フェイト・テスタロッサ

半年前のPT事件でなのはと知り合った少女

当初はなのはと敵対していたが、なのはの真っ直ぐな優しさや強さに頑なだった心を開いていく

しかし、事件の重要参考人にとして裁判を受けており、会えなかった

そして、やっと裁判が終わったと思ったとき彼女に耳に届いた情報

なのはが正体不明の魔導師に襲われている

彼女は、なのはの友達のユーノと使い魔であるアルフと共になのはの元に向かった

そこで彼女が目にしたのは、傷つき倒れているなのはと彼女を守るかのように浮かんでいる黒い人だった


(誰?)


なのはの様子を確認するとフェイトは改めて恭也とシグナムの方に視線をうつした

二人は、激しい斬りあいをしていた


(速い!)


フェイトはショックを受けた

高速移動からの斬撃による一撃離脱を得意としているフェイトは少なからずスピードに自信を持っていた

だが、恭也とシグナムの戦闘スピードはフェイトでも着いていけないであろう程、速かった

単純にスピードだけならフェイトの方が速いが近接戦においては一瞬の判断力がスピードの要になる

その力が、フェイトと恭也達では雲泥の差があったのだ


「うぅ……フェイト…………ちゃん?」


「なのは!?」


戦闘に見入っていたが、なのはの消えそうな声が耳に届き正気に戻った


「動かないで、大分ダメージが大きいみたいだから」


回復魔法を発動するユーノ

痛みが和らいだのか少し表情が柔らかくなったなのは


「ユーノ君、アルフさんも。二人が助けてくれたの?」


「私達は今、着いたばかり。それまで、なのはを守っていてくれたのは多分…………」


言葉を止めて、恭也の方を見る

それに合わせてなのはも視線を空へとうつす


「…………え? きょ、恭也君?」


恭也の姿に驚きの声をあげるなのは

その言葉に、やっぱり知り合いだったかと思うフェイト


「なのは、話したいことはいっぱいあるけど私、行くね」


知り合いだと確認するとフェイトはなのはに行くことを告げ空へと舞って行った


「フェイトちゃん……。恭也君…………」


なのはの声は爆音にかき消された








        魔法少女リリカルなのはA'S

          〜漆黒の王者〜

  第四話 剣の騎士








「「はぁぁぁ!」」


何度目のぶつかりになるだろう

手数では上の恭也は、放つ数発の内の本命である一発を何とか決めようとする

力が上のシグナムは、本命の攻撃をもろとも強引に弾き、そのまま押し切ろうとする

だが、恭也の対応は上手く中々決まらない

このような遣り合いが何度も続いているのだ

最初は、狼を気にしていた恭也だったが管理局を気にしているのかヴィータの傍から離れなかった

まぁ、そんな事を考える余裕は直になくなっていたのだった


「紫電――」


拮抗に痺れを切らしたのか、遂にシグナムが動いた

カートリッジをロードしたシグナムの剣――レヴァンティンが炎に包まれる

その凄まじさに恭也は、かわさなければと思うがタイミング的に無理だと瞬時に判断すると


「プレッヂ! カートリッジ!!」


(行くわよ!!)


コッキング音と共に、小太刀が漆黒の炎に包まれる

禍々しい見た目とは裏腹にどことなく柔らかい印象を受けた


「一閃!」


恭也は、振り下ろされる剣に迷わずぶつける

シグナムは、その事に一瞬引っかかりを感じた

先ほど言ったとおり、力ではシグナムの方が上なのだ

だから、例え始めは拮抗しようとも最終的にはシグナムが押し切る


(こいつ程の強者がわからないわけが無い。ならば何故…………ハッ!)


シグナムは、ある事に気づくと咄嗟に後ろに飛んだ

次の瞬間、そこを恭也の左手の小太刀が通った


(くっ、やはりそううまくはいかないか)


相手の最大攻撃に対して、右手一本で何とか数秒食い止め、その隙に左手で決める

単純だが、だからこそ使いにくい戦法を恭也は躊躇いなく選択していた

唯でさえ、元々力は相手より劣り、しかも上からと下からで更に差があるのにだ

持たなければ、そのまま叩ききられていただろうに

その場合、良くて重症、シグナムが殺傷設定にしていたら死んでしまうかもしれない

どんなに死に慣れたとはいえ、恭也は人間

そんな簡単に死への恐怖を押し込むことはできないハズ

シグナムは、予想以上に闇が深い、目の前の好敵手に対して少しばかり同情心を抱いた


(主とそう変わらない歳か…………。だが!)


「主のために負けるわけにはいかないのだ!!」


「それは、俺とて同じことだ!!」


開いた距離をつめようと両者が動こうとした瞬間、二人の間を雷球が通り過ぎた

二人が、雷球が飛んできた方を向くと、そこには


「そこの娘の民間人への魔法攻撃は軽犯罪では済まない罪だ。そのまま時空管理局に連行します

あなた達も。抵抗しないなら弁護の機会があなた達にはある……同意すらなら武装を解除して」


管理局の魔導師――フェイトが、言い放った

あなた達と言うのは、ヴィータ達のことで恭也のことは一応含んでいない
















「あいつが、フェイト・テスタロッサか」


俺は、シグナムとの戦闘に入り込んできた少女を見て呟いた

彼女については師匠から資料を貰い、少しは知っていた

ランクは確かトリプルAだったかな

魔法量は、なのはの方が上だが、実力としてはそう差はなさそうだ

だが、彼女がいくら強かろうとミッドチルダ式である以上ベルカ式であるシグナム達には勝てないだろう

……例え、その差がなくとも勝てないかもしれないが


「シグナム、時間がかかりすぎだ」


「あいつは強い。純粋な剣の勝負なら私が負けるかもしれない」


皆が動きを止めているなか、狼――ザフィーラが、その姿を人の者と変えシグナムの隣へと降り立ってきた

腕には、まだ気を失っているヴィータがいる


「そうか。なら、俺も参戦する。すぐに終わらせ、主の下へ帰るぞ」


交渉は、決裂みたいだな

さて、彼女はどうするか

一人では、あの二人を相手にできないのは明白だ


「そうですか。なら、撃ち抜け、ファイアッ!」


再び、雷球を発生させた

先ほどの倍はあるであろう

俺から見ても、威力はそれなりのものだ

しかし、ザフィーラは逃げる素振りを見せず、むしろ自分から突っ込んでいった

まばゆい光と爆発音が、体の器官を襲う


「嘘……」


だが、ザフィーラは無傷だった

もちろん、手にいるヴィータもだ

防御魔法を使ったようには見えない

なら、奴はその身で攻撃を受けきったというのか

ヴィータと言い、シグナムと言い

何故、こうも強い奴らが集まっているのだろうか

どちらにしろ、今ならなのはを連れて逃げることはできる

あいつらに、なのはを狙わない限り敵対しないと言い、なのはを止めておけばそれで十分なのだが


「……見捨てられるハズがないか」


シグナム、相手に防戦一方なフェイト

目の前に助けがいる人がいて、俺に助ける力があるのならやらぬ以外の選択肢はない

御神として。…………失ったものとして
















フェイトとシグナムの戦いは一方的な物だった

一撃離脱を、主とするフェイトはスピードで混乱させようとするも、シグナムの歴戦の戦士としての経験からか活かしきれていない

逆に、シグナムの土俵へと引きずり込まれていた

距離を取ろうとも、そんな余裕はない

反撃のチャンスを掴めないまま、少しずつ、だが確実に削られていた


「紫電一閃!」


何とか反射的に受け止めるも金属が割れる嫌な音がした

しかし、フェイトには今の状況ではどうにもすることができない


「ハァァァ!」


力に耐え切れず腕が、弾かれてしまった

防御不能な状態

迫るシグナム

これで、決まりかと思われた瞬間


――御神流・奥義之壱 虎切――


もうスピードで近づいてきた恭也が奥義を放った

御神流で一、ニの速度と射程距離を持つ技

いきなりの大技だが、シグナムは鞘で何とか防ぐ


「あ、え、その」


まさか、恭也が助けてくれるとは思っていなかったため上手く言葉が出せないフェイト


「今は、共闘しよう。敵は同じだしな」


安心させようとしたのか、優しい顔を向ける

至近距離で男と、しかも恭也みたいな美少年の笑みを喰らったフェイトは色々な意味で顔を赤くしてしまった


(うが〜! うが〜!)


プレッヂが、騒ぐが恭也は無視した


「そのかわり、正体不明の魔導師だが弁護してくれ」


下を向いて考えているように見えたのか、恭也は自分のためにやる的発言をする

こうしたら、素直に納得できるだろうと思ったからだ


「は、はい」


「よし、一つ聞くが他に仲間がいるか? 戦える奴で」


「二人います」


「そうか。なら、その二人にザフィーラの相手をしてもらうことは可能か」


「あの、二人なら大丈夫です」


瞬時に念話を行うフェイト

すると、こちらに来ようとしたザフィーラに一人が殴りかかっていった


「よし、行くぞ」


後ろで戦いの音がするが、恭也は振り向くことなくシグナムに集中した


「はい」


フェイトも、深く頷いた

二人が、シグナムへと駆け出した

夜空に、黄色い閃光と桃色の閃光、そして漆黒の閃光が煌く

先ほどまで、攻撃の機会がなかったフェイトだが恭也と組むことによって思い通りに動けていた

恭也は、フェイトを守るためシグナムの攻撃を全て捌く

そして、フェイトがスピードを活かして後ろに回りこみ攻撃を加えていた

始めこそ、シグナムは両方の攻撃を受けきっていたが、段々攻撃する回数は減り、武器が身に通るようになってきた

単純に、二人で戦っているだからだけでなく、二人の初めてとは思えないコンビネーションのたまものだった


「貫け! レヴァンティン!!」


コッキング音と共に形を蛇のそれへと変え、両方同時に襲う


「カートリッジ! 聖域(サンクチュアリ )!!」


しかし、刹那の差で恭也のカードリッジの発動が間に合った

シールドにぶつかったレヴァンティンは刀身に纏う炎を消され、成すすべなく主の下へと戻っていく


「プラズマランサー!」


フェイトが、放った雷の矢を鞘で受けるシグナム

だが、その事で数秒足が止まった


「切り裂け、プレッヂ!」


素早くシグナムとの距離をつめる恭也

シグナムも、カードリッジを使おうとするが間に合わない

今度は漆黒の風を刀身に纏う


――御神流・奥義之六 薙旋――


最初で最後かもしれないチャンス

だから、恭也は最も得意な奥義を選んだ


「ハァァァ!」


だが……


「シュワルベフリーゲンッ!」


「ッ!?」


その刃が、シグナムに届くことはなかった





おお、激しい戦いが。
美姫 「恭也とフェイト、初めて組んだにしては良い連携をしているみたいね」
だな。しかし、やっぱりシグナムは経験では上か。
二人相手に張り合っている。
美姫 「最後の一撃、一体どうしたのかしら」
うーん、それは次回みたいだな。
美姫 「次回も待ってますね」
待っています。



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