『壊れかけの剣士たち』




     〜第13話〜






これは『An unexpected excuse 〜沖田総詩編〜』に繋がるお話です。
原作がお好きな方はおススメいたしません。
それでもよろしければどうぞ





前回のお話

総詩との信頼を深めていく恭也。
だが大変な事は恭也たちを待ってくれない……。
果てさてどうなる事やら……。




その日はいつにも増して蒸し暑い日であった。

「見廻り終了しました」

屯所に入った恭也が土方に報告していた。
いつものようにサボらず仕事をしたのだ。
そういつものように……?

「うむ、ご苦労。普段からも今日のように頼むぞ。さて今日は特に問題なく終了したな」

土方の終了の言葉に気を緩める新選組メンバーたち。

「ふう、とりあえず今日は終了か」

「そうですね、毎日がこれくらい平和だったらいいんですけど」

恭也の言葉に同意する芹栖。
だがこの平和に文句を言う者もいたりする。

「それにしてもさー、今日の討学派は大人しかったよなー。いつもだったら歯向かって来るクセにさ。
おかげであたしの活躍の場がなかったよー」

「なに言ってんのさー。アンタが暴れると学園の損害が凄い事になるなじゃない。紗乃の活躍なんて
無いほうがいーのよ」

やちの一言に周りから笑いが起きる。
だが恭也と総詩は顔を見合わせていた。

「……総詩、何か嫌な予感しないか……?」

「そうですねぇ。なんか静か過ぎて逆に不気味で」

恭也と総詩の話にイサミも加わる。

「ソウちゃんも恭くんもそう感じてた?……ねえトシちゃん、見廻りの時に何か気になることなかったかな?」

「何か気になること……ですか?」

しばし考えた土方はある事に気づいた。

「そういえば放課後になってからは討学派の方々の姿をあまり見なかったような気がします」

イサミ、土方、総詩の三人が考え込む。

「もしかして……町に出たのでしょうか?」

「「「!?」」」

恭也の言葉にイサミたちは慌しく動き始めるのであった。

「トシちゃん、蛤御門だわ!!」

イサミの言葉に土方と総詩を連れて屯所を出て行ったのであった。

「あ、あの、高町先輩?局長たちはどちらに行かれたんですか?」

「わかりません。ですが俺たちも行った方がいいと思いますので皆さん行きましょう!」

恭也の言葉に残りのメンバーもイサミたちを追うのであった。




グランドに到着すると討学派の超秀班が大勢の列を作っていた。
そして先行していたイサミたちは校門で心たちを話をしていた。

「桂、これは一体どういうつもりだ!?」

「ですから説明したとおりですわ、歳緒さん。わたくし達超秀班はこれより佐都間学園へ赴き、学園長と
直接話をつけてこようと思っていますの」

「でも心ちゃん〜、わたしたち学園長の許可も取らずにそんな勝手な事をするのはどうかと思うよ〜?」

「元はと言えば、学園長が佐都間の学園長と談合をしないのが原因です。それ故に生徒同士の争いが起こるのです。
ですから逃げ腰の学園長に代わり、わたくし達討学派が話をつけて参ります」

イサミたちの後ろでは総詩は菊文くんに手をかけている。
どうやらやり方が気に入らないようだ。
だが心の後ろでも伊織が斬馬刀に手をかけていた。
更には事態を聞きつけた佐学派の生徒たちも集まり始めていた。
そして大勢の佐学派と討学派の生徒たちが睨み合う形になるのであった。
一触即発状態の佐討。

「よろしいですわ、貴方達がその気ならば相手になりますわよ?"逃げの心"と呼ばれてはいますが
いつまでも退いてばかりもいられませんものね」

心は愛刀の清光さんを新選組に向ける。
新選組のメンバーもそれに対抗しようとそれぞれの武器を抜き放つ。
どうやら両者やる気満々のようだ……。
するとイサミが止めに入るのであった。

「みんな待って。こんな所で大規模な闘いを起こす事は学園の名を落とす事になるわ。それは共学化を
行う上でも問題ではないかしら?」

「ふふ……さすがは新選組局長・近藤先輩……ですわね。けれどわたくしたちはここを動きませんよ?
これだけの人数を動かしたんですもの。簡単には引き下がることは出来ませんから」

「ならわたし達もここを離れないだけです。……お互いに長い一日になりそうね」

心は薄く笑うと、討学派の生徒たちが待つグランドに下がるのであった。

「これは我慢比べになりそうですね」

芹栖はそう口にするのであった。
他のメンバーも我慢比べに負けるものかと意気込んでいるのであった。




だが皆より少し離れたところにいた恭也だけはこの状況に違和感を覚えていた。

「(ゲンちゃん、谷さん何かおかしいと思わないか?)」

「ニャー(何が?)」

「クルックー(何が気になるんだ、恭坊?)」

恭也は皆に聞こえないように二人に話を始めるのであった。

「(どうも俺には別の目的があるとしか思えない)」

「ニャー(別の?)」

「クルックー(目的?)」

「(確かに心さんの言う通り、学園長が談合を行わないのがこの問題に発展しているのは分かる。
だが今のこの状況は佐都間も知っているだろう。テスト留学なんてさせるくらいだからな。
いくら共学化を進めてはいても騒動が納まっていない上に責任者を連れずに話をつけるというのは……)」

「ニャー(そういえば)」

「クルックー(そうだな)」

「(……あと気になるのはあの心さんがあそこまで闘気を出しているのがどうも気に掛かる。
心さんは静かに闘気を出すタイプのはずだ。それとあの中に坂本さんがいないのは……)」

「ニャー(まさか!?)」

「クルックー(囮か!?)」

「(可能性はあると思う。だが現状俺はここを離れられそうにない。だから……)」

「クルックー(任せな)」

「(すいません)」

「クルックー(気にすんな、恭坊)」

そう言って飛び立つ谷さんであった。




佐学派と討学派の睨み合いは続いていた。
恭也も勝手に動く事も出来ずに仕方なくそれに参加していた。

「……退屈だ」

「確かにねー、これならいっそドンパチやり始めた方がラクだよ。でも新選組としてナメられるワケにも
いかないからね、高町もしっかりやるなよ!」

「あまり睨み付けたりはしたくないんだが……。ただでさえ皆に怖がられてるのに……」

「確かに、高町の顔はおっかないかもなー」

と笑いながら言う紗乃であった。

「とりあえず俺も加わりますか……相手は……」

「…………」

じーっと穴が開きそうになるほど恭也を見ていたのは心であった。

「……心さんですか……」

「じーーーーーーーーっ」

心は睨んでるのはなく見つめているのである。
そんな心の視線に恭也は慌てるのであった。

「(心さん……あの……なぜそんなに見ているのでしょうか?)」

「(恭也様……わたくしの愛をお受け取りくださいませ///)」

「(い、いえその……そういうご冗談は)」

「(こんな事冗談では言えませんわよ///)」

「(そ、それに俺では心さんに釣り合いませんよ)」

「(そんな事ございませんわ。恭也様にでしたら……わたくしの全てを奪って頂いても///)」

「(ですが今はこういった状況ですので……///)」

「(そんなこと関係ありませんわ。敵対関係であるからこそ、燃えるような恋慕もあるのですよ。
かのロミオとジュリエットのように……///)」

「(そ、そういうもの……なのですか?)」

「(ええ、恭也様///)」

「(……なに恭を誘惑してやがんだ、コノヤロウ……)」

そんな恭也と心の睨み合い(?)に割り込んだのは言わずと知れた初音であった。
自分の恭也に手を出すものは許せないらしい……。

「初音……助かった。ありがとな」

「……別に……(///¬x¬///)」

そう言って頭を撫でる恭也。
照れる初音。
普段なら微笑ましい光景なのだが、如何せん状況が状況だけに何とも言えないのであった。




この睨み合い……しばらく続いたが遂に音を上げる者が現れた。

「あーーくそーーっ、腹減ったぁーっ!こんな長丁場になるんならおにぎりくらい持ってくるんだったよ、もー!」

まあ台詞で分かると思うが、紗乃である。
分かり易いなぁ……。

「とりあえず原田さん、我慢したほうが……」

「あーあ、今から何か取って来ようかな……」

紗乃の行動パターンは

"食事>>超えられない壁>>仕事"

と言ったところだろうか……。
そんな事を言っている紗乃に対し、当てつけのような人物がいた。

「もぐもぐむしゃむしゃ」

幸せそうな(全然わからないが……)顔で焼きそばパンを食している伊織であった。
わざわざ紗乃の前で食べるのだからやってくれる。

「(……拷問か?)」

恭也はその光景にそんな事を思っていたそうだ。
そして紗乃怒り狂って伊織に言うのであった。

「お前コノヤロー……もう許さねえ!一口ください!!」

紗乃は力強くスライディング土下座を伊織に向けるのであった。
まあこんな感じだろうか……。

伊織→ ♀ orz=== ←紗乃

その光景に注意するものが現れた。

「あらあら、さのちゃんったらダメだよ〜?新選組たるもの、食べ物なんかで志を売っちゃ〜」

あのイサミである。
さすがは新選組の局長というべきか……。

「(なあゲンちゃん……一番説得力のない方があんな事言ってるぞ?)」

「ニャーン(言っちゃダメだよ)」

「(今までの経験から、そろそろ近藤さんも陥落すると思うのだが……)」

ゲンちゃんとこそこそ話をしていると、予感は的中した。

「近藤せんぱーい?近藤先輩のために当社比五倍にもなるどら焼きを焼いてみたのですけど、いかかですか?」

心から誘いを受けるイサミ。
あのイサミが断れるわけもなく……こんな感じで走り抜けるのであった。

イサミ→ 三三三足 ○ ←どら焼き

その光景にやっぱりとため息をつく恭也とゲンちゃんであった。
他にも周りには討学派の生徒に丸め込まれている者ばかりであった。

初音は討学派の作るそばに舌鼓を打ってお替りしてるし、土方は挑発に乗せられてるし、芹栖はBL本に釣られているし
やちはその本を無言で読んでるし……。
まあそんなこんなで時間が無駄に過ぎていくのであった。




ある程度時間が経ったころ、谷さんがとんでもない勢いで飛んでくるのであった。

「クルックー(恭坊!)」

「谷さん!どうでした!?」

「クルックー(恭坊の言った通りだ、そいつらは囮だ!)」

「やはりそうですか!」

恭也と谷さんのやり取りに口を挟む土方。

「何!?高町、お前気づいていたのか!」

「確信はありませんでした。ですが穏健な心さんのあの闘気と坂本さんの不在がどうも気になっていたので谷さんに
偵察してもらっておいたんです」

「なぜもっと早く言わなかった!!」

「……あの雰囲気で言えますか?」

「……う、確かに」

「という事で皆さん!急ぎましょう!」

恭也の言葉に新選組のメンバーの顔つきは変わった。

「……あら、やられたわね。一番から四番隊はわたしと共に来なさい!」

恭也は驚いていた。
あのイサミが間延びした声で発言していなかった事に……。
こんな時に驚いてる箇所がそこなのは問題だと思うぞ、恭也……。

「あらあら……気づかれてしまいましたか。もう少し稼ぎたかったのですが、仕方ありませんわね。
皆さん行きますわよ!」

新選組の動きを見て心は討学派の生徒に指示を出し、一斉に突っ込んでくるのであった。
それを向かえ討たんと土方たちは剣を構えるのであった。

「高町!お前は早く局長たちと共に坂本を追え!」

「そうです先輩、急いでください!ここの討学派の生徒達は絶対に先輩たちの後を追わせませんから!!」

「そーいうコト!」

「ワテのワザを乳とか尻に刻んでやらあぁー!」

とりあえず黄色いのは斬った方がいいかと思ってしまう恭也であった。

「ニャニャー!(僕もやる!)」

そう言うとゲンちゃんはツメを構えるのであった。
まあ顔が可愛い為、全然恐怖を与えていないが……。

「クルックー(派手な夜になりそうだぜ……)」

谷さんもやる気を見せている……のか?

「……恭!……」

「分かってる、皆さんお気をつけて!」

そう言って駆け出す恭也たち。

「任せたわよ、歳緒!」

「はい、イサミさん!」

そしてその場を土方たちに任せるイサミであった。




討学派の策略(?)に嵌った新選組。
果たしてその策略を阻むことが出来るのか!?
そして遂に恭也の力が……!!??





<おわり>



事態が一気に動き出したような感じに。
美姫 「確かにそうよね」
それにしても、一体何をしようとしているんだろう。
美姫 「囮という事は時間を稼ぎたい理由があるのよね」
うーん、一体何を起こそうとしているんだろうか。
美姫 「気になる次回は……」
この後すぐ!



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