「今日で、この学校ともお別れか……」




僕の名前は、蒼井和人17歳

学校とお別れというのは別に卒業するからではなく

今日、僕は父親の仕事の都合で引っ越すことになったからだ

昔から引越しが多く中々友達を作れなかったりと言う事が多かった

だけど、ここには高校に入る時に引っ越してきて二年間今までにないくらい楽しくやってきた

この学校は珍しくクラス替えが無く一年の時と同じメンバーで二年間やってきた

ノリが良く騒がしい奴も多かったが凄く楽しかった

だから、今回の引越しの話の時は本当にショックだったし悲しかった


「慣れてるハズなのに涙が止まらないよ……」


今、僕は誰もいない教室で涙を流しながら荷物を整理していた

何度も、そう何度も体験してきたハズなのに今回だけは涙が止まらなかった

それだけ、ここでの生活が楽しかったのだ


「……速くしないと宗谷達来ちゃうな」


あいつらと会うと、もう耐えられないだろう

サヨナラも言わずに行ってしまうが許してもらおう

……会ったら殴られるだろうけどな


「これで終わりか」


正直なところ心の中では終わって欲しくなかった

みんなが来て一緒に涙を流したかった

もう一度、騒ぎたかった……


「思えば色々な事が合ったな……」


初めてこの学校に来た時、凄くガチガチだったな〜

でも、直にそんな事なくなったけど

恐い人もいたけど、ある事をキッカケに仲良くなったし

親友と呼べる人もできた

体育祭、文化祭も二年連続一位にも輝いた

二回とも実行委員になったんだよな〜

苦労したけど、みんなで一つの事を成し遂げた時の達成感は素晴らしい物だった

そして、みんな転校の事を知って泣いてくれた……

僕は、その時は泣かなかったけど内心涙を堪えるのが大変だった

この二年間の事を思い出していると一人の女性が幾度となく頭をよぎる






「由美……」






ポツリと呟いてしまった

宮乃由美 ここに来て初めて仲良くなった人

体育祭や文化祭でも一緒に実行委員をやったり何度も休みの日に出かけたりと、まるで付き合ってるかの様に仲が良かった

僕達自身はそんな気まったくなかったけど周りはやっぱりそう思っていたらしい

それだけ僕らは仲が良かった

だからなのか、引越しの話をした日以来、由美とは一度も話さなかった

寂しかったけど仕方がない


「そろそろ行くかな」


思い出に更けていたら結構な時間を喰ってしまった

そろそろ行かないと本当に宗谷達が来てしまう






「……今までありがとう」






僕はそれだけ言うと教室から出て行った










「和人〜!! くそっ!! あいつ何も言わずにサヨナラかよ!!」


「まだ、校内にいるかもしれない!! 探そう!!」


「ったく! 見つけたら殴ってやる!!」


和人が教室を出てから数分後三人の男子が入ってきた

和人の親友の 加賀宗谷 浜総一 七井裕也 だった

三人共、和人の家に迎えにいったら既にいなく急いで学校にやってきたが間に合わなかった






「…………和人」






その光景を一人の少女が見ていた

宮乃由美 であった

彼女は、勇気を絞って和人の家に行ったところ三人が慌てて出てき事情を聞き一緒に来ていた

淡く輝く綺麗な瞳は今は曇っている様に感じられた

彼女は、顔を伏せて諦めたかのようにしていたが突然ハッと顔を上げると教室を駆け足で出て行った

瞳から一筋の滴を流しながら……










「やっぱり、ここは気持ちいいな〜」


僕は教室を出た後、直に行こうとしたが携帯にメールがきた

その内容によると、少し迎えに来るのが遅くなるらしく時間を潰すために尚且つ見つからないように、ある場所に来ていた

学校から少し離れた所にある崖であった

もちろん、そんなに危なくない様になっているが人は滅多に来なかった




「この景色ともお別れか……」




ここからは街を一望でき、凄く景色がいい




「ここで初めてあったんだっけ……」




そう、ここで僕と由美は出会った

今でも鮮明に思い出すことが出来る


「はぁ……」


横になり風を一身に受けながら空を眺めた

天気予報どおり雲ひとつ無い快晴であった

そのまま、眼をつぶり最後の一時を味わっていた


「ん? そろそろ来るみたいだな」


五分ぐらいした所でポケットに入れておいた携帯が振るえ内容を見ると、もう着くらしい

僕は上半身を起こし、もう一度景色を眺めた後、できうるかぎり息を吸い吐いた

最後に、ここの空気を肺いっぱい味わっておきたかったのだ




「それじゃあ、行くかね」




「ハァハァ……和人!!」




「由美!?」




立ち上がり校門へと向かおうしたら後ろから声をかけられた

相手は……由美だった


「悪い、もう行かなくちゃならないんだ」


凄く嬉しかったが由美の表情を見て後悔した

その表情は深い悲しみと後悔が入り混じり合っていた

この表情を僕がさしているんだと思うと直にでも、この場所から逃げたくなった

それが逃げる事だとわかっていても






「待って!!」






後ろから由美に抱きつかれた

その拍子に僕は眼を見開きカバンを落としてしまった




「ど…どうしたんだい? 僕そろそろ行かないといけないんだけど」




「逃げないでよ!! 私は、もう逃げないから!!」




「由美……でも、どうせ僕は今日でいなくなるし…………」




「それでも!! それでも……」




そう言いながら崩れ落ちる由美を見て僕は自分の気持ちに気付いてしまった

否、わかっていたのだ引越しの話を聞いたときに一番に思い浮かんだのは由美だったのだから

そして、今の由美の態度で多分由美のそうなのだろう

だが、だからこそ今日いなくなる様な男が由美の心にいてはいけないのだ

でも……目の前で泣く愛しい人を置いて行く事なんてできない

今日で最後だから……今日で最後なんだから…………




「由美、僕は君の事が好きだ」




「え?」




「親父に引越しの話を言われた時に初めて気付いたってのが滑稽だけど僕は…………君が好きだ」




「私も……私も引越しの話を聞いて和人が遠くに行っちゃうって考えた時に気付いた…………」




「お互いに、もう少し早く気付ければよかったんだけどな」




「でも! 今、私達両思いに「ダメだよ」和人?」




やっぱりダメだよな

こんな幸せそうな顔してるなら僕がいなくなっても僕の事を忘れてはくれないだろう

彼女の人生の足かせにはなってはいけないのだ

僕は、今もの凄く悲しい顔しているだろうな

だって、一番愛おしい人を悲しませるのだから……


「僕が転校しなかったら、このままでもいい。でも、僕は明日からいないんだ」


「け、携帯とかあるじゃん!! それに遠距離恋愛だって……」


「それじゃダメなんだ!!」


「か、和人」






「だって、君が傷ついた時や悲しい時に傍で君を癒してあげることもできない!!」






そう。何かあった時、遠くからでは彼女を守ることはできない

会いたい時にも会えない

そんな、悲しい恋愛は彼女のためにならない

なのに、なのに、なのに、なんで涙が止まらないんだ……






「だから、だからサヨナラだよ」






「待って…………待ってよ和人〜!!」




これでいいんだ

確かに直には彼女は立ち直れないだろうけど

いつか、絶対彼女を幸せにしてあげられる人が現れる

そのまま、僕はその場を駆け足で立ち去って行った








愛しい人の泣き声を振り切るかのように…………








「和人ぉぉぉ〜!!」



オリジナル〜。
美姫 「好き合っていると気付いても」
目の前にはどうしようもできない別れという現実。
美姫 「うーん、切ないわね」
うんうん。どうなるんだろうか。
美姫 「気になる次回はこの後すぐ!」
それでは、また後で。



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