トライアングル IZUMO   

不破たる剣の閃記

 

 

 

14話「行く道、進む道、帰り道」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勇吾・・?」

バックジャンプで一閃を紙一重で交わした恭也の額には一筋の汗が流れていた。

自分を勇吾が斬りつけたという事実を認識は出来ていたが理解するには時間がかかった。

それで搾り出した言葉が疑問系で名前を言うだけである。

「何故・・・?俺たちは帰れるんだぞ!」

説得するように叫ぶが同時に一つの反応をしていた。

模造刀とカグツチから貰った刀に既に手をつけ抜刀体勢に入っていた。

(俺は・・・?)

目の前で琴乃への進路を防ぐように立ちはだかる勇吾を前に一歩も動けない。

 

 

そして遅れてきた明日香や芹たちも混乱している。

と、言うか恭也以上に混乱していた。

「何で勇吾おにいちゃんが邪魔するの?!」

明日香が泣き叫ぶように言うが当然。

本来ならば味方である筈が、ようやく会えた姉を遮る最大の障害となっていたのだ。

「錯乱してるわけではないですし・・・操られているわけではないと思います」

「だからって普通、恭也に斬りかかる訳!」

一応は本職(退魔士)の那美の分析も関係無しに芹が吼える。

「あの人、本当に恭也君たちの友達なんだよね?」

サクヤに至っては敵と認識し、何時でも既に勾玉を取り出して術を発動する用意すらしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事態を招いた勇吾が実は彼等以上に混乱・・・完全にパニクっていた。

(オ、俺は何を!????)

不意に激昂して恭也に斬りかかった行為。

ソレは無意識とはいえ絶対に自分がやるとは少しも思っていなかった。

(それに琴乃さんと遮るように立っている・・だと?)

何度も現状認識をしようと思考するが、一方ではソレは逃げだった。

無意識と言っているが、ナンでやったのかは自分で解っていた。

自分を押し殺して演じてきた優等生から一転した、素で行える英雄。

憧れる女性に頼ってもらえる状況。

そして恭也と違って本当に対等に見てくれる友の存在。

それを破壊する恭也に憎しみを抱いた。

そんな感情を認めたくない為に深く思考に没頭する・・

(と、兎に角謝ろう・・そうだ、恭也に話せば分かってくれる!)

「ス、スマン・・・それでキョ・・」

その瞬間に壁に大穴が空いてソレが来た

 

 

 

 

 

「ウォラァァァァァッァァァ!助けに来たぜぇ、勇吾ォォォーーーー!」

 

 

 

 

 

雄叫びと共に放たれる一閃。

壁を壊してもなお衰えぬ勢いで振り下ろされる一撃。

防ぐ事はできないと悟り、恭也は反撃もせずに回避を選択した。

「アシハラの国の戦士よ!我等を相手に出し抜くとは褒めてやる!」

剣の切っ先を向けて声高に

此処からは俺・・・ミナカタが相手になってやる!

一方的に叫ぶ。

その登場にさらに混乱する勇吾。

しかし、他の面々は少し違っていた。

「うわぁ!何か空気読めなさそうなの来たわね〜」

「うん!招かれざる客ってやつだよね?」

二人の言葉に那美も額に指を押していたりした。

と此処まではギャグ仕様だったがサクヤは違う。

「ミナカタ!お父さんの仇!」

鉄扇を取り出し構える。

死んでは無かったのだがノリと言うか何と言うか・・・

兎に角、術を唱えようとしたサクヤを恭也が遮った。

 

 

 

 

 

 

 

 

ミナカタの名前を青龍から聞いており、実力と危険性を理解している。

サクヤの実力を疑うわけではないがカグツチから頼まれている以上は前へ出すのは避けたいし、何より彼女が反魂の術の基点なのだ。

(少なくとも話し合いで解決は無理かもな・・・)

「貴様が何者であるかは問わない・・・だが、邪魔をするならば遠慮をする気は無い」

右手の真剣と左手の摸造刀を逆手に構えながらミナカタへ向かって低姿勢で突進。

このとき、恭也の中の闘争者としての本能が強敵と戦えると言う歓喜を感じていたのかもしれない。

「どらぁ!」

相対するミナカタも言葉は不要とばかりに剣を振り下ろした。

その攻撃を呼んでいた恭也は殆ど直角にステップをして回避。

続けて反撃とばかりに摸造刀を持ち替えて突きを放った。

「ちぃ!」

辛うじて受け流したミナカタの頬に激痛が走る。

避けた直後に片方の刀が更に突きを放っていたのだ。

「言って置くが・・次は当てる」

御神の殺戮者としての顔が僅かであるが浮かび上がったような表情で恭也は語った。

恭也の2刀による連続突きによる怪我の血を拭うと、勇吾にニィと笑って跳躍。

普通の人間を遥かに超える跳躍力での飛び蹴り。

(当たれば骨は軽く砕けるだろうな・・だが)

僅かに身を反らし、同時に裏拳のようにバックステップの加速をつけて切りつける。

無論だがフェイク。

「墜ちろ!」

此方の攻撃を防いだ一瞬を突いて空中ボレーキックを頭部に狙う。

安全靴だったならば頭部の骨が陥没していたかも知れないが普通の靴だった。

それでも側頭部に吸い込まれた一撃は確実に脳震盪を引き起こすはず。

「つぅ〜〜〜やるじゃねえか!」

少し痛がってはいるが意識を保っていた。

此れには恭也も少し驚くが直に斬りかかる。

後遺症も感じさせない動きでミナカタも応じていた。

 

 

 

 

 

 

(俺は・・・)

その様子を見ていた勇吾は悩んでいた。

長い付き合いの恭也達は大事だ。

しかし、此の数日間の付き合いである悪霊軍にも確実に愛着が出ている。

(どうすれば)

 

 

 

 

 

「此れじゃ援護できないよぅ」

「術もダメ!」

そして芹たち一行も困っている。

恭也が負けるとは爪の先も思ってないが援護ぐらいはしたい。

しかし、

「あの中の飛び込むのは少しきついわね・・」

「私が行ったらジャマなんですよね・・・」

接近戦型の芹と那美は勿論のこと、室内での使用に不利な弓や実戦経験の浅いサクヤの術では巻き添えの可能性が心配で使えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もっとも、サクヤ達の心配は余所に恭也は既にミナカタを圧倒していたのだ。

最初こそ互角の戦いだったのだが時間が進むに連れてミナカタの攻撃はあしらわれ、逆に小さい傷が目立ち始めていた。

「ウェェェェェェェいぃぃぃ!」

放たれた横薙ぎの一閃の衝撃波は壁に大きな傷を付けたが狙いの恭也には掠りしない。

舌打ちをするミナカタだが内心は焦っていた。

「一つ教えておこう・・」

少し離れた場所に居る恭也は呟いた。

「貴様・・・こういった戦いは素人だろう?」

「何だと!?」

長きに渡る戦争ゆえにミナカタの実戦経験は恭也を遥かに超す。

対する恭也はと言うと、何でもありの試合は六介や彼の知り合いの達人と幾度もこなしてはいるが殺し合いは初めて。

だから「こういった戦い」と言う言い回しを使っていた。

「貴様の力や速度は俺が戦った相手の中では5指に入るが・・強さとなれば中くらいだ」

「ほざけ!!!!」

飛び込みの袈裟切りを刀の反りを使って流し逆に蹴りを見舞った。

頑丈さゆえにダメージは少ないが精神的なダメージは大きい。

(やはり少し前に戦った彼女と似たようなタイプか)

頭の中で戦いを構築し始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

彼女とは少し前に他流派試合の為に戦った相手である。

武門の名家筋の次期継承者として知名度が高く相手をするには不足無しと意気込んで戦い。

そして失望した

パワー・スピード・技術に手から気弾を放つという数字上の戦闘力だけでなく、高校生と言う立場から大会での成績も優勝と言う素晴らしい物だった。

だが戦いは一方的だった

決められたルールに障害物無しの正々堂々とした道場、最終的にはブルファイト(殴り合い)で決するような大会に適応した戦術。

事実スポーツとしての大会に特化したと言うべき相手だった。

相手が路地裏に居るチンピラならまだしも相手が恭也というのは不味かったのだろう。

 

恭也には相手の手の内が簡単に読めてしまい、逆に恭也の動きは予測が出来ない。

そして主導権を全く握れず、取り返そうとして入るが主導権が握られる前と同じ行動の繰り返し。

それに根っからの性格なのか軽い牽制は撃つが一撃必殺がメインで、時たまコンボを使う。

それでも恭也曰く「戦略的な機動になってない」との事で決まり手には殆ど遠かった。

 

 

今対しているミナカタも同じで大軍への攻撃や一撃離脱と言う意味では恭也を凌ぐ。

強いて言うなら天道総司(カブト)と良太郎(電王)

しかし戦国時代の歩兵1000人よりも現代の重装備の歩兵100人の方が遥かに戦いづらい。

現に映画の戦国自衛隊(初代)でも武田の主力部隊相手に戦車が一台あったにしても自衛隊員10名足らずで互角以上に戦っていた。

正直、現在の一対一の近接戦でのノウハウは恭也が圧倒的に高かった。

 

 

 

 

 

 

 

このまま行けば青龍の危惧も虚しく恭也の圧勝になるはず。

「恭也の狙いは交わされた後の肘撃ちだ!防いで飛び込め!」

投げつけられた言葉にミナカタは反応。

思いもしない声にも関らず振るった恭也にミナカタの体当たりが炸裂した。

「ゆ、勇吾?」

周りの全員の意見を代弁した恭也に目を背けながら続けた。

「恭也の行動は独立しているように見えて実は全て繋がっている。攻撃の瞬間に上手く滑り込ませられれば止められるはずだ」

「感謝するぜぇ勇吾!」

奮起したミナカタの攻撃に混乱しつつも反撃するが、

「ドラァ!」

「ッゥ!」

一撃の威力もさることながら速度も速い。

攻撃に攻撃すると言う単純の方法が恭也を吹き飛ばした。

「そんなぁ!」

サクヤが叫んだのは恭也もだが摸造刀が砕けた事もだった。

他の面々も怒りを押す恐怖に屈せずに反撃に移ろうと隙をうかがうが見つからない。

その一瞬でミナカタは起き上がろうとした恭也に剣を向ける。

 

 

 

 

その事態を引き起こした勇吾も内心の混乱や此のまま恭也が死ぬ事への危機感を持っていた。

しかし同時に「此処でミナカタを止めて恭也達を説得」と言う思案がよぎった。

1番有効そうな内容であり実現しようと声を上げようとした。

「恭・・「頭を下げろ、恭也君!」・・・・」

ミナカタの立っていた場所に小太刀が一本突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お父さん!」

「無事か、サクヤ!」

「貴様、カグツチ!」

各々が叫ぶ中で恭也は目の前の小太刀を引き抜いた。

最初は砕けた摸造刀の代わり程度だった。

しかし引き抜いたときの感触。

(懐かしみに使いやすさ・・それに何とも言えない不快感?)

まぁ少し変な感情も入ったが、実際問題としては始めて使う武器とは言えない位に業物。

今なら負ける気がしないとさえ思う。

「士郎が此処で昔使っていた刀、今返えさせて貰うよ」

「武器が変わった位で!」

カグツチの意味深の言葉に聞き返そうとした矢先にミナカタが吼える。

武器が変わったと言っても摸造刀と業物では豪い違いもするが御構い無し。

距離を詰めて渾身の一撃を放つミナカタ。

「・・・・」

黙ってはいるが決意はある。

少なくとも此処で負けられな理由が増えたのだ。

 

 

 

御神流    奥義の歩法

 

神速

 

 

 

ミナカタやサクヤには恭也が消えたようにしか見えない。

だがカグツチには見えていた。

モノクロの世界を歩む恭也を。

 

 

 

御神流    奥義の壱

 

                虎乱

 

 

 

1秒にも満たない一瞬でミナカタの鎧は砕かれた。

「・・・強かった」

その一言ですべては終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「恭也さん!」

その直後に琴乃が近寄ってきた。

さらに

「お兄ちゃん、お姉ちゃん」

「恭也」

「く〜〜〜」

と他の面々も近寄っていく。

その様子を見ていたカグツチが重々しく頼む。

「感動の再会中すまないが時間が無い・・・すまないがサクヤをアシハラノクニに連れて行って貰えないか?○○在住の搭馬六介さんに此れを」

そう言いながら恭也に一振りの太刀を渡す。

「・・・うん!」

一瞬の躊躇の後に強く頷く。

信頼と使命感は親譲りだった

「皆、手をつないで!」

全員が手をつなぎ始める。ちなみにクオンは那美のクビを掴んでいた。

そして最後に勇吾に恭也が手を伸ばすが

「俺は行けない・・帰れないんだ」

「勇吾!」

手を払うかのように後退して気付き始めたミナカタをカグツチから守るように剣を構えた。

「俺には、此の世界でまだやりたい事があるんだ!」

「もう、時間が!」

既に人を切ったことやミナカタとの友情にヒミコへの感情。

ソレが勇吾が抑えていた自分を突き動かす。

そして時は来た。

「ユウゴォォォォォ!」

「さらばだ、恭也!」

その言葉を最後に大波のような耳鳴りと共に意識が空へ上がる感覚が襲った。

      

       

    


後書き

神楽歌:2ヵ月半ぶりに俺参上!

猛:てっきり連載辞めたかと思ってたぞ?

麻衣:ゲームのやりすぎね・・

神楽歌:お前等セメントだな・・・

麻衣:ようやく第1次ネノクニ編の終了ね

神楽:まぁな。此の後インター編があるが、凄い短いと思う。

猛:転生とのクロスも構築してるくせに早く出来るとは思えないけどな。

麻衣:それに勝手に「墜ち鴉」「仮面ライダーカブト」と「カノン」をクロスを考えてるじゃない、了承も無く

神楽:著作権の問題で封印済みだが?

麻衣:「墜ち鴉」をクロスさせなければできない?

神楽:美由希となのはが出すきっかけが難しい

猛:まぁ冥作だからな

 

 

 

 

 

番外

 

猛:そういえばミナカタって今回みたいな性格だっけ?

神楽:いや全然違うだろ?

麻衣:・・・・偽造?

神楽:いや、ミナカタって影薄いし(おい)いっそ熱血系のキャラが不足してるから

二人:・・・・・





無事(?)に現代へと戻る恭也たち。
美姫 「そこでは何が待っているのかしらね」
勇吾は残ってしまったしな。いやいや、どうなるんだろうか。
美姫 「次回もお待ちしてますね」
ではでは。



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