武器は、数個のみ
 それをいかにして、相手への打撃に使うか
 でも、武器が貧弱すぎる

「小刀4本、鋼糸3本で何が出来る?」
「見抜いてたの」
「お前が普通に外に出るのを待っていたからな」
「しかも、最初から私を捕まえる気があったのね」
「当たり前だ……俺はお前だけは、逃さない
 どれだけ言葉を連ねても分からないなら、体に分からせてやるつもりだしな」

 士郎……そこまで私を好きで居てくれたのに
 私は、気づかなかった
 私も、士郎と居た時間は凄く安らいだ
 お互いに作られた存在だから……そして、暗殺者としての安らぎがあった
 命を狙われ、肩を触れ合わせながら寝ていた

「大人な意見で」
「うっ、ま、まぁな」

 顔を赤くして可愛いんだ
 そう言うところは、やっぱり私の方がまだ上だよ

「士郎、もしもこれから命を狙われるなら、護れる者を護っていかない?」
「龍を裏切れと」
「私と士郎だったら、たとえ敵がどんなのであれ、勝てるわ」
「そうだな……元々俺とお前に頼っていた部分がある」

 そう、暗殺という点でいえば、龍は快楽者に提供とか言って手ごまのように使っていた
 で、それらを殺すのは私や士郎だ……
 だからこそ、私たちは最強であり、最狂だ

「だが、それでも、まだ此方の方が安全だ
 俺は確かにリアが居るなら……」
「士郎、お願い……私は、貴方にずっと暗殺者として終って欲しくない
 御神の刀はそういうものだったの?」

 そのあたりを消されてるのだ……知っていて、私は士郎を放置した
 怒られるなら、怒ってくれて構わない
 士郎なら奪われても、私は何も怒らなかっただろう
 だからこそ、恭也にも甘くなっているのだろう
 と、気配がいくつか此方へと向かっている
 士郎も気づいたようだ

「3人か」
「美沙斗、美由希、恭也だね」
「さすがに早いな……そうだね」
「……足止めされたな」
「そうだ……ね」

 疲れてるな……体に気合を込めて、フィンを更に強く光らせる

「士郎、思い出して……」
「しまっ」

 私の手が士郎の頭に触れて、羽が士郎を包み込む
 お願い、不破士郎の遺伝子よ、貴方の全てきことを思い出して
 私を怨むなら恨み続けて構わない
 それでも、私は心残りがあるからこそ、生きていける
 そして、それが終れば、のんびりと余生を送りたい

「なっ!」
「蛍さん!!」
「蛍!! それに、あれは」
「蛍は不破士郎と呼んでました」
「にいさん?」
「ええ」

 恭也たちが何か話してる……でも、私は

ドスッ!!

「けほっ!」

 おなかに一発来た

「くっ」
「士郎、思い出して……私を怨むなら怨んでいい
 でも、貴方に暗殺は似合わないよ
 護ってる刃の方が似合うよ
 私に当り散らすなら、構わないから」

 小太刀で攻撃されない分大丈夫だろう
 その一撃一撃で、人1人を殺すくらい簡単にしそうだけど

「うああああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜」

 士郎くんの叫び声……離れた手がそのまま地面に着地
 腕と足とで、何とか顔面から落ちるのは防いだ
 それでも……先ほどの拳の一撃は痛かった
 離れて、距離を取る

「士郎くん」

 私は腕に力を込めて、士郎くんを抱き寄せる
 身長も体格も相手の方が上で、私の腕は肩までしか届かないけど
 それでも、伝えないといけない

「士郎くんには、護るための刃になって欲しいよ……お願い、届けて、この思いを」

 リア−フィン……お願い
 私が出来る事の中で、士郎くんだけは、悪くないと思っていた
 心の底から暗殺を楽しんでる人じゃなく、生きるための糧だった
 他に出来る事がないと思っていた
 でもね、力は使い方……だからこそ……

「リア」
「思い出した?」
「ごめん、ごめん、リア」

 羽が消えて、イアリングを元に戻す

「思い出した……俺は、1度死んでいて……」
「思い出してくれて、良かった」
「リア!!」

 私は暗い意識の淵へと追いやられるのだった








〜恭也視点〜

 終ったか……相手の声は聞えいた
 しかし、父さんが涙なぁ……意外だ
 いや、しかも、この生真面目な人がなどと失礼なことも思い浮かぶ

「にいさん?」
「違う」

 即答だ……しかも、蛍を抱いてるあたりがむっと来る

「どうした、お前らは俺を捕まえに来たんじゃないのか?」
「えっと、私は蛍さんが大変だからって来ただけなんだけど」
「そうだな……お前が、このまま蛍を連れ去るなら、容赦しない」
「そうだろうな……」

 相手は御神の剣士
 それも、父さんだ……百戦錬磨とは言わないが、不破の虎と互角に渡り合えるほどの力
 御神当主と同じように戦っていた人なのだ
 蛍は言っていた……『戦闘能力の移譲』と……
 と言う事は、強さは計り知れない
 美沙斗さんより上だと考えて間違いないだろう

「蛍は連れ出さない……でも、お前らのところに俺も置け」
「は?」
「蛍は俺が護る……絶対に誰にも渡さない
 たとえ、それが遺伝子的に息子の恭也だとしてもだ!!」

 なんで、俺?

「えっと、士郎父さんで良いのかな?」
「違う……どうせ、俺は1度死んだゴーストと変わらない
 不破士郎だが、記憶を全て受け継いだ人にしか過ぎない
 名前はおいおい違うのを考えないといけないしな」

 というか、何故に俺……いやいや、俺が何でそんな敵視されないといけなんだ?
 何故か、父さんだろう人は、蛍に俺が近づこうとすると、睨みつけるし……

「えっと、兄さんは結婚してるんだし」
「それは、過去の俺で今の俺じゃないし」
「子供も居るのですが」
「抱いたことも無いのに、親というのは似合わない」
「……とりあえず、何故に俺を敵視するのかと聞きたいのだが」
「ライバルだからだ……」

 キッパリといわれて何のと聞き返せない
 そんな気がして、ならないのだ

「え、ええ〜〜〜〜〜!!!!」
「にいさんって」

 ……むぅ、美由希と美沙斗さんが何で驚いてるのか理由がわからない……どうしたものやら

「とりあえず、連れて行くのだから、高町家で良いな」
「いや、あの、でも、高町家には今、ティオレさんやCSSの方たちが」
「知らん」

 うわっ、即答……しかも、抱いて歩いていくし
 むむっ、蛍の奴が気を失ってるからといって……しかし、でも、う〜む

「恭也、どうかしたのかい?」
「いや、なんでもないです……目の前の奴には目を離さないようにしましょう」
「そ、そうだね(何で恭也の目が怖いのだろう? 怒ってる?)」
「美沙斗母さん、恭ちゃん、いそごう(多分、怒ってる)」
「(恭也が怒りをあらわにするのは久々だね)」
「(本人気づいてないけどね)」
「二人とも急ぎしますよ」
「「はいっ」」

 だから、如何して二人ともびくびくしてるんだ?







 次へ






頂きものの部屋へ戻る

SSのトップへ



          


inserted by FC2 system