それは今から、6日前のこと。教会の命を受け、シエルは吸血鬼を殲滅する為に海鳴市におもむいた。

 

 

そして、その翌日・・・・・・消息を絶った。

 

 

全く、連絡がとれなくなった彼女を探す為に、志貴は海鳴市へ行くことを決めた。これに対して秋葉や翡翠は反対したが、無理に引きとめようとしても無駄だという琥珀の説得を受け、現在、遠野家に居候中の身であり、戦力的にもまた無茶をする志貴に対するストッパー役としても適切な、シオンをつける事を条件にそれを承認したのである。そして、それに対し、さらにアルクェイドがついてきた。無論、この事に関しては秋葉は知らないことである。

 

そして、海鳴市にたどりつき、2手(アルクェイド一人と、志貴とシオンの二人組み)に別れ、夜の探索を開始した初日。吸血鬼の気配を感じたアルクェイドはそれをたどり、そこで恭也と耕介に出会ったのだった。

 

 

 

 

 

 

「あ、志貴、おまたせ♪」

 

「お、アルクェイド。なにやってたんだ、遅いぞ。」

 

「はい、約束の時間から15分遅れです。」

 

3人は2時間ごとに一度、合流する約束になっていた。それに遅れたアルクェイドを志貴とシオンが非難する。もっともそれは待たされた事に怒っているのではなく、何かあったのではないかと心配したからだった。

 

「ごめんね♪アルフレッドの奴とあっちゃってさー。」

 

「そうか、それじゃあ、仕方が・・・、って、アルフレッドって誰だ?」

 

“知り合いとばったり会っちゃって”みたいな言い方をしたアルクェイドに対し、一瞬納得しかけ、そのまま流しそうになるが、すぐにその事に対し、突っ込みをいれる。それに対し説明をしたのはシオン

 

「アルフレッド、錬金術師にして魔術師、雑多な知識を学び、それを組み合わせる事によって、さまざまな技術を生み出した裏の世界では天才と呼ばれる男です。そして、おそらくはこの場で一番重要なことと推察されるのは彼が死徒だということです。」

 

「へー、そうなんだ。って、死徒!!」

 

感心しかけ、すぐにその重大さに気付く志貴、そしてすぐにアルクェイドに詰めよった。

 

「お、おい、どういうことだよ。」

 

「どういうことって、別に街を探索してたら見つけただけだよ。やっつけてやろうと思ったんだけど、逃げられちゃった。」

 

そう言って、てへっと笑うアルクェイド。いつもだったらかわいいと思うのだろうが、今日の志貴はそれどころではなかった。

 

「それで、シエル先輩は!?」

 

「シエル?・・・・・・・・あっ。」

 

シエルの名前を聞いたアルクェイドは何やら考え込むような表情をとった後、やばっ、っと言った表情をした。それを見て志貴が冷たい目をする。

 

「おい、アルクェイド、お前、シエル先輩の事忘れてたな?」

 

「え、そんなことないよ(汗)し、志貴、もしかして怒ってる?」

 

明らかに動揺するアルクェイド。実際、彼女は、シエルの事をころっと忘れて、状況からして彼女の失踪になんらかの関係を持っている可能性が高いアルフレッドに対し、それについて聞くこともなく、攻撃を仕掛けてしまっていたりする。それは別に彼女がシエルの事を嫌いだからという理由ではない。本当に度忘れしてしまっていたのだ。アルクレイドは実は頭がよく、記憶力もいいが、生物が優先順位を自ら設定する能力を持つかぎりその手のミスはどうしてもおきるものなのである。

 

「怒ってないさ。と、言うか、アルクェイドは何か怒られることをしたのかい?」

 

「うー。やっぱー、志貴、怒ってる。」

 

目だけがかわらないまま笑顔を浮かべる志貴に対し、半べそをかくアルクェイド。しかし、そこで意外な方法から助け舟がでてきた。

 

「しかし、あなたほどの力の持ち主が逃げられるとは。いったい、アルフレッドはどんな手を使ったのですか?」

 

シオンの発した

 

「あ、うん。それがね、アルフレッドの奴空間転移なんか使ってきたのよ。しかも呪文詠唱無し。ま、擬似的なものだとは思うけど。」

 

「空間跳躍!?」

 

その言葉にシオン二重、いや三重に驚き、それについて分割思考で考える。

 

『まさかアルフレッドは空間跳躍の魔法を取得しているのか?』

 

『いや、アルフレッドはまだ、そこまでは遠いはず。』

 

『擬似的なものか?いや、油断するのは危険だ。』

 

『そういえば、HGSと呼ばれる超能力者がそう言った能力を持っていた筈、それを応用したのか?』

 

『どちらにしろ、こうなると、相手を捕らえるのがかなり厄介になる。』

 

「あっ、そういえばそこで会った人がいたんだっった。」

 

その時、アルクェイドが思い出したように呟く。その内容に二人は慌てる。

 

「なっ。お前誰かに見られたのか!?」

 

「それで、ちゃんと記憶処理はしてきたのですか!?」

 

だが、アルクェイドはそれを特に気にした様子もなく、答える。

 

「大丈夫よ。向こうも一般人じゃないみたいだから。なんか、一人は相当強い霊力を持っていたし、刀を持っていたよ。もう一人は特に力は感じなかったけど、そっちの方も刀、持ってたし、知り合い同士みたいだったからね。」

 

その答えを聞いて志貴は不安の混じった複雑そうな顔をし、シオンは霊力と刀という言葉に耳をとがめた。

 

「霊力をもって刀を武装?それはもしかして“神咲”といいませんでしたか?」

 

「んっ、そういえば耕介、神咲一灯流とか名乗ってたっけ。」

 

アルクェイドの答えにシオンは少し驚いた顔をする。

 

「やはり、そうですか。」

 

「シオン、知ってるのか?」

 

突然考え込んだような仕草をするシオン。その様子に疑問を覚えた志貴が尋ねる。するとシオンは少し神妙な顔をして答えた。

 

「“神咲”は“七夜”と同じように退魔の家系です。ですが、知名度という点では“七夜”よりも遥かに上ですね。現在日本に存在する退魔の家系では最大規模を誇っています。」

 

「へえ、凄いんだな。」

 

それに対し、素直に感嘆した表情をする志貴。しかし、シオンは難しい顔をしたまま続けた。

 

「ただ、知名度が高いのにはそれ以外にも訳があるんです。」

 

「訳?」

 

面白そうな話だと思ってそこでアルクェイドが首を突っ込んできた。

 

「神咲は今からおよそ360年ほど前、ある偉業を為したのです。」

 

「偉業ってどんな?」

 

志貴の問いかけにシオンは静かに答えた。

 

「はい、神殺しです。」

  


(後書き)

今回、とらハキャラがまったくでてきてないです(汗)すいません。次の話では両作品のキャラが同じ場所にそろう予定です。


おおー、次回は両キャラの顔見せか〜。
美姫 「私はそれよりもシオンの話の方が気になるわ」
確かに、そっちも興味深いね。
美姫 「もう今からその続きが気になって、気になって」
今にも暴れ出しそうだな。
美姫 「続きを楽しみに待ってます〜」
ではでは〜。





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