『HOLY CRUSADERS』







第十三幕『神と悪魔と』





 フィアッセが襲撃されて二日がたった。恭也たちは目を覚まし、銘々の日々を送っている。

特に恭也のここのところの稽古は今までの比ではない。その鬼気迫る稽古は見ているほうが心配になるほどだった。

一方、シルフィの姿は高町家になかった。恭也たちがホテルのベッドで目を覚ましたときには既にいなかったのだ。

「まったく。この重大事にシルフィは一体何やってんだか・・・。」

 ロゼットは忍の家でそうひとりごちた。二日前の件もあり、今、フィアッセは警察の保護下にいる。

教会が動いていないことが気になるが、警察の元にある以上、一応の安全は確保できているといっていいだろう。

ロゼットはそもそも、対悪魔としてはプロ中のプロだが、こと護衛などに関しては素人同然である。そのため、介入することもできず、

こうして忍のところに来ているという次第だ。

「イレインは?」

 忍はロゼットに戦闘能力ならピカ一のイレインを護衛にと訪ねた。しかし、ロゼットは既についてると一言言った。

しかし、ロゼットの見た目、確かに、イレインの戦闘能力はすさまじいが、黒い服の女性はそれをはるかに凌ぐ実力だとロゼットは

見ぬいているのだ。

「でも、どうするの?シルフィ君もいなくなって、恭也君もあんな感じで・・・。これじゃあ、もし、前と同じ人が襲ってきたら、

冗談抜きで洒落にならないんじゃない?」

 忍は心底心配そうにロゼットに言う。確かに、恭也の今の鬼気迫る稽古は確かに過酷ではあるものの、

何か足掻いている感が拭い去れない。

「うん・・・。ほとんどチェックメイト寸前だよ・・・。」

 ロゼットは深いため息と共に机に突っ伏した。どうしようもない。現状を的確に表現した言葉だ。シルフィは消え、恭也はあのさま。

これ以上どうすればいいのだろうか。ロゼットの心配は尽きることなく、そして、最悪の日を迎えることになる。





「だめだ・・・・いそがないと・・・。」

 恭也は一人、山にこもっていた。フィアッセを襲った女性、美由希の実母、御神美沙斗。彼女を止めるためにはこれしかない。

この技を習得する以外ない。しかし、恭也は父親にこの技を教えてもらっているわけではない。また、それを使える御神の剣士も、

既にいない。手探りでその技の習得をしようとしているのだ。小太刀二刀御神流、奥義の極、『閃』を。

しかし、いまだその何たるかもつかめていない。コンサートまで後少し。それまでに習得しなければ、フィアッセを守ることはできまい。

恭也は焦燥にも似た感情にとらわれている。しかし、それでも、恭也は小太刀を取った。

「あせってますね。」

 そんな恭也に、一人の女性が声をかけた。恭也は驚いてその女性を見た。気配が無い。いや、これ異常なく気配を消している。

一流でもここまで気配を消せる人はいまい。しかも、その女性、どこからどう見ても、まだ十歳にもみたっていないだろう風貌である。

また、片方の目は失明しているのか、光が無く、腕も、義手なのか、機械製である。そんな義手があるはず無いが、

それでも、違和感を覚えさせない。

「はじめまして。わけあって名は明かせませんが、力になるためにきました。」

 その女の子はそういうと頭を下げる。恭也はわけがわからないまま、その女の子を見る。恭也は、しかし、

その女の子がここにいることは寧ろ当然だと感じていた。存在(い)るべくして存在(い)る。そういった印象を受けていた。

「一人で剣を振っていてもなんでしょう。あなたが欲する力のために、相手になります。」

 女の子はそういって背にしていた袋から二本の小太刀を取り出す。自分の身長の半分以上はあろう小太刀を

まるで棒切れでも振り回すかのように振り回す女の子。

「キミは・・・・?」

 恭也ははじめてその女の子に話しかけた。しかし、女の子はそれには答えない。

「力が欲しいのでしょう?藁をもつかみたい状況なのはわかっています。ならば、理由は要らないのでは?」

 女の子がそういった。恭也は反射的に構えた。信じられないほどの殺気。質量すら感じさせる殺気。

寧ろ、それだけで人を殺せそうな殺気。そんな殺気を放たれようものなら剣士として、嫌が応にも反応してしまう。

「では、参ります。この中であなたが何を学び、何を得るのか。それはすべてあなた次第です。」

 女の子はついに構えを取った。恭也はまるで操られているかのように鯉口をきった。恭也の前に現れた謎の少女。

目的も理由もわからない女の子との奇妙な修行の日々が幕を開けた。





 ところ変わってドイツの山奥。豊かな自然に包まれる中、どこをどうしたのか、シルフィはそこにいた。

「うーん・・・こういうのもいいねぇ・・・。」

 シルフィはログハウスの中からでてくるとそういって体をほぐす。そのままラヴィス=カノンを手に取ると広い、

どこまでも広い草原に足を運んだ。暫くいくと一人の男の子が既にシルフィを待つかのように立っていた。

しかし、その男の子も只者ではない。自分よりもはるかに長い日本刀を持ち、ともすれば女の子と見間違えられかねない風貌、

何より膝ほどまでに髪の毛が伸びている。

「遅いよ。とはいえ、何で俺のとこに来たかなぁ?俺、ここで出るのはまずいんだけど。」

 男の子は自分の身長よりも長い日本刀をシルフィに向かって突きつけて言った。

「悪いとは思ってるよ。でも、俺は君の名前を知らない。だからいいんじゃない?それに、この力を使うにあたって、

コントロールする自信ないから。君だともし暴走した時、止めてくれそうだからね。」

 シルフィもそういってラヴィス=カノンを男の子にむける。

「ま、止めることは止めてやるよ。ただし、命の保障はしないけどね。」

 男の子はそういうと日本刀を構えた。不恰好ながらも、その風貌は一流のそれであり、シルフィよりも様になっていた。

シルフィはそれに怖じることもなく向かい合う。確実に自分よりも強いものを前にして。しかし、シルフィの様子も、違う。

「じゃあ、いくよ。」

 シルフィはそういうと自らの血に流れる『神の討ち手(パニッシャー)』としての力を解放した。その背には白く美しい羽。

神と人の子である証拠。

「どうやら安定してるみたいだね。じゃあ、後は力を十二分に使えるかどうかだね。」

 その言葉が終わると同時に、シルフィの服が斬られた。動きが無い。まるで時間を『省略』したかのように。

「さすがだね。じゃあ、これから三日間、休み無しでいってみようか。」

 シルフィはそういうと、まるで容赦なく男の子にむかって突っ込んでいく。

三日という時間が取り返しのつかない時間であることに気付くわけもなく。

また、三日という時間が、豊かな自然を荒野にしてしまうに十分すぎる時間であることにも気付かず。





 フィアッセが襲撃されて四日がたった。フィアッセは警察の護衛の下、コンサートに向けて調整を続けている。

襲撃のこともあり、日取りがずらされ、コンサートは一週間後。しかし、一抹の不安は残る。いつ襲われてもおかしくない状況。

自分を狙っているのが美由希の実母であるという事実。どれをとっても暗くならざるを得ない。

「調子、いいみたいだね。」

 コンサートホールの控え室。フィアッセの護衛についていたリスティがフィアッセにそういった。

「うん。いい感じに仕上がってるよ。」

 フィアッセは明るく答えたものの、声にどことなく元気が無い。シルフィが消息を絶ち、恭也も山にこもってしまい、

また、美由希も、自分の母親がフィアッセを狙っているという事実にショックを受け、落ち込んでいる現状、元気がなくて当然である。

「とにかく、コンサートの成功だけを考えてて。後のことは僕たちが何とかするから。」

 リスティはフィアッセの肩をたたいた。フィアッセも笑顔でそれに答える。ここまでしてくれている人がいる。

だから、絶対に成功させようという思いを胸に力強くこめて。





「さて・・・ここが今回始末する警察ね・・・。ま、昨日潰した教会よりも骨があってくれればいいんだけど・・・。

ま、たかが警察、知れてるか。」

 海鳴市にある警察。その前に白いゴスロリ服を着た女性、九重和が立っていた。彼女は昨日アメリカで教会を壊滅させた。

それこそ関係者一同、一族郎党皆殺しにするほど完全に。しかし、彼女から人殺しの匂いはしない。服装は奇抜であるものの、

それさえ除けばただの人だ。

 和はスカートを少しまくるとそこから二本のナイフを抜き出した。愛用のナイフ。

名前はないものの、そのシャープなフォルムから人を殺すためだけに作られたものだと一目でわかる。

その二本をまるで曲芸師のように投げながら警察署の中に入っていった。

 警察署の中は一瞬、静寂が包み込んだ。それはそうだろう。ナイフを曲芸のように投げている女性が入ってくれば当たり前だろう。

それからは台風一過、いや、竜巻一過といっていいだろう。彼女を取り押さえようとした警官も、それにあっけにとられた警官も、

運悪く警察署に来ていた一般人も、彼女は片っ端から解体(ばら)していった。ものの五分程度で、警察署にいた人はすべて和に殺された。

いや、人だけではない。そこにあった観葉植物も、当然のようにあるデスクも、パソコンも、すべてが殺されていた。

唯一無事なのは警察署という外観だけだ。しかし、和は返り血一つ浴びていない。人ごみにまぎれれば、

今しがたこれほどの殺人を起こしたということに気付くものは誰一人としていないだろう。

「いまいち殺ったって気がしないなぁ・・・・。いっそここまで来たんだからフィアッセ・クリステラも殺しちゃう?」

 物足りなさそうに和はつぶやきながら警察を後にした。その三時間後、警察署に戻ってきたリスティが惨劇の現場を発見し、

史上稀にみる殺人事件として、捜査が始められることになった。





 翌日、ロゼットはフィアッセの元にいた。昨日の事件のためにフィアッセの警護に当たっていた警官の一部が事件の捜査に

当てられることになり、警備が手薄になってしまったために、ロゼットが自発的に警護についたのだ。

「なんか、本当にチェックメイト寸前になってきたね・・・。」

 ロゼットは深いため息をついていった。それもそうだろう。今までは数に物を言わせて安全を確保してきたわけだが、

それすらできなくなってしまった。いまやフィアッセの護衛についているのは警官十数人。

二日後には本庁から増員が来るという話ではあるが、その二日間に何もないとは言い切れない。

「ロゼットー、電話だよ。サテラって人からだけど・・・・。」

 ホテルは一度襲撃も受けているために危険ということでフィアッセは高町家にいる。

そのフィアッセがロゼットに電話を取り次いだ。ロゼットはサテラからの電話ということで驚いた。

そもそも、ロゼットがここにいるということも伝えてないし、電話番号も知らせていないのだから。

ロゼットは疑問に思ったものの、電話に出た。

『ロゼット?良かった。いてくれたんだ。』

 サテラはロゼットが電話に出ると挨拶もせずに、ロゼットがいてくれたことに安堵感を覚えているようだった。

「どうしたの、サテラ?」

 ロゼットはサテラがなぜ電話をかけてきたのかを聞く。サテラはすぐに本題に入った。

『教会が壊滅させられたわ。しかも、完全に。』

 サテラの言った内容がロゼットには一瞬理解できなかった。

「教会が・・・?」

 現実を受け止めきれてないロゼットはうわ言のようにそういった。

『ええ。誰の仕業かはわかってないみたいだけど、完全に機能しないみたいね。』

 サテラはあくまで冷静に事実のみをロゼットに伝えた。

『とりあえず良くないことだけど、フィアッセさんを狙う組織が減ったってことはいいことじゃない?いいことじゃないけど。』

 ロゼットはそうだねと一言答えるとそのまま電話を切った。

(教会が・・・・。一体何が起こってるって言うのよ・・・・。)

 ロゼットは一体何が起きているのか全く把握できずそのまま縁側まで行くと空を見上げた。

(さっさと帰ってきなさいよ・・・・.何やってんのよ・・・シルフィ・・・・。)

 そしてその翌日。シルフィが帰ってくると同時に、一つの戦いの火蓋はきって落とされることになる。そんなことを知る由もなく。





「さて、今日はこれくらいかな。」

 コンサートホールで通し練習を行い、楽屋で着替えを済ませた後、フィアッセはロゼットと共に高町家に向かって歩いていた。

「フィアッセさん、怖くないんですか?」

 ロゼットは海浜公園についたあたりでフィアッセのほうを向き直るとそう尋ねた。

ちなみに、周りには私服警官が点在し、完全なガードをしている。また、そこにはイレインの姿もあった。

「・・・・怖いわよ。本当に。でも、そうも言ってられないわ。今回のコンサートは世界の貧困者のためのチャリティーコンサートなの。

だから、貧しさに苦しんでいる人々のためにも、怖いからってだけでやめるわけにはいかない。」

 フィアッセは水平線に今まさに沈もうとしている太陽を見てはっきりといった。

そのまなざしには歌に対する想いとその先にあるものをしっかりと写している。ロゼットはそんなフィアッセをみて少し躊躇ったが、

はっきりと今おかれている状況について話し始めた。

「はっきり言って真面目にやばいですよ。現状は。恭也君もいない、シルフィもいない上に、相手はその二人よりも強い。

私はこんなふうに護衛をするのは初めてですし、相手が美由希ちゃんの実母という点でイレインも本気が出せない。

正直言ってチェックメイトまであと一手というところなんです。」

 ロゼットの言葉にフィアッセは表情を曇らせたが、それでもしなくちゃいけないのと力強く反論した。

ロゼットは考えを改めた。フィアッセの歌に対する想いはロゼットの考えているそれよりもはるかに強く、大きなものであると。

それはかつて、ヨシュアのために命を賭けた自分と同じように。また、だからこそ今回は絶対に止めなければならない。

だからこそ、こんなところで殺すわけにはいかない。

「死にますよ。間違いなく。」

 ロゼットははっきりといった。確かに自分たちは身に変えてもフィアッセを守るつもりでいる。

しかし、それでも、守りきる自信は無い。たとえ恭也やシルフィが戻ってきてもそれはかわらないだろう。

それほどまでに刺客の強さは桁外れなのだ。

「死なないよ。まだ、死ねないから。」

 フィアッセはロゼットをまっすぐ見つめていった。ロゼットはもう無理かなと感じた。多分、止められないだろう。

貧困者のためという理由よりも、それ以上の理由、いや、歌というものの根源に気がついている人に、

これ以上何をいっても無駄であることは明白だ。ロゼットは一つため息をつくとわかりました。

それなら全力で守りますというと再び歩き始めた。と、何かおかしいと違和感を覚えた。どこか視界に入っていた私服警官の姿が無い。

いや、ないのではない。倒れている。死んでいるのだ。

「・・・・ッ!!!」

 ロゼットは服の裏に隠していたヘブンパニッシャーを手に取ると周りを見回す。なぜ気がつかなかったのだろう。

周りでこんなに人が殺されているというのに。なぜ気がつかなかったのだろう。フィアッセが『御使い』だということは、

当然自分の弟、ヨシュアのように悪魔たちに狙われるのではないかということに。果たして神はそこにいた。

ブレスレットやネックレスを大量につけた女性、風牙のウェントゥスがそこにはいた。

その手には鉄板に柄をつけただけのような無骨なフォルムの凶器を持って。

「『御使い』、フィアッセ・クリステラ。その命、古神四大神が一柱、風牙のウェントゥスが頂戴します。」

 言うや否やだった。ウェントゥスはすさまじい速度でフィアッセに迫る。しかし、その間にイレインが割って入った。

「おかーさん!!フィアッセさんを連れて逃げて!!」

 ロゼットはそれを聞くやすぐにフィアッセの手をとり走り始めようとした。

しかし、いきなりの突風にフィアッセもろとも吹き飛ばされて地面に転がった。おまけにその風は止む気配もなく、

立って逃げることもままならない。イレインは戦闘モードに突入し、ウェントゥスにむかう。しかし、まるで象の前の蟻。

どのような攻撃もその鉄板のような剣で防がれ、また、避けられ全くといっていいほど当たらない。

まるで風に揺らめく木の葉を斬ろうとしているかのごとく。

「邪魔ですよ。少しじっとしていてください。」

 ウェントゥスはイレインに一言そういうと一瞬のうちに背後に回り、その鉄板のような剣の腹でイレインを一撃した。

イレインはまるで車に轢かれたかのように弾き飛ばされて動かなくなった。おそらく今の一撃で気を失ったのだろう。

決してイレインが弱いというわけではない。ウェントゥスが強すぎるのだ。イレインの実力は一国の軍事力になりうるほどである。

そのイレインを子ども扱いした上に一撃で倒すということはウェントゥスの実力はそれすらも凌ぐ、まさに神の力だといえよう。

「邪魔が入りましたが、今度こそ、フィアッセ・クリステラ、命をいただきます。」

 ウェントゥスは吹き荒れる突風の中、ウェントゥスはフィアッセの元まで歩み寄る。

「フィ、フィアッセさん・・・!!」

 ロゼットは力を振り絞って立ち上がると、ウェントゥスにヘブンパニッシャーを向けた。

「なぜフィアッセさんを狙うの!?」

 ロゼットはウェントゥスに銃を突きつけて叫ぶ。ウェントゥスは特に気にかける必要もないが、しかし、それでも立ち止まった。

「パンデモニウム復活のためです。殺すには『御使い』は必要ですが、復活させるには邪魔にしかなりません。フィアッセ・クリステラ。

あなたで最後です。いえ・・・。日下部秋姫も残っていますから後二人ですか。どちらにしろ、もうすぐ全てが終わり、全てが始まります。

あなたがた人間は黙ってみていてください。」

 ウェントゥスはそのわかりきった理由を一切の感情を含まない口調で言った。ロゼットもそれぐらいわかっている。

しかし、そうしてでも何とか時間を稼いでこの状況を打開する方法を考えなければならない。が、ウェントゥスにそのような時間稼ぎ、

通じるはずも無い。ウェントゥスはわかりきったことは聞かないでくださいとやはり感情の無い声で言うと、その凶器を振り上げる。

ロゼットも同時に発砲する。銃弾はウェントゥスに向かっているものの、当たっている気配はない。そして。その凶器はゆっくりと。

しかし、確実に二人を殺すためだけに目視不可の速度で振り下ろされた。ロゼットは最後の最後まで諦めなかった。

諦めなければ必ず助かると。必ずフィアッセを守れると。

(クロノ・・・・シルフィ・・・・!!!)

 ロゼットは最後に思った。自分が命を渡してまで闘った悪魔を。そして、自分が愛した一人の人間を。

しかし、無常にもその凶器は振り下ろされた。地面と金属の衝突音。まるで鉄球が地面に衝突したかのような轟音だった。

しかし、ロゼットとフィアッセは生きていた。凶器は振り下ろされた。しかし、二人は助かったのだ。

「クロ・・・・ノ・・・・」

 ウェントゥスの前、ロゼットの前にいた。頭には悪魔特有の尖角(ホーン)。そして見間違うはずも無いその後姿。

間違いなく、クロノだった。

「クロノ・・・・。先の大戦でパンデモニウムを殺したもの・・・。」

 ウェントゥスは即座に間合いを取ってつぶやいた。彼女にとってもクロノは脅威なのだろうか。いや、そんなはずはなかろう。

その証拠にウェントゥスは再び無造作に凶器を振り上げる。が、何を思ったか薄笑みを浮かべて空高く舞い上がった。

「邪魔が入りました。明日、再び参ります。」

 ウェントゥスはそういい残すとその姿を消した。

「大丈夫、ロゼット?」

 クロノは振り返ってロゼットを向く。ロゼットは緊張の糸が切れたのか、その場にへたり込んでいた。

しかし、ロゼットはクロノの姿を真正面から見るとクロノに抱きついた。

「クロノ!!あんた、無事だったの!!!」

 クロノは少し驚いたが、すぐにロゼットを抱き返した。約80年ぶりの再会。共に悪魔と闘ったものとして当然だろう。

二人の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。

 その後、大至急、本庁から駆けつけた警察によって一面は封鎖され、フィアッセたちも聴取を受けた。

そして、協議の結果、フィアッセの身柄は再び警察側が保護することになった。

しかし、それも気休め程度でしかないこと、ロゼットも、何よりフィアッセ本人も気がついている。

そのため、あくまでフィアッセは高町家で生活し、あたり一面を警官が完全封鎖、警戒するという運びになった。





フィアッセを狙う刺客、『神』、『夜烏』、『死装束』。





神の力と人間の力と化物の力に対するは悪魔の力と人間の力。





それでもしかし、天秤にかけるまでもない最悪のバランスだった。










あとがき



さて、今回の更新最後の作品、HOLY CRUSADERS第十三幕です。

(フィーネ)なんか、もう一杯一杯ですって感じね。

うむ。敵は神様に美沙斗さん、おまけにあの化物まで出てくるときたもんだ。フィアッセが生きてること自体奇跡に近いかも。

(フィーラ)まだ秋姫ちゃんの話残ってるのに、ここまで人出して大丈夫なの?

大丈夫。ステラだけで十分だ。

(フィーリア)アレ?他の神様は?

さあ?どうなるだろうね?まあ、シルフィの力もあることだしねぇ・・・。

(フィーネ)なるほど。じゃあ、次回、動きアリ?

あるよ。バリバリ。とはいえ、いつ書きあがるかわかんないけど。

(フィーラ)何で?

ファントムキングダムだよ。やりこみたいからね。最悪、夏ぐらいまで小説書けないかも。

(フィーリア)はぁ!?

嘘嘘。でも、更新スペースはめちゃくちゃ落ちるな。

(フィーネ)書けよ。

書くってば。遅くなるけど。

(フィーラ)ま、もうすぐ大学始まるしね。とにかく、最低でも一月に五本は上げること。

はーい。わかりました。

(フィーリア)なら、さっそく・・・。

ファントムキングダムしますか。

(フィーネ)続きをかけー!!!!!

ぐわぁぁぁぁぁ!!!!刺すな!!!抉るな!!!中身がでるぅぅぅぅぅ!!!!

(フィーラ)じゃあ、第十四幕『シルフィの力』でお会いしましょ♪


アハハハ……。
美姫 「うふふふ。という訳で〜」
な、何が、という訳なのかな?
美姫 「ぶっ飛びなさい!」
へべろぴゅにょみょ〜〜〜〜〜〜!!
って、初っ端からですか〜〜〜!
美姫 「ふぅ〜。最悪の事態、一歩手前って感じですね。
     果たして、どうなってしまうのか!? 次回も楽しみにしてます〜」



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