この物語はオリジナル主人公登場の魔法少女リリカルなのはASの二次創作です。

  自分の文才の無さが原因で登場人物の人格及び性格が変わっている可能性もあります。その様な事に耐えられない方は気合を入れられて見るかブラウザの戻るを押される事をお勧めします。

 

 

 

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

 

魔法少女リリカルなのはAS二次創作

【八神の家】

 

------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

 

 

 

  11月の最終月曜日、前日はやてが言った通りすずかははやてを友達に紹介する為、友人の両親が経営する喫茶店に案内した。

  特に今日紹介するとは言っていなかったが、先程携帯電話でその旨を伝えたら待っているから来てくれとの返事があり、喫茶店翠屋の前にはやて達は居た。

「雑誌で偶に見てはいたんやけど実際に来たのは初めてやな〜。……………いや、小さい頃来たような気もせんでもないけど…………」

「ここのお菓子は全部美味しいけど、特にシュークリームが美味しいんだよ」

「そんなに美味しいんならお土産に幾つか買って帰るようにするわ。ふふふ、ヴィータが喜ぶやろな〜」

  シュークリームを前に喜ぶヴィータを想像し微笑むはやて。すずかも美味しそうにシュークリームを頬張るヴィータを想像して頬を緩める。

  対して速人は翠屋を見ながら構造や材質や間取り等を分析していた。

「それじゃあ行こう、はやてちゃん」

「了解や。…………気合入れていくで〜」

「はやてちゃん、そんなに気合入れなくても大丈夫だから。はやてちゃんと二人はきっとお友達になれるから」

  気合を入れるはやてに緊張していると思いフォローを入れるすずか。

「あ、会う人達はすずかちゃんの友達なんやから、良い人達やって思っとるからちょっと緊張はしとるけど心配はして無いんよ。

  気合入れとるのは、すずかちゃんの時は速人はんの第一印象が悪うて仲良くなるんが遅れてもうたから、今回は第一印象やらその他諸々に気を使って一緒に友達になろうと決めたんや。幸い昨日速人はんが今回は友達作れるよう頑張ってみると言ってくれたから、千載一遇の好機をモノにする為にも気合をいれとるんよ。この機を逃したら速人はんはお爺ちゃんになった時、一人縁側で寂しくお茶啜って死んでいくかもしれんのやから」

「今から死ぬ時の事を考えるのは気が早いと思うんだけど…………」

「という訳やからすずかちゃんもフォロー入れてくれへん?そしてそのままみんなと一緒に速人はんと友達になってくれへん?」

  はやての迫力に押されて少したじろいでいるすずかに助け舟が来た。

「はやて、友人とは作るモノではなく、状況が生むモノで、他者に強制するものでは無いと思うが?」

「うっ、友達がいない速人はんに友達について諭されてもうた」

「さり気無く失礼だよ、はやてちゃん………」

「それと友人関係を結ぼうとするとは言ったが、根本的な問題として俺は友人関係の定義で理解不能箇所があるので、友人は作れないと思っている」

  はやての毒セリフやすずかのツッコミを気にせず、何時も通り淡々と話す速人。

  そして速人の話を聞き理解不能な事をはやてが聞こうとしたが、それより早く速人が喋りだす。

「店内の店員と思しき者から、不審若しくは非難と解釈される視線を向けられた。入店するなら急いだ方がいいだろう」

「あっ!?」

「たしかにここは邪魔になるわ。急いで入店しようやすずかちゃん」

「うん」

  速人にそう言われ入口付近で会話しているのを思い出し、急ぎ入店するすずか。そしてそれをはやてを押しながら追う速人。

  店内に入った瞬間に来店の挨拶が聞こえてくる。

「いらっしゃいませー………って、誰がお店の前で立っているのかと思ったらすずかちゃんだったのね」

「すみません、お店の前で話し込んじゃって」

「さっきなのはからすずかちゃんがお友達を紹介しに来るって聞いたから、そっちの子が入り口で緊張しちゃったんでしょ?桃子さんはそんな理由があるのなら怒ったりしないわよ」

「いえ、全くその逆で二人して友達になるって、気合を入れてたんですよ」

  そう言って後ろを振り返るすずか。

  当然そこにはやてと速人がいて、桃子と呼ばれた者は二人を見た。

「二人ともあの子達と友達になれるといいわね。今日は全員お菓子と飲み物おまけしてあげるからゆっくりしていってね」

「あ、お気遣いどうもです。ありがたく―――」

「相手の言に甘える必要は無いぞはやて。金銭関係の遣り取りは領収書や契約書を作成しないのなら、通常通りに行うべきだ」

  はやての言葉に割り込み主張する速人。

  速人は今まではやてが対面販売の利点で値切ろうとしたり、相手がおまけしようとしても悉くそれを阻止していた。理由は無用な貸し借りを作らない為と、後で受け取り金額が少ないから不足分を支払えという事にならない為である。

「子供が遠慮するものじゃないわよ。こういう時子供は素直に頷いていればいいのよ?」

「速人はん、この人の言う通り、こういう時の相手の好意は素直に受け取るべきやで?」

「危険を孕む好意は受け取るべきではない。

  それに交渉による値引きではなく施しを受ける様な真似を、はやてにさせる訳にはいかない。他の者にもはやてに恥をかかせる真似を容認するなと言われている」

「危険って、別に後から『やっぱりお金払え〜』とか言わ無いから安心していいわよ」

「こう言ってくれるとるんやから素直に好意は受けるもんやで?それに恥なら今この会話を聞いてウチ達を見ている人に晒してる真っ最中やんか。

  速人はんがウチの事考えてくれるとるんは本当に嬉しいんやけど、お願いやから周囲の目の事少しは考えてくれへんか?」

「注目を浴びる事は恥ではない。もしそれが恥ならば芸能人等は恥晒しという事になる。

  今恥なのは、何時までもこの場で話し込む事だろう。更に話し込むならば着席してからすることを勧める」

  それを言われ入口付近で話し込んでいる事に気付く3人。

  そしてそこに黒尽くめの男性が話しかけてきた。

「母よ。今指摘があった通りここで話し込むべきではない。それに店長がこのような真似をすると他の従業員に示しが付かん」

「解ったわ。直ぐになのは達の席に一緒に行って子供の在り方を説くから、恭也は私が抜けた穴を頑張って埋めてね」

「待て翠屋店長。仕事を投げ出すな」

「投げ出してなんてないわよ?オーブンは全部使っちゃってるし、焼きあがるまでの時間は特にすること無いから丁度休憩入ろうと思ってたトコなんだし」

「む…………しかしなのは達に友達を紹介するといっている場に大人が割り込むのはどうかと思うが…………」

「何言ってるのよ。この子を見なさい。まるであんたの小さいころの様に無愛想で無表情で無遠慮じゃない。

  あんたはラクダが針の穴を通るような奇跡で忍ちゃんて彼女が出来たからいいけど、この子はこのままだと一人寂しく縁側でお茶啜るお婆ちゃんになって老後を送ることになるのよ?そうなったらあんたどうする気?」

「母よ。遠まわしではなくはっきりと馬鹿にしているだろう?後で覚えておくがいい。それと先の発言は俺以上にその子にとんでもなく失礼だぞ。後で謝っておくがいい」

「あ、たしかにそうね。ごめんなさ………い………って、あら?」

  つい先程まで傍にいたはやて達3人が居なくなっているので翠屋店長は辺りを見回した。

「何時までもここに集団で立っているのも邪魔になるからと、先程なのはが3人とも連れて行ったぞ」

「何時の間に…………」

「全く…………子供の在り方を説くなら子供に気を使わせないようにするがいい」

「あ、あはは」

  苦笑いをしながら翠屋店長ははやて達が居る席に歩いていった。

 

                                     

 

  はやて達は話し込む二人を残し店の奥の席に案内され、そこで案内していた少女――高町 なのは――は自己紹介し、話し込む母の失礼な言い様に母に変わって速人に頭を下げ、そして直ぐにその席に待っていた少女――アリサ・バニングス――も自己紹介した。

  二人の自己紹介を受けはやて達が自己紹介をしようとした時に苦笑いしながら翠屋店長…………なのはの母で先程の会話から察するに高町桃子が現れた。

「あ、あはは、聞こえてたと思うけど桃子さんも混ぜてもらえないかしら?」

「はやてちゃん、速人さん、構わないですよね?」

「あたしは全然構わんよ」

「構わない」

「あたし達も構わないですから、桃子さんも座って下さい」

「それじゃあお邪魔するわね」

  そう言いながら着席する桃子。

  奥の窓際からすずか・はやて・速人で、手前の窓際からアリサ・なのは・桃子になっている。なおこの店は4人用の机で先程までは速人が隣の席に一人居たが桃子が机と椅子を動かしくっ付けている。

「私は高町桃子。なのはの母で、この翠屋の店長をやってるの」

「あ、あたしは八神はやてと言います。こんな身体なんで休学してますが一応小学3年生です」

「天神速人。大学入学資格試験合格証明書及び成績評価証明書を取得しているので就学はしていない。就学しているならば小学校5年生だ」

「えっ!?はやてちゃん、速人さんって休学してたんじゃなかったの?」

  速人の自己紹介を聞き少なからずすずか達は驚き、すずかが代表する感じではやてに尋ねた。

「あれ?あたし、速人はんは学校行っとらんって言わんかったっけ?」

「それって休学してるって意味じゃなかったの?」

「誤解させてもうてごめん、すずかちゃん。あの言葉はそのまんまの意味やったんやよ」

  それを聞き驚きながらもアリサが話しかけてくる。

「え〜と、はやてと速人って呼ばせてもらうわよ。あ、あたしの事は好きに呼んでいいから。

  で、学歴とか気になるけどそれはとりあえず置いといて、苗字が違うけど家族じゃないの?あたしはすずかから二人は家族だって聞いたけど」

「苗字は違うけどあたし達は正真正銘家族なんや。あ、あとあたしはアリサちゃんて呼ばせてもらうな」

「それでいいわよ」

「あ、あたしははやてちゃんと速人さんって呼ばせてもらうね。あたしの事もアリサちゃんと同じで好きに呼んでいいよ」

「その呼び方で構わんで。あたしはなのはちゃんて呼ばせてもらうな」

  そうはやてが言い会話が一端途切れ、速人に全員の視線が集中するが速人は気にせず周囲に警戒を払いつつ、音声の機会言語化のプログラムを考えていた。ノートパソコンを使用しないのは一応友人関係構築を試みると言ったので、ノートパソコンに打ち込むのはそれに反すると考えた速人なりの考慮だった。

  そして速人に視線が集中して少し経った頃、はやてが話しかける

「え〜と速人は〜ん。呼び方それでいいか確認しとるんやけどなんで返事せんの?」

「両名こちらに疑問形で話していなかったので、こちらの意見を求めていないと判断した為返事をしなかった」

  その返事を聞きはやて達は先程のアリサとなのはの会話を思い返し、たしかに確認を取るというより報告をするという話し方の為、速人の言分はあながち間違っていなかった。

「たしかに速人はんが言う事は間違いやないけど、普段ならそれくらいの言葉の意味は解っとるのに、何で今日に限って堅苦しいん?」

「今回は友人関係構築を励む事にしているので、今回は両名の文法・解釈・所作の誤りを此方が補足・補填せずに接しようと決めている」

「理由が解らんのやけど?」

「それらの誤りは過失の可能性もあり、過失の場合に自身の誤りを補足・補填されたと感じれば不快に思う者も存在する。

  友人関係構築を試みるならば、相手を不快とさせぬようにするべきと判断したので先程沈黙していた」

  その言葉を聞き暫く黙って事の成り行きを見ていた桃子が話しかけてきた。

「速人ちゃん………でいいかしら?」

「敬称の有無や姓名どちらで呼ぶかと言う事を、家族以外には指定しない」

「じゃあ速人ちゃんって呼ばせてもらうわね。で、速人ちゃん、お友達になるんならもう少し肩の力抜かなくちゃ。それにちょっと疑り深過ぎるわよ?はやてちゃんと家族みたいだけど、はやてちゃんの様にみんなも信じてあげないと」

「…………はやて、高町桃子と質疑応答すると場を乱し、俺のみならずはやてまで友人関係構築が著しく困難になると予想されるので、適当に相手をして話を流すので注意や避難は後程にしてくれ」

  本人の目の前で堂々と真面目に話さないとしか取れないことを言う速人。

「本人を前にして堂々と悪びれずによく失礼な事言えるわね。しかもさり気なくはやてに気遣ったりしてるのを見ると、ただの捻くれた奴ってわけじゃなさそうだし…………興味が湧いたわ。

  あたしは速人が桃子さんとどんな会話するのか楽しみにしてるんで、私の事は気にせず存分に話して下さ〜い」

  アリサが興味深そうな顔で二人を見ながら自分を気にせずに話を進めてくれと促す。が、その直後にはやてから速人に注意というか意見された。

「速人はん。たしかに速人はんが桃子さんと話してるととんでもなく場を引っ掻き回しそうな予感がもう洒落にならん程…………確信て言える程するんやけど、なのはちゃんは分からんけどアリサちゃんは少なからず楽しみにしとるみたいやし、ここで碌に話さんでもそれはそれで場を引っ掻き回しそうやし、気にせずガンガン話して構わんと思うよ」

「了解した。では先程の言に対する答えだが、まず俺ははやてのみならず家族の誰も信じていない。故に他者を家族の様に信じるというのは前提が間違っている」

「家族を信じないというのは悲しい事よ?そんな事を言われたらはやてちゃんだって悲しむわ………って、あら?」

「あ、速人はんが誰かを信じないのは今更なんで気にしとらんですよ。それにあたしは速人はんがどれだけ家族を大切にしてくれとるか知っとりますから、信じてないって言われても大して気にせんですよ」

「信じていないのに大切にしてるって矛盾してないかしら?単に照れ隠し?」

「信じるとは事実と異なる事を事実の様に思いこもうとする行為で、自らの行為若しくは何かしらの存在自体に疑念を抱いた際に信じるという行為で精神の安定を図るものだと解釈している。

  俺は家族の誰であろうとその存在に疑念を抱いていない。疑念が無い以上信じる必要は無く、それ以前に信じるとは疑念を抱いている事が前提で有る以上それを持たない俺には家族を信じることは出来ない。

  お前の家族観が疑念を抱く事だというのは否定しないが、それを押し付けても俺はその価値観を受け入れるつもりは無いと言っておく」

「…………速人ちゃんは日常の些細な事にも疑念を感じないのかしら?」

「疑念を抱くことも在るが、家族維持には支障が無い疑念など瑣末事だ。信じるに値する程の疑念でもない。

  それに信ずるに値する疑念が有るならば、原因なり要因なりに対処するのが先だ。信じるのは待っている間の暇潰し程度のモノだ」

  辞書に載っている意味ではなく、心理学等の見地を織り交ぜた独特の解釈の為解り難かったが、桃子は何とかある程度意味を汲み取り速人に尋ねてみた。

「つまり速人ちゃんにとって信じるというのは、人を疑う事の上に成り立つモノだっていうことで、貴くも卑しくもなくてただの暇潰しと思っているわけよね?」

「そうだ」

「そう……その辺は個人の解釈や価値観だから深入りしないわ。それにはやてちゃんの言う通り家族を大切に思っているのは解ったしね。

  で、話を戻すけど、友達になろうとしている人を信じろとはもう言わないわ。だけど普通の人達は信じるところから友達作りは始めるんだけど、あなたは何から始めるのかしら?」

「警戒を緩めることから始めるつもりだ。

  それと先程から本題にまるで入っているように感じられず、子供の在り方を説くと受け取れる事を息巻いているようであったが、それも依然進展無しだ。個人の単語解釈や行動前提等を尋ねるより、本題を尋ね早く会話を終わらせ他の者達に場を譲るべきだと思うが?」

「…………そうね。なら単刀直入に言うけど、どうしてそんなに論理的に物事を考えて肩肘張るの?子供は子供の時にしか出来ない事をして色々学ぶべきよ?それをせずに大人になったら一人寂しく生きるだけでなくて就職先とかも困っちゃうわよ?」

  桃子は速人の言う通りあまり会話を長引かせると他の子達の迷惑になると思い、急ぎ速人への疑問と意見と懸念を述べた。

「たしかに俺は身体的に大人では無く子供だが、仕事と言えるかは難しいが金銭を伴なう情報や物品の取引をし、納税をしている社会人だ。社会人の考えが論理的なのは当然だろう」

「………え?速人ちゃん働いているの!?って言うか一定年齢未満の未成年は芸能関係以外就労できなかったはずだけど!?」

「自身が研究し作成した理論を売買している。未成年の就労規定については国が俺からその理論を購入しようとしている以上、国が適当に理由を用意しているので違法行為にはなっていない。理論の詳細は軍事機密に指定されているので公開はしないが、納税に関する電子記録ならば在る」

「いえ見てもあまり解りそうに無いから遠慮するわ。……………けど失礼だけど幾らぐらい稼いでいるの?」

  速人はその問いにちらりとはやてを見た。

  はやては一瞬でその意図を汲み取り、少しの逡巡の後話してくれと視線で促した。

「今年だけで税金を差し引き2兆円以上の利益だ」

「「「「えええぇぇぇーーーーーーっっっ!!!???」」」」

  速人の答えにはやて以外の者が驚きの声を上げる。

「ちょっ!何よ!その小国の国家予算みたいな金額!何を何処に売ればそんな天文学的金額手に入るのよ!?」

  余りの金額のでかさに店中の視線を集める程の大声で驚き、驚いた全員を代表してアリサが質問してくる。

「軍事転用が比較的容易な技術を販売した。何処とは明言しないがその国は喜んで購入した様に見受けられた」

「軍事転用って……………人が死ぬようなモノなのね!?」

「転用すれば十分可能だ。それとそちらが衆人環視を気にしないのは勝手だが、はやてが気にしているので声量を控えてもらおう」

「あ、ごめんはやて…………」

  速人の指摘を受けアリサははやてに頭を下げ、周囲にお騒がせしてすいませんでしたと頭を下げ、残りの面々もそれに倣った。

  そして、頭を下げ終わった桃子が速人に疑問と言うより不快に思った事を問い質した。

「金額は俄かには信じられないけど、軍事転用が出来るという事は人の命が沢山失われるという事よね?速人ちゃんはそうなると解っていて売ったの?」

「そうだ」

「自分の売ったモノに対して責任を持つ気は無いのかしら?」

  今までの優しい声音ではなく不機嫌さが多分に混じった声で問いかける桃子。

「理論や技術が契約書の内容と差異が生じた場合、責は甘んじて受ける」

「そうでなくて人が死ぬ事に対して責任を持つ気は有るのかと訊ねているのよ」

「無い」

  不機嫌さを多分に滲ませた声音で訊ねられた事を、迷いなくアッサリと否定する速人に桃子の繭が釣り上がり始める。

「自分の売ったモノが人を殺す事が出来ると解っていながら何故そんな平然とできるのかしら?」

「その事に思うところが無いからだ。

  それに刃物・車・洗剤、他にも色々在るがどれも殺害しようと思えば容易に可能で、刃物で刺傷し、車で轢き撥ね、洗剤を体内に注入させる。他にも箸を眼孔から脳に押し込む、料理に毒を仕込む、インターネットを通じ預金の残高を改竄し路頭に迷わせる。

  どれも人を害す目的に転用可能だが、それを売主や開発者が想定して気に病む事は通常は無い。販売や開発したモノが合法で、殺人を依頼・幇助したわけでもなければ、その後それらがどのように転用されようが責任を持たないのは、世界的に見て至って普通だと思い、俺もその考えに同意しそれに倣っているだけだ」

  正論を展開され言葉に詰まる桃子。

  たしかにこの世の殆どの技術は軍事や殺人に転用が可能で、特別速人だけが責められる謂れはなかった。

「押し黙るなら会話はこれで終わりとするが構わないか?」

「話が逸れてしまったみたいね、ごめんなさい。

  話を戻すけどそれほど多くお金を稼いでいるなら、後は子供らしく振舞えばいいと思うのに何故そうしないの?経済面なら稼いだ金額が1万分の1でも気にしなくて済むのに…………」

「生きる為の備えをしようとすればその程度の金額は即座に消えるので、備えをし続ける為にも、金銭か備えそのものを入手し続けなければならない」

「………………そうまでして備えをする必要はあるの?ここは平和な日本よ?」

「戦争も平和を長期間維持し続けるのは困難だ。終わる時は呆気なく終わる」

「………備えをする理由は納得がいったけど、そんな警戒と備えだけをするような生き方楽しいかしら?少しぐらい危険を容認しても楽しんで生きなきゃ人生損よ?」

  大抵の人間が実行している思考と生き方を速人に説く桃子。

  その言葉に速人は少し考え、それから何時も通り淡々と喋りだした。

「………………………高町桃子、詳細概要は調理学校を卒業後フランスとイタリアで修学し、日本に帰国後複数のホテルで菓子職人を務め最終的には都内の大型ホテル、ホテル・グランシール東京のチーフ・パティシエを務め、その後海鳴のホテル・ベイシティに臨時パティシエの要請を受けその際に士郎氏に出会いその後結婚しチーフ・パティシエを辞め、同市に喫茶店翠屋を設立し現在に至る。

  自身の価値観を以って他者の価値観を侵し、それが不可能ならば排斥する、他者侵食及び排斥型の行動理念者。価値観は日本の文化・法律に強く影響を受けており、それらの知識があるならば価値観の把握は容易く、精神的構造は容易に手が届く高みにあると分類され、深みも不透明さが無いので全貌を知る事は極めて容易な人格。

  現状で高町桃子が保有する技能及び智力及び資質に価値は皆無と判断。よってこれ以上の交流を打ち切る」

  初対面の筈の桃子のプロフィールを次々に述べて言ったかと思うと、行動理念や人格を分析し、更に情報交換の価値が皆無と断定する速人。

  速人の言葉を聞き呆然とするはやて達だったが、はやてが逸早く気を取り直して急いで速人を注意した。

「って、速人はん、何失礼な事言い連ね取るん?大体桃子さんのプロフィールなんか何処で知ったんや?」

  一応周囲に気を遣い何とか普通の声程に声量を落として話すはやて。

「海鳴市の知名度の高いとされる事象及び物質及び人物、その関係者の詳細概要は記憶してある。

  それと礼を失した発言だが、その事によりはやて・アリサ バニングス・月村 すずか・高町 なのはを不快にさせ、友人関係構築を阻害してしまったと思われる。思慮が浅かったようだ、すまなかった」

「って、何でうち達に謝って桃子さんに謝らんの?」

「他者の行動理念乃至性格を理解及び変更しようと試みるならば、逆に自身に跳ね返る事も甘んじて受けるべきだ。

  智力・技能・資質全てに価値を見出せず、群体中の有象無象の一個体でありながらも自身は不可侵でありながら一方的に他者を侵そうとする者に俺は特別な価値があるとは判断していない。特別な価値が無い者に払う礼節等持ち合わせてはいなければ個人的な交流をする気も無い」

  はやて達家族は全員何かしら速人が欠落乃至及ばない智力・技能・資質なりを持ち合わせており、故に速人は他者には解り難いが敬意を払って接していた。

  速人が家族以外に冷淡な態度で接する理由の一つには家族を最優先するという理由が在るが、それ以外にも単に価値を見出していないというのが在った。

  はやてはそれを理解し、自分が何か言ったところで謝罪はするが考えを何一つ変えはしない事に思い至り、注意しようとした言葉を引っ込めた。

(たしかに言い方は辛辣で無遠慮やけど、あたしだって底の知れた人に礼節は払わんやろな…………。そう考えると速人はんの言い方や考え方は別に変じゃなく普通やな。

  やけど双方失礼って言うのとは違うけど、他の人から見て速人はんが一方的に悪者に見えるこの場合は、どう速人はんをフォローすればいいんやろ?)

  はやてがそう考えている時に速人から更に声が掛かる。

「フォローをしようとしているようだがその必要は無いだろう。

  他者の認識の過不足に関わらず、主観及び客観的に下された判断は事実に様々な意味を付加されており、言語表現に誤りは在れども、判断そのものに正否という存在は無い」

  暗に誰が誰をどう思おうがその者の勝手であり、その事を気に病む必要は無いという速人は言い、これ以上はやてが速人に関わってこの場に居る者の心象を悪化させ、友人関係構築に支障を来たすのを防ぐ為にはやての発言を封じた。

  場に沈黙が降りる寸前にアリサが速人に話しかけてきた。

「え〜と、今までの話を要約すると、速人は就学してない、大学卒業生と同じ学力を持っている証明資格を持っている、自分の家族は全然信じていない、お金を稼いだ事がある、今桃子さんと交流をする気はない」

  アリサは一応確認するように速人を見、速人はそれを目で肯定した。

「今回は友達をと作ろうとしている」

  再度アリサからの目での確認に目で肯定する速人。

「で、普通に考えればどう考えても悪印象しか及ぼさないような会話をなんでしてるのよ?

  さっきからはやてを気遣っているようだから場を引っ掻き回すのが目的ってわけでもなさそうだし」

「役に立つ友情、目的志向の友情、友情、どれを構築するにしても自身の価値観と技能を提示するのは必要な事だと判断し、そこに高町桃子が介入にしてきたので俺の価値観と技能を提示するのに有効活用した」

「サラリと黒い事言うわね。あと、桃子さんはなのはのお母さんで、なのはが機嫌悪くすることについてはどう思ってるわけ?」

「理想的な展開ではないが現状でこれ以上の展開は無いと判断し、俺の価値観提示の為に有効活用した」

「……………で、まだ友達作る気あるの?」

「ある」

  散々場を引っ掻き回した者のセリフとは思えない発言をサラリと述べる速人。

  余りの図々しい発言にはやて以外全員目を丸くする。

  そしてそれを聞きアリサが俯いて震えだす。

  拳を握り締め肩を震わせ始めた。

「くっ……………………くっく」

  声を堪えようとしているようだが上手くいかずに次の瞬間大声を上げるアリサ。ただし一応周囲に気を遣い口元にハンカチを当てていたが。

「あっはははははははははははははははははははははははははははははははははは!!ごほっごほん!

  くっくくくくくくくくくくくくくく、はっはははははははははははははははは!!!」

  愉快で堪らないといった顔で大笑いするアリサ。一応口元をハンカチで力強く押さえていたがそれでも結構な声量が漏れていた。

  しばらく速人以外が唖然と見守る中、アリサは一人大爆笑のせいで何度も咽ていたがそれでも笑うのをやめようとしなかった。

  そしてひとしきり笑い終え、それから唾で汚れたハンカチを折り返して仕舞い直し、はやて達が見守る中速人に話しかけるアリサ。

「いやぁ〜こんなに面白い奴が世界にいるとは思わなかったわ〜。

  あー、笑い時ぬかと思ったわ。くっくくくくくくくくくく」

  清々しい笑顔で話しかけ、まだ笑い足りないのか笑いを噛み殺すアリサ。

「まだお前という存在に答えを出していないので、笑死しそうになれば気絶させて止めるので、笑い足りなければ存分に笑っていて構わないぞ」

「くっくくくくくくくくくくくく、やめてよ。また大笑いしそうじゃない」

  上機嫌でアリサはそれに答えながら一度深呼吸して落ち着きを取り戻し、そして改めて速人に話しかける。

「いやぁ〜〜男のくせに髪伸ばしてる変な奴って認識しか最初なかったんだけど―――」

「「えっ!!??お、男の子!!!???」」

  そこに桃子となのはの驚愕の声が割り込んだ

「………………もしかして気付かなかったの?」

「「だ、だって髪伸ばしてるし、すずかちゃんも特に警戒していないからてっきり女の子だと……………」」

  見事に声をハモらせる桃子となのは。

  それにはやてがしまったという顔で二人に説明した。

「ご、ごめんな〜。速人はん男なんよ。

  速人はんが髪伸ばしてるの気にしたこと無かったから、つい説明忘れてもうた〜」

  ペコペコと頭を下げて謝るはやて。

  唖然と速人を見る桃子となのはをアリサはチラと見た後に話を続ける。

「ま、それはそれとして、兎に角男のくせに髪伸ばしてる変な奴としか思ってなかったけど、今は頭の中まで変な奴と思ってるわ」

「そうか」

「一応言っておくけど、これ褒め言葉だからね?

  いやぁ〜、普通に考えたらあそこまで無遠慮に人を扱き下ろすというか全否定したら悪印象持ちそうなんだけど、速人は全然悪意が無いんで桃子さんを扱き下ろすのは腹立ったけど、その喋り方は見聞きしてて清々しかったわ〜」

「そうか」

「恥知らずってワケじゃ無さそうなのに、呆れるくらい隠し事し無いのは本当気持ち良いわね。

  速人は変な奴だから仲良くやれそうか分からないけど、退屈だけはしそうにないわね」

「そうか」

「ま、あたしは速人を大いに気に入ったから、仲良くやっていきましょう」

  驚く事にアリサは速人にかなりの好印象を抱いたらしく手を差し出して握手を望んできた。

  速人は握手に応える前にアリサの言葉に先に応えた。

「容認出来かねる手が届くほどの高みや深みの価値観かを判別していないので仲良く出来るかどうかの有無には答えられないが、前途の範疇に納まらず尚且つアリサが先程の言を望むのであれば、役に立つ友情・目的志向の友情・友情、何れに成るかは不明だが家族の次の優先順位になる友人関係を構築しようと現状では思っている」

「ふふん、あたしはトンでもない程の高みいるからその点は問題無しよ。しっかしサラリと自分の優先順位を暴露するわね」

  手を差し出したまま喋るアリサ。

「優先順位を明確にしていなければ緊急時に判断を誤る」

「はやては愛されてるわね〜」

  からかうようにアリサは喋り、その言葉を聞きはやては顔を紅潮させた。

「愛情の有無は無いが家族は大切だと思っている」

  その言葉にはやての紅潮は消えたが、嬉しそうな顔だった。

「さて、それじゃあ速人、あたしとしては仲良くやっていきたいんだけど?」

「……………先に述べたが、俺は自身を超える智力・技能・資質を保有するか、自身に欠落・必要・不理解なモノを持つか、交流する事で自身に欠落乃至必要なモノが手に入るか家族の維持に必要か、何れでなければ交流をしようとは思わない。

  俺の交流は全て打算の上でしか成立しないが、それでも構わなければ先程述べた通り今は家族の次の優先順位に成るような友人関係を構築するつもりだ」

「始まりなんてそんなモンでしょ?」

「ならばもう言う事は無い」

  そう言いながら未だ差し伸べられているアリサの手を握る速人。

「双方の求め乃至望みに応えられる関係を構築できるよう、互いに妥当と思われる力を注ごう」

「了解っ!仲良くやっていきましょ」

  こうして硬くは無いが、緩くも無い程度に互いの右手を握り速人とアリサは握手した。

  はやては速人に友達が出来るかもしれないと顔も心中も大喜びし、すずかとなのははアリサらしい解釈だと思い苦笑いし、桃子は完全に自分がダシに使われた事に落ち込みながらそれを見ていた

 

 

 

------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

 

 

 

「っちゅう事が今日あったんよ!!」

  興奮気味に今日の出来事を話すはやて。

「もう途中から盛大に失敗したかと思ったんやけど、まさかあそこから速人はんを気に入ってくれるなんて吃驚やったな〜♪」

  ニコニコと上機嫌に話すはやての話を守護騎士達は驚きながら聞いていた。

  それに驚きながらもヴィータはその後の事を疑問に思い尋ねてみた。

「なぁ、はやてー、ハヤトとソイツが握手しても場を引っ掻き回したのは変わらないけど、その後どうなったんだ?」

「あ〜、その後色々あったんよ〜。

  何しろ桃子さんは激しく落ち込みながら仕事に戻るし、お母さんを馬鹿にされたとなのはちゃんは速人はんを相当嫌うし、すずかちゃんはアリサちゃんは上機嫌やけどなのはちゃんは不機嫌でどうしたもんかと困っとったし…………………。

  あ、ただ色々あったけどあたしは二人とも仲良くなれたんや」

  しっかりとはやては二人と仲良くなれたようで良かったと一息吐く守護騎士達。

  そしてそれだけで済んだとは到底思っていないシグナムを除く守護騎士達の疑念を代表するようにシャマルは尋ねた。

「はやてちゃんがそのお二人と仲良くなられたのなら何よりですけど、そんな綺麗に終わらず何かトラブルが起きたと思うんですけど?」

  シグナムは遠距離から監視していたので知っていたがはやてが自分から説明するだろうと黙っていた。

「あっははは、そうなんよ〜。お金の話を聞かれたんかそうでないんかは知らんのやけど、お店の外に出たらバイクが物凄い勢いで速人はんに突っ込んできて速人はんのバックを掻っ攫ってったんよ」

「………………当然そのまま取られっぱなしでハヤトは済ましてないよな?」

「そうなんよ〜。50m程離れたと思ったら引っ手繰りがいきなり変な体勢になってバイクで転倒して気絶しててな、速人はんは何事も無かったかのようにそれを見てたんよ。

  何でも速人はんの持つリモコンからパスワード打ち込まんで50m離れると、気絶する程の電圧と電流が流れるらしいんよ。しかも目覚めた時には頭痛はするし息切れはするし動悸は乱れまくっててまともに動けないおまけが付くらしいんよ〜」

  はやての苦笑交じりの発言に守護騎士達はそれぞれ感想を述べる。

「ま、ハヤトならそれくらいするよな〜。しっかしハヤトから引っ手繰ろうなんて馬鹿だよなソイツ」

  愉快そうに言うヴィータ。

「5メートル以上離れると手放すように警告するのは知ってましたけど、最後はそうなるんですね。その人のおかげでどうなるか分かりましたね」

  納得顔で言うシャマル。

≪備え有れば憂い無しという事か≫

  感心したような顔で述べるザフィーラ。

「それくらいの報いは当然だろう。同情の余地は無いな」

  何時もの毅然とした顔で言うシグナム。

  それを笑いながら聞き、はやては続きを話す。

「で、その後リモコンを操作したらバッグから細い紐の付いた弾が速人はんの方に飛び出してな。わざわざ取りに行かずに糸を手繰り寄せてバッグを回収してて、横着やな〜とか思ったんやけど近くの物陰から三人速人はんに刃物持った人が襲い掛かって来たんよ」

「流石速人さんですね………………。安全対策は一つじゃないなんて……………」

≪無闇に誘い込まれる様な真似にならない備えは有るということか…………≫

  速人の供えのよさに感心するシャマルとザフィーラ。ヴィータとシグナムも声にはしないが感心していた。

「でな、直ぐに左右と後ろと上と足元を確認した後、途中まで帰るんで一緒にいたアリサちゃんとすずかちゃんに邪魔だから離れるように言って離れたらもう一度回りを確認して、あたしをその場に残して3人に突っ込んで行って一人目を足払いで体勢崩して後頭部を手で持って顔を地面に叩き付けて気絶させて、二人目はよく解らんかったけどナイフに触れんで相手の右お腹に刺し返して、唖然としてる三人目の右のお腹に回し蹴りを叩き込んで、三人全員倒れた後直ぐに走ってあたしの傍に戻って暫く動く気配が無いのを確認してたんや」

「さっすがハヤトだ!アタシも訓練した甲斐があったぜ!」

  嬉しそうに言うヴィータ。

「迎撃する際に周囲を確認して主はやての傍を離れ、打倒した直後その事に酔わずに直ぐに主はやての傍に戻ったのは評価に値するな」

  護衛としての本分を全うし、はやてを不必要に危険に晒していないのを評価するシグナム。

≪やはり相手が魔導師でもない限りは、主の護衛は十分任せられるようだな≫

  自分の見立て通り相手が非魔導師ならば、十分護衛として通用すると証明され僅かに機嫌が良いザフィーラ。

「しっかり戦闘訓練が役に立っているようですね」

  あの血反吐に塗れる体験が少しははやての役に立ったようで、完全に無駄にならずに何よりといった感のシャマル。

「あ、それなんやけど速人はんがヴィータ達の戦闘訓練とは比べる事が失礼な程相手は非力やったと言っとったよ」

「そうか〜。訓練するのは厭だったけど、役に立ってるんなら何よりだな」

  嬉しそうにニコニコしながら言うヴィータ。

  ヴィータは速人との訓練は傷つけるのが厭で凄まじく嫌っていたが、それが速人の役に立ち、はやての為にもなったと思うと、厭な事だったが誇らしい事に思えた。

  他の面々も速人の役に立ち、なによりはやての為になったならば何よりといった顔をしていた。

「でな、その三人が動かないと確認したら離れていたすずかちゃんとアリサちゃんに何事も無かったかのように帰ろうと言うたんよ。

  倒れてる人達の説明を警察とかにした方が良いとあたしもすずかちゃんも言うたんやけど、速人はんとアリサちゃんは山程目撃証言があるし、素手で刃物持った三人を相手にしているから訴えられても正当防衛で通るから必要無いって言うてな、歩いて帰ると目立つからタクシー使うことにしたんや」

「たしかに警察に関わると面倒そうだし、ハヤトは警察に関わるの凄く嫌がってるしな〜」

「そうですね。それに身体検査されたら面倒そうな物を幾つも持ってそうですしね」

≪全く同意だ。しかしそれを言い含められる話術か見抜かれない備えはしているだろうが≫

「恐らく見抜かれない備えをしているだろうな。あれだけ戦闘訓練を受けて普段丸腰というのは納得がいかない」

  全員の意見を聞き、苦笑しながらはやては話し続ける。

「みんなの言う通りなんよ〜。速人はん警察のお世話になるくらいなら軍の世話になったほうがマシって言うてたし、違法改造したスタンガンとかばれないように改造したり他も色々あるらしいんやけど、とりあえずそれは置いといてタクシーが来るまでにすずかちゃんとアリサちゃんと、お店の中でお手伝いしていたけど何事かと見に来たなのはちゃんとまた一悶着あってな〜。

  アリサちゃんとすずかちゃんを遠ざけて、あたしだけその場に残したのはアリサちゃんとすずかちゃんがあたしに害を加えない為で、更に相手の誰かが援護に来た際防波堤になるように考えて遠ざけたらしいんよ。

  そしたらそれを聞いたなのはちゃんが凄く不機嫌になったんやけど、アリサちゃんは今更今更って顔で笑いながら納得しとったんよ。何でもその場で問答無用で張り倒されないぐらいは警戒されてないってすっごい前向きに考えとったようで、すずかちゃんも自分達を遠ざける際に一応周囲を確認しているんで、気を使ってくれてるって思ったらしく不機嫌にはなってなかったんよ。

  そやけどなのはちゃんはやっぱり納得いかんかったらしくて、友達なら全員護るべきだって主張したんやけど、アリサちゃんが初めから速人はんが家族を優先するって言っていたから今更言う事じゃないって言って、タクシー来たから何とか場を収めて急いで離れたんよ」

  一息に言って疲れたのか少しお茶飲んで一息つくはやて。

「ますます溝が深まった様な感じがしますね。もう収拾出来ないみたいですけど大丈夫なんでしょうかね?」

「それなんよね〜。アリサちゃんは有言実行って事で益々気に入ったらしいし、すずかちゃんは特に今までと変わったようじゃなかったんやけど、なのはちゃんは凄〜〜〜〜〜〜〜く速人はんを苦手というか嫌いになったみたいやし。

  アリサちゃんとなのはちゃんを足せばプラスマイナスで言えば寧ろマイナスになったような感じなんやけど、兎に角速人はんに友達が出来るかもしれんから…………アリサちゃん的には友達かもしれんけど…………今日は大収穫やと思っとるんよ。

  というわけで、速人はんが警察に事情説明に言ってる間に御馳走の準備してたんよ。9時には戻るって言っとったからあと30分以内に戻ってくるで」

「って、警察嫌いなくせに結局警察にハヤトは行ってんのか?」

「放っておいたら警察が嗅ぎ回って鬱陶しいって言って、顔隠して警察に行ったんよ」

「初めから行かなかったのは何でなのかしら?」

  シャマルの問いにはやては苦笑しながら答えた。

「なんでも「周囲に銃を携帯した者が大勢いる中では万一の時はやてを護りきれない」って事らしいんよ。

  も〜全然警察を当てにしてないんよ。警戒しすぎやと思わん?」

≪いえ、天神の言う事は尤もです。主の身の安全を先ず確保し、後に予測される不穏な事の対処に赴く、護衛としては当然の事だと私は思います≫

  ザフィーラの意見に他の面々も同意の様で頷いていた。

「まぁ、気い遣ってくれるんは嬉しいんやけどな〜」

  はやてがそう言った時に敷地内に門から立ち入った者がいる事を知らせる軽い電子音が響き、インターホン確認画面を見るとそれは速人だった。(すずかが頻繁に八神家を訪ねる為、今日の朝速人が取り付けた装置の一つ)

「おっ!噂をすれば何とやらや!出迎えに行かな!」

  はやては車椅子を漕いで玄関に向かった。

「あっ、アタシも行く!」

  それに続いてヴィータも玄関に向かった。

  リビングに残こったシャマルは溜息混じりに呟いた。

「まぁ…………予想通りというか何と言うか…………穏やかな出会いとは無縁の人ですね」

「全くだな。詳しくは知らないがすずかの時も今回ほどでは無いが一悶着あったらしいしな」

≪だが天神自身に落ち度が有る様には見受けられない。備えもしているし、特に気にする必要は無いだろう≫

「まぁそうですけどね。……………しかし速人さんにはやてちゃんとヴィータちゃん以外が好意を抱くなんて思いませんでした」

  少し驚きながらシャマルは言い、シグナムもザフィーラも頷いていた。

「ま、だからといって天神に何か変化が起こるとは考え難いがな」

  速人が帰宅したらしく出迎えの声がリビングにも聞こえてきた。

「そうですけど、はやてちゃんが喜んでいるんで素直に私達も喜びましょうか」

「そうだな」

≪ああ≫

  とりあえずそう言う結論に達した時にリビングにはやてと速人とヴィータが入ってきた。

 

 

 

  その日の夕飯ははやてが気合を入れて作った御馳走を、遅いながらも賑やかに食べながら過ごした。

  そしてその数日後12月2日、未だなのはの容姿を知らないヴィータは独断でなのはを襲撃した。

  シグナムとザフィーラは護衛で認識していたが伝えておらず、相手がなのはと気付いたがすでに幾名か援軍が来ており既に後には引けず、蒐集を行い離脱した。

  闇の書の頁は530ページを超えていた。

 

 

 

------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

 

 

 

  第九話:他人に近い友人未満――――了


【後書】

  ようやくなのはが登場したにも拘らず、居るのかどうか疑問に思う程の扱いになってしまいました。そして前回に続きキャラが把握していないという理由で殆ど喋らないすずか。

  そして喋ってはいますがアリサと桃子はとらいあんぐるハート3に近いキャラ付けになってしまいました。

  さらに後半力尽きはやての説明ではやてとなのはが仲良くなる様子を簡略化する手抜き具合で申し訳ありません。

 

 

【第八話補足】

 

  前回シグナムが速人に高位の魔導師には遠く及ばないという発言がありましたが、シグナムが言う高位の魔導師とは自分達を基準に考えているので最低でもAAランク以上であり、ミッドチルダ式魔導師を指していますので遠距離攻撃者と仮定しており、実験場内に馬鹿正直に留まらず遠くから砲撃されればお手上げになると思いそう述べています。

  光学兵器は大気により威力が激減するので完全に近距離向きの飛び道具であり、しかも砲台が固定されて動かせない以上、一定距離からの攻撃には対応できません。

  そして速人の装備は様々な機能がありますが耐衝撃性は無いので、壁や地に叩き付けられれば騎士甲冑を装着しているシグナム達とは比較にならないダメージを負います。

  更に筋力はドーピングで一時的に底上げしていますが、浮き上がらされて強風でも発生させられれば抗えずに壁に貼り付けられ後は俎板の鯉状態です。

  速人はシグナム達と違い、相手の遠距離攻撃を掻い潜り接近することはまず出来ず、シグナムもそう判断したので高位魔導師に遠く及ばないと言ったわけです(此処迄はシグナムの主観です)。

 

  尤も実験場内で戦闘するならば、速人の戦闘力は兵器込みならばで非常に高く、最悪でも相打ちにはなれます。

  何しろ粒子加速器という、放射する元素が軽ければ固体に命中すれば核融合が起き、放射する元素が重ければ大気と反応し核融合が起きるという自爆確定の兵器が設置されていますので。

  第三話で速人が???????に核反応で消すと言っていたのはこの装置を用いて消す算段でした。

  因みに地下の爆発物実験場は、速人の対魔導師迎撃場といった感に様変わりしています。

 

 

【第八話補足終了】

 

 

  雪山で凍える時に差し出される温かおでんの様に、身に染みる温かい感想と共に掲載して下さる管理人様感謝します。本当に感想嬉しいです。

  今回も第八話程では無いですが酷い出来にも拘らず御読み下さった方に感謝します。

  そしてこのSSを読まれている方、未熟というのもおこがましい程不出来な文を御読み下さり感謝します。




ようやくなのはにも出番が〜。
美姫 「けれど、速人との仲はあまりよろしくないみたいね」
だな。二人は仲良くなれるのか。
美姫 「まあ、速人の方がその必要性を感じていない辺り難しいかもね」
意外、という事もないけれどアリサとは仲良くなったな。
美姫 「そうね。アリサの考え方はなのはにはちょっと難しいかもしれないわね」
さてさて、新たな人と出会ったけれどやはり速人は速人のまま。
果たして、今後どうなっていくのかな。
美姫 「次回も待っていますね〜」
ではでは。



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る


inserted by FC2 system