『壊れかけの剣士たち』




     〜第07話〜






これは『An unexpected excuse 〜沖田総詩編〜』に繋がるお話です。
原作がお好きな方はおススメいたしません。
それでもよろしければどうぞ








地図に描かれている山に着くと早速テントを張る恭也。
実は恭也が山篭りをした理由が三つある。
一つ目は先にも言ったとおり、年頃の女性と一緒にはいてはいけないという事。
二つ目は鍛錬する場所を確保する事。寮にいた場合、門限がある為深夜の鍛錬が出来ないという事。
三つ目は恭也自身の流派によるもの。

「(御神流はあまり知られない方がいい)」

そう、恭也の使う御神流は殺人術。
そんなものを愛津女学園の生徒に見せないほうが良いと考えているのだ。
実際恭也は悩んでいた。

「これからどうするか……」

新選組は士道の元剣を振るっている。
だが恭也は無闇やたらと剣を振るうことを良しとしない。
その辺りの思想が恭也と新選組では既に異なっているのだ。

「……いずれ仲違いをする事になるだろう」

今は総詩とイサミへの恩返しと試用期間として新選組に所属している恭也。
だがいつまでもこのままという事は無理だろうと考えている。
色々考えを巡らせていた恭也だが、

「その時になれば自ずと答えは出る、考えるのはここまでだ」

とまた今度考えようという結論に至ったようだ。

「とりあえず鍛錬するか」

という事で鍛錬を開始するのであった。
とりあえずイメージトレーニングの相手を美由希に見据えながら。
二時間ほど鍛錬をして恭也は一日の疲れが出たのか眠る事にするのであった。
そうして恭也の夜は更けていくのであった。




早朝四時、恭也は目を覚まし軽く鍛錬を行う。
今恭也がいる山から愛津女学園までは歩いて約二時間。
まあ恭也にとってはランニングに丁度いいと距離だと思っているのだが……。
鍛錬を終えた恭也は

「さて朝飯か……昨日のうちに捕まえておいた魚を焼くか」

そう言い火を熾し魚を焼いていく。
いい焼き加減になっていく魚をみながら恭也は

「今日は帰りに米を買ってこなければ。山菜などは手に入るから適当に野菜なども……」

などと余りにも呑気にこれからの生活について考えていた。
するとなぜかそこにいるはずのない者が現れた。

「なぜゲンちゃんがここにいるんだ?」

「ニャーン!(お迎え)」

「そんなにまずい時間だったか?」

と携帯を確認すると、時間は七時。
走れば間に合うという事でのんびりしている恭也なのであった。

「ありがとな、ゲンちゃん。お礼に焼き魚食うか?」

「ニャーン!(うん)」

恭也の手から渡された焼き魚を美味しそうに食べるゲンちゃんであった。
そんな光景を恭也は微笑ましく見ているのであった。
火の後始末をし、ゲンちゃんが魚を食べ終えると恭也はゲンちゃんを頭に載せる。
時間は七時三十分。
始業開始まであと一時間。

「いくぞ、ゲンちゃん」

「ニャーン!(うん)」

そう言って駆け出すのであった。

「しっかり捕まってるんだぞ?」

恭也はランニングのつもりで走る。
だがそれは世界○上で走っていた全盛期の○ちゃんよりも速かったとか……。




所変わってここは愛津女学園の女子寮内の食堂。
そこは朝食を食べている生徒たちで賑わっていた。

「う〜ん、今日も朝からおいし〜!」

「近藤さん、そんなに慌てずに」

「紗乃、あんたもうちょっと落ち着いて食べなよー」

「そうは言っても……んぐ……こんな美味いもん……もぐ……止めらんねーよ」

「……芹栖、いつも頑張ってるからこれやる……」

「あ、ありがとうございます、斉藤さん。で、でも〜、なんだか嫌いなもの押し付けられてる気が〜……」

「ワテをおかわりにいかがでっか〜。そのたわわに実った二つの……ぎょえーーーっ!!」

訳のわからない事を言っていたカンリュウサイは一機減った。
もう誰が斬ったのかすらわからない……。
とりあえず各々食事を楽しんでいるようであった。
だが一人気になる事がある生徒がいた。

「ゲンちゃん、どこ行っちゃったんですかねぇ」

総詩である。
いつも一緒にいるゲンちゃんが目を覚ましてから一度も見当たらないのであった。

「朝ごはんいらないんですかねぇ」

その言葉に過剰に反応するのが

「えっまじ!?だったらあたしが食ってやるよ」

と喜んでゲンちゃんの分を口に運ぶ紗乃であった。
その光景に黙ってないのがこの人。

「ずる〜い、さのちゃん。わたしも食べる〜」

と言うのは紗乃に負けず劣らずの食欲局長のイサミであった。
その光景に呆れてる新選組の面々。
残しておいてあげようという気はさらさら無いらしい……。
するとそこに

「ち〜っと歳緒くん、聞きたいんじゃが恭くんを追い出した言うのは本当じゃき?」

「いくら歳緒さんでもやりすぎなのではありませんか?いくら殿方がお嫌いだと言っても恭也様ほどの方を追い出すなんて」

「もぐ……もぐ……もぐ……」

討学派の総大将たちが現れた。
一人は我関せずといった感じで焼きそばパンを食してるが……。
どうやら恭也が寮内にいないのは新選組(歳緒)が原因だと思っているようだ。

「別に私が追い出したわけではない。あいつが勝手に出て行ったのだ」

その真意を確認するために他のメンバーに確認を取る涼華と心であった。

「本当なんですの?恭也様がご自分で出て行かれたというのは?」

「そうだよー。私たちもびっくりしたよ、恭の発言にはさー」

「突然でしたもんね。"川の流れてる山を教えてくれ"って」

「この近くの山には熊が出るのではなかったでしょうか?」

「ボクたちも一応は止めようとしたんですけねぇ」

「……恭は絶対に行く気だった……」

「高町先輩真剣な目でしたからね」

「今頃美味いもんでも食ってんだろうなー、高町」

その一言を言うとまた食事を再開する紗乃。
彼女と結婚する人は食費に泣かされるであろう。
最後にイサミに確認を取ろうと顔を向けると

「ぐぅ……ぐぅ……ぐぅ……」

昨日の夕食の時と同じく寝息をかいていた。
どうやらお腹一杯になったらしい。

「近藤さん……近藤さん、昨日も言いましたが牛になりますよ?」

「ふぇ……?あ〜、もう夕食の時間なんだね?それじゃ〜……」

"がーーーんっ!"

と言う音が聞こえそうなくらいの表情をするイサミ。
皆が?マークを浮かべていると、イサミは泣き出した。

「ウワァァ━━━━━。゚(゚´Д`゚)゚。━━━━━ン!!!! ど〜してわたしのご飯が無いの〜!」

誰が突っ込みを入れるか悩まされる光景であった。

「局長、さっき自分で食べたんですよー」

と珍しくやちの役目になった。
どうやら新選組内のじゃんけんに負けたようだ。

「ぐす……ぐす……ふぇっ?しょうにゃの……?」

「局長は美味しそうにご飯を食べるから、準備されないなんて事絶対にありませんから。
だから泣き止んでくださいよー」

「う……うん……」

何とか落ち着いたイサミであった。
とりあえず気を取り直して心はイサミに質問するのであった。

「近藤さん、恭也様が自分で出て行くと仰られたのは本当なんですの?」

「……うん、恭くんみんなに迷惑掛けたくないから〜って」

「恭くんが迷惑なんて、あち達はそげんこと思っとらんのに」

「恭くん思うところがあったんだよ。剣を抜きたがらない理由もきっと……」

確かに新選組の面々もそれは気になるところであった。
あれだけの気を放てる男がなぜ剣を抜かないのかと……。
抜かない事は悪い事ではない。
だが己の危機に陥っても抜かなかったのだ。
恭也という男を全く知らないと者たちの疑問であった。

「(恭也様……やはり抜かなかったのですね)」

恭也の強さの片鱗を見ている心。
心はその恭也の心の強さに惹かれていた。
どんな状況でも己の信念を曲げない強さに。
色々な考えが浮かぶ中、岡田だけは冷静に焼きそばパンを食しながら言うのであった。

「もぐもぐもぐ……。学校……行かなくていいのか?」

「「「「「「「「「えっ!?」」」」」」」」」

時間を見てみると、八時二十三分。
今から出ればぎりぎりと言ったところだ。
それを見た瞬間全員動き出した。
周りには誰もいない。
つまり佐学派のトップと討学派のトップだけが食堂にというか寮内に残っていた。

「急げ!新選組が遅刻したとあっては皆に示しがつかん!!」

「桂、あち達も急ぐぜよ!」

「大変ですねぇ。まあ仕方ないんでボクはのんびり行かせて貰います」

「馬鹿な事を言ってないで行くぞ!総詩!」

「そ、そんなぁ。ボクは病弱なんですからぁ」

そう言って走っていく土方、総詩、涼華、心、伊織の五人であった。

「あーもう、なんでこんな事になんのよー。ていうか紗乃、あんた食べんのいい加減にやめなよ!」

「うーん……まあいっか。お昼に腹一杯食えば」

まだ食べるつもりだったのか紗乃……。
その言葉に呆れながら紗乃と共に駆け出すやちであった。

「斉藤さん、急ぎましょう」

「……みきぽんが見当たらない……」

「ええっ!?」

自分の部屋まで戻りみきぽんを探す初音。
だが芹栖は思い出した。

「斉藤さん、食堂に被ってきてませんでした?それで食事するのにみきぽんさんを……」

「……早く言え……」

「はぅっ、すいません」

「……とりあえず早く行くぞ……」

「あ、待ってください〜」

いつの間にか逆の立場になっている初音と芹栖も駆け出していく。
なんとか全員出た……かに思えたがそうではなかったようだ。
なぜかすっきり顔のイサミがいた。

「いや〜便秘気味だったんだけど解消されてすっきりだよ〜」

どうやら全員が動き出した時、イサミも動き出していたようだ。
昔では厠と呼ばれていた場所に……。

「どうして、誰もいないの〜〜〜!?」

現在時刻 八時四十六分。完全なる遅刻が決定していた。




イサミが便秘と決着をつけている頃恭也はクラスに自己紹介をしている所だった。
頭にゲンちゃんを載せながら……。

「高町恭也です。風芽丘学園から参りました。至らない点があると思いますがよろしくお願いします」

と不器用ながらも微笑むとクラスの大半が顔を赤くして顔を背けるのであった。

「(うーむ、どうやら顔も合わせたくないらしい。まあ俺のようなのが来てはな……)」

恭也は顔を背けられたのは自分を嫌っているからだと思っている。
まあ自分の容姿に絶対の自信を持っている恭也だからこそ起こる勘違いである。

「あなたの席は……そうねとりあえず永倉さんのとなりでお願いしますね」

「はい」

教師の指示に従いやちの隣に移動する恭也。

「恭が隣かー。運命を感じるねー」

「そうですか?」

「そうだよー、それにしてもゲンちゃんは恭を気に入ったようねー」

「ニャー……ニャー……ニャー……」

ゲンちゃんは恭也の頭の上で寝ているのであった。

「どうも頭が気に入られたみたいで……」

苦笑いする恭也であったが、ゲンちゃんは基本的に総詩の頭の上にしか載らない。
相当気に入っていなければそんな事はしない猫なのである。

「そ・れ・よ・り・も・どう?クラスの反応、男としてうれしいんじゃない?」

クラスの大半が恭也の容姿に見惚れている事を言ったやちであったが、

「皆さん俺のようなのが来て迷惑だと思ってるじゃないですか?先ほどから顔を合わせたくないほどに……」

「……えっ?」

恭也のその一言に信じられないようなものを見たという感じのやちであった。

「「「「(なんでそうなるのーーー?)」」」」

大半の女子はそんな事を考えていたとか。
そんな恭也の反応に

「……ねえ恭、あんた鈍感とか鈍いとか言われる?」

「なぜ永倉さんもわかるんですか?そこまで鈍くもないと自負してるつもりなんですが……」

「あっはは、これからが楽しみだねー」

「?」

やちの言ってる事が全くわからない恭也なのであった。
その十五分後、イサミは教室の雰囲気がいつもと違うと感じながらも自分の席に着くのであった。




「ふう、午前の授業を何とか乗り切ったな」

なんとあの恭也が午前の授業を寝ずに過ごしたのだ。
親友辺りに言えば、成長したななどと言われるほどの行為だ。

「昼休みだが……ゲンちゃん学食などはあるのか?この学園は」

「ニャーン!」

そんな会話をしていると教室の扉が開かれ入ってくる生徒がいた。

「恭也様。よろしければ昼食はわたくしとご一緒しませんか?恭也様の為にお弁当も用意してありますのよ」

その後ろでは討学派の生徒たちが一緒に付いてきていた。

「(どうするか……。食堂があればそちらに行けば良いと思うんだが、折角用意してもらったものを
無碍にするわけには…)」

恭也が悩んでいると

「恭く〜ん、ごめ〜ん。新選組の仕事あるんだよ〜」

「そうですか……。すみません心さん、折角のご招待でしたのに……」

「恭也様そんなお気を使わずに。仕方ない事ですわ」

「よかったらまた誘っていただけますか」

「はい、その時を楽しみにしてますわ///」





心と別れイサミと共に生徒会室とプレートが掛けられた教室へ移動した。

「ここは?」

「う〜ん、新選組は生徒会も兼任してるんだよ〜」

「なるほど」

説明を受け教室内に入ると新選組の面々が勢ぞろいしていた。

「あ、そうだ恭くん。昼食のおにぎり用意してあるから、恭くんも食べてね〜」

「はい、頂きます。皆さんは毎日お昼はこちらで食べてるんですか?」

その質問には芹栖で回答してくれた。

「毎日というわけではないですよ。今日は高町先輩に仕事を教える為に集まったんです」

「そうだったんですか。皆さんわざわざすいません」

芹栖の説明を聞きメンバー全員に頭を下げる恭也であった。

「みんな食事をしながら聞いてくれ。今芹栖が言ったように、本日は高町に私達の責務を
教える為に集まってもらった。本当に手の掛かる男だ」

もう今更土方が皮肉を言うのは受け流す事にした恭也であった。
口出しすると後々面倒だと思っているからだ。

「高町先輩、土方さんの言う事は受け流しちゃって良いですからぁ」

総詩が恭也へフォローをするのであった。

「新選組の仕事は多岐に渡る。学園の運営と討学派の鎮圧を平行して行う」

それを聞いた瞬間恭也はこの新選組を今抜けようかと考えてしまったのだ。
元来のんびりしているのが好きな恭也である。
慌しいのは自分の周りだけにして欲しいと考えているのだ。

「大丈夫ですよぉ、高町先輩。入ったばかりの先輩に、いきなり難しい仕事はさせませんから」

「目下、生徒会として執り行う大きな行事は学園祭だ」

「愛津女学園 学園祭 "愛津思魂祭"。全生徒でこの愛津女学園を思い、感謝するっていう粋な祭りだね」

「……はあ」

「今はそれよりも新選組の基本にして最大の任務……舎中見廻りについて教える」

「つまり校舎内の見廻り……ですか?」

「そうだ、それが私達の第一任務となる」

最近では先走った佐都間学園の男子生徒たちが勝手に校舎に侵入してきているらしい。
そういった生徒追い返すのも新選組の重要な役目なのだとも。
つまり恭也は昨日この洗礼を受けたわけだ……。

「これは説明するより実践の方が分かりやすいだろう。食事が終わってるなら行くぞ」

そう言われ新選組の面々は生徒会室を出て見廻りを開始するのであった。





新選組の仕事が忙しくなりそうな恭也。
運命はどのように彼を導くのか?
というよりもどれだけのゴタゴタがまたやってくるのか!?





<終わり>



やっぱりのんびりと学園生活、という訳にはいかないみたいだな。
美姫 「みたいよね。恭也はゆっくりしたいみたいだけれど」
周りがそれを許さない状況か。それにしても、本当にどんなゴタゴタが起こるのやら。
美姫 「次回も楽しみにしてますね」
待ってます。



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