『An unexpected excuse』

   〜椰子 なごみ編〜








「俺が好きなのは…………」

 恭也は周囲を見渡し、そっと手をおいでおいでと手招きをする
 少々顔を赤くして、一人の女性が恭也の傍に寄る

「お弁当を作ってくるとは思ってこなかったぞ」
「いえ、もう食べられてしまったようですので、私のは」

 女性はそういうが恭也はその女性が持っているお弁当を取り上げる

「頼まれたことはするつもりだ」
「分かりました……今日もお願いします」

 女性が差し出したお弁当、緊張した面持ち
 そして、何かを期待するような目
 周囲に居る人たちの好機の視線に恭也と女性は気づく

「ああ、こちらは椰子なごみさんだ……ちょっとした知り合いでお昼のお弁当の味を見てくれと頼まれた」
「そうだったんですか?」
「まぁ、普段は此処で待ち合わせしてるんだ」

 恭也はそういってお弁当をあけて座る
 周囲もそういうことならと納得したが、若干考えていたりする
 何故にその弁当を食べるようなことになったのかという点だ

「あの、椰子さんはどうして恭ちゃんにお弁当を?」

 不機嫌そうに相手を見る椰子なごみ
 恭也は小さくため息をつく……お弁当をお箸で丁寧に食べていく

「気づいてないのですか?」
「確か、あれは……あんたが恭也さんの舌が凄く正確だったって話を聞いて
 料理を好きな私には渡りに船とばかりに味見を頼んだら、凄く正確だったんです
 それに、同じクラスの人を覚えてないのもどうかと」

 じっと見つめられた美由希は『え?』って顔になって考え込む
 覚えてないようであるのは明らかで周囲の人たちのちょっとした視線が美由希に突き刺さる

「確かにそんな会話を那美さんとした記憶はあるのだけど」
「そのときだと思います……そちらの先輩ですよね」
「あ、はい」

 どっちが先輩か分からない意見である
 ちらちらとなごみは恭也を見ながら話を続ける

「それで、必至に頼んで此処で食べることになったんです
 雨の日は別ですけど、私が入学してからしばらくたってからですから
 3〜4ヶ月ほどですけど」
「そうだったんですか」
「知らなかったわ」
「恭也さんはあまり他人とかかわりたくないから、此処でって事になったんですけど」

 そういって、なごみは恭也が食べ終えたのを見て、お茶を差し出す
 恭也はそれを飲み、一息つく
 なごみをちらりと見る

「ご飯の付け合せにある漬物の味が少し濃いな……後、こちらの玉子焼きは失敗しただろ?
 以前より若干だが、塩加減を間違った?」
「すみません」
「まぁ、いいが……メインのすき焼き風のものだが、メインの肉の味が薄いと思う
 もう少し肉厚を増やして行けばいい……野菜は申し分ないぞ、美味かった」
「ありがとうございます」

 ぱぁ〜と華やいだ笑顔になるなごみ
 周囲は少し驚いてる……先ほどまでの、ちょっと不機嫌そうな顔のなごみだったので
 笑顔を見ると驚きもするというものだろう
 色々な囁きなどが聞こえるが二人には届いてないようだ

「大体そんなところかな」
「ありがとうございます、明日も頑張りますね」
「期待してる」

 恭也も苦笑いだがそうこぼす
 なごみは自分の料理をしっかりと定評してもらえるのがありがたかった
 そして、恭也の味覚を信頼してるのだ

「はい、頑張って作りますね」

 新妻かのような言葉
 恭也となごみの空気は若妻と若旦那のやり取りのよう
 場所が学園の中庭というのが違うといえば違うのだが
 周囲はすっかり忘れてしまっていたことを思い出し再び聞く

「それで、高町先輩の好きな人って誰ですか?」

 恭也は『すっかり忘れてた』などとかなりひどいことを考えていたりする
 なごみの方はそんな会話をしていたと知らなかったようで、恭也を見ている
 気づいてはいけない思いに気づく
 『ああ、私は恭也さんと二人の空間の中に入ってきた、周囲に苛立っていた』と

「付き合ってる人は居ないが前提なのか?」
「先ほどの様子を伺う限り、それに、K.T.ネットワークによりますとありえません!」

 断言されてしまった恭也
 少し上を見て、見張られてたのかなどと恭也は考える
 実際は、恭也の周りに居る女性たち(忍や那美や美由希)の情報だったりするが

「いや、まぁ、いいが……人を追っかけるのはストーカーだぞ」

 恭也は一応の正論を試みる

「それに対しては謝るしかありませんが、一人一人が勝手に持ち寄った情報を元にしてますので」

 めがねをかける忍はうむと頷いてる
 恭也は大体の情報が三人から流れてると理解した

「とりあえず、付き合ってる人は居ないがここはあまり来ないほうが良い
 何より、人の悪い定評まで聞きに来る事になる……それをなごみさんも良いとは思わないだろう」

 恭也の優しさ
 それに触れるなごみ
 一生懸命に頼み、朝、昼、放課後と付きまとった自分を嫌な顔はしながらも
 その後、お昼を食べてくれる……味の評価をしてもらえる

「分かったわよ……じゃあ、恭也さんと椰子さんだっけ?
 二人の関係は?」
「今のところ友達か親友というところだろう
 そのあたりは、忍や那美さんたちと変わらないと思うが」

 恭也は無難に言葉を選んだ
 そして、周囲は納得して戻っていく……今のところ付き合ってる人は居ない……と




 全員が居ないと分かり、恭也となごみはほっと一息

「ほんと、おもてになるんですね、恭也さんは」
「いや、なごみ、今回のは俺のせいじゃないぞ」
「ええ、分かってますよ……単なるやきもちですから」

 自分から言って、うめくなごみ

「と、とりあえず、感謝します」
「あまり派手にしたくないのはお互い様だからな」
「はい」
「しばらくは黙ったままだな」
「恭也さん」

 恭也の隣で猫のように甘えるなごみ
 この姿を捉えるのは難しい
 木々の影に阻まれて近くまで行かないといけないのだ
 ただ、二人は幸せそうに身を寄り添う

「明日も楽しみにしてるが、騒がしくて悪い」
「いえ、そんな気にしないでください……言い訳あれでよかったですよね」
「パターンAだったな」
「だから、言ったのに」
「なごみだって美人だから心配なんだが」
「私は、恭也さん一筋ですよ」

 にこっと笑顔を浮かべるなごみ
 恭也もつられて小さく微笑む……ほぼない変化だが気づくなごみ
 嬉しくもあること
 本当は表情が凄く多彩に変化することに気づけたから
 恭也もなごみが優しく可愛い女性だと気づいたから、今二人は居るのだ













 あとがき
 いや、こんな感じでど〜?
 美姫「あの〜、書くペース上がったね」
 当たり前よ……これは元のキーボードで書いてるからね
 美姫「ごめん、遅いって言って」
 ま、それは良いよ……事実遅かったし
 美姫「で、此処寒いのだけど」
 ああ、大雪+窓(小)あいてる、だから
 美姫「自殺希望?」
 いんや、単なるミスだ……危うく寒さで眠るところだった
 美姫「それもどうかと……で、祈や良美やきぬは書けそう?」
 無理っぽい(どぐしっ)
 美姫「てやっ、この大馬鹿作家、此処は無理でも書けるって言うところでしょ!」
 いや、俺、無理しない人……だって大見得切って書けないのもはずかしい
 美姫「書け!」
 すでに命令系!!
 美姫「書ききれ! 指が千切れ飛ぶまで」
 ……それ、恐ろしいな
 美姫「ちょっと怖いと思ったわ」
 ま、頑張ってみるけど期待するだけ無駄だからな……まぁ、浩さんが頑張ってくれるさぁ(さわやかな笑顔)
 美姫「きもっ!! でわ、これ奪うわね」
 あの、渡すし暴力は止めて
 美姫「ストレス発散よ……何時ものことだし」
 愛がほしいです、でわ、また(美姫編考えてみるか……やっぱツンデレだろうけど)
 美姫「またね〜」 










祈や良美、きぬ。頑張りました〜(さわやかな笑顔)
……おおう! こっちには突っ込みが、突込みがないよ〜〜。
恥ずかしさのあまり、一人で部屋の中で大暴れしてしまいそうだ。
さて、今回はなごみん。王道的なツンデレタイプかな?
周囲には隠しているというパターンで、二人の時は甘々に。
今回は甘さは控え目ですかね。けれども、それもまた良し!
次は誰か楽しみにしてます。



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