『TRIANGLE HEART BEAT 〜三人目の『不破』の物語〜




第十八話 −LET’S HAVE A PLAN, LET’S HAVE A DATE

 

 

 

 

 

 

 

玲二とエレンが高町家での同盟協定とも言うべきものを結んだ翌日、なのはを見送るいつものバス停では、いつものメンバーに加えて後二人が加わっていた。

吾妻玲二とエレンである。

 

「イチおにいちゃん、お兄ちゃん、お姉ちゃん、晶ちゃんにレンちゃん、ブリジットさんにケイトさん...」

 

いつもどおりなのはは恭也たちに挨拶をするが、今日は途中でそれが止まった。

恭也たちがそれを首を傾げてみていると、なのはは首と少しだけ動かすと、

 

「それに玲二さんとエレンさんも、いってきま〜す!」

 

と、ただ待ち合わせでそこに顔を出しただけに過ぎない二人にも挨拶をする。

それに驚いたように目を見開いていた二人だったが、やがて顔を見合わせると、

 

「「...いってらっしゃい」」

 

と少し微笑みながら手を振った。

なにも聞かされていない晶とレンはなのはに手を振り続け、二人の事情を知る恭也とイチは少し感慨深げに二人を見る。

ブリジットは早速イチに纏わりついて嬉しそうに笑い、ケイトはそんなブリジットを嗜めている。

そして美由希は、なにか様子のおかしい恭也たちを不思議そうに眺めながら首を傾げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「恭也先輩...」

 

登校の途中で玲二は、となりを歩いていた恭也に話しかける。

 

「...なんていうか...恭也先輩の家の人って、温かいな」

 

「...ああ、なのはも含めて家の連中は俺たちの事、すべて知っている」

 

かつて美沙斗にも同じ事を言われた記憶のあった恭也は、玲二が何を言いたいのかを察して何でもないことのように答える。

それを聞いた玲二は驚いて恭也のほうを見る。

 

「驚くこともあるまい。なのはにはもう既にとおさんが死んでいる事も教えてある。もちろんその理由もな」

 

「...なぜだ?なぜ教えた?」

 

「なのはがそれを望んだからだ」

 

即答する恭也のその言葉に、玲二はその時の恭也の辛さが滲み出ている気がした。

 

「...そうか。強いんだな、なのはちゃんは...」

 

「ああ、さすがにとおさんとあの母さんの娘だけのことはあるよ」

 

そういって静かに微笑む恭也をみて、玲二は少しだけ、ほんの少しだけ、生き別れる形になった家族を思い出した。

そして恭也と玲二がなにやらシリアスな話をしていたその時、もう一つの異常なコンビもまた、何か近寄りがたい空気を醸しだしていた。

 

「イチ先輩、昨日はお世話になりました」

 

「気にしないでいいよ。それよりレッスンその一、なるべく獲物を使わずに戦うこと」

 

「?なに、それ」

 

「君が昨日の夜、僕に言ったでしょ?人を殺さずに、助ける方法を教えてくれって」

 

そういって微笑むイチを、エレンは信じられないものでも見るかのようにイチを見つめる。

なぜ見つめられているのか分からないイチが首を傾げていると、

 

「あなた、マイペースって言われること、ない?」

 

と少し呆れたように声をあげるエレン。

それに対してイチはいつものように微笑むと、

 

「人に流されないことが大切なんだよ」

 

と返事を返す。

 

「それにね..どこで誰が見てるか分からない以上、普通の会話に見える状況のほうがこういう話には相応しいでしょ?」

 

「...そうね。貴方、そういった人を欺く方法が専門みたいだし、まかせるわ」

 

「ありがと。それじゃあ言葉だけのレクチャーしか出来ないけど...」

 

そういって微笑みを浮かべながらも殺伐とした戦闘法を教えていくイチ。

それを、学校用の表情を顔に貼り付けたエレンは相槌をうちながらそれを頭に叩き込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてなんだかんだで昼休み。

久しぶりに高町家の関係者が全員集合した中庭での昼食には、今回はゲストが加わっていた。

 

「二年、吾妻玲二です」

 

「同じく二年、吾妻エレン。兄さん共々よろしくお願いします」

 

「二年の久保田早苗、でこっちが藤枝美緒です」

 

「よ、よろしくおねがいします」

 

新しいメンバーは玲二、エレン、早苗、そして美緒。

ここに呼んだのは恭也とイチ。

玲二とエレンに相談し、四人が学校内でより自然に一緒にいるために策を講じた。

というよりも、これはイチとエレンが一緒にいることを怪しまれないようにするため。

玲二と恭也は相手に実力などが知られているし、玲二の親を名乗っていた人物が香港警防の隊員だということから、その香港警防の関係者である恭也が玲二に協力することも考えられるパターンである。

しかし今回に限って言えば、玲二たちには切り札とも言うべきイチがいる。

それがエレンといても不自然ではないよう、学校内では比較的イチの近くにいることの多い早苗やブリジットたちといった、エレンとも一緒にいることの多いメンバーもここに招いたというわけだ。

ともあれ総勢16人とかなりの大所帯となってしまったわけだが、今回もイチはこれを予想していたらしく、晶に加えて今回はレンもお重の入った風呂敷をもっていた。

 

「イエー!イチのお弁当です、久しぶりですよ〜、ね〜ケイト?」

 

「はい、私も久々で嬉しいです」

 

「あれ?今回はレンも参加したの?」

 

「はい〜、イチさんが前回以上になるから手伝ってほしい言われまして」

 

「二人してイチに迷惑かけなかっただろうな?」

 

恭也が二人一緒と聞いてもしやと思い、二人に詰問する。

それに対して晶とレンが答えにくそうにしていると、イチが

 

「二人ともきちんと手伝ってくれたよ、ね?」

 

と二人にむかって優しく微笑んでみせる。

晶とレンがそれを見て頬を赤く染めているのを訝しげに見ながら、それでも恭也はイチの言葉を信用する。

まわりでは晶たちを羨ましそうに眺めている亜子とブリジット。

ケイとケイトは食事を始める前から小競り合いをしているし、美由希と那美、そして忍はイチと話す恭也のまわりで、誰がとなりに座るかでもめていた。

そしてそれをやれやれといった感じで苦笑しながら眺めている赤星。

 

「...改めて凄いメンバーだな」

 

「...え、ええ...どうしたらいいんでしょう、玲二さん?」

 

「さあ、とりあえず恭也先輩かイチ先輩に声をかけるしかないだろうな。おい、早苗」

 

「...なによ?私にどうにかしろっていうの?」

 

「イチ先輩に話しかけるチャンスよ、早苗」

 

そんな会話を二年生組が繰り広げていると、

 

「なあ、そろそろ始めたいのだが?」

 

と恭也が声をかける。

いつの間にか恭也たちの方のごたごたがおさまっており、昼食の準備が出来ていた。

 

「...いつの間に準備してたのか全く分からなかった」

 

「...謎の多い人たちね、関係者も含めて」

 

そんなこんなで総勢16人は、なんとか無事に昼食を始めることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういうことです、ドライ。ツヴァイのところに顔を見せたと思ったら殺しもせずに去り、しかも一日いなくなっていたと思ったらリズィさんの仕事に横槍を入れるなど...私の立場も考えていただかなくては」

 

玲二たちが恭也たちと昼食を取っているそのころ、海鳴市内のとある高級ホテルの最上階スイートルームでは、一昨日玲二と美緒の前に姿を現した少女が、もう一人、銀髪の外国人と向かい合っていた。

とはいってもドライと呼ばれた彼女のほうは、先ほどから窓の外に視線を向けたままその男、サイス=マスターとは目をあわそうとすらしない。

 

「...いいだろ、別に。リズィたちの仕事の方だって上手くいったんだし、それにあの男との事は口出しするな!」

 

「上手くいっただと...?」

 

それまで部屋のドアの近くにたたずんで一言も発さなかった褐色の肌の長身の女性、リズィ・ガーランドが静かに口を開く。

その口調には、明らかに怒りが宿っていた。

 

「てめぇの勝手な行動のせいで死ななくてもいい仲間が何人死んだと思ってんだ!?」

 

最後は怒鳴り散らすように今までもたれかかっていた壁から背中をはなし、ドライに詰め寄るリズィ。

その怒鳴り声に、ドライはなんと笑いながら

 

「はっ、そんなのそいつらの運がなかっただけだろ。あたしの知ったことじゃない」

 

と嘲るようにリズィにその邪悪な視線を向ける。

 

「てめぇ...!」

 

完全に怒りを露にしたリズィとドライの間に、サイスが割ってはいる。

 

「まあここは私の監督不行届きということでご勘弁願えませんか、リズィさん。二度とこういったことが起きないよう、私のほうからも言い聞かせますので」

 

「...あんたが言い聞かせたところで無駄だろうが、まあここで言い争っても無駄だな。しょうがねぇ、今回はあんたの顔を立てておいてやるよ」

 

そういいながら部屋を出て行こうとするリズィ。

 

「ありがとうございます」

 

後ろでわざとらしく、うやうやしく頭を下げるサイスを背中越しに見てやると、一つ舌打ちを残してリズィは部屋を立ち去った。

 

「...まったく...それで、せめてツヴァイの件の話くらいは聞かせていただきたいのですがねぇ」

 

そのままドライに向き直ると、サイスは口元に笑みを浮かべて歩み寄る。

組織の人間が挙って毛嫌いするこの微笑に、さすがのドライの嫌気がさしたのか、舌打ちを一つつくと嫌そうな顔をしながら口を開いた。

 

「あの男は、ツヴァイは私が苦しめて、苦しめて、苦しめ貫いてから嬲り殺す。誰にも邪魔はさせないよ」

 

「いえいえ、邪魔するつもりはありませんよ。それが組織に害を為さないのならばね。しかし少々事態がややこしくなっていてねぇ...」

 

「どういうことだ?」

 

「香港でアインとツヴァイの両親役を演じていた人間が香港警防の関係者だったのですよ。貴方にも名前くらいは教えたことがあったはずですが」

 

「ああ、聞いたことはあるよ。最強であるかわりに最恐な、悪を裁くためにはどんなこともする部隊だろ。それで?それならそいつらが出てくるまでにカタをつければいいんだろう」

 

「それがそうもいかないのですよ」

 

そういって両手を広げてみせるサイス。

ドライが苛立たしげにサイスを睨みつけて先を促すと、サイスは少しだけ嬉しそうに微笑んで先を続ける。

 

「香港警防四番隊の隊長が日本人でしてね...この海鳴いたんですよ、つい先日まで。そして、数ヶ月で伝説とまでなったあのボディーガードがその隊長の甥なのですよ」

 

「...あのCSSのコンサートを事実上一人で護りきったってボディーガードがか?」

 

「はい。しかもまだ高校生で、ツヴァイの一学年上にあたります。そしてその彼、高町恭也がもうすでにツヴァイと接触を果たしています」

 

「...ってことはなにかい?その男が玲二のガードをしているとでも?」

 

「そうではないでしょう。恐らく香港警防の依頼での護衛と監視もあるでしょうが、情報から察するにその男は恐らく損得勘定抜きでツヴァイに協力しているのでしょう」

 

「はっ!今時そんなお人よしがいるなんてね」

 

「それにアインが別行動で、高町家の居候の少年と行動を共にしています。おそらくそれを隠れ蓑にして何か裏工作があるのでしょう」

 

「その少年ってのが相手の第四の戦力だってことはないのか?」

 

「ありえないわけではないですが、今のところは脅威ではないとフィーアからの報告を受けていますので、よくて情報収集メインの高町恭也専用スタッフといったところでしょう。運動神経も、一般人にしてはいいほうだという程度だそうですよ」

 

そこでサイスは一息つき、自分用のワインを一口含むと、ゆったりとソファーに背中を預けるように座りなおした。

 

「いずれにせよ、貴方一人で二人、アインまで加われば三人を相手にするのは至難の業。いえ、高町恭也単体でも貴方と互角以上に戦うでしょう。ですので...」

 

一瞬自分の力が見くびられていると思い殺気を体から発したドライだったが、珍しくサイスの表情が焦りらしきものを見せていることからそれが本気であることを察し、押し黙る。

 

「あなたがツヴァイ一人に集中できるよう、私にもお手伝いさせていただくことにしました」

 

「...なんだって?あんたが組織の意向とやらを無視すると?」

 

「いえ、私にも今回は動かなければいけない理由がありましてね」

 

そういって口元を歪めて笑うサイスを、ドライは心底嫌そうな目で見ながらも黙って先を促す。

 

「というわけで、ツァーレンシュヴェスタンを呼び寄せてあります。こちらで協力関係にある梧桐組の皆さんは一般人への被害を嫌う傾向にありますので事を大きくするわけにはいきませんが、貴方に日取りなどは任せますのでそういった条件にあう状況を作り出してください」

 

「なんだか裏がありそうだが...あの男をアタシの手で殺せるなら、やってやるよ」

 

「それはもう...あともう一つ、藤枝美緒という少女がツヴァイの傍にいるそうですが、彼女には手を出さないよう注意してください。梧桐のゴッドファーザーの隠し子だそうですので」

 

「...ちっ、あの男はまた女をだしに使う気か...!」

 

憎しみのこもったその呟きを、サイスはあえてなにも言わずに聞いていた。

 

(実際は藤枝美緒のほうがツヴァイに付きまとっているらしいのですが...これはこれで好都合ですね...それにしてもこんなに早く事が動くのは予想外でしたが、高町恭也も出てきてくれたことですし...私の兵の性能テストとあの方からのご依頼で一石二鳥、さらに新旧ファントム対決も見れて一石三鳥とは予想以上です)

 

おもわずこみ上げてくる笑いを何とか喉元で押し留めながら、サイスは目の前で怒りの炎を目に宿して外を見つめ続けるドライを眺めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの...玲二さん...」

 

翠屋でお茶をしていると、美緒が突然思いつめた表情で玲二に話しかけてきた。

 

「ん?なに、藤枝さん?」

 

表向きはなんとか平静を保ちながらも、玲二は心中穏やかではなかった。

 

(まさか...藤枝さん、本当の親の事を誰かから聞いたか?サイスがもう接触して先手をうってきたとも考えられるな...)

 

ネガティブな思考に囚われて心ここにあらずといった感じの玲二に、美緒と並んで玲二の向かいに座っていた早苗がテーブルを乗り出して食って掛かる。

 

「ちょっと吾妻玲二!ぼーっとするな!美緒が話しかけてるってのになんて失礼なやつだ、あんたは!!!」

 

「あ、す、すまん...で、藤枝さん、なにかな?」

 

「え、え〜と...あの...れ、玲二さんは明日...お暇ですか?」

 

相変わらず思いつめたような表情で聞いてきた美緒に、玲二は思わず

 

「え、あ、ああ。なにも予定はないけど...」

 

と正直に答えてしまう。

 

「そ、それなら...明日一緒にお出かけしませんか?」

 

「...へ?」

 

思わず間の抜けた声を出してしまった玲二。

美緒のとなりで笑いを懸命に堪えている早苗を一睨みすると、玲二はとりあえずとなりに座っているエレンに顔を向ける。

 

「...いいじゃない、兄さん。いってきなさいよ」

 

助けを求めたつもりが、逃げ道を塞がれてしまった。

玲二が困惑していると、さらに頭上から声がかかる。

 

「いいじゃない、いってきなよ玲二。あ、でも...うん...そうだよね。早苗ちゃん」

 

玲二に止めを刺したと思ったら、イチは突然一人でぶつぶつと呟き始め、そしていきなり早苗に声をかけた。

 

「え、あ、はい?」

 

「早苗ちゃんもついていってきなよ。そうだね、恭也と一緒にでも」

 

「「...え?」」

 

イチの言葉に思わず恭也と早苗は声をそろえてしまう。

そんな二人をおかしそうに見ながら、イチは早苗と美緒を呼んで事情を話す。

 

「美緒ちゃんさ、デートって初めてでしょ?」

 

いきなり図星をつかれた美緒は、少し恥ずかしそうに俯きながら頷く。

それをみたイチは、やっぱりといった表情を浮かべて、

 

「それなら初めは二人きりよりも友達と遊んでるって感じを作ったほうがいいよ。初めてのデートは二人きりでって思うらしいけど、それで気まずくなったら元も子もないし」

 

と、美緒の心配を見透かしたようにいう。

そして早苗に目を向けると、

「だから早苗ちゃんがついていくのが一番いいと思うんだよ。君は気も利くし、優しいからね?」

 

といって早苗に向かって優しげな微笑をむける。

真正面からまともにその微笑を受けた早苗は、まわりで見ているものが哀れにもなってしまうほど赤面してしまっている。

そんな早苗に変わって、美緒がおずおずともう一つの疑問を問いかける。

 

「あ、あの...それで、なんで高町先輩なんでしょうか?」

 

「ああ、だって玲二と仲のいい男って恭也くらいでしょ?」

 

「お、狼村先輩は、ど、どうなんでしょう?」

 

「ん?ああ、僕は残念だけど明日は実家に顔を出す約束しちゃってるから」

 

そういっていかにも残念といったように苦笑するイチを見て、美緒も少し残念そうに早苗を見る。

ミーハーな早苗は、実はイチも恭也も(赤星とケイも)ファンとして憧れているだけなのだが、なんとなく勘違いをしている美緒は、早苗を少し可哀想に思ってしまった。

しかし当の本人は、もう赤面から復活してイチと話している。

 

「恭也はちょっと朴念仁なところがあるから早苗ちゃんが上手くフォローしてあげてね?」

 

「はいっ!任せてください!(でも狼村先輩は人のこといえないわよね)」

 

考えていることがイチと恭也以外には丸分かりなのだが、本人さえ分からなければどうということはない。

そしてイチが早苗たちに話の辻褄を合わせている間に、エレンが恭也への説明を済ませていた。

 

「つまり玲二と一緒にいるため、ということか。それなら一緒にいくのは美由希とか忍では駄目なのか?」

 

自分たちの名前がデートの相手として出てきたことに、陰から聞いていた二人が喜んでいると、

 

「そのほうが万が一の危険性が少ないとおもうのだが...とくに美由希なら、万が一の場合は戦力にならないわけでもない」

 

と玲二とエレンにしか聞こえないように呟く。

それに対して玲二は納得していたのだが、エレンは、

 

「イチ先輩の考えよ。美由希さんや忍さんが一般人でないことは相手も解っているから手を出してくるかもしれない。でもインフェルノが梧桐組と繋がっている以上、一般人には被害を出さないよう釘を刺されているはず。ならば一般人ではない美由希さんや月村忍がいてはかえって手を出される危険性がある。だから玲二や美緒と一緒にいてもおかしくない一般人の早苗なら、あったとしても牽制程度だと...」

 

と美緒が明日の話を持ち出してからイチと即座に相談した結果と二人に伝える。

その意見に二人が感心していると、エレンが恭也に声をかけた。

 

「恭也先輩、イチ先輩のあの思考...あなたにはわかる?」

 

その問いかけに対して、恭也は少し困ったような表情を作ると、

 

「いや、俺にも完全に理解はできん」

 

と短く告げる。

玲二とエレンが少々呆気に取られていると、恭也は言葉を続けた。

 

「しかし、アイツの言葉を信じて動けば絶対に間違うことはない。それに今回は恐らく情報収集が主な目的なのだろうと思う」

 

「情報収集?俺たちにちょっかい出してくる奴等をみて、か?」

 

「いや、たぶんそれだけではないと考えているから少々危険な手を使ったのだろう。でなければどんな理由があろうと久保田さんは使わないだろうからな」

 

「ええ、そうね。私は明日一日、逃走ルートの確認をしてると思わせるために動くから...あの人一人で隠密行動するつもりなんでしょうね」

 

それを聞いて、イチの力を知らない玲二はさすがに不安を口にする。

 

「おい、大丈夫なのか?あの人、恭也のブレインとしての実力は分かったけど...」

 

「ああ、大丈夫だ。俺より強いからな」

 

あっさりと言い放つ恭也を玲二は驚いたように見て、エレンに目を向ける。

 

「ええ、実力の一端は見せてもらったけど...少なくとも私たち二人がかりでもかなわないわね」

 

「...エレンまでそういうなら問題ないんだろう。それじゃあ恭也、明日はよろしく頼む」

 

「ああ、こちらこそな。精々邪魔にならんようにしている」

 

「おいおい...」

 

そんな古くからの友人のような会話を交わす二人を見て、エレンは美緒たちを連れて戻ってくるイチのほうに視線を向け、説明完了の合図を送る。

イチはそれを確認すると、軽く微笑みながら頷いて仕事に戻っていく。

そして二人が戻ってくると、恭也が早苗に向かって、

 

「それじゃあ久保田さん、明日はよろしくたのむ」

 

と少しだけ微笑みながら声をかける。

 

「ええ、精々二人の邪魔にならないように注意しましょうね」

 

「そうだな、馬には蹴られたくない」

 

「痛そうですよね〜」

 

早苗が戻ってくることによって玲二いじりが再開され、恭也も持ち前の底意地の悪さを発揮して美緒まで巻き込んだカップルいじりに発展を遂げた。

結局その後、恭也が仕事に戻るまでそれは続き、玲二が復讐とばかりに店を出る際、

 

「それじゃあ、明日はお言葉に甘えて俺たちも楽しみますから、恭也先輩も早苗と楽しんでくださいね」

 

と捨て台詞を残していき、それを当然の事ながら聞いていた美由希、忍、フィアッセ、那美、そして桃子に、閉店までしつこく詰め寄られて誤魔化すのに散々な苦労を強いられるのであった。

 

 

 

 

 

 

 


あとがき

 

よっしゃ、ついに次はデートだ!

しかも玲二×美緒&恭也×早苗のダブルデートw

またそれとは別にイチの動きも逐一報告〜♪ってかなり難しそう

二つにわけたほうがいいのかなぁ、やっぱり...

まあそれは書き始めてからかんがえよ〜っと♪

そしてツァーレンも次回登場!?って感じでもうごった返してますが、

とりあえずPHANTOM本編とは違う、ひたすらハッピーエンドを予定してます

人が死ぬのを見たい方にはちょっと合わないかもしれませんが、ご勘弁ください

それでは次回でまたお会いしましょう♪

      





いよいよ動き出すのか!?
美姫 「一体、何がどうなるのかしらね」
イチの動きも楽しみだしな。
美姫 「何を考えているのかしらね」
ああ〜、次回も楽しみです。
美姫 「次回も待っていますね〜」
ではでは。



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