このSSは魔法少女リリカルなのはを元にとらいあんぐるハートの設定とオリジナルの設定で書かれており、

場面はA’s最後のなのはが家族に今までの事を説明するところから始まります。

 

 

 

 

月と、微かに届く住宅街の明かりによってのみ照らされる暗き森林地帯

 

その上空で杖を持ち白い衣服に身を包んだ少女が

まるで何かを感じ取ろうとするかのごとく目を閉じ空中に浮いていた

 

突然、少女に周りに淡い桜色の膜が出現し、

それとほぼ時を同じくして下の森林から針状の“何か”が

常人では目で追いきれないであろう速度をもって少女に襲い掛かった。

 

しかし、“何か”は少女を包む桜色の膜に当たった瞬間、目的を果たすことなく弾け飛ぶ。

 

そしてそれを確認する間も無く少女の持っている杖の先端が環状から二又へと変形し、

静かな夜の世界に少女の声と杖であろう声が響き

杖の周りを環状に桜色の帯が四つ出現する。

 

少女の掛け声と共に桜色の光が直線に、

おそらく先ほど“何か”が飛んできたであろう場所を目掛けて放射され、

暗き森林は桜色の光に包まれた。

 

 

 

魔法少女リリカルなのは(+とらいあんぐるハート)SS

『家族として』

 

 

翠屋でのほとんど戦場のようにいそがしいクリスマスも過ぎて、一息ついた翌日の夕方、

高町家ではなのはとリンディ、それにクロノやユーノ、フェイトがなのはの家族に、

次元世界を自然もしくは人為的災害から守り管理する時空管理局のこと、

そこで使われる魔法のことなどを大事なお話があるという約束どおり説明していた。

 

さすがに皆、フィアッセやフィリスのHGSや久遠の変化を知っていたので

魔法だの、魔力だの言われても驚かなかったが、話がなのはも身の回りで起こったこと

PT(プレシア テスタロッサ)事件や闇の書事件―になると、

桃子や美由紀は簡単には信じられなかった。

 

いくらなんでも、小学三年生であるなのはやフェイトが、

そんな大事件に関わっていたとは信じられなかったのである。

 

もっとも士郎や恭也は、恭也が今のなのはよりも小さいときから

全国を旅していろいろな出来事に巻き込まれていた、という経験があるので

そのことに関してはそれほど驚かなかったが。

 

そして桃子や美由紀にしてみても、

リンディやなのはの真摯な説明と魔法の実演

―飛行魔法やユーノの変身、スターライトブレイカー花火バージョンなど―

をみせられ、さらに、今までの説明を納得して聞いていた士郎や恭也に、

ここ半年でなのはの気配が周囲に気を配る武術かのそれに近くなっている事を

聞かされては信じるしかなかった。

 

しかし、

 

「それで、学業とちゃんと両立するから時空管理局で武装局員として働いてもいい?」

 

というなのはの言葉で、事態は思わぬ方向に進む事になる。

 

「う〜ん、私はなのはが人々の為に働くっていう目的をもっていて、

そのために管理局で働きたいというのなら反対はしないはわ」

 

「俺も桃子と同意見だ、弱き者たちを守護する力となれ、それが御神の理でもあるしな」

 

桃子と士郎はなのはが管理局で働く事をとくに反対せずに、むしろ励まし、応援するように言う。

 

しかし

 

「俺はどちらかといえば反対だな、

いくらなんでも武装局員というのは話を聞く限り危険すぎる、

まだ小学生なのだしそこまで焦る事は無いんじゃないか?」

 

「そうだよ、なのははまだ小さいんだから

そんなにがんばろうとしなくてもいいんじゃない?」

 

それに対して、恭也と美由紀は士郎と桃子があっさりと武装局員という

危険な部署で働くことを認めた事に驚きつつ、武装局員という危険な仕事につくことに反対する。

 

「そんなこと言ったって、恭也、

お前だってなのはぐらいの年で、エリスとかとフィアッセのボディガードやっていたじゃないか、

それで不審者を捕まえたことだって一度や二度じゃないし」

 

「レベルが違いすぎるだろいくらなんでも、俺やエリスがやっていたのは所詮真似事だ。

でも、なのはのは話を聞く限り、どう考えても実線だぞ」

 

士郎の言葉に恭也が反論する。

 

「銃を持った奴ら相手に戦うのがまねごとねぇ、

だいたい、ことの大小なんて関係ないだろ、

なのはがやりたいというのなら、それを認めるのが家族の仕事ってもんだろが」

 

「とても、路銀を使い果たして、家族同然である親戚の結婚式にいけなかった人の台詞とは思えないな」

 

「どういう意味だ、そりゃ」

 

「どうもこうも、言葉どおりの意味だが」

 

「ほう、どうやら久しぶりに徹底的に鍛錬させられたいらしいな、恭也」

 

「いつまでも、俺に勝てるとは思っていると、足元をすくわれるぞ、父よ」

 

「「やめなさい」」

 

今にも小太刀や暗器などを使った親子喧嘩に発展しそうになったとき、

桃子となのはが同時に士郎と恭也を叱り、

二人が言い訳を始める前に「いいですね」と有無をいわせぬ迫力で言う。

 

「あ〜、少々いいか、なのはが武装局員になったとしても、それほど危険な事はないと思う。

いくら最近、人手不足になるほど事件が頻繁に起こっているといっても、

さすがにAAASランクであるなのはを危険に追い込むような事件はめったに無いから」

 

クロノが目の前の光景にあきれつつも、そう言うと士郎はどうだとばかりに恭也のほうを見る。

 

「でも、本当になのはってそんなに強いの? どうも私には想像できないんだけどなぁ」

 

桃子が士郎に「いい加減にしなさい」といっているのを聞きつつ、美由紀が思っていたことを尋ねる。

 

しかしそれにクロノやリンディが答えるより早く士郎が呟く。

 

「どうやら、これは美由紀にも本格的に『心』を教える必要がありそうだな。

なのはの変化に全く気づいていないとは」

 

『どういうこと?』と士郎と恭也以外が疑問に思うと、それに気が付いた恭也が説明する。

 

「さっき、父さんと俺がここ半年の間でなのはの気配が武術家のそれにかわったというのは言ったろ、

そういった相手の気配を読むことで、

相手の位置を特定したり、相手の強さを推測する技術を御神流では『心』と言うんだ」

 

「ついでにいえば今のなのはやフェイト、クロノをそれで見れば、

なのはは、まだ荒いが射撃などの遠距離系が得意なかなりの狙撃手、

フェイトは、近・中距離系が得意な速度重視の武術家、

クロノは、近・中・遠とバランスよく戦える達人、というように感じられるな」

 

恭也の説明の後に士郎がつけたす。

 

「この世界の武術家は魔法も使わずにそんな事がわかるのか、すごいな」

 

士郎の言葉が、見事なまでになのはやクロノ、フェイトの戦闘スタイルを

言い当てていただけにクロノが驚きながら言う。

 

「まあ、そういうわけでなのははかなり強いぞ

そうと解れば、美由紀は頑固な恭也と違って、なのはが管理局で働くのをみとめるだろ」

 

『頑固な恭也と違って』というところを強調して士郎が言う。

 

「はは・・・

でもたしかに父さんがそういうのなら大丈夫なのかもね」

 

美由紀はわざわざ恭也を挑発する事を言う父にあきれつつ、納得したように言う。

 

「どうだ恭也、これで認めていないのはお前一人だけだぞ

いい加減、なのはがクロノやリンディさんたちと働くのを認めたらどうだ」

 

「だが、いくらなんでも小学生のなのはがそういった仕事をするには経験が不足しすぎていると思うが」

 

恭也は自分が反論している途中で、士郎がすごい笑み

―それこそティオレがいたずらを思いついたときに浮かべる笑みと同種のもの―

を浮かべていることに嫌な予感を覚えながらも最後まで言う。

 

そして案の定、士郎はその後に皆が驚愕する事を言った。

 

「じゃあ恭也、なのはが勝てば管理局で働くのを認めるという条件で闘うのはどうだ。

もしお前が勝てばお前の言うとおり、なのはにまだ実戦は早いという証明になるだろ

戦闘に関してはそこそこ経験を積んでいるお前が相手をすれば

なのはがどのくらいのものなのかはっきりわかるだろ」

 

「本気か、父さん、いくらなんでも戦いでこういうことを決めるべきではないと思うぞ」

 

「無茶ですよ士郎さん、一般人じゃ、なのはの魔法には太刀打ちできませんよ」

 

恭也が反論し、クロノも士郎の突然の言葉にあわてながら言う。

 

「そうだよ、それにさっきなのはが飛んだのを見たでしょ。

いくら恭ちゃんでも空中にいる相手には攻撃できないよ」

 

「美由紀、空中にいる敵に対して攻撃する方法なんていくらでもあるぞ、

それにそういったことも含めて、恭也が戦えば、なのはの実力がわかるだろ。

なのははどうだ、恭也と戦ってみるか?」

 

そういって士郎はなのはの方を見る。

 

「戦って勝たないと認めてくれないって言うのなら、戦うよ、全力で」

 

士郎の質問に対してはっきりとなのはが言う。

 

「しかしだな」

 

恭也がなおも反論しようとするがそれを士郎が遮る。

 

「なのはが良いって言っているんだ、

それにお前だって本当はなのはがどれくらい強くなったのか試してみたいんじゃないのか」

 

「・・・だが、妹と戦うというのは」

 

士郎の言葉が図星だったのか、少し遅れてから恭也が反論しようとするが、またしても士郎に遮られる。

 

「何言ってんだ、美由紀と毎日のように戦っているじゃないか、

それに、仮にも不破家に住んだことがあるなら、

そんなことは理由にならないってことぐらい知っているだろ

それともなのはに負けるのが怖いのか?」

 

「そんな事はない」

 

「ならいいじゃないか、決定だ、あとで裏山で始めるぞ」

 

恭也は、一度決めたら気が済むまで考えを曲げない士郎の性格を知りつつ、最後までなんと

かしようとする。

 

「文句を言ってないで、さっさと暗器や小太刀の準備をするんだな

このまま戦ったんじゃさすがに勝ち目が薄いだろ」

 

しかし、士郎はそれを無視して、そんな事を言って恭也を無理矢理イスから立たせた後、

自分の部屋に武器を取りに行かせる。

 

「士郎さん、さっきも言いましたが、魔法を使えない一般人じゃ絶対になのはには勝てませんよ。

それでもやらせるつもりなんですか」

 

恭也までが諦めて準備をする為に席を立ってしまったことに驚きつつクロノが言う。

 

「まあいいじゃないクロノ、それで皆が納得するのなら

それに魔法を魔力ダメージに限定しておけば少なくとも大怪我はしないしね。

それと、できればこちらで記録しておきたいので、準備に一時間ぐらい時間をくれます?」

 

さすがにアースラの最高責任者でもあり、母でもあるリンディにまでそう言われたのでは

クロノもこれ以上反対するわけにも行かず黙り込む。

 

「よし、じゃあ一時間後に桜台の裏山で試合開始だ、恭也となのははしっかりと準備しといてくれよ」

 

 

 

その後、リンディの言葉で、アースラ経由でモニターから二人の戦闘を見られる事を知った士郎が

どうせなら山全体を戦闘エリヤにしようと言ったり、

そのためにクロノが一度アースラ戻り、ユーノと協力して広域結界を張ることになるなどと

いったこともあったが、一応は順調に進み、予定どうり一時間後の七時には

山の中腹で恭也となのはがそれぞれの武器を構え、対峙する姿がモニターに映し出されていた。

 

 

そしてついに戦闘開始の合図である音が山に響きわたる。

 

なのはの足元に桜色の魔法陣が出現し、それと共にいくつもの発光体が現れ、

それらは多方向から恭也に向かって襲い掛かる。

 

なのはがPT事件において、

近・中距離でフェイトと戦うために生み出したディバインシューターである。

 

しかし、それらの攻撃が恭也に届く前に、突然、恭也の姿が視界から消える。

 

次の瞬間、なのはが恭也が消えたことに驚く間もなく

斜め後ろから連続した斬撃がなのはに襲い掛かった。

 

鋼鉄の塊とさえ言える自動人形さえ切り裂いた、

恭也にとって最強の攻撃である神速と薙旋による連続技である。

 

しかし、その攻撃は、最初の二撃が強固なバリアジャケットに阻まれ、

残りの二撃にいたってはレイジングハート攻撃を察知し、

瞬間的になのはを上空に逃がしたために、むなしく空を切るだけに終わってしまった。

 

恭也は自分にとって最速最強である攻撃でさえもほとんど効果が無かったことに驚き、

なのはに対する認識を改めつつ、次の攻撃に備えて『潜』で気配を隠しながらその場を離れる。

 

一方、恭也の攻撃を防いだなのはにしてみても、

バリアジャケット越しとはいえ、かなりのダメージを受けており、

またとっさに空中に逃れたために恭也のことを完全に見失ってしまっていた。

 

その頃、高町家のリビングでは、クロノとリンディ、フェイトは恭也の瞬間移動とも見れる動きに、

美由紀はなのはが自分でも未だに完全には防げない、恭也最強の一撃を簡単に防いでしまったことに、

それぞれ驚いていた。

 

そして、クロノとリンディをさらに驚愕させる

「恭也を見失った」という報告がアースラにいるエイミーから届いた。

 

アースラの索敵・対象探知システムは、魔法によって対象を周囲の空間ごと魔力によって把握する為、

どんなに素早く動こうとも逃れる事はできず、逃れるためには

魔法による多重転移を繰り返すか、アースラを攻撃して一時的にその機能を麻痺させるしかない。

 

つまり、リンディやクロノの常識から考えれば、

今日魔法というものを知ったばかりで全く使えない恭也が

アースラの探知システムから逃れる事は不可能なのだ。

 

また上空にて探知魔法を展開し、下の森林の様子を探っていたなのはも

全く恭也の気配がないことに気づき、焦りを感じ始めていた。

 

なにしろ、時より上のほうの木々が不自然に揺れることがあるものの、

その周囲をいくら探そうが全く恭也の気配がなく、

全体を満遍なく探したとしても全くといっていいほど見つからないのだ。

 

そんな、なのはやクロノ、リンディの様子から、

士郎は恭也が御神不破流の『潜』を完全に使いこなしている事を理解して微かに微笑んだ。

 

『潜』とは御神流の『心』により常に周囲の気配を余すことなく感じ取り、

それを自分の気配としてコピーすることで、周囲と同化し、

相手に自分がいることを気づかせないという『心』の進化系として

御神不破流のみに存在する神速と並ぶ裏の奥義の歩法である。

 

そして恭也は完全にそれを自分のものとして今の戦闘で使っているために、

むしろ魔法に頼っているからこそアースラやなのはは探知する事ができなかった。

 

魔法といえども夜の暗い森林では光を頼りに探索する事はできない、

すると必然的に魔力や気配といった、人が発するものを探知するしかなくなる。

そして恭也は長い鍛錬の中で無意識のうちに魔力までも周囲と同化させるようになっていたおり、

いくら捜そうとも恭也は魔法ではあくまで森林の一部と認識されてしまうのだ。

 

 

 

 

そして三十分以上がそのまま経過し、士郎が「つまらない試合だなぁ」などと言い始めた頃、

突如として、なのはとアースラの探知魔法が、

なのはに向かって高速で飛来する細い金属製の物体―飛針―を探知した。

 

とっさにシールドを展開し、その飛針による攻撃を防ぎつつ、

なのははすぐさまレイジングハートをバスターモードに変形させる。

 

そしてレイジングハートの周囲を四つの環状魔法陣が包み、

なのはとレイジングハートの声が静かな夜空に響く

 

次の瞬間、その先端から直射魔法ディバインバスターが

おそらく先ほど飛針が飛んできたと思われる場所目掛けて発射された。

 

その一撃は、暗き森林を桜色の光で包み込み、

それと共に飛針が飛んできた場所を中心とした半径一キロ以上を魔力の奔流が襲った。

 

 

 

だが、その光と魔力の奔流が治まり、夜の闇が森林に戻っても、

アースラによって恭也が発見されることはなかった。

 

クロノは、恭也が何らかの方法で身を隠したまま直撃を受け、気を失ったという最悪の状況を考え、

フェイトと共に捜しに行こうとするがそれを士郎が止められる。

 

「なぜ止めるんです

彼は最悪の場合、隠れたまま気を失っているんですよ

なのはだけじゃ見つけられないかもしれない」

 

「だが、まだそうと決まったわけじゃないだろ。

そうである以上、まだ勝負は続行している」

 

「何であなたは息子が気を失っているかもしれないというのに、そんな平然としていられのですか」

 

士郎のまるで他人事のように言う態度が理解できないとばかりにクロノが言う。

 

「当たり前だろ、俺はまだ恭也が負けたとは思っていないからな

だいたい、あいつが何の考えも無しに飛針を一本だけ投げるなんて普通ならありえない、

絶対、何か裏があるに決まっている」

 

「あいつは意外にずる賢いからな」と笑いながら士郎が言う。

 

その言葉を聞いてクロノがモニターに目をやると、

なのはが恐る恐るといったように徐々に下に降りている姿が映っていた。

 

 

ディバインバスターを撃った後でも、探知魔法を使って全く恭也の気配が感じ取れなかったために、

なのははゆっくりと、慎重に先ほどディバインバスターを放った場所に向かって降りていった。

 

しかし、なのはが地上に着いた時、突然上空から飛針による攻撃される。

 

慌てて飛びのいた瞬間、横から無傷の恭也が現れ、なのはに向かって斬撃を放った。

 

なのはは恭也が無事な事に驚きつつ、最初の戦闘でそれが危険だと理解していたので

瞬間的に五メートル程度飛び上がりその攻撃回避する。

 

そして、恭也が続けて放った飛針をシールドで弾こうとした刹那、

再び恭也が視界から消え、なぜかなのはの真横から現れ斬撃を放った。

 

とっさに、飛針を弾こうとしたシールドで恭也の斬撃を防ぐが、

今度は反対側から恭也の斬撃がきたためにシールドを全方向に変化させその攻撃の対処しようとする。

 

しかし、全方位をガードする事によって浸透性のダメージを逃がす事ができなくなり、

徹が込められた斬撃を防ぐ事ができず、なのはは何が起きたのか理解できないまま、吹き飛ばされる。

 

 

 

その頃、高町家では、クロノや士郎、リンディ、フェイトが、

恭也が使ったトリックに気づいてリンディとクロノ、フェイトは唖然とし、

士郎にいたっては笑いをこらえていた。

 

何と、恭也は最も丈夫で弾性に富む鋼糸を何重かにし、

高い木と木の間に結びつけることによって足場をあらかじめ作っていたのである。

 

そしてその場所に囮である飛針を自動的に飛ばす仕掛けを、

木の幹と弾性力の高い鋼糸を使って作り出していた。

 

後は、自分はやや距離の離れたところで上空のなのはを観察しつつ、

頃合を見計らって、それを使うことによってなのはをここにおびき出したというわけだった。

 

そして、そのいくつもある足場を神速状態で飛び移ることによって、

今の恭也では一度に十秒が限界であるものの、

なのはに対しての空中での多方向からの攻撃を可能にしていた。

 

 

しかし、なのははそのことに気づかないにもかかわらず、

その恭也の多方向から襲ってくる攻撃を信じがたい集中力とカンによって、

部分的な浸透性のダメージにも耐えられるシールドを使い防ぎつつ、

ディバインシューターによって何とか恭也を捉えようとした。

 

だが、それらの攻撃は全て、恭也があまりに速すぎるために、むなしく空をさまよう。

 

そして恭也の連続した攻撃が止んだ瞬間、なのはのレイジングハートがすさまじい勢いで引っ張られた。

 

これ以上の神速は体が持たないと判断した恭也が、

なのはのシールドが一部分だけであることを利用して、背後に周る間に、シールドのない部分から、

鋼糸を至近距離でなのはに気づかれないようにしてレイジングハートに絡みつかせたのである。

 

いくら、バリアジャケットなどによって防御力などが上がっているからといって、

なのはの握力は小学三年生の平均的なものでしかない。

 

当然、握力が八十kg超えている恭也に神速状態で思いっきり引っ張られて、

耐えられるわけがなく、なのははレイジングハートを離してしてしまう。

 

レイジングハートはそのまま飛んでいってしまい、慌ててなのはが単独で防護魔法を唱えようとする。

 

だが、それよりも早く、恭也が御神流の奥義の中で最大の破壊力を持つ『雷徹』を

今日使用できる最後の神速を使いながら無防備ななのはに向かって放つ。

 

徹を2つ同一箇所に同時に放つという『雷徹』の衝撃は

易々とバリアジャケットを通り抜け、なのはを直撃する。

 

なのははそのあまりの衝撃で気を失ってしまい、

地面に向かって自由落下するがそれを恭也に受け止められる。

 

そして、試合終了の合図が鳴り響いた。

 

 

 

クロノやリンディ、フェイトがその光景に驚いて声も出ない中、

士郎が「やっぱり恭也の言うとおり経験が足りないようだな」などと

呟きながら恭也たちを迎えにいこうとする。

 

しかし、それよりも早く、エイミーの

「なのはちゃんがショックで気を失っちゃったみたいだからそっちに送るね」

という言葉と共に恭也がなのはを背負いながら突然リビングに現れた。

 

そして、

「なのはは大丈夫なの?」

「別に問題は無いと思うが、心配なら明日病院で見てもらったほうがいいかもしれんな」

などといった桃子と恭也の会話の後、恭也がなのはを彼女の部屋に運びに行き、

再びリビングに入ってきたとき士郎が尋ねた。

 

「なのはが負けたから、約束の上ではなのはを管理局で働かせることは認めないということになるが、

どうするつもりなんだ、恭也」

 

その言葉にいまだ呆然としていたクロノやリンディ、フェイトも我に返り、恭也の方を見る。

 

「武装局員として働くというのはなのはが俺に勝つまで認めないと思う、

ただ『研修を受けるな』とまではさすがに言わないから、

たぶん管理局で研修を受けている間に俺に勝てるようになるんじゃないか」

 

恭也が管理局で働くこと自体は反対していないと知ってクロノとリンディ、フェイトは安堵する。

 

そして、クロノが戦闘を見てからずっと気になっていたことを恭也と士郎に尋ねた。

 

「あなたたちはいったい何者なんですか、

最初と最後の動きや、アースラの探知システムから逃れるなんて普通の人にはできませんよ」

 

「なあに、御神流というただの古流剣術使いささ、それ以上でもそれ以下でもない、

そっちの世界で魔法が発達したように、こっちの世界でもかつて裏で剣術が発達した時代があった。

単にそれがしぶとく生き残っていただけのことだ」

 

クロノの質問に士郎が苦笑しなが答える

 

「ついでに言っとくがな、二人とも、なのはを嫁にもらうのは、俺と恭也に勝ってからにしてもらうぞ」

 

「俺は恭也よりも強いぞ」と士郎が笑いながらそう言ったとき、ユーノが青ざめてしまい、

その後、本局の訓練施設で、恭也に勝とうと努力するなのはと共に高速近接戦闘の訓練を

受けるユーノの姿がよく見かけられるようになったとか。

 

 


魔法少女リリカルなのはSS

「家族として」

何ヶ所か訂正したのですが、どうだったでしょうか。

 

もともと『どうやったら恭也がなのはに勝てるのか』という考えで書き始めたSSなので、

恭也が強くなりすぎていると感じる人が多いことでしょう。

 

ただ、私はストーリーとして『恭也がなのはに負けてしまい、魔法を認めた上で、それも

含んだ特訓をしてもう一度なのはにリベンジする』という展開よりは、『なのはが恭也に経

験の差で負けて、周囲の協力によっていろいろな経験を積んで、恭也にリベンジする』と

いう展開のほうが王道ですし、面白いと思うのでこのような展開にしました。

 

それと『潜』は原作には登場しないオリジナル設定です。

とらは3OVAでグリフが突然影から現れたことや、御神流の『シン』を見てこれほどまで

に相手の気配をつかめるのなら、自分の気配も消せるだろうという理由で作ってしまいました。

 

SS初心者なので何かご意見があれば掲示板で言ってくれるとありがたいです

 

次は『造られし存在』を訂正した後、続きの『霊力と魔力と』を書くつもりです。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました

   


魔法少女リリカルなのはSS

「家族として」

どうだったでしょうか。

こういうSSを書くのは初めてなのでいろいろな問題点があったでしょうが、楽しんで読んでいただけたなら幸いです。

ちなみに『潜』は原作には登場しないオリジナル設定です。

これが無いと魔法少女リリカルなのはの三話のように探知魔法で見つけた後、即座に魔力砲を打たれてしまい勝負になりそうになかったのと、とらハ3OVAの『シン』を見る限り、あそこまで相手の気配をつかめるなら逆に自分の気配を消す事だって簡単だろうと思い勝手に作ってしまいました。(笑)

最後に恭也が木々に張り巡らせた鋼糸を神速で渡り歩くのも、とらハ3OVAの美由希が壁走りできたんだからできるだろうと思ってのことです。

まあ、かなり無理があるのは自分でも承知していますが・・・(笑)

 

一応、続編としてフェイトVSフィリス、薫VSシグナム、みたいな似たもの同士対決を考えているのですが、出来上がるのが何時になるかわかりません(笑)

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

 

 





endlesskeyさん投稿ありがとうございます。
美姫 「ございます」
リリカルのSSです。
いやいや、恭也強いな〜。
美姫 「なのはも頑張ったけれど、やっぱり経験不足って事なのかしらね」
なのはも、それなりに経験積んでいるんだけれどな。
やはり、まだ兄の方が強かった。
美姫 「妹を心配して、武力で黙らせる。何か矛盾してるけれどね」
まあ、士郎らしいかもな。
美姫 「本当に面白かったです」
投稿ありがと〜。



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