『TRIANGLE HEART BEAT 〜三人目の『不破』の物語〜




第六話 −BRAND NEW DAY WITH BRAND NEW FAMILY

 

再会記念のパーティーの翌朝早く、イチは恭也と美由希の朝の鍛錬の誘いを断って二人よりも早く、学校で必要なものだけでも取りに戻るとの事で、朝食までには戻ってくると言い残して一度高町家をでた。

恭也と美由希はいつもどおり神社での早朝鍛錬へと向かう。

 

「ねえ、恭ちゃん。」

 

ランニングでむかう途中に美由希が恭也に話しかける。

 

「お兄ちゃんってどれくらいの実力持ってると思う?」

 

「そうだな、正直なところまったく分からん。」

 

「え!?恭ちゃんでも分からないの?」

 

「ああ...まったくとらえどころが無い。あいつと話しているときと同じ感覚だ。」

 

そういって考え込んでしまう恭也の真面目な顔をみて、多少頬を染めてしまう美由希だったが、鍛錬中だとすぐに思い直して話をつづける。

 

「でもそうはいったってまったくって...恭ちゃんが?」

 

「ああ、本当にまったくだ...ただ勘のよさと度胸がお前以上なのはたしかだ。」

 

「それはどうして?」

 

「実はな...昨日、パーティーで何度か殺気をぶつけてみた。」

 

「え゛!?恭ちゃんそれやりすぎなんじゃ...」

 

「ああ、そうは思ったが...なんというか、試してみたくてな。」

 

「...それでお兄ちゃんはどうしたの?」

 

「それがな...微笑みかえされた...」

 

「何それ!?恭ちゃんの殺気受けて笑ってたの、お兄ちゃん!?」

 

「ああ、しかも余裕で歌い続けられた。」

 

「...信じられないけど...でもお兄ちゃんならありうるかも...」

 

「そうだな、たしかに昔からよく人の気を殺ぐやつだったし...まあ、今晩は一緒に鍛錬するらしいから、そこで分かるだろう。薫さんたちも来るとかいってたし、今晩はなかなか密度の濃い鍛錬になりそうだ、っとついたぞ。」

 

話し込みながらいつの間にか神社の裏に到着した二人は、そこでしばし呼吸を整える。

 

「よし、とりあえずは今に集中だ。はじめるぞ。」

 

「はいっ!!」

 

 

 

鍛錬を終えて高町家に戻った二人を最初に迎えたのは味噌汁と焼き魚の香りだった。

 

「む、和食ということは今日の朝は晶か?」

 

「そうみたい。でもそれにしてもここまで和食らしい和食の香りもひさしぶりかな?」

 

「そうだな。でもやはり日本人である以上、こういう匂いは食欲をそそられるな。」

 

などと渋めの会話をしながら食卓のほうへと様子を伺いにいくと、レンがキッチンを除き見るように隠れていた。

何事かと二人で顔を見合わせてレンに後ろから声をかけると、

 

「あ、おししょー、美由希ちゃん、おかえりなさい〜。」

 

と少し複雑な笑顔で挨拶を返してきた。

 

「どうしたの?レン。こんなところに隠れて。」

 

「晶と朝食を作っているんじゃないのか?」

 

「それがですね〜...まあ、ちょうみてください。」

 

いわれてキッチンを覗くと、そこには晶のほかにイチもいた。

しかもよくみると晶がやっているのは食器の準備のみ。弾けんばかりの笑顔で作業中だ。

 

「どうなってるんだ?これ。俺にはイチが作っているように見えるんだが?」

 

「そうなんですよ〜。なんやくわしいことはわからないんですけど、起きてきたら二人であーなってて...晶には「お前、今朝は休んでていいぞ」なんて笑顔で言われてしもて...」

 

「...まあ、あんな晶みてたらあそこにはいって手伝おうとは思わないよね〜。」

 

「そうなんですよ〜。んでなにもやることなくなってしまって、ここで覗いてたっちゅーわけです。」

 

「?なんだかわからんが、とりあえず先に汗を流して来い、美由希。もうすぐ出来上がりそうだしな。レンもせっかくなのだからのんびり出来るのをまっていたらどうだ?」

 

「はーい。」

 

「そうします〜」

 

 

暫くして全員学校へ行く準備も整い、なのはも起きてきた頃にはフィアッセも含めて全員が何事かとキッチンを眺めている。そんな視線もお構いなしに魚の焼き加減を見るイチと、それにあわせた皿を用意している幸せそうな晶。

 

「晶ちゃん、焼き鮭のお皿お願い。あと味噌汁椀も。」

 

「はい、いまもってきまーす!あと“ちゃん”はやめてくださーい。」

 

「ごめんごめん、じゃあ晶、全員そろってるよね?もってっちゃって。」

 

すでに観客に気づいていたらしいイチは、晶に盛り付けた焼き魚を渡す。

気が付いていなかった晶は一瞬固まったが、すぐに思い直して、

 

「はいはいみなさん、席についてくださーい。」

 

と終止幸せそうに朝食を運んでいく。

そしてあれよあれよという間に食卓には全員分の焼き鮭と味噌汁、納豆に焼き海苔、そして大きめの皿に盛られた漬物が並べられる。

 

「いやー、なーに?今朝はイチ君が作ってくれたの!?桃子さんうれし〜わ〜♪」

 

朝からハイテンションで食卓につく桃子に続いて次々に自分の席に着く。

 

「あ、イチさん!こっちどうぞ!」

 

晶が自分のとなりの席をイチに勧め、全員が席に着くと、

 

『いただきまーす!』

 

と声が響き、皆が一斉に焼き魚に手をつける。

そして満場一致な感想。

 

『おいしい!?』

 

「それはどうも。お口にあってよかったです。」

 

さらっと流して食事を続けるイチを全員が信じられないものでもみるような目で見つめる。

さすがに全員に見られて居心地の悪さを感じたのか、イチは箸を止めると、

 

「どうかしましたか?」

 

と軽く微笑みながら首をかしげる。

その仕草を見て程度は違えど頬を赤く染める女性人をいぶかしげに見ながら、恭也が代表して口を開く。

 

「いや、いろいろ聞きたいことはあるんだが...どうしてお前が朝食作ってたんだ?」

 

「?どうしてって...家から戻る途中で美味しそうな鮭が売ってたから買ってきて、そうしたらまだ誰も起きてなかったから...だめだった?」

 

「いや、そうではないが...では晶が手伝っていたのは?」

 

「ああ、それは...」

 

「始めは俺がやるっていったんですよ。でも今日だけやらせてっていわれたんで、勝手が分からないだろうと思って食器とかを...」

 

「でも晶ちゃん、これすっごく美味しいよ?」

 

「うん、味噌汁もええだしでてるし...」

 

「お漬物も美味しいわぁ〜♪」

 

Oh!海苔もちゃんと軽くあぶってあるよ!?」

 

そういいながら赤面状態から復活し、食事を再開する女性人。

 

「うむ、たしかに芸が細かいし、味も申し分ない。俺好みの和朝食であることは事実なのだが...なぜ、晶の手助けなしでここまでできるんだ?お前。」

 

食事に大満足しながらもある意味当然の疑問をぶつける恭也に、ほかの皆も箸を進めながら耳を立てる。

 

「なぜって...一人暮らししてたし、やる気があればこれくらいは出来るよ?さすがに。」

 

イチの、それがどうかした?、といった表情から繰り出されるある意味無情とも言える一言に、なのは以外の全員が一斉にある人物を見てため息をつく。

 

「「「「「......美由希(ちゃん)」」」」」

 

「...だいじょうぶだよ、お姉ちゃん。なのはもまだ出来ないから」

 

「うぅ〜、なのは〜」

 

「一緒にイチお兄ちゃんに教えてもらおう?」

 

それまでなのはのフォローを微笑ましげに眺めていた全員の周りの空気が二言目で一瞬で氷結する。

なのはとイチがはてなを浮かべながら見回すこと十数秒、いちはやく氷解した恭也がなのはを静かに諭しだす。

 

「...いや、なのは。美由希は忙しいみたいだから一人のときに教えてもらえ。」

 

「そ、そや、美由希ちゃんは剣を磨かんと...」

 

口々になんとか美由希に料理をさせまいとする高町家一同。こういうときの晶とレンは息もぴったりで、仲良しそうにみえる二人になのはもご満悦になり、先ほどまでの話題を忘れてしまう。

なんだかんだでまたしてもうやむやにされてしまう美由希の料理の話題に本人一人、いじけて隅でうずくまりながら漬物をかじる。それを全員が見てみぬ振りをしていると、見かねたイチが近寄っていって小声で声をかける。

しばらくすると美由希は満面の笑みで復活し、食卓に戻ってくる。同じく席に着くイチを皆で暫く不思議そうにみていたが、誰も復活の理由について問いただす勇気は無かった。

 

 

 

「イチお兄ちゃん、お兄ちゃん、お姉ちゃん、晶ちゃんにレンちゃん、いってきま〜す!」

 

そういってバスの窓から身を乗り出すようにして手を振るなのはに、

 

「いってらっしゃい、なのはちゃん。落っこちないようにね?」

 

「はーい!」

 

恭也たちは手を振って返すだけなのだが、イチだけ律儀に返事を返している。その様子を微笑ましげに見る恭也たちだったが、ふとレンがあることに気づく。

 

「あれ?今なのちゃん、お師匠よりも前にイチさん呼んでませんでした?」

 

「あらら?なのはの中で優先順位が変わっちゃったかな?」

 

レンの発見で恭也をからかおうとする美由希の頭を、恭也は捕まえて拳を押し付ける。

 

「...なにがいいたい?我が妹よ?」

 

「イタタタタタッ!ちょ、恭ちゃん痛いっ!!い、いや、ちょっと本気、それ本気で痛いって!!!」

 

その様子を、やれやれまたか、といった表情で晶とレンが見ていると、なのはのバスを見送ったイチが恭也をとめる。

 

「まあまあ、冗談なんだからそのくらいにしてあげなよ、恭也。それに美由希ちゃん、なのはちゃんはそんな子じゃないってわかってるでしょ?」

 

「む、そうだぞ。あいつは家族に優先順位をつけたりしない。」

 

「わかってるよ〜。ちょっといってみただけじゃない。」

 

そういって放してもらった頭をさすりながら涙目で訴える。

そしてふと、気がついたようにイチに問いかける。

 

「それにしてもお兄ちゃん...結局ウィッグとったまま学校行くの?」

 

たしかに昨日の翠屋以来、イチは一度も付け直すことはしていない。

 

「あぁ、もう必要ないから...でもつけてたほうがいいかな?まあ、先生とかは事情を知ってるから問題にはならないはずなんだけど...」

 

「...いや、そーゆー意味でいったんとちゃうおもいますよ?」

 

「まあ目立つって意味じゃ同じような気がしますけど...」

 

「?...まあ銀色交じりって目立つだろうけど...」

 

「いや、そういうことではないと思うぞ?」

 

ついに恭也までが相槌を打ち始める。

すると今度は美由希たちが驚いた顔をして、

 

「えっ!?恭ちゃん、私たちが何を言いたいかわかるの!?」

 

「師匠(おししょー)、わかるんですか!?」

 

と恭也に小声で詰め寄る。イチが怪訝な顔をしながら前を歩いているが、特に気にするようでもなく歩き続ける。

 

「...なにか馬鹿にされているような気がするんだが...コイツの容姿の事をいってるんだろう?お前らに言われなくても先ほどから徐々に視線が増えているからな。」

 

「いや、まあそうなんだけど...」

 

(((自分に向いてる視線には気づかないの?)))

 

三人の心の声が一つになったとき、更なる追い討ちが襲い掛かる。

 

「それにしても恭也、あいかわらずもてるよねぇ。登校中だけでこんなに視線が...」

 

のほほんとした口調で言うイチに対して、三人の気持ちはまたしてもシンクロ率100%を示した。

 

(((この人もか...)))

 

心の中でつぶやいてため息をつく3人をみて、恭也とイチはお互いに顔を見合わせて怪訝そうに首をかしげるのであった。

 

 

 

そして教室内。

結論から言うと、高町家の3姉妹(?)の予感は的中していた。

校舎に入ったあたりから視線だけでなく人だかりまでできはじめ、最後に美由希と別れたあたりからあからさまに女子生徒たちが接近し始める。赤星と途中で合流したあたりでその量はさらにふえ、そして教室にはいるとクラス内の生徒たちがざわめき、付いてきた女子で廊下がごった返す、といった事態だ。

さらにたちの悪いことに、この三人が三人ともこの事態をほかの二人の所為だと思っており、自分は関係ないとばかりに我関せずを貫いて話し続ける。

そのざわめきを打ち破ったのは事情を知っている二人の女子だった。

 

「恭也、赤星君と狼村君、おはよ〜。」

 

「おはよー、狼村君!赤星君と高町君もおはよう。」

 

人ごみを掻き分けて入ってきた忍と亜子はそれぞれ対照的な挨拶をする。

 

「おはよ、亜子。朝から元気だね〜。忍は...ゲームで完徹かな?」

 

「ごめいさつ〜、なんでわかるかな〜。やっぱRPGってなかなかやめるタイミングがねぇ〜。」

 

「またか。まったく懲りないやつだな。」

 

イチが加わってもまったくいつもの調子で話し始めるおなじみの四人だったが、さすがに無視をするのに限界を感じたのか、赤星が

 

「ところで高町、今日はやけに注目を集めてないか?まあ、原因がわからなくもないんだが...」

 

「...そうだな、俺もたぶんこうなると思ってはいたが...」

 

「...まあ、今回はさすがの恭也のわかるわよね〜...」

 

「でもなんか本人が微妙にわかってないみたいだよ?」

 

亜子の言葉に4人が一斉にイチを見るが、やはり本人は分かっていないらしく、首をかしげている。

 

「?...髪の毛?」

 

「「「「はぁ〜...」」」」

 

「?...ああ!そうか、みんな僕が誰だかわかってない。」

 

「あ、いや、まあそれもあるんだけど...」

 

「...なんか恭也が一人増えたみたい...」

 

「そうだな、高町よりも、なんていうか...あれだが...」

 

「...それはほめていないな?」

 

「なんなの?...まぁ、いいや。そろそろHR始まるから席にもどるね?」

 

そういって自分の席に着くイチ。それをみてしかたなく全員自分の席に戻るが、恭也以外は席に着いてからもイチのほうを見続ける。とくに忍は、なにか面白いことが起きないかと眠気もどこ吹く風で目を輝かせている。

するとその甲斐あってか、勇気ある生徒が一人がイチに近づく。

それに気が付き顔を上げると、ちょうどその生徒と見つめあう格好になる。

 

「ねえ、ちょっと?」

 

「はい?ああ、渡良瀬...おはよ。」

 

目の前に立っているのは渡良瀬というかなりノリの軽めのクラスメイト。実はれっきとした男なのに女子の制服を着ていても誰にも文句を言われない、美少女のような美少年だ。

 

「あ、はい!おはよう!!...じゃなくてそこ、狼村君の席なんだけど...」

 

「え?うん、そうだよね。」

 

「...じゃなくて、だから...ああ、もう!なんて聞いたらいいのよっ!?」

 

「どうしたの?僕になにか...って亜子?」

 

渡良瀬を下から覗き込むように見ていたイチだったが、横から亜子の視線に気が付くと、そちらを向いてきょとんとした顔をする。その普段とはかけ離れた幼く見える表情に顔を赤くするが、何かを思いついたような顔をしながら近づく。

 

「ちょっと、渡良瀬になにしでかしたの?」

 

「......何かしたわけではないよ...ただ別れ話を切り出してみただけ。もうあきちゃってさ〜。」

 

とっさに亜子の意図に気づき、話をあわせるイチ。すると渡良瀬までも話をあわせ始める。

 

「そ、そんな!?私が男でもそんなこと関係ないって言ってくれたのにっ!」

 

「あんたって奴はっ!今度は男にまで手を出したの!?この前忍を散々弄んだばっかりじゃない!」

 

「あれは別に弄んだわけじゃない。高町恭也に振られて落ち込んでたから声かけたら向こうから誘ってきたんだ。」

 

『えぇ!!!?』

 

「「はぁ!?」」

 

またまた出た爆弾発言に聞き耳を立てていたクラス全員(+廊下の女子)が叫び声をあげる。そしてそれに被って今の今まで面白そうに眺めていた忍ととばっちりを食った恭也の声が一際大きく響き渡る。

 

「それにあの時は僕だけじゃない。むしろ赤星勇吾のほうが...」

 

「お、おいおい!!」

 

安全圏にいたはずの自分まで巻き込まれて赤星も近寄ってくる。

 

「さっきからおかしなこと口走ってんだ、お前らっ!っていうか俺まで巻き込むな!」

 

「そうよっ!なんで私が恭也にふられてんのよ!私は内縁の妻なんだからねっ!」

 

「内縁の妻にした覚えは無いが、かといってそんなことした覚えも無いぞ。」

 

先ほどのメンバーが勢ぞろいである。ただし話の内容が内容だけに5人以外には緊迫した空気がだだよっているように見えている。

 

「だいたい藤代、お前は渡良瀬さんを助けようとしたんじゃないのか?」

 

「そうだったんだけどさ、昨日のこと思い出してまたやってみたくなって...ほら、赤星君も高町君もこういった冗談にはつきあってくれないじゃない?」

 

「じゃあ、私は完全にとばっちりじゃない。」

 

「だってあたしは弄ばれるのいやだもん♪」

 

「もん♪じゃない!ったく...もういいわ、ちゃんとフォローしときなさいよ?」

 

「はいは〜い♪」

 

「イチ、お前もだ。あまり冗談を大きくするな。だいたい...」

 

「ごめん、勇吾、恭也。」

 

もう少しきつくいうつもりだったが謝罪されてしまってタイミングを逃した恭也と赤星。

しかたない、と肩をすくめて大人しく戻っていく。

あまりにあっさり終わってしまった事にクラス全員(+廊下の女子)が完全に肩透かしを食らった形になったが、今までの展開を間近で楽しんでいた初めの勇気ある少女(?)、渡良瀬さんが再度質問を開始する。

 

「君、なかなか面白いねぇ。顔もかっこいいし...私といいこと、し・な・い?」

 

「なにいってんだか...僕はそっちの趣味は無いよ。それよりなんだったの?」

 

「ちぇ、結構本気なんだけどな...まあそれは追々。それでさ、えっと...何聞こうとしてたんだっけ?」

 

「何でそれを僕が知ってると思うの?」

 

「彼が誰なのかってことじゃないの?」

 

当初の目的どおり、亜子が助け舟を出したその瞬間、半径約5メートル範囲内の恭也たち以外の生徒の心の声が一致した。

 

(そのとおりっ!あんたはえらいっ!!!)

 

「そう、それよっ!当然のように狼村君の席に座るきみ、誰なの?」

 

その質問に、当の本人はまだ隣に立っている亜子と顔を見合わせると苦笑いを浮かべ、

 

「やっぱりわからない?僕だよ、狼村。狼村一太郎。」

 

『...え?』

 

複数の人間が同じ音を口から発する。聞いた本人は、ぎぎぎっ、と首を亜子の方に向ける。

それに対して亜子はにっこりと笑って、

 

「さっきから私たち、そう呼んでるじゃない」

 

そして再度イチのほうを向くと、イチは鞄の中から黒いものを取り出して被って見せた。

 

『え゛!?』

 

そして再度取り外して鞄にしまう。

 

『ええぇーーーーーーーー!!!!』

 

全員がそれを理解した瞬間、クラスの窓ガラスがすべて割れてしまわんばかりの絶叫がこだました。

 

 

 

「ってわけで大変だったよ。」

 

昼休み、高町家の全員と忍、赤星、亜子と那美は全員で中庭にやってきてそうそう、イチはそういいながら疲れたように腰を下ろす。

そこにいたるまでは、おそらく3年生組にとってこれまでで一番濃い数時間だっただろう。

なんとか叫び声によるガラス窓破壊を免れた教室は、しかしそれからクラスの合間の休みのたびに人であふれかえるといった現象に見舞われた。

髪の色に関しては、担任の教師からの説明で全員が納得したため、そこまで問題にはならなかった。ウィッグに関してもそれを隠すためということで問題はなし。

しかしながらどうにも出来ないこともある。

もともと恭也と赤星がいることでどこのクラスよりも女子の発生率の高いこの教室だったが、イチが突然のように現れてしまったことで、大惨事一歩手前状態に陥っていた。

いってみれば某学園に神界と魔界のプリンセスが転校してきたとき状態の女の子バージョンといった感じだ。

転校生に質問攻めのごとくイチを取り囲み、近くにいた恭也と赤星も取り囲み、それを阻止しようとしていた忍と亜子も取り囲まれ、しまいには「5人の関係は?」などといったすでに趣旨すら忘れたような質問まででてきた。

そしてようやっと昼休みになったと思ったら、今度は「お昼いっしょに食べませんか?」が続出。特筆すべき点は今回3人組の女の子が非常に多かったということであろう。理由は言わずもがなである。

それらをやんわりと断りながら男三人は忍と亜子を連れ出し、学食に向かおうとしていた美由希と那美を捕まえ、そして中庭で晶とレンと合流したというわけである。

ちなみにあきらめ悪くまわりをかなりの人数の女子生徒が囲んでいたりする。

 

「やっぱりそうなりましたか〜。俺もレンと話してたんですよ。ちゃんとこられるかなって。」

 

「そうです〜。あやうく脱線して来られる、来られないの賭けになるところでした〜。」

 

「で?それはそうとなんで私たちまで連れ出されたのかな?」

 

と忍が当然の質問をする。亜子は何気に満足そうだが、忍は放置することにしたらしい。

 

「そうだよ。はやく購買いかないとろくなものかえなくなっちまう。」

 

と同じくつれてこられた赤星も忍に同意し、那美も後ろでうなずいている。

 

「昼飯の心配は無用です!なんと、イチさんと俺で全員分弁当用意しました!」

 

そういって晶が朝からもっていた妙に大きな包みを開ける。そこにはまるでお花見用とも思えるほどのサイズの重箱が重なっていた。

 

「...お前朝食だけじゃなくこんなものまで作っていたのか?」

 

「うん、今日は昨日の御礼に朝御飯をと思ってたら早く起きすぎてね。それならどうせだから学校の皆にもと思って晶に朝御飯の用意の前に手伝ってもらったんだ。」

 

「そか、それで晶今朝ご機嫌やったんやな〜」

 

「ほえ〜、これ全部二人で作ったの?」

 

「晶の腕前は知ってるけど狼村君も料理するんだ?」

 

「ああ、今朝の朝食もなかなかのものだった。なあ、晶、レン?」

 

「ええ、レンと一緒にやるよりもスムーズにいきましたし。」

 

「味も申し分なかったですよ〜」

 

「それはすごいな。晶とレンちゃんがそうまでいうとは。」

 

「ううぅ、私の立場がぁ〜」

 

「美由希さぁ〜ん...」

 

「...まあいいから食べようよ。晶、割り箸と紙皿だして。」

 

そういいながらイチは重箱をあけていく。中身は肉じゃがや筑前煮、一口おにぎりなどの和風のものや、サンドウィッチや一口ハンバーグ、ポテトサラダなどの洋風のものまで、本当にパーティー料理といった感じだった。

 

「...これ全部朝やったんちゃうよな、晶?」

 

「いや、ほとんどやったぜ。ちなみにフィアッセさんと桃子ちゃん用のお昼、それになのちゃんが持っていったお弁当も全部朝用意した」

 

「いやぁ、晶がもうちょっと遅かったら間に合わなかったと思うよ。本当に助かったよ。ありがとね。」

 

そういって晶の頭を何気なく撫でるイチ。

 

晶は照れたように頬を染めて小さくなっている。

 

「いやー、すごいわ!ほら恭也、時間もないし、はじめちゃいましょ!」

 

「そうだな、でわ...」

 

『いただきまーす』

 

 

 

「ハムハム......美味しいです....美由希さぁ〜ん...グスン」

 

「那美さん、私は朝イチで体験済みです。」

 

「あ、ははははは。まあさすがに男の子がこのレベルってのは...」

 

「そうだよねぇ、私よりうまいかも...」

 

「いやぁ、うまかった。でもなんか俺まで悪かったな」

 

「朝についで、うまかった。ご馳走様。」

 

「晶の味付けやないから新鮮味があってええかんじです〜」

 

口々に感想を述べる、満腹状態の面々。

レン以外の女性人は大なり小なりショックを受けている様子だ。

一番ショックを受けているのが誰なのかはもはやいうまでも無い。

全員が満足したのを確認し、晶とイチがハイタッチをする。

 

「ふぅ、満足してもらえたみたいで良かったよ。晶も本当にご苦労さん。ありがとうね。」

 

「い、いえ。俺はたいしたことしてませんから。それよりまた一緒に作りましょう。」

 

「うん、でもまあレンちゃんの中華も食べたいし...たまにね。」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

妙に元気よく返事をする晶に微笑むイチだったが、ふと那美のほうをみて怪訝そうに尋ねる。

 

「どうかしました?なにかおかしなものでも入ってましたか?」

 

「いえ、違うんです。ただ......」

 

そういって美由希の方を見る。

その視線を受けて美由希はイチに向けて苦笑いする。

恭也をみると、やはり美由希と同じような反応を示すことで大体の事情をつかんだイチは、美由希に声をかけ、こそこそと暫く話す。すると美由希が今度は笑顔で那美に近づき、そしてまた暫くして那美も立ち直り、イチにむかってなぜかお辞儀をしている。

その光景を眺めていた高町家の面々は既視感を覚えるものの、全員脳が思い出すことを拒否したらしく、そのままほぼみんな大満足で午後の授業に向かった。

 

 

 

 

「はぁ...なんていうか...すごい一日だった...」

 

翠屋に向かう道の途中、イチのとなりを歩く恭也がため息とともに呟く。

それをみて軽く笑いながらイチは、まぁね、と呟き返す。

放課後まで、結局イチは完全に人に囲まれて過した。

ウィッグをとって、今までオタクっぽく隠れるようにして生活していた人間が、いきなり凛々しく、優しげな青年に変身し、そして人当たりよく誰とでも気さくに話し出す。

始めは女子がひしめいていたのだが、意外なまでの知識量に、スポーツやゲーム、パソコンの話をし始める男子まで集まり始めてしまい、休み時間のたびに軽い人だかりが出来続ける状態が続いた。

放課後は放課後でカラオケに誘う女子にはじまりゲーセンに誘う男子、はてに合コンのだしに恭也とセットで使おうとする不届きな輩まで発生し、結果として逃げ出すように二人で学校を飛び出した。

 

「お前はなんでも人の話を真面目に聞きすぎだ。赤星と藤代がいなかったらいまだ教室の中だぞ?」

 

「だってさ、人の話は最後まで聞かないとねぇ?せっかく話しかけてくれてるんだし...」

 

「律儀だな、まったく。その調子じゃこれから大変だぞ?」

 

「大丈夫だよ、転校生に集まるようなもんなんだから馴染めば収まるでしょ?」

 

「そうならいいがな...と、俺は翠屋で手伝っていくが、お前は?」

 

「うーん...とりあえず寄ってくよ。ここでお茶したこと無いからね。」

 

そういって翠屋のドアを開けるイチ。

 

「いらっしゃいませ〜、って恭也とイチじゃない。おかえり。どうしたの?」

 

フィアッセの声に迎えられた二人はそれぞれが問いかけに返事を返す。

 

「ああ、ただいま。俺は手伝いに、イチは...」

 

「ただいまです。お茶させてもらいに来ました。」

 

「うん。じゃあ恭也はフロア手伝って。イチはカウンターでいいよね?」

 

「分かった。」

 

「はい。」

 

それぞれ返事をし、恭也はエプロンを取りに裏へ、イチはカウンター席へむかう。

イチが席に着くと、エプロンをかけて出てきて注文をとりに出ようとする。

 

「恭也、僕の注文は取ってくれないの?」

 

「ああ、いまい「はいは〜い♪おかえりぃ〜イチ君♪」...悪い。」

 

恭也が向かうより先に、イチに抱きつかんばかりの勢いで飛び出してきたのは、裏でシュークリームの仕込みをしていたはずの桃子だった。

あきれたようにため息をつき、謝罪する恭也を苦笑いを浮かべながらみてから桃子に向き、

 

「ただいまです、桃子さん。お昼ご飯はお口に合いましたか?」

 

「ええ、美味しかったわぁ〜ってあれ作ったの、イチ君!?」

 

「あ、はい。晶に手を貸してもらいましたが...なにか変でしたか?」

 

「え!?ああ、そうじゃないのよ。晶かレンが作ったと思ってたから...イチ君は洋食もつくれるのねぇ」

 

「あ、はい。むしろ洋食のほうが得意ですよ。和食は手間かかりますからあんまり作る機会無かったですし、ってそれより注文させてください。」

 

「あ、そうね。何にする?」

 

「えと、カフェオレと...ガトーショコラでお願いします。」

 

「はーい♪んじゃちょっとまっててねぇ♪」

 

そういって鼻歌を歌いながら奥へ下がっていく桃子。

やがて注文が運ばれてきて苦めのガトーショコラに舌鼓をうったイチは、とくに何もすることも無く、鞄からペーパーバックを取り出してそれを片手にカフェオレを口にする。

入ったときから実は女性客の何人かがちらちら見ていたのだが、読書中のいつに無いまじめな顔に次第に視線の数が増えだし、イチも異変に気づき始める。

だがなぜ注目されているかは分からないらしく、また本に視線を戻す。

それを見ていたフィアッセが恭也い小声で話しかける。

 

「恭也もまた大変な友達つれてきたねぇ?」

 

「ん、イチがどうかしたか?」

 

「この状態みて分からない?周りを見てみなよ。この女の子の数。いつもの倍だよ?」

 

「そういえば外も並んでいるな。フィアッセに加えてイチか。翠屋の人気にも拍車がかかるな。」

 

いつも来ている女性客のほとんどがフィアッセ目当てだと思っている恭也はそんなことを真面目な顔で言い出す。

フィアッセは、

 

(いいかげんこの子達が恭也目当てだって気づきなよ...)

 

といつもどおりのツッコミを心の中で入れながら、イチの方を見て、

 

(それにしても...イチも恭也と同じ...ううん、それ以上?)

 

と真剣に考え出してしまう。

そんなフィアッセをこれまたいつもどおり怪訝な表情でみながら恭也はいつも以上に多い客の相手に戻る。

そんなこんなで翠屋がイチを招き猫にして女性客の数を増やしていると、なのはとレンが入ってくる。

それに気が付いた恭也が二人のほうへ向かうと、それに気づいたなのはが、

 

「あ、お兄ちゃん!ただいま〜!」

 

と駆け寄っていく。

レンもそのあとから付いていくと、

 

「お疲れ様です、おししょー。うちも手伝います〜」

 

と恭也に声をかける。

 

「ああ、それじゃあ悪いがかあさんと松尾さんを手伝ってもらえるか?なのはは暫く休んでいろ」

 

「はい〜」

 

裏へむかうレンとは対照的に、周りを見回しながらなかなか動こうとしないなのは。

 

「どうかしたか?なのは」

 

「にゃあ〜、席が空いてないよぉ〜」

 

それを聞いた恭也がまわりを見回すと、確かにボックス席は満席状態。

そもそも外にも列を作っている状態ではあいているほうがおかしい。

そんなことを思いながら見回すと、カウンターが一席あいていた。

 

「なのは、カウンターに一席空きがある。ああ、ちょうどいい。イチの隣だ。いってこい」

 

「えっ!?イチお兄ちゃん?ほんとだぁ〜!」

 

イチを見つけて笑顔で駆け寄っていくなのはを苦笑を浮かべつつ、

 

「店の中では走るな、二代目候補」

 

とつぶやいて仕事に戻る。

駆け寄ってきたなのはに気が付いたイチは、本から目を離すと

 

「おかえり、なのはちゃん」

 

と微笑みながら頭を撫でる。

その先ほどまでの表情とは比べ物にならない優しげな顔に、みていた女性は自分に向けられたものではないと分かっていても赤面してしまう。

そしてそれを向けられたなのはは、顔を真っ赤にしつつ嬉しそうに

 

「は、はい!ただいまですっ!あ、あのとなりにすわってもいいですかっ!?」

 

と完全に舞い上がってしまっている。

しかし、本人はそんな事とは知らずに相変わらず微笑んだまま

 

「もちろん、ちょっとまっててね」

 

などといいつつなのはを抱えあげると隣の席に下ろす。

なのははまだ火照るほっぺたを押さえながらも嬉しそうににこにこしながら、

 

「さっきまでこれを読んでたんですか?」

 

などと、なんとか自分が照れていることを隠そうと話題を振る。

 

「ああ、うん。そうだけど?」

 

とそんななのはの意図に気が付かないイチは、嬉しそうななのはの話を聞いている。

 

「わぁ〜、英語だぁ〜!イチお兄ちゃんすご〜い!見てもいいですか?」

 

「いや、見ないほうがいいよ、それ切り裂きジャックの本だから」

 

「切り裂きジャック?なんですか、それ?」

 

忠告を素直に聞いて本を開こうとする手をとめるものの、聞きなれない言葉に興味津々のなのは。

 

イチは、本を絶対に開かせるべきではないと判断し、内容を説明することで分かってもらうことにする。

 

1888年、イギリスのロンドンで起きた連続殺人事件の犯人のことだよ。その本は、ある小説家がその正体を突き止めたっていって出した本。」

 

「にゃ〜、怖そう...」

 

「そうだね、写真とかも載っちゃってるからあんまり普通の人にはおすすめしないよ。」

 

そういって本をかばんの中にしまう。

そのあとも暫く本の話をしていると、ひょっこり桃子が顔を出す。

 

「あらなのは、おかえり〜。お弁当はおいしかったかな〜?」

 

と出てきて早々イチのほうをちらちらみながらなのはに聞く。

 

「え?うん、お友達もお子様ランチみたいって大人気だったよ!」

 

「へぇ〜?」

 

「...なんですか?桃子さん」

 

「い〜えべつに。ただ私たちのと違うみたいだな〜って」

 

「そうじゃないですよ。ただみんなのお弁当でおにぎりにしてあったチキンライスをオムライスにして、あとケチャップスパゲティーを小さくつめただけです。あ、あとハンバーグに目玉焼きものせたかな」

 

「え、どういうことですか?」

 

「ん?なのはのお弁当がどんなだったか作った人にきいてるのよ」

 

「え!?じゃああれ作ったのイチお兄ちゃんだったの!?」

 

母親とまったくおなじリアクションをするなのはに、イチは苦笑いをうけべながら返事を返す。

 

「うん、晶と二人でね。美味しかったならよかった」

 

「はいっ!見た目もかわいくて楽しかったです」

 

「あらぁ〜、じゃあなのは、これからお子様ランチみたいなお弁当が食べたいときはイチ君に作ってもらおうねぇ〜♪」

 

「は〜い、よろしくおねがいしま〜す♪」

 

「まぁ、それくらいならいいですけど...やっぱり親子ですね。息がぴったりだ」

 

「「そう(ですか)?」」

 

ハモってしまって桃子となのはは顔を見合わせて笑い出す。

その光景を微笑ましげにみていたイチだったが、暫くしてとある視線に気が付き、

 

「ところで桃子さん、なにか理由があって出てきたんじゃないんですか?」

 

「あ、そうだった!こっちの感じからしてフロアが大変なんじゃないかと思ったんだけど...間違ってなかったみたいね」

 

「それなら僕が手伝いますよ。昨日もやりましたし」

 

「なのはもレジ手伝うよ」

 

「本当!?ありがと〜...でもなんで用があるってわかったの?」

 

「ああ、それは...すみませんでした。僕が引き止めてしまいまして...」

 

といきなりあらぬ方向に真剣に誤り始めるイチ。

するとそこには頬を軽く赤く染めた松尾がたっていた。

明らかに桃子に文句をいうつもりだったようだったが、先にイチに真剣な顔で誤られてしまい、思わずその表情に見惚れて言おうとしていたことを忘れてしまっている。

なんとかイチに怒っていないことを伝えると、今度は嬉しそうに礼を言われ、もっと顔を赤くしながら裏へ駆け込んでしまう。

 

「ありがと〜!おかげで松っちゃんに怒られないですむわ〜♪」

 

「いえ、やさしいひとですね。でも顔が赤かった気がするけど具合でも悪いのかな?」

 

フォローへの礼をいったところで聞こえてきた今まで何度となく聞いてきた、とある特定の男しか言わないであろうと思っていた言葉を聞いてしまい、言葉をなくす高町親子。

 

「無理はしないでくださいっていっておいてもらえますか?」

 

本当に心配そうなイチをみて、なのはと桃子は背を向けて小声で話し始める。

 

「なのは、イチ君のあの鈍さ、恭也より上だとかあさんおもうんだけど...」

 

「うん、なのはもそうおもう...でも...」

 

「...そうね...」

 

「「表情が自然に出てくる分、恭也(お兄ちゃん)よりたちがわるい...」」

 

そんなこんなで親子間で意見の一致を見た後、桃子は裏へ戻り、なのははレジに張り付き、そしてイチはフロアで恭也と二人犠牲者ふやし、もとい、接客を始める。

結局その後も高町家全員があがるまで女性客の増加は続き、目の回るような忙しさの中で夕方を過した。

 

 

 

 

夜、夕食後の団欒もおわり、晶、レン、なのはが寝静まったあと。

 

「よし、そろそろ行くか」

 

「恭ちゃん、今日は妙に嬉しそうだね」

 

「当たり前だろう。お前と美佐斗さん以外が使う御神の技がみられるんだぞ」

 

「そっか、そうだよね。私は家族以外は初めてだし、恭ちゃんは士郎とおさん以来?」

 

「そうだな、しかもあの一臣さんの唯一の弟子で俺の兄弟弟子にもあたるんだ。しかも御神以外の技までつかうらしい」

 

珍しく口数の多い恭也に少し驚きながらも美由希自身、高ぶりが抑えられないのか話にのってしまっている。

 

「たのしみだよね〜。どんな技使うのかなぁ?それよりどんな小太刀もってるんだろう?」

 

などと少々美由希の思考が危ない方向にそれかかったところでふいに後ろから声がかかる。

 

「そんなにみたい?」

 

「「えっ?」」

 

驚いて振り返るとそこには黒のジャージに大きめの白い長袖のシャツ、その上から黒いベストを着た格好でイチがたっていた。

 

「おどろいたな。まったく気がつかなかった。」

 

「本当...どうやったの?」

 

「え?普通に歩いてただけだよ?気配を消して」

 

「...なぜ消す?」

 

「...恭ちゃんがたまにいじわるなのは絶対お兄ちゃんの影響だ...」

 

「まあいいじゃない。それよりいくんでしょ?」

 

「うん、今日はお兄ちゃんの実力見せてもらうからね?」

 

「ずいぶんとえらそうだな、妹よ...」

 

「はいはい、じゃれないでいいから...薫さんと耕介さん待たせてるかもしれないんだから...」

 

「そ、そうだよ!早く行こう!!」

 

拳を頭につけられそうになって美由希はとっさにイチの後ろに隠れながら恭也をうながす。

恭也も人を待たせるのは悪いと感じ、

 

「そうだな、いくか」

 

自分のバッグを抱えて走り出す。

自分の後ろを美由希と話しながらついてくるイチを見ながら恭也は

 

「さて、今まで隠してきたもの、見せてもらおうか」

 

と嬉しそうに呟くのだった。

 

 

 


あとがき

 

やっと出来た〜。これで次はついに...

ブリジット「初戦闘シーン!!!あなたほんとにダイジョブです?」

が、がんばる!なにせこれできないとこの先の構想パーだし

ブリジット「ちなみに構想ってなにですか?ボクでますか?」

君が関わるやつの前に一つ思いついたのがあるからそっち先

ブリジット「じゃあボクは...」

その前に登場させるけどそこではサブだね、ってゆーかぶっちゃけるととある作品とのクロスで初シリアスをもくろんでるから...ってだから木刀しまえっ!ちゃんと理由がある!

ブリジット「Really?じゃあ一応メイドの土産にききますです」

メイドの土産って...しかも意味違うし...ってはい!あのですね。私実力不足なんでなにかモデルがあるので始めはいこうと...そしたら丁度この話の時期とおあつらえ向きな作品があったから

ブリジット「それ書いたらちゃんとボクだすですか!?」

それはもう!あなた一応ヒロインですから...クロス中も出番ないわけじゃないし

ブリジット「...まあショウガナイ。これもボクがイチと結ばれるためデスヨ」

ちゃんとその話までにブリジットメインが1話か2話あるし、登場後はレギュラー扱いだから心配するな。んじゃなきゃお前作らないし。

ブリジット「んじゃま、とりあえず信用しとくです...ところで何とのクロス?」

いや、それはさすがに...ってかまだお前も出てない段階では無理だし...まあこの作品の時期みれば分かる人には簡単に分かっちゃうとおもう

ブリジット「ヘタなくせに中途半端にネタばれするなですぅ...」

お前それキャラ違う...まあそんなわけでとりあえずは次回、失敗しないようにお祈りください

ブリジット「SEE YA!です」





いよいよ明らかになるイチの実力。
美姫 「ワクワク。一体、どんなものなのかしら」
次回が待ち遠しい。
美姫 「非常に楽しみよね」
次回も待っています。
美姫 「待ってま〜す」



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