時は少し遡り……


Side:なのは


アリサちゃんは相変わらず行動力があるなぁ……ネロ君を有無を言わさずに連れてくなんて早々出来る事じゃないよ?
久しぶりに会ったけど、アリサちゃんの行動力の高さは相変わらずで、ある意味安心したよ――ネロ君を連れてったことに何となくモヤモヤするけどね……


「モヤモヤって……まさかとは思うけど、何でそう思うかなのはちゃんは分からない?」

「全然。」

「……あはは……其処までドキッパリと言われると流石に……此れはある意味で重傷だよ……
 んん!……ねぇ、なのはちゃん、なのはちゃんはネロ君の事如何思ってる?下世話かもしれないけど、只の上司と部下の関係には思えないんだけど?」


ほへ?……只の上司と部下の関係じゃないって……正直言うと良く分からないかな?
ネロ君の事を好きか嫌いかの二択で答えろと言われれば、其れは間違いなく『好き』だって言えるけど、其れが『友情』か『愛情』かは良く分からないよ。


「……余り似てないって思ったけど、なのはちゃんの朴念仁ぷりは、結婚前の恭也さんに通じるモノがあるかも……お姉ちゃんも苦労したよね……」

「お兄ちゃんと同じレベルの朴念仁て………其れは何とも遠慮したい称号なの……」

って言うか結婚に至るその時まで忍さんの好意に気付かなかったお兄ちゃんて、ある意味では抹殺レベルの鈍さだよ!?
私は其処まで鈍感じゃ――



――チクリ……



「っひゃう!?」

「なのはちゃん?」


――ごめんすずかちゃん……なんか首筋にチクリと来て……蜂かなぁ?……其れほど痛くはなかったんだけど―――はれ?…視界が揺れる………
其れになんか物凄く眠い………すずかちゃん?


「私も凄く眠い……なんで、行き成り……」


な、何でって言われても……分からないよ……良い陽気だから、唐突に眠気が襲って来たのかなぁ………あふ……もう無理……お休みなさい。
そう言えば、意識がブラックアウトする寸前に見えた黒服の男の人達は一体なんだったんだろう……














リリカルなのは×Devil May Cry  黒き騎士と白き魔導師 Mission24
『夜の一族〜The Vampire Lady』











Side:ネロ


白昼堂々の誘拐とはやってくれるぜクソッたれが……!!
あのなのはが簡単に捕まったのを考えると、恐らくは遠方から『麻酔銃』みたいな物を使って眠らせたんだろうな――用意周到なもんだぜマッタク!!

だが気になるのは何でなのはとすずかが誘拐されたんだ?
なのはは類稀な魔力の持ち主で、戦闘技術も凄く高いが地球の連中が其れを知ってるとは思えない。

すずかにしたって俺に言わせれば『普通の女の子』に過ぎないからな――益々謎だ。

「アリサ、すずかの家ってどんな感じだ?」

「へ?大きいわよ?……分かり易く言えば敷地内に翠屋が5軒は楽に入るんじゃないかしら――だけど其れが如何したの?」


今回の誘拐事件は『身代金目的』の可能性もあるんじゃないかと思ってな。
おそらくなのはは一緒に居たって言う事で巻き込まれただけで、連中の本命は多分すずかだ……すずかを餌にして大金せしめようって魂胆じゃないか?

ったく考えるだけで反吐が出るぜクソッたれが!!


「目的は金!?……だとしたらフルボッコ確定だわ……アタシの親友2人に手を出した事を骨の髄まで叩き込んでやろうじゃない!!!」

「Ha-ha!アクティブな性格だとは思ったが、アンタも割にこっち側だなアリサ?――見つけ出してボコボコにしてやろうぜ!!」

「当然!!――って所でネロ、あんた犯人グループの事分かってんの!?」


実行犯の顔は兎も角、逃走用の車両とナンバーと車両色は完璧に覚えた。
其れと同じナンバーをつけた青いライトバンを見つけて追えば、間違いなく目的地に付く――エンジン全開で一気に飛ばしていくぜ?


「安全運転……何て言う心算は全く無いわ!!
 全壊のフルスロットルで、奴等を負うわよ!!――ブッ飛ばしなさいネロ!!」

「言われるまでもないぜアリサ――Let's rock Baby year!!(弩派手に打ちかますぞ!!)」


――ギュイィィィン!!!


とは言っても……如何にも、何か引っ掛かるな?
身代金目的ってのは多分間違ってないんだろうが、其れとは違う――そう、どす黒い悪意みたいなモノを感じて仕方ねぇ。

俺の杞憂で済んでくれれば其れで良いんだが。



――Pipipipipipipi……!!


電子音?……アリサの携帯か。


「ハイもしもし……士郎さん!?
 なのはとすずかが誘拐されたって……今さっき起きた事なのに何でもう情報を持ってるんですか!?……気にしたら負け?……何だかもう……
 取り敢えず現在はネロと共に犯人グループが逃走に使ったと思われる青のライトバンを捜索中です!」


相手は士郎か……まぁ、なのはが巻き込まれたとあれば黙ってられねぇだろうが――アリサの言う通り、何でもう知ってんだよ!?
追跡開始して5分と経ってねぇぞ!?俺等以外の目撃者が居て伝えたとしても幾ら何でも早すぎんだろ!?マジで如何言う事か説明入てほしいぜッ!?


「ネロも疑問に思ってるみたいなんですけど……は?『高町家の情報網は世界一』――もう本気で意味分からないんですけど!?
 って、え?久遠がなのはの危機を聞いて転移魔法で出て行った!?多分そっちにって――

「到着。」


のわ!?よりにもよってこっちに来たのかよ!?
つーか行き成り人の肩の上に現れるなよ!!危うくバランス崩し掛けたじゃねぇか!!!それ以前になのはの方じゃなくて良いのかよ!?


「何でかなのはの魔力を感じられなかったからネロの方に来た。」

「にしても行き成り肩に飛び乗って来る事は無いだろうが……って、なのはの魔力が感じられないだと?」

「一切合財マッタク全然。
 もっと言うならレイジングハートとも通信が出来なくなってる――若しかしたら、相手は只の誘拐犯じゃないのかもしれない。」


OK、だとしたら尚の事早く見つけ出さないとだが……ちぃ、何処に行きやがった?
結構なスピードを出してるから、そんなに距離は開けられてないと思うんだが………


「ネロ、下の道走ってる、あのライトバンはそうじゃない!?」

「アレは……Bingo!(大当たりだ!)ナンバーが一致した………アリサ、久遠、確り捕まってろよ!!!」

「へ?」

「ちょ、アンタ何する心算よ!?」


正攻法であのルートに向かったらまた見失っちまうだろ?………だから、こうするんだよ!!


――ギュイン!!ゴガァァァァァァァァアッァアァァァァ!!!


「はぁ!?ウィリーでコースアウトして、道路脇のほぼ垂直な土手を壁走りでって、ドンだけのドライビングテクニックよアンタ!?
 近未来的な世界で、バイクに乗ってカードを武器に戦うちょっぴり蟹みたいな髪型の朴念仁も吃驚なレベルよ今のは!?」

「妙に具体的だが、誰だソイツ?」

「不動○星。」

「OK、全然わからない。」

多分ジャパンのアニメかコミックのキャラクターなんだろうな。
まぁ、そんな事よりもクソッ垂れ共を見つけたんだ、スピード緩めないで飛ばしていくぜ!!


「緩める必要なんてないわ!!寧ろこのルートは好都合!!
 此処からは一本道で、4qほど進めば踏切があるし、今の時間なら昼間の鈍行と急行と快速の連続通過で足止めを喰らう筈よ!!」

「そこを捕らえる。」


そいつがベストだな。
成ら此処は奴等に気付かれないように付かず離れずの距離を保った方がベターか……てか、一般道を90qで走行するなよな。言うだけ無駄だろうが。


だが、そろそろ件の踏切だ。
しかも遮断機が下りはじめてる――コイツは良いタイミングだぜ。


――バキィィィ!!


って、遮断機をぶち折って行っただと!?
の野郎、前に他の車が居ないのを良い事にトンでもない事しやがったな?クソが……!!


――ゴォォォォォォォォ……


Shit(クソ)、突っ込む前に電車が来ちまった……!
この連続通過が終わったころにはアイツ等はもう……!!

『諦めるな。』


――
え?


『あの小娘が持っているアルカナソウルの反応は分かる……其れを追えば如何と言う事は無い。』


頭に直接響いて来る声――此れは一体………いや、それ以前にアンタは誰だ?


『其れを気にしている場合か?
 今は奴等を助け出す事が先決だろう……だから少しばかり手助けをしてやる――俺の言う通りに走れ。踏切を超えたら右折し、そのまま直進しろ。』



ちぃ……まぁ、確かに今はなのはとすずかを助け出す事が先決だからな……OK、アンタの言う事に従ってやるよ。



脳裏に浮かぶ映像……多分声の主なんだろうな。
銀髪をオールバックにしたような髪型の、ダンテと似た顔立ちの青いコートの男……誰だか知らないが、道案内は頼むぜ!!


『任せておけ……だが、俺がやるのは道案内までだ、其処から先はお前が何とかするが良い。
 自分の大切なモノは護り通せ。何が有っても護り通せ!!今度こそ護り通せ!……護れなかった事で、お前には『俺』になって欲しくはないからな。
 ……ふっ……少しばかり喋り過ぎたな――次の信号を左だ!!』


良く分からねぇが、今はアンタに従った方が良さそうだ――待ってろなのは、すずか……直ぐに助けてやる!!








――――――








Side:すずか


ん……んん……此処は…?


「すずかちゃん!!」

「なのはちゃん?……って、何で腕を縛られてるの!?」

「如何やら私達……その、『誘拐』されたみたい。
 公園で何かに刺されたような感じがしたのは……多分『麻酔針』か何かを死角から打ち込まれたんだね……少し注意が散漫になってたよ……」


せ、折角のお出掛けだから其れは仕方ないと思うよ?
だけど、だとしたら場当たり的な犯行じゃなくて、多分綿密に練られた犯行だよね?……だとしても、何で私となのはちゃんを?



「お目覚めになりましたかなすずかお嬢様?」

「!?――貴方は!!」

「へ?すずかちゃんのお知り合い?」


知り合いって言うか、お父さんの会社の取引先の社長さんだよ!?
まさかとは思いますけど、貴方が私となのはちゃんを誘拐したんですか?………私をダシに月村財閥を揺さぶる心算ですか?


「クックック………まぁ、其れもまた面白い事ではありますが、根本的なモノは別です。
 マッタク持って人の業と欲は深いと言うか何と言うか……『夜の一族を欲しがっている者が居る』と言えば、お分かりになりますかね?」


!!
そ、そんな………!!それじゃあなのはちゃんは只巻き込まれただけって事!?……私は兎も角なのはちゃんは解放して!!
なのはちゃんは何の関係もないでしょ!?


「そうは行かないのですよ……貴女達を縛っているのは異形の力を制御する特別製でしてね……その力が其方の御嬢さんにも効果がある。
 と、言う事はつまり其方の御嬢さんにも希少な力があると見て間違いない――貴女達2人をセットで売れば、億の金とて夢ではない。」


「……虫唾が走るね。」


なのはちゃん?


「お金の為に人の平穏を侵したって言うの?……許せないよそんなの。
 私が序に誘拐されたのは、まぁ百歩譲って一緒に居たからって事で納得するにしても、すずかちゃんを誘拐した理由が意味不明すぎるよ。
 ……まぁ、知りたいとも思わないけど――すずかちゃんは私の親友なの……誘拐何て言う事をして只で済むと思ったら大間違いだよ?」

「此れは此れは……何とも胆力のあるお嬢さんだ。
 だがしかし、すずかお嬢様を親友と言うとは何とも滑稽!!――若しかして貴女は、すずかお嬢様の正体を存じ上げていないのですかな?」


!!
待って、其れだけは言わないで!!其れを知ったらなのはちゃんは――!!


「教えて差し上げましょう、すずかお嬢様は『夜の一族』――分かり易く言えばきゅう――


――ブオォォォォォォォォォォォォン!……バァン!!―ガンッ!ガンッ!!バガァァァァアァッァァァァァァァァン!!


「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

「倉庫の扉が……吹き飛んだ!?」

「良いタイミングだよネロ君♪」



――ヴォン!!……スタ………



「白昼堂々誘拐とは中々にクレイジーな事をしてくれたが、攫った相手が悪かったな?」

「アタシの親友を誘拐するだなんて上等を働いた覚悟は出来てるわよねアンタ等?」

「覚悟するべき。」


アリサちゃんに、久遠ちゃん!!其れに……ネロ君!!――助けに来てくれた?


「悪いな、踏切で時間喰った分だけ遅くなっちまった――まぁ、不可抗力って事で容赦してくれよ、なのは、すずか?」

「其れじゃあ仕方ないよネロ君……ある意味で良いタイミングとも言えるしね♪」


本当に助けに来てくれたんだ……


「まさか鋼鉄製の扉を破壊して来るとは……姫を助ける騎士気取りかな?
 カッコつけるのは自由ですが、君達だけで私達に挑むのですか?……銃器で武装した15人を相手に!!
 いや、それ以前に君が助けようとして居る者の1人の正体を知って居るのですか?」

「知るかよそんなモン。」

「ならば教えて差し上げよう!!月村すずか嬢は君が助けるには値しない存在だ!!」


待って、言わないで!!


「彼女は『夜の一族』……つまりは吸血鬼!化け物なのですよ!!!」


あ………あ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
ずっと隠して来たのに……こんな形でなのはちゃんとアリサちゃんに知られるなんて……其れにネロ君も。

ネロ君とは今日会ったばかりだから兎も角、なのはちゃんとアリサちゃんとの関係は――此処で終わり……私の正体を知ったら幾ら何でも………


「其れが何?」

「其れが何だってのよ?」

「だから何だってんだ?脳味噌大丈夫かお前?」


へ?


「すずかが吸血鬼?だったらどうだって言うのよこのボケナスのスカポラチンキ!!
 例えすずかが吸血鬼だろうと、生憎とアタシ達の友情はその程度で壊れる程軟じゃないのよ?……寧ろすずかの異常に高い身体能力に納得したわ。」

「すずかちゃんはすずかちゃんで、人間だろうと吸血鬼だろうと其れは変わりないの!!
 すずかちゃんは私達の親友……其れだけは何がどうなろうと絶対に変わらないし、変えられない!!」


なのはちゃん…アリサちゃん?
わ、私が吸血鬼でも友達で居てくれるの?


「分かり切った事聞いてんじゃないわよ!アンタはアタシの親友!!異論は認めないわ!!」

「そうだよすずかちゃん……例え吸血鬼でも、すずかちゃんは私達の掛け替えのない友達だよ………」


――ありがとう、なのはちゃん、アリサちゃん!!


で、でも、2人は兎も角としてネロ君は………


「Ha!すずかがヴァンパイア?其れが何だってんだオッサン?
 俺からすればコイツは只の女の子だし、其れよりも金に目がくらんだテメェ等の方が俺に言わせれば『バケモン』だ、クソッタレが。」

「良い事言うねネロ君、正にその通りだよ!」


ね、ネロ君も?……如何して?


「其れにすずかがヴァンパイアだからって何だってんだ?」


――ジィィィーー………


え?グローブのジッパーを開けて……な、何をするの?


「俺だって普通の人間じゃないんだぜ?
 あんまし言いたい事じゃないんだけど、純血じゃないが――俺は『悪魔』だぜ?」


――ギュオォォォ………



グローブの下から現れたのは異形の右腕!?……若しかしてこれを隠すためにグローブをしてた?
ううん、それ以上に『悪魔』って――


――ズン!!


「まぁ、何にしてもこんだけふざけた事をしてくれやがったんだ……覚悟は出来てんるんだろうなオイ?Do it!!(行くぜ!!)」」


――バガァァァァァァン!!!


赤い剣を地面に突き刺して……そしてネロ君の雰囲気が変わった……!!
青白いオーラを身に纏って、目が赤く輝いて、そして背後にはオーラと同じ色の青白い『何かの姿』……ネロ君、本当に人間じゃなかったんだ……








――――――








Side:なのは


右腕を曝すだけじゃなくてデビルトリガーまで発動するって……如何やらネロ君も相当怒ってるみたいだね?
まぁ、私も同じくらい怒ってるけど……って言うか、親友が誘拐されて、更に誘拐犯からその友達に向かって心無い一言が放たれたなんて許せないの!

私とすずかちゃんは、妙なロープで縛られてるせいで何も出来ない――魔法も使えないから、今はネロ君に頼るしかないよね。
まぁ、乱闘になれば其れに乗じてアリサちゃんがロープを切ってくれるだろうけど。


だけどその前に……

「ネロ君、死なない程度に全力で叩き潰してあげて。」

「「そいつは隊長命令か?」」


隊長命令で!
犯人グループに1人の死者も出す事なく、だけど相手を全滅させて!………出来るよね、ネロ君なら?


「「All right Boss!(任せときな隊長!)……人の心失ったクソ共は、15分以内で全部片付けてやる!!」」


其れじゃあお願い!
すずかちゃんの事を誘拐して、あまつさえ知られたくない事を暴露したのは極刑もの――慈悲は必要ない…!思い切りぶちかましちゃって、ネロ君!!



そして誘拐犯の人は、欲に目がくらんですずかちゃんの事を誘拐した事を、骨の髄に染み渡るまで後悔すると良いよ……!!















 To Be Continued… 




ネロとアリサの追跡劇。
美姫 「色々と疑問が」
高町家の情報網が凄く気になるな。
美姫 「私としては突然、聞こえてきた声の方も気になるけれどね」
確かにそれも気にはなるが。
美姫 「ともあれ、誘拐犯の目的はすずかだったみたいね」
魔法の力の所為か、なのはもという形にはなったけれどな。
美姫 「吸血鬼発言に関しては」
今更過ぎるだろうな。なのは自身は魔導士だし、喋る狐の久遠やネロとも友達なんだから。
美姫 「当然ながら、そんななのはと友達のアリサも気にするはずもないわよね」
まあ、犯人たちはなのはたちの絆を甘くみていたというか、考えてもいなかったって所か。
美姫 「自業自得とは言え、次回はネロが暴れ回るかしら」
犯人側も万が一を考慮して、何かしらの対策は用意しているかと思うけれど。
美姫 「さてさて、どうなるかしらね」
次回も待っています。
美姫 「待ってますね〜」



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