そこに確かにある日常。

そこに確かにあった日常。

どうしようもなく当たり前で、どうしようもなく愛おしいそれはしかし、本当に些細なことで崩れだしていく。

崩れ始めたらもう止める術などなく、とまることなく行き着くところまで壊れていく。まるでそれは壊れた列車のように。

そうして。気付いた頃には何よりも大切だったそれはもうどこにもなく、目の前にあるのはただ失われてしまったという証だけ。

誰かを護るために戦い続けた彼が、唯一護れなかったモノ。

 

「―――」

 

悲しみと後悔。

ない交ぜになったそれを孕んだ言葉は風にさらわれて、どこかへと飛んでいく。

許されざる罪と未来永劫付きまとうであろう罰。

誰かのために戦って、必死になって護りの剣を振るい続けた彼に最後に残されたものは――

 

 

―――護りきれなかったという罪の意識と、痛みとともに焼きついている最期の時の彼女の笑顔だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……またか」

 

顔を上げた視線の先にあるのは見慣れた机。

どうやら休憩時間中に軽く意識をとばしてしまったらしい。

締めていたネクタイを緩めて、ゆっくりと深呼吸。

夢の内容としては軽い内容ではあるが、今回のは初めてみた場面だった。

まあ初めてとはいってもどうしてか覚えがある、ということ自体には変わりは無いのだけれど。

だから、なのだろうか。

今まで見てきている夢を夢と割り切れないのは。

登場している主人公が俺そっくりだということもそれに拍車をかけているとはおもうが今回の場面は特にそうだ。

未だ御神の剣士である俺と、護ること、そして護りきれなかったことというのは常にして存在している。

御神の剣士とて人間だ。すべての人間を護れるはずはない。

そしてその対象を絞ったからとて、護りきれるとも断言できないのが現実だ。

“戦えば、勝つ”

御神の理にそういう言葉がある。

確かにそうあれればいいだろう。しかし何事にも例外が存在するように、物事に絶対はありえない。

たとえば極端な話ではあるが人間で核兵器に勝利しろ、といわれてもそんなことは不可能だ。

――俺もいつの日か、あの夢の中の俺のように後悔するときが来るのだろうか。

 

……やめよう。

考えてもしかたのないことだ。

御神流は剣術、そして剣術は殺人術。

誰かを護るために、誰かを殺すための術。

そんな剣を振るうときめたときから、覚悟していたではないか。

誰かに怨まれることも、誰かを護りきれず死なせてしまうこともあるだろうことは。

 

おもむろに席を立ち、カッターシャツを脱いでジャージを羽織り次の授業へと向かう。

時間的にはいいころあいだった。

出席簿を手に取り後ろ手でドアを閉めて体育館へと向かう。

………じっとりと感じる、今まで意識していなかった事への言いようの無い不安に、気付かないふりをして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――野犬、ですか」

 

本日最後の授業が終了して直ぐの職員室で聞かされた言葉を俺はそのまま反芻した。

隣で頷き返してくれた椿女子は幾分か疲れが見受けられる。

 

「そう。最初はまあ学校側も軽い注意くらいで済ませていたんだけど、ここまで頻繁だとちょっとね…」

 

「というかあの騒動、まだ続いていたんですか」

 

言いかけた言葉に椿女子の「それは職員会議に毎度毎度遅れてくるからでしょう」と黒い視線がものすごく痛い。

しかし自業自得なのはわかってるので俺に反論の余地はない。というか出来ない。

今後はもっと注意しよう。クビになるのも学園長にイビリたおされるのももうゴメンだ……!

そんな小さな誓いを立てつつ、思考を椿女子の話へとシフトさせた。……やけに椿女子の雰囲気が真剣だったからだ。

言い方が悪いが野犬程度に対する一般のそれとはかけ離れていると感じられるほどに、どこか張り詰めた空気と心配する気配を纏っていた。

というわけで改めて考えてみるが――やはり妙な話だ。

現代日本において、野犬などというものは正直なかなか見かけるものではない。

地方の更に田舎であればもしかしたら今でも見られるのかもしれないが、少なくともこの学園近辺はまがいなりにも都市部近郊だ。

そんな場所に野犬など現れようものならすぐさま保健所行きは確定だろう。野犬には悪いが。

だからこそ、おかしい。

最初にこの件の話をきいた時からすでに4,5日経過している。それに実際に人に被害もでているのだから保健所だって必ず動いているはずだ。

だというのに野犬は一向につかまらず、それどころか被害者が増えている。

保健所の職務怠慢……というのは正直考えにくい。

ここまで被害がでているのだ。これで怠慢を働くようならば少なくともスキャンダル確定であり、トップの首はまちがいなく飛ぶだろう。

学校側から注意するということは生徒を通じて各家庭までも伝わっている。

おばちゃんネットワーク&パワーを侮るなかれ。彼女らの不満を買う=世論の不満を買うのとほぼ同じなのだ。

けれどそういう不満は噂話にも聞かない。ということは実際に保健所もちゃんと動いているのだろう。

考えれば考えるほどなんだか思考がドツボに嵌ってきているような気がする。

ありえない事件に、ありえない状態。

常識をゆっくりと塗り替えていく、不可思議の絵の具。

……ああ。こういう時はいつも――

 

「いやな予感がする、な」

 

隣で突っ伏す椿女子には聞こえないように、溜め息混じりに俺はそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで見回りですか?」

 

耳元で囁かれた言葉に頷く。

あたりはとうに夕暮れを終えて、点在する街灯の灯りだけがかすかに歩道を照らしている。

 

「まったく……またそうやって厄介ごとを」

 

「とは言ってもな。さすがに生徒が数人負傷しているんだ。教師としてこのくらいはすべきだろう?」

 

「まあそうですけどね」

 

ふう、とこれ見よがしに溜め息をつく自称神獣。なんだか腹が立つがこれまでの俺の行動を知っているらしいので何といえない。

曰く『巻き込まれ体質』。

……そういうお前がその一因であるという自覚はないのだろうか。ああ、きっとないんだな。そうかそうか。

 

「なんだか今、非常に失礼なことを言われた気がするのですが」

 

「気のせいだ」

 

納得いかな気なセツリを華麗にスルーして、また再びあてもなく歩き出す。

とりあえず学区内をぐるりと一周しようと思っている。……流石に学区外までは面倒見切れない。

それに各教師から情報自体はつたわっているのだから、知ってて出くわしたとしてもそれはソイツの責任だ。

……にしても、と思う。

時間帯のせいもあってか人の気配そのものが少ない。稀にみかけるとしても猫ぐらいなものだ。

とてもではないが人を襲いそうな大型の犬がいるとは思えない。

幻覚でもみたのでは、とも思ったが集団で幻覚というのはそれはそれで問題な気がする。

――と。

 

「ここは……?」

 

足を止め、見上げた先にあったのは大きな鳥居。

つまるところ神社なわけだが……はて、こんなところにあっただろうか?

敷地も広い。ここまでの大きな神社であれば朝のロードワークのときにでも見かけているはずなのだが。生憎とそのような覚えはない。

だからだろうか。興味を引かれ鳥居をくぐり神社の中へと俺は歩を進めた。

そして半ばまで進んだところでぐるりと辺りを見渡し感じたのは“不思議”。

なんといえばいいのかよくわからない、そんな表現し難い空気がこの神社全体を包み込んでいる。

かと言って不快だというわけでもなく、強いて言うならば澄んでいるというべきか。大仰に言えば荘厳、だ。

まさしく“神のおわすところ”といった感じがしたのだ。無論、これは言いすぎかもしれないのだけれど。

神社の空気に圧倒されれ、少しだけ呆としていたそこに――一つの気配を俺の感覚が捉えた。

 

「!」

 

すぐさま自分と取り戻し振り返る。同時に戦闘思考までもが起動準備される。

突然知覚した人の気配に対して過敏に反応する自分の身体にほんの少しだけ悲しくなりながら振り向いた先にいる人物を目が捉え

 

「……斑鳩?」

 

「先生?」

 

盛大に、脱力した。

――斑鳩沙月。

物部学園の生徒会長で、優等生。

俺が知る限りではあまり欠点のみられない女版赤星といったところ。……だというのになぜか美由希とおなじ何かを感じる。

ピンポイントでいうなら彼女の前で“料理”という二文字は絶対に言ってはならないと本能が叫んでる。

まあ、それはさておき。

 

「なんでまたこんな時間に斑鳩がこんなとこにいるんだ? それにもう夜だ。あまり一人で出歩くのは感心しないな」

 

「というより、わたし、ここに住んでるんですけど」

 

「……は?」

 

「正確には親戚の方が、なんですが。でもここは学園にも近いですわたしも同居させてもらっているんですよ」

 

苦笑しながら告げる斑鳩に俺は二の句が継げない。

……こういうのをなんていうんだろう。そうだ、あれだ。自己嫌悪だ。

 

「せ、先生? 大丈夫ですか?」

 

「ああ気にするな……ちょっと自己嫌悪しているだけだから」

 

自分のアホらしさに涙がでそうだ。確かに間違いやすい状況下ではあるが冷静に考えればわかることじゃないか高町恭也。

そういえば神社の本殿の方から数人の人の気配も感じられる。

つまり盛大に俺の勘違い。

過敏に気配に反応したあげく、この誤解。

これでは月村達に平和慣れしてないとからかわれるのもしかたない。

 

「そ、そういえば先生はどうしてここに?」

 

暗い影を落とし始めた俺を気遣うように強引に話題をかえようとする斑鳩の気配りに、生徒達に慕われるのも頷ける。

まあ俺もいつまでもこんなことで落ち込んでもしょうがないのでコホンと一つ咳払いをして気分を変えた。

 

「ああ。野犬騒ぎのことは聞いているだろう?」

 

「ええ。うちの生徒が何人か怪我をしたって」

 

「俺はもうとっくにこの件は片付いたと思っていたんだがこの有様だからな。まあ帰宅がてら見回りくらいはしようと思ってみたわけだ」

 

「なるほど。それで」

 

「特になにも成果はなかったがな。――ああ、そうだ。斑鳩には言うまでもないが登下校時は気をつけるように。もし遭遇したら近くの家に助けを呼ぶなりするように」

 

「はい。わかりました」

 

そう言って笑顔を浮かべる。

神社と月と斑鳩。その組み合わせが絵になるなと思いつつ、一方ではどの生徒もこのくらい聞き分けがよければ苦労しないのにとも思う。

ともあれ今日は収穫無し。もういい加減どの生徒も帰宅しているだろう。

これ以上の見回りはおそらく効果はない。

 

「さてと。では俺も帰宅するとしよう」

 

「はい。おつかれさまです先生」

 

「ああ。また明日学校でな」

 

クスクスと笑う斑鳩に俺も片手を振って踵を返し、帰宅したらまず晩飯をなににしようかなどと頭の片隅で考えながら歩きだす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――瞬間。世界が反転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「なっ!?」」

 

ともに上げた違和感への、俺と斑鳩の声が重なった。

違う。

何かがさっきまでとは致命的に変質している。

さっきまで感じられたあの清浄な空気が一切感じられない。

なによりも一番の差異は――

 

『GURUUUUUUUUUUU……』

 

突然に目の前に存在していた“犬”。

 

片腕を広げ斑鳩を庇うように1歩2歩と下がる。

誰だあれを野犬などといったヤツは!

たしかに見た目はそう見えるが、あれは野犬などでは断じてない。それどころか、自然界のものですらない。

あくまでも感覚でしかないが俺の推察は多分そう的外れなものではないだろう。

そしてそれを証明するかのように、目の前の“犬”が変化しはじめた。

最初はぼんやりとだがさっきから見えていた“女”の姿が“犬”の姿と重なるように明滅する。

明滅の速度が加速していくたびに犬の姿が薄れ、逆に女の姿がはっきりとした輪郭を帯びていく。

 

「っ!」

 

「え、きゃあ!」

 

次の刹那。

 

俺は第六感の感じるままに斑鳩を抱えてその場から後方へ跳躍し

 

目を向けた先にはさっきまで俺達がいた地点に大剣を振り下ろした女の姿があった。

 

「ちッ」

 

舌打ちしながら着地と同時に背を向けて走り出す。

まずは斑鳩を安全な場所へ連れて行くのが最優先だ。なにやら腕のなかでもがいたり叫んだりしているがそんなことに費やす思考は既にない。

いつもなら後ろに下がってもらうだけでよかったのかもしれないが今回は別だ。

なにせ一撃で境内の石畳を破壊し、小規模なクレーターをつくるようなヤツなんだ。近くにいれば間違いなく相手の攻撃に巻き込まれる。

全力疾走しながら向かったのはさっき見渡したときに見つけた本殿の隣にある小さな建物。

神社に特別詳しいわけではないのでそれがなんなのかは判らないが丁度いい。さっきの場所から距離もある。

急いで戸に手をかけて開け放つと鼻腔に感じるのは埃の臭い。どうやら倉庫のようだ。

女性である斑鳩には悪いなと心の中で詫びつつ、俺は持っていた斑鳩をそのまま中に投げ込んだ。

……なにかが落下する音と「うきゃああ!?」という生徒が聞いたらなんだか斑鳩のイメージをぶち壊しそうな声が聞こえたが無視。すまん斑鳩こんどなにか奢ってやろう。。

戸を閉め、ここにいろとだけ言って俺は再び走り出した。

目指す先はもちろん――さっきの女がいたところだ。

 

再び全力疾走しながら懐に手を入れ、鋼鉄製の針のようなものを何本か取りだし指の間に挟みこむ。

まさか俺も戦闘するような事態になるとは欠片も思っていなかったので生憎と小太刀は持ってきていない。

あるのは何本かの飛針と6番鋼糸、それと小刀。

まあ、なんとかするか。

そう溜め息をつきながら思考を戦闘モードへ移行させる。

――途端。

感じる悪寒を避けるために急制動。頭を低くしながら転がるように横へ跳躍。

その際に目の端に捉えた銀の軌跡。

それはまごうことなくさっきの大剣が振るわれた形跡だった。

こちらが着地すると同時に女はさっきの剣閃にのった勢いを殺すことなく、逆に利用するように回転。一度は避けたそれが右側から遠心力を上乗せして襲い掛かってくる。

だが目で捉えられないほどに速いわけではない。

振るわれた大剣の軌道を予想し、再び後方に跳躍。そして振り終えた無防備な背中目掛けて挟んだ飛針を一気に投擲した。

タイミングともに絶妙。一分の狂いもない。仮にも鋼で出来た針だ、背中に突き刺されば痛みで行動は制限できるだろう。

……しかし、俺のこの予想は次の瞬間におもいっきり外れることになる。

 

「なっ!?」

 

突き刺さるはずの投擲した5本の飛針は

 

その全てが、女の背中に命中すると同時に弾けとんだ。

 

おもわず思考が停止する。

目の前で起こったことが理解できない。俺のしるかぎりそんな芸当ができるのはHGSのフィールドくらいだ。

しかし目の前の女にはHGSには必ずあるリアーフィンは見当たらない。

……どういうことだ?

そんな疑問が駆け巡る俺に答えをもたらしたのはさっきまで隠れていたセツリだった。

 

「キョウヤ! あの女、やっぱり“ミニオン”です!」

 

「“ミニオン”? なんだそれはっ」

 

「簡潔に言うとあれは下位の神剣をもった人形兵みたいなものです! あと前にも言いましたが神剣の力を発揮している状態の者に通常の武器は効きません!」

 

会話の間にも容赦なく大剣は振るわれる。 

女――ミニオンは当たり前のように踏み込み、大剣を振り下ろしてきた。

一瞬受け止めようとも思ったがその考えはすぐさま棄却する。あんなクレーターをつくるような一撃を小刀で受け止められるはずがない。

集中力を研ぎ澄ませながら頭の中で今セツリに言われたことを整理する。そしてそこから導きだされる結論は――俺にも神剣を使え、ということだ。

セツリだってこの状況で嘘を吐くようなマネはしないし、それにそろそろ斑鳩が限界のような気がする。

限界というのはそろそろあの建物からでてきてしまうだろうという意味だ。

なにせ斑鳩だ。彼女が俺の聞き及んでいるような人柄ならば……まず間違いなくでてきてしまうだろう。

彼女が素直に恐怖を享受するようならばよかったのだが、恐怖よりも正義感が勝るような娘だ。

戦闘風景なんていうものを彼女に見せるのは忍びないし、俺も都合が悪い。なにせ危険物をおもいっきり所持しているのだから。

……こんな状況下だというのに、まだ俺は神剣を使うことに忌避感がある。剣士の矜持がどうこう言っている場合ではないのも理解している。

それでもなお――俺は“永遠神剣”を振るいたくない、そうおもってしまう。

僅かに気の緩みが出たのか、身体が一瞬ふらついた。

そしてそれを好機とばかりにミニオンの一撃が俺の首を落とす軌道で疾り寄る。

 

「ッ!?」

 

間一髪。

我に返った俺は身体を仰け反らせることでなんとか回避することができた。

その際に風圧で追った頬の傷の痛みが、まるで俺の躊躇を叱咤しているように感じられた。

そうだ。何を迷う高町恭也。

お前は御神の剣士。有事の際には守りの力となれるように教師となっても鍛錬を続けてきたではないか。

そして今がその守りの力を振るうべき瞬間ではないのか。

……覚悟はきまった。

僅かに忌避感は強引に押しやって地に足を確りと着け、抜刀術の構えを取る。

 

「セツリ―― 一撃で決める」

 

「はい! 了解ですキョウヤ!」

 

構える手に感じ取れる“永遠神剣第五位『意思』”の力の脈動。

何もない空間から顕れる剣の柄。

それを強く、手に馴染ませるように握り締める。

その間に間合いに入ってきていたミニオンは既に大剣を大上段に構え、振り下ろすモーションに入っていた。

ミニオンの持つ大剣と俺の剣とでは当然ながら間合いが違う。故に俺の剣ではミニオンまで届かない。

だから、気付かない。

そこは既に。

俺の間合いの中だということに。

 

「破ッ!」

 

裂帛の気合と、それを追う形での強烈な踏み込み。

地面に伝わる力の反動と膝のバネを利用した歩法は大剣の間合いを外し、一瞬で俺の間合いへと変貌させる。

剣の柄を握る手を通じて俺の“意思”が注ぎ込まれ、腕の振りにあわせるように顕現していく。

それはあたかも、鞘から刀を走らせる動作。そしてそれゆえに同様の効果を発揮させた。

 

鐔!

 

空気を振るわせる音が境内に反響する。

俺とミニオンの立ち位置はいつの間にか変わっていた。

振りぬいた姿勢を解き、剣を手にしたままゆっくりと振り返った。……結果はもうわかっていたから。

ただ、振り向いた先に予想していたミニオンの姿はなかった。あるのは腹部から肩にかけて斬られた薄れていくミニオンの姿と、その周囲で舞う光の粒子だけ。

俺にはよくわからないが、ミニオンとはこういうものなのだろうか。

確かに死体が残らないというのは都合がいい。

……いいの、だけれど。……それはどこか、悲しいものだった。

しばらくそのまま立ち尽くしていると唐突に扉を力ずくで開けるような激しい音が耳をうった。

やっぱり、予想どうりか。

斑鳩の予想していたどおりの行動におもわず苦笑してしまう。

きっと怒ってるんだろうなあとどこか抜けたことを考えながら、適当な言い訳を用意して俺は斑鳩へと振り返った。

 

 

「せんせい……? なんで、それ……」

 

「斑鳩……?」

 

 

 

しかし、用意していたはずの言い訳は俺の口から出ることはなく。

 

俺と斑鳩はお互いに呆然とすることしかできなかった。

 

 

 

 

 

お互いが手に持つ、“永遠神剣”に目を奪われたまま。





おお、いきなりのミニオンとの遭遇。
美姫 「しかも、沙月に神剣見られたし」
逆に、沙月が持っているのも目撃したな。
うーん、どうなるんだろう。
美姫 「とっても気になる展開ね」
ああ。いい所で次回に。
美姫 「続きが楽しみだわ」
次回を待ってます。
美姫 「待ってますね〜」



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