――――広域武装七課第三分隊

 

 

通常の武装隊とは任務形態が異なる武装七課において、第三分隊の名前はまた別の意味を持つ。

 

 

―――見敵必殺(サーチ&デストロイ)

 

 

一切の誇張や冗談抜きに、それを実行する。

目星をつけられたらアウトである。

犯人であるか否かなど、死体になってから確認すれば良い。

 

どちらが犯罪者なのか解らない。

それが彼らを正しく評価する言葉。

目線を合わせない、すれ違う時は顔を背ける。

 

彼らにとっての殺人は、実験であったり、信念であったり、生き甲斐であったり、退屈凌ぎ。

 

 

その彼らの投入は管理局がこの件をどう思っているのか知る、丁度良いバロメーターでもある。

バロメーターと言っても、つまるところは結論が二分されるに過ぎない。

 

殺るか、殺らないか。

 

 

 

 

 

 

地形の確認も兼ねて、都心部を歩く一行。

武装七課第三分隊―――アライアンス・グラーバクは死ぬほど目立っていた。

 

醜いを通り越して人間離れした妖貌をしたドレッドノートも流石に仮面をつけて顔を隠しているが、それでも仮面をつけているだけで目立ちまくっている。それでも帽子を被るなど仮面も見えないようにしている。

 

だが、それも無駄な努力。

 

先頭を切って歩くBBが、代表格のように目立っている。

表現するならば、西部劇全盛期の時代において燦然と輝く男の中の漢―――ジョン=ウェインに、アル=カポネのようなマフィアのボスな服装をさせたと言えばいいだろう。ご丁寧に、葉巻を咥えて吹かしている。

BBの眼付きは誰が見ても尋常ではない色がある。鋭すぎるのだ。職務質問しようとして近づいてきた警官でさえ一瞥を食らっただけで足が竦んで動けなくなった。存在感が巨大に過ぎる。まるで、一国の国家元首のような、それも魔力じみたカリスマを持つ独裁者。

 

道を歩けば誰しも避けて歩くのでBBは楽だとしか思っていないが。

 

 

「何しに来たんだか・・・」

 

 

地形の確認なのだが。

個々人てんでバラバラがデフォである自分達がこうして三人固まって歩くのが根本的に間違いだろうと、三人の中で比較的常識人であるテラは思ったりする。

 

しかし、何故に今回の行動に限って三人一緒なのか不明。

BBもドレットノートも多分、理由なんか知らない。

アジトから出るタイミングがぴったり一致し、ぶらぶらと外に出たら方向も一緒だっただけだ。

あり得ない確率だが、単なる偶然。

 

だから、会話がない。

隊長の方針というよりも、隊の伝統で超個人主義のグラーバクで、会話は戦術のツールでしかない。

 

そうなると人との付き合いが大変楽である。

管理局内―――に限らず、グラーバクを殺人狂いのイカレ集団であるという認識は常識になりつつあるが、それは誤りであると思っている。

 

テラも別に殺人が楽しくて、可笑しくて、幸福を感じるからやっているわけではない。

いや、少し間違っている。訂正が要る。

殺人の結果として齎されるものが、楽しくて、可笑しくて、幸福を感じる。ちょっとした違いだが、殺人の内容によっては楽しさも、幸福もないのでやはり違う。

 

テラにとっての殺人は自分が打ち立てようとする理論の証明。一言で表せば実験。

何故戦うのか、人を殺すのかと聞かれれば嘘偽りなくそう伝える。

9割方、相手は憤慨して怒り出すものだが、テラには怒る理屈が理解し難い。だから、大抵そういう時は問い返す。

 

 

―――だったら、どういう理由なら殺人は許容される?

 

 

管理局は法の番人だ。秩序のために殺すことだってある。

要するに、最大多数のための最大幸福という奴だ。

けれども、それは組織の理念であって、個々人の理念ではないはずだ。

 

組織にとって職員は“駒”である。組織という概念を構成する絶対の論理。

機械であればただのツールだが、人間はツールになりきれない面がある。

むしろ、テラに言わせばれ駒になりきり組織の殺人命令を、組織の掲げる理念に従って忠実に実行できる奴のほうがどうかしている。命令だからと、免罪符のように振る舞って殺す連中と、自分の目的のために組織の命令を使って殺す自分の間にどれほどの隔たりがあるのだろうか。

 

まぁ、そんなこと実際に口に出せば、嫌な現実をズバリと刺されることになる。誰だってそんなことは嫌だ。そして、反応も種類はあっても大体が決まっている。

安易な即席ヒューマニストとなって、まるで自分が聖人君子であるかのような振る舞いで、テラを“間違っている”と糾弾する。そんな言葉をもらうために、本音を話しているわけでもないのに。

 

更生計画も糾弾もいらないから、放っておいてくれというのがテラの出した結論。

誰にも咎められず、合法的に殺人ができる身分なのだ。だったら、それに専心したい。

 

 

その点において、今の職場は最高の環境。

ドレットノートは惚れ惚れするぐらい、他人に干渉しない。

BBは殺人に対して自分に近い感性を持っている。殺人を奨励することが偶にあるのが鬱陶しくあるが。

隊長は隊長で、人格とか、顔とか、立ち場とか、色々あるが、実験の場を与えてくれることを考えるとありがたい。

今回何時の間にか死んでいたDセバスチャンにしても、良い腕だったと惜しむぐらいはするが、別に悲しくはない。敵前逃亡した同僚を射殺するという、規律上正しい行為を糾弾されて放逐された過去を思えば勿体ないのだろうが。

 

実に心地よい。他人が自分に向ける無自覚な侮蔑な視線など気にならない環境なのだ。

比較的常識人であるが、本職は研究者であるテラは理論の証明のためならば、それらを併せ呑める、

 

 

今回の任務で前途有望な少年と、良い感じの美女が無実の罪で死刑になるだろうが、それを笑い飛ばして酒の種にできるぐらいの神経は普通に持ち合わせていた。

 

 

「あれ?」

 

 

気づいたら、他の二人とはぐれていた。

 

 

「ま、いいか」

 

 

近くの自販機に近寄り、お財布携帯を近づければICチップの読み取り部分がない。

見ると、随分年期の入った自販機。しかも、売っている商品が一般に流通していなさそう。

 

その中で一際、テラの目を引く商品がある。

 

 

―――“どろりんこ濃厚ピーチストロベリースープジュース”

 

 

危険だ。ネーミングからして危険だ。開発したスタッフの意気込みが死ぬほど伝わってくる。

さぁ飲め、そら飲め、一気に飲め。そして、悶絶して未知を味わった上でおっ死ね。

爽やかに親指を下向きに出している白衣の集団が妄想できる。

 

かちゃりん

 

 

ああ、もうその心意気がテラの心にあるかないかのM気をバーニングさせる。

脊髄反射で硬貨を投入。無駄に連投。

自販機のはずなのに、シェーカーのようにゴウンゴウン動きながら、商品が落ちてきた。

生物が潰れるような落下音だったが、それも味わいと取り出す。

 

 

「こ、これは想像以上の・・・・」

 

 

それ以上言葉を継げない。

パッケージだけでバイオハザード寸前の危険な色合いだ。

人間なら本能的に避けて通る。しかも、どういう仕組みか賞味期限の切れる寸前。

 

これぞ思し召し。飲め、飲め、飲め。

ポリデント片手に狂猫とバンドを組んでいたひょうきんな爺さんの顔が過る。

わかっちゃいるけど、やめられない。

 

 

パック飲料なので、ストローを飲み口に差す。

あードキドキする。CEROレーティングを適用されそうな、下品な表現は自粛。

初なティーンの恋人同士がキスをするときのように、そっと震える唇をストローにつける。

そして、思いっきり内容物―――液体ではなく―――を吸い上げる。

 

 

 

あ、こいつぁ、死ねるぜぇ!!!!

 

 

 

 

 

 

「「何だ、これは」」

「・・・・・・・・・・・」

 

 

奇跡が起きた、

協調性はゼロ。ゼロはゼロ、つまりは無いってこと。

そんなグラーバクにおいて、ハモリ。

しかも、会話が成立しないBBと、会話すらしないドレットノートが、だ。

 

思わず、感涙に咽びそう。

オウ、シット!―――ではなく、おーまいごっと!!

 

 

「何って、パックジュースで作ったピラミッド?」

 

 

冷蔵庫に入りきれなかった件のジュースで黄金比のピラミッドを作ってみた。

あれから、連投に次ぐ連投であの自販機内のジュースを全部買い占めた。

恐るべしは管理外世界。流石は最後のフロンティア。

そして、人はフロンティアを拓くしかない。私はやるのだ。

 

 

「・・・・・・楽しいか?」

「そりゃ、もう」

 

楽し過ぎて笑うのを忘れちゃうぐらい。

ドレットノートは我に帰ったのか、自分の部屋に引っ込んだ。

 

「BBも一杯どうだい?」

「・・・挑もう」

 

弱肉強食のBBは、未知の飲料にも勝利する気でいるらしい。

でもさ、飲料に対する勝利ってなに?

 

 

 

「く、こいつは!!!―――ま、負けん!!―――くはっ!!」

 

 

 

 

――――サイッコォォォーーーにハイィッってヤツだぜえェェェェ!!!!

 

 

 

おかげで、アジトを移る羽目になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レティは今日中に片づけなければならない仕事を終えて、大きく伸びをする。

管理局も来期の新人が内定し、彼らのための準備もろもろを進めながら、既に次の期の採用準備を進めている。毎年のことなので、慣れはしたが仕事量が増えるのはやはりいただけない。

 

執務室を出てから時計を見ると、思いだした。

今頃、長官命令でアースラには相転移砲『アルカンシェル』が装備されている頃だ。

メールのやり取りを思い返す限り、リンディは装備に当たっての作業を見学しているはずだ。

今回の任務が思いつめる要因になりやすいことを考えれば、様子の一つも見るのが友人かと思い至る。

 

広大な管理局のあっちを行き、こっちを行き。

目的地の途上で、色々と知り合いと出会うが軽い挨拶で済ます。

その中で、挨拶だけで済ませられない人物と出くわした。

 

向こうもレティに気付いて、近づいてくる。

 

 

白練色の髪と琥珀色の瞳。

紅い靴とレザーパンツは眼を惹き、彼を見分ける上で役に立つ。

今はいつものノースリーブのハイネックではなく、金細工が施された白いディフェンシブコートを着ていた。それが、非常に珍しい彼のバリアジャケットであると気づくのにレティは少し時間がかかった。

 

 

「タールホファー参事官、任務でしたか?」

「いえ、今終わって帰還したところだよ」

「それは・・・」

 

 

参事官で出なければならない任務とは、かなりの大事。

レティの耳に届かなかったことも含めれば、隠さなくてはならない任務か。

 

 

「“闇の書”関連で、少しね。インテグラ教皇補佐官とはお会いできなかったが、何人かの大司教と面会できたよ」

「ミッドの教会本部へ行ったの?」

「今回ばかりはね」

 

 

何が今回ばかりなのかは解からないが、何か関係はあるらしい。

すると、ゼオンは不思議そうに聞き返す。

 

 

「ああ、そうか。これは知らない方が普通か」

「は、あ、え?」

「“闇の書”は本来、聖王教会の聖遺物の一つなんだ」

「え・・・それは・・・初耳ね」

 

 

リンディから聞くまで十一年前の事件に“闇の書”が関係していることを知らなかったが、それ自体の情報だけならばレティの権限で閲覧できる。

しかし、管理局のデータベースにはその情報はない。

 

 

「教会としては、象徴の一つである聖遺物が制御不能な代物というのは知られたくないだろうから、あえて公表はしていないだろうね」

「道理ね・・・けれど、どうしてそんなものを聖遺物指定してるのかしら?」

「藪をつつきたくないからね。彼らにもやんごとない事情があるのだろうけど・・・」

 

 

話し合いに行って、わざわざ相手の癇に障りそうなことは言わない。

一人そういうことをしそうな人物にこの前会った。ノイエヴァール世界の全権大使であるクレヴァニール=ヘブンスフィールならば、やりかねない。恐ろしく毒舌な彼ならば、オブラートに包んだ上品な言葉の爆弾で大司教達を心臓麻痺に追い込めるに違いない。

 

思い出して胸焼け。

相方のディアーナとのダブルアタックは辛い。

人員の貸与ができないかと打診したら、読むのに丸一日はかかりそうな提案書が送られてきたことがある。礼儀正しい文章だが、悪くとれば慇懃無礼。その大半が回りくどく無駄な修飾語句ばかりで、中身だけを読みとれば、断固として管理局に協力するつもりはなく、これ以上の人員貸与の打診は人的資源の搾取と看做すという、喧嘩腰なものだった。

 

NOを突き付けるべきときは、断固NOと言ってくる。

清々しくはあるが、言われる側にとっては堪ったものではない。

 

 

特に、聖王教会の機嫌を損ねて対立するようなことは避けたい。

次元世界最高の宗教団体であり、その信者の数は膨大なものになる。

そして、おそらくあらゆる次元世界で唯一、管理局と本気対立できる戦力を保有する仮想敵。

その聖王教会と険悪になれば、それだけで管理局は立ち行かなくなる可能性がある。何しろ、管理局の局員でさえ信者が多数居るのだ。

 

 

「まぁ、ほら・・・どうせそういう物騒な事態になったら矢面に立たされるのは、私や提督達だから」

「それ全然安心できませんから!」

「大丈夫、大丈夫」

「取って付けたように言わないでください!」

 

本当にお願いしますから。

この人に外交も任せていいんだろうかと心配。

 

「それは私も思うんだけどね・・・さっさと平の執務官に戻してくれないかな、と」

「・・・止めるべきなんでしょうけど、もはや同意しか浮ばないわ・・・」

 

悲しきは管理職か。給料減ってもいいから管理職の仕事から逃げ出したい。

 

「それはそうと、ハラオウン親子はどうしてる?」

「・・・まぁ、それなりに暗くなってはいるけど・・・参事官は知ってたの?」

「一応は。と言っても、あの頃は執務官ではなくて監査官だったから、そこまで詳しくは知らないけれど・・・クライド=ハラオウンがどういう経緯でってくらいは知ってたよ」

 

一度バレた秘密は、秘密ではない。

それでも機密事項ではある。

ついでに言えば、どこからともなくグレアムが機密を洩らしたことがバレて公然の秘密となっている。

 

「バラしたのは私なんだけど」

「って、何してんの!!!」

 

素でゼオンへ突っ込む。

 

「最終的に発覚するなら、最初にバラしたほうが良いと思って」

「余計な御世話・・・」

「そうかな?」

 

意味深に笑みを浮かべるゼオンに、レティは溜息を吐くしかない。

ゼオンを含めてだが、管理局の陰謀主義はいただけない。いただけないと思うが、よくよく考えれば自分の一端や二端は担っているわけで・・・。

 

「どうした?」

「ちょっと自己嫌悪」

「それは良いことだ」

「そんなわけ・・・」

「自己嫌悪っていうのは、自分のことが少なくともまだ好きでいられる人が一部嫌いな部分を見つけることだからね」

 

やけに重たい言葉に、詰まらされる。

 

「・・・参事官は、何か今回の事件の裏を?」

 

今回のとは、言わずもがな“闇の書”に関する事件。

是とも、非とも答えず、ゼオンは一本指を立てる。

 

 

「世界は、提督まで栄達した貴女には今更だが、優しくなんてない。いつも誰かの思惑でこんはずじゃなかった事態を引き起こされ、痛い目を見る。まぁ、その度に神様コンチキショウと罵るわけで・・・」

 

話が逸れつつあると自覚。

そこで、ちょっと真顔になる。

 

「そうならないように人は色々考えて、解らなくなると最終的には考えつくしたと口にする。実際はそんなことない。考えていない可能性がある。『そんな訳がない』『それはあり得ない』とね。辛くて不幸な現実が起きる場合は、大体がそういう可能性を意識してか、無意識に否定する」

 

 

自分からミスリーディングする。

その愚を犯した以上、しっぺ返しをくらうのも仕方なし。

ゼオンは、かつての自分の経験を思い出しながら語る。

騙されていた訳ではない。薄々は知っていた。

自分が生体改造を受けていたことを。

そして、生きていくためには人のリンカーコアを喰らわなければならない呪われた体にされていたことも。

 

 

「答えはいつも一番近くにある。遠いから解らないことは、推理の材料がないだけだ。ある程度まで揃っていて解らないというのは・・・それは罪だ」

 

 

 

 

 

 

「ってことを、言われたんだけど・・・意味解る?」

「・・・・・・謎かけの答えを、また聞きで解るほど頭良くないわよ、私」

「そうよね・・・・」

「その反応は、それで微妙に腹が立つわよ・・・」

 

リンディは拳を握りプルプルさせる。

 

「それはそうと・・・正直、私はあまり彼を信用していないから、忠告も素直に受け取れないわね」

「タールホファー参事官が?」

「彼の経歴を知ってる?」

「それは勿論というか、一応というか・・・」

 

彼の出身世界は管理局に加盟している。そして、既に長い間公人として管理局に勤めている。

自ずとプロフィールも公開されている。アライアンスのように秘匿性を高めるために閲覧できないわけでもない。

 

 

「経歴が綺麗過ぎるということもあるけれど、執務官では異質な彼が何故かフェイトさんの裁判では協力的だった・・・それも過ぎるほどに」

「それだけで?ほら、もしかしたら彼がその・・『ロのつく人』なだけかもしれないじゃない」

 

一瞬、ゼオンのママのことが掠める。

 

「ひ、否定はしないわ」

「そ、そうね・・・」

 

思い出すと、美し過ぎて胸焼けがしてきた。

 

「言葉をそのまま返すならば、それまで介在していなかった要素で、しかも善人っぽい行いをした彼こそ一番怪しいんだけどね・・・」

「それも一理あるけれど、彼がわざわざフェイトさんを搦め手に使ってまで私達に関わろうしている動機は何?」

「・・・おそらく、“闇の書”。彼自身がそうなのか、彼の属する派閥が欲しがっているのか、どちらかは解らないし、本当に欲しいのかは解らないけれど、多少は関係あると思うわ」

 

名前を出してからリンディは表情を変えない。

それが逆にレティは違和として映った。

明らかに意識して感情を抑えている。

 

(憎しみか・・・・・・)

 

 

レティも人間だ。憎しみを持たなかったわけではない。

殺人的に仕事を押し付ける上層部や、仕事のきつさに不平不満を漏らす下っ端に殺意を覚えたのは一度や二度ではない。これはあくまで冗談の域を・・・出ないわけではないが、本当に殺したことはない。一応、念のため、提督の地位にかけて。

ほんのちょっぴり、提督の職を失ってもいいから「こいつらヒィーヒィー言わしたろか?」と思ったことがないわけではない。あくまで思っただけで、実行して完遂したことはない。未遂はあっても。

 

それらの、一種仕事上やむを得ないストレスの産物とはまた別の問題。

 

愛しい者の命を奪ったものへの憎しみ。

 

 

レティには理解しづらく、理解しないほうが良いと思うもの。

性格というか、仕事の関係とか、人間関係とか、諸々の理由があって最終的に夫との離婚を選んだレティにとって、夫を奪った者への憎しみを解しろと言うが難しい。離婚した夫を愛していなかったわけではないし、離婚する時も嫌っていたわけではない。

グリフィスも離婚した理由を聞かないので特に考えたわけではないが、例えるならば長距離恋愛が自然消滅を迎えるのに近い。夫婦の絆を成立させる何かが失われてしまっていた。“何か”を説明しろと言われると困るが、とにかく失われてしまった。

 

グリフィスを失うというならまだ解るかもしれないが、それも違うのでないだろうか。

だって、子供は血縁という絆がある。恋だろうが、愛だろうが、夫は赤の他人なのだ。

両者を失うことは、理由づけは何にしろ違うのだ。

だから、リンディの気持ちは理解できない。したくないとも思う。

 

 

 

「リンディ、貴女の目的って何?」

 

 

同時に思う。

 

 

「どういう意味?」

「そのままよ。狸親父の長官は暗に自分達へ華を持たせろと言ってきてる。グラーバクだって、独自の思惑がある。参事官も、属する派閥があるのかどうかは知らないけれど、貴女が言うように企みがあるのかもしれない・・・だったら、その中の一勢力としてリンディ=ハラオウンは何を目的としているの?」

 

 

リンディは大事な友人だ。出来得る限りの協力を惜しむつもりはない。

出来得る限りは、だ。

レティとて協力の限界はある。一蓮托生で堕ちてやるには、色々背負ったものがある。

 

最終的に裁判という公の場で決着をつけられたフェイトのときとは状況が違い過ぎる。オヴニルはあくまでガルムやネロンのような凶悪犯を潰すために派遣されていた。グラーバクは違う。“闇の書”が目的かどうかは解らないが、そのために管理局の上層部にかなりの働きかけを行っている。海軍の人事権を掌握している自分でさえ、身動きを封じられつつある。

遠まわしにではあるが、リンディに今の状態で管理局の暗部とも言える見えない敵を相手取る覚悟があるのか問い掛けた。

 

結果として、“闇の書”の事件が今後の禍根を断てるレベルで解決されるのであればグラーバクの思惑に乗っても良いのではないか?

それで事件は解決できる。実行犯―――デバイスのプログラムにこう言うのが正しいのかは不明だが、ともかく封印されるか、実体を伴ったまま軌道刑務所に収監されるか。当局としては解決となり、任務も完了となる。やや釈然としないが、携わる事件のほとんどはそんなものだ。

 

上層部やグラーバクへの反発は理解できるが、それを抑えきれないほど大人ではないだろう。

 

もし、抑える理性を邪魔するものがあるとすれは他人にとっては陰惨で他愛もない復讐心。

夫の命を奪った者達へ、自らの手で鉄槌を下してやりたい。その邪魔は誰にもさせない。

そんな考えるを持っているのならば、レティも考えなければならない。

 

 

リンディもレティの遠まわしな、警告にも似た言葉の裏をしっかりと感じ取っている。

―――“組織”の中で生きている大人であることを忘れるな

―――目の前にある復讐に惑わされるな

―――それを自覚して上層部の専横を許さない構えを取るのならば、協力は惜しまない

 

 

 

「私達は・・・・」

 

 

唾を飲み込む。

 

 

「私達は、彼らがアクションを起こさなければ付け入ることができない。疑いだせばきりがないほど、私達のまわりには多くの思惑がある・・・私は、それを乗り越えたいの」

「それが目的でいいのね?」

 

 

復讐や、安っぽく不用意な正義感ではないのか。

聞かれても、リンディには解らない。今の言葉とて安っぽいものでしかないのかもしれない。

混乱していても、どこかで冷静な部分がある。

 

―――管理局が全て正しいわけではない

 

上層部の思惑に乗り続けていれば、いつかは自分達もプレシアのように残酷な裏切りを受けるのではないか?

組織の悪弊を糺すよりも、組織の悪弊によって潰されないよう予防線を張らなければならない。

 

 

「私は・・・管理局で果たしたい私の信念を貫くために、事件に挑んでいるつもりよ」

 

 

夫と共に語り合った理想。

正義でなくても良いから、救われるべき人を救おう。

 

 

「その言葉を、信じるわよ」

 

 

重たく潰すようにレティは言った。

潰されるようならば、その方が良い。見捨てはしないが、持てる権限を尽くしてリンディを今回の事件から引き離すことも考えていた。

 

 

レティは、言い残す言葉もなく気まずい雰囲気に立ち去る。

 

 

「ありがとう、レティ」

「お礼なんて、まだ要らないわよ」

 

 

手をヒラヒラさせる親友の背中に、今度は心の中で詫びる。

 

 

 

(あれは所詮、プログラム・・・人の心など解さない、死の苦しみも、護るべき大切なモノもない)

 

 

そんなものに復讐などしてどうなる。やや歪な思考のベクトルで。

そして、真に歪なことはそうであると思い込もうとしている意図。

 

 

―――そうでなければ激発しそうな憎悪と復讐を止められそうにない

 

 

フェイトが造られた存在であることを気にしていたので、人とプログラムの違いを示した。

それさえも歪な論理であると無意識に自覚している。

クロノの手前、自分が醜い負の感情を僅かでも覗かせるわけにはいかない。気付かれれば、きっとクロノはこの感情に引き摺られ、親子共々暴走する。

 

ギリギリで、踏み止まらなければならない。

 

 

外でアルカンシェルを装備中のアースラへ目を向ける。

実に、何ともタイミングが悪い。

まるで、その引鉄を引けば復讐を果たせるだろうと囁かれる錯覚さえある。

 

 

(ベルニッツ・・・・・・)

 

 

グラーバクの分隊長である、非人間的な男の姿を思い返し怖気が走った。

まさか、彼は自分の復讐心さえ見抜いて今の配置にしているのではないだろうか?

 

あり得ないようで、ちくりと針の痛みのように疑念だけが残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃ・・・ホント、今更だけど頑張れなー」

「・・・・・・・・・」

 

 

案内を買って出てくれたリーゼアリアがニャハハーと笑いながら出口を潜って行ってしまった。

残されたユーノは、シャツが肩からずり落ちそうになっている。

 

 

多い。

乏しいとは思ってもいなかった語彙はこれしかなかった。

上下共に果て見えない。

遠近法が狂っているのではないかと思うほど、円筒形の部屋は満たされていた。

 

 

管理局が世界最大と自称するのは伊達ではない。

次元世界最高のデータベース。その名も“無限書庫”。

書庫というには、雑然としていて物置に読み古した漫画本をしまっているようなものだが、桁が違い過ぎる。

データベースでありながら未整理。誰が何のために膨大という言葉では到底足りないほどのデータを収集し、未整理のまま放置したのかも不明。今も、管理局の職員が細々と整理を行っているが、整理するよりも先にどこからともなく収集されてくるデータの方が多いため、一向に捗っていない。

 

 

「ホント・・今更だよ・・・」

 

 

後悔先に立たず。先人の言葉は正しい。

この中から闇の書に関する資料を探すだけで、生涯が閉じてしまいそうな予感。

 

 

「あーでも、やるしかないわけで・・・男の子って辛いよね」

 

 

吐いた啖呵を引っ込めるわけにはいかない、男の子の端くれ。

いくら淫獣とか、Mショタとか、不名誉な名称で呼ばれようとも。むしろ、その汚名を返上する勢いで。

 

 

「管理局も、名前に管理ってついてる割には、書庫の管理とか杜撰だよ」

 

 

ある意味で揚げ足取り。それでも正しい。

顔をパンパンと叩いてから実はそれほど信じてない根性を注入。

右手の袋には、徹夜のお友である各種グッズが揃っている。

 

 

「よし、始めよう!」

 

 

周囲に空間モニターを展開させ自分の魔力と接続。

スクライア一族で使っている走査魔法を調査対象に定めた棚へ打ち込む。

 

元々の用途は遺跡内部の調査用。事前に内部構造を調査することで、危険なトラップや何があるのかを調べるのが目的の魔法。一応、スクライア一族特有の魔法になる。

今回はその走査魔法の応用による、検索魔法というべきものになっている。視覚的に見るのではなく、魔力をデータ化された本へ浸透させ、キーワードを検索する。機械と違ってその精度は使用者であるユーノの集中力に依存するが。

 

 

これならばイケる。

 

 

そう思っていたユーノは二日後に、現実というやつを思い知らされる。

 

 

 

「減らない・・・出てこない・・・」

 

 

明らかに疲労困憊。ユーノは眼の下に隈まで作っているが、それ以上に表情から生気が抜けていた。

思っていた以上に成果が上がらないどころの話ではない。

自分の方法が絶望的な効率の悪さであることに気づいた。

 

 

「集中力に左右されるんじゃ、確かに効率悪いよね・・・んー、難しいところかな」

 

 

様子を見に来てくれたリーゼ姉妹からは、疲れ切った顔を苦笑された。

ある程度こうなることを見越していたそうだが、予想以上に頑張り過ぎたユーノの顔は、それはもう酷いものになっていた。

 

リーゼ姉妹としても、慰め方に困る。

これがクロノのような努力する凡才ならもっと努力しろで済む話なのだが。いや、実際はそれでは済まないこともあるが、基本的にクロノはそれで何とかなってしまう。最初から才能の無さを努力で補おうとする子は、言っちゃ悪いが扱いやすい。

そういう意味ではユーノ=スクライアという少年は無駄に扱いが面倒臭い。中途半端に才能に恵まれている。しかも、努力はしてもクロノのように才能の無さをバネにした努力でもない。それで何とかなってしまうほどの才能はある。けれども、人生の中で自分の殻を破るどころか一族の使命というレールに乗っかり、順風満帆の人生を送ってきている。

 

9歳そこらの少年に順風満帆の人生というのもどうかと思うリーゼ姉妹だが、それはそれ。

彼にとって、ハードルという奴は越えて当たり前もの。少なくともこれまではそうだったと二人は判断する。

 

 

「何ていうか、君のそういうところはクロスケと似てるよね」

「僕とクロノが・・・?」

「あ、今嫌そうな顔したな?」

 

 

ニヤリと笑って指摘されると、ユーノはバツが悪そうにする。

責めたわけでもないし、別に褒め言葉でもない。

“大人”にとってのくだらない悩みは、少年少女にとっては真剣な悩みでもある。

 

 

「焦らず、じっくりとやることだよ」

 

 

似ていても、馴染みの薄いユーノの悩みを理解してあげることはできない。

冷たくもあるが理屈。余計に混乱させるだけという心遣いと、よく知らない人の悩みまでは背負えないという素直な心情がある。悩んでいる人間を放置することになっても、割り切ってしまう。

 

それがいつもの二人なら違ったかもしれないが。

 

 

 

かくして、ユーノはドザエモンになっていた。

精度を保ちつつ速度がガタ落ちとなった検索魔法を走らせながら。

モチベーションが下がると人間ダメになる見本。

 

本人は気付いていないが、何でも自分でやってきたユーノは人への相談の仕方も知らない。

その点では、悩みを察してくれる相手の居るクロノやなのはとは抱え込むところは同じでも、決定的に違った。二親という、絶対的な味方であるはずの存在を欠いたことがその結果を齎していた。

 

 

 

カツン

 

 

検索魔法が何かに接触した。

キーワードを捉えたのではなく、同種のものと接触した感じ。

 

 

 

「おやおや、困るじゃないか・・・」

 

 

体を起すと声がする。ユーノの視線の先には、見るからにうだつの上がらなさそうな中年男。

 

 

「人の検索エリアにまで手を出されては困るんだが」

「あ、すいません・・・」

 

 

言ってから実に条件反射で反省の色のない謝り方だと思った。

自覚があれば、相手にはよりそれが伝わる。

 

 

「誠意がないのは、まあいいさ。僕もそんなことは期待していないしね」

 

 

薄ら伸びる無精髭そのままというか、どことなく軽い。

 

 

「面白い設計の魔法だから興味はあったけど・・・もしかすると、君はスクライアの人間かな?」

「・・・どうしてですか?」

「似たような設計内容を昔見たことがあってねぇ・・・遺跡走査用の魔法を応用したわけか。実に面白い。ユニークだね」

 

 

中年男はセンスの欠片もない丸眼鏡を押し上げる。ずれてもいないのに押し上げるその仕草は癖なんだろうと、ユーノは思う。思ってどうでもいいことだと切り捨てる。

 

 

「けれども、残念だ」

「え?」

 

 

残念という言葉が突き刺さる。

まるで切り捨てた報復であるかのように、意味も解らずユーノの心を揺さぶる。

 

 

「さて・・・続きをやるかね・・・ふわぁっ・・・ふぅっ・・・」

 

 

中年男は、凝り固まった首を揉み解しながら背を向ける。

欠伸を噛み殺すこともなく流れのままユーノとの会話を、関係を打ち切ろうとする。

 

 

「待ってください」

 

 

大きな声を出すわけでもない。

ユーノは反射的に呼び止めていた。

 

 

「何かな?」

 

 

だみ声、と言われても仕方ない声が何故か心を竦ませる。

声というよりも、彼の心の発露に怯えている。昔なら気付かなかったかもしれない。

本能的に、目の前の冴えない、汚い、うだつの上がらない中年男がおそらく怖い存在だと。

 

 

「僕の何が・・・残念なんですか?」

「いやいや、失言だったよ。気にすることでもない。そうそう、気にすることは無駄だよ」

 

 

軽く不格好で、似合っている愛想笑いであからさまに誤魔化す。

神経を逆なでする。苛々してくるので、その愛想笑いを見ていたくない。単純に見下されている。

 

 

「僕の何が残念なんですか?」

 

 

もう一度、同じ内容をハッキリと問う。

中年男はうんざりと言った様子を隠そうとしない。失言を認めた言葉に誠意がなかったのは、彼なりのからかいだと後々になるまでユーノは気付かないが。

 

 

「知っても、面白くも何ともないのに随分と熱心だねぇ・・・ただ、熱心だからってどうなるものでもないよ?僕は話したくないし」

 

 

最後が本音なのは間違いない。

 

 

「ほらほら、無限書庫の探し物をしたまえ。子供の相手をしている暇はないんだ」

 

 

それが京都で言うところの「ぶぶ漬けを出す」という意味であるのは、ローカルネタ。

やはり本音を隠さない。外見がダメダメなために、見下されると腹が立つ。

ガルムが相手であれば反発よりも先に恐怖がくる。

 

 

だから、

 

 

「僕のどこが残念なんだ!」

 

 

ユーノは吠えた。

そして、泣いた。

 

 

「全部さ」

 

 

中年男は、バッサリと切り捨てる。

丸眼鏡越しの瞳は変わらない。飽き飽きしたように、ユーノを見下す。見下す以外に価値がないかのように。

 

 

「全部って・・・何だよ・・・!」

 

 

男が憎いわけではない。とっくに気付いている。

 

 

「僕に残念がられる理由があるっていうのか!!」

 

 

本当に憎いのは自分。

見下されていながらどこかでそれも仕方ないと、逍遥と受けている情けない自分。

無限に用意できる理由で、受けて入れている自分が憎い。

自分を憎むことで、受け入れた情けなさを誤魔化そうとする自分が、また憎い。

 

 

「褒め言葉だよ、残念っていうのは」

「何が――――!!」

「想念が残る・・・故に残念と呼ぶ。まだ可能性の芽はあるということさ。どんなにか細くても、ね」

 

 

丸眼鏡を押し上げる。

 

 

「良い意味で捉えるなら、君は自分というものをよく把握している。まぁ、それも不十分なのだろうが、少なくとも年齢に比してはね」

 

 

もしも、この場に魔導科学に詳しい人間が居れば絶句しただろう。

ユーノが話している相手が何者か。

レティならば、即座に憲兵隊を呼び拘束させるだろう相手。しかし、既に法の外に出てしまった相手。

 

 

男はコツコツと自分の頭を人差し指で突く。二度、三度と。

眼鏡は逆行で瞳を隠し、さも嬉しそうに開いた口は裂けたように三日月。

 

 

「君に足りないものは“執念”だよ、少年」

 

 

ほんの数か月前。十数年の月日をかけ、逆恨みの復讐を完遂させた男は言った。

 

現代における最高の頭脳の一つ。

次元世界で五指に入る男は、笑う。

 

 

「気が狂っても目的を達成する執念が、絶望的に足りないね」

 

 

世界で唯一、禁断のデバイスを創造できる男。

ユーノは間違いなく狂ったキチガイから眼を離せなくなっていた。

 

自分が欲するものを目の前にぶらさげられたように。

 

 

自然と、口が動いた。

 

 

 

「僕を・・・弟子にして、ください」

 

 

 

それが、少年と男の邂逅。

男が狙ったわけでもなく、少年が欲したわけでもない出会い。

狂って力を手に入れた科学者と、力が欲しくて狂っても良いとする少年の出会い。

 

今は変えられずとも、未来を変革する出会い。

 

 

 

 


あとがき

 

 

会話文が少ないのは仕様です(挨拶

 

 

才能があっても心が弱い。

才能があっても時間が足りない。

凡才を知り尽くすがために、天才を追いかけない英才。

努力をしても天才には届かないと知りながら止まらない凡才。

 

誰が誰か、まぁ解るかもしれません。

タイムリーというか何というか、FLANKERさんところのユーノ君も劣等感に悩む時期のようです。

ブームですか・・・え、違う?

 

綾斗は子供達に甘くはありません。

 

無限書庫を舐めるな小僧。言っちゃ何ですが、ユーノ如きにどうこうできるならこれまで誰もできないというのはアレなんですよね。つまりは、ユーノって奴は500年に一人の天才と。そんなわけねーだろうと。

ヘイトと言うよりは、リバースの話全体で言える「世界のレベルの高さ」っていうものの一つです。

 

もし、それらを飛び越えようとすればそれなりの代償を払うことになります。

リバースであれば異常な才能のせいで、永遠に大人へなれなくなってしまったユアンのように。

そういう意味ではリバースのコンセプトは「反面教師」なのかもしれません。




無限書庫に梃子摺るユーノの前に現れた一人の男。
美姫 「この邂逅が何を齎すのかしらね」
うわー、ドキドキするな。
一体全体、どうなっていくんだろう。
美姫 「早くも続きが気になってます」
次回も楽しみにしてます。
美姫 「待ってますね〜」



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