「真祖の姫君に神咲最強の退魔士、邪魔なあなた達が手を組まれると厄介ですので、この機会に纏めて消させていただきますよ。」

 

そう言って腕を組むアルフレッド。その表情は余裕そのものだった。

 

「なめられたものね。まさか、そんな下級の鬼を連れてきたぐらいで勝てると思ってるの?」

 

それに対し、アルフレッドはおおげさに手を広げて言った。

 

「まさか、いくら昼とはいえ、この程度の戦力であなたを倒せるとは思っていませんよ。この程度ではね。」

 

その言葉の後、アルフレッドが短い呪文を唱えると、さらに6体の鬼が出現したのだ。

 

HGSの誕生、その能力の解析によって、空間制御事態は魔法から魔術の領域に変わりつつあります。まあ、勿論、本質的な意味合いでは違いますけどね。今のはその研究の成果を生かしたもので別の場所にいる存在を従来の召喚より遥かに簡単に呼び出せるようになりました。

 

そして、さらに2体の鬼が現れる。その鬼は赤と青、そして今までとは桁違いの“気”を放っていた。

 

「これは前鬼と後鬼、知っていると思いますが上級の鬼の多くはその爪や角そのものが強力な概念武装です。昼間のあなたを動けなくするぐらいの力は十分ありますよ。」

 

「本当になめられたものね。私も。」

 

目を細めた状態で口元だけ笑うアルクェイド。その時、リスティが一歩前に浮かんでいた。その表情は一見笑っているように見えたが、明らかに怒気が浮かんでいる。

 

「さっき、HGSの能力を研究したって言ったけど、具体的にどんなことをしたんだい?」

 

かって、自分自身、そしてその姉妹、クローンを生態兵器として利用された過去を持つ、彼女にとってアルフレッドの“解析”という言葉は聞き逃せない言葉だった。心を読もうともしてみたが、何らかの対抗策を施しているのかまったく読めない。

 

「ん、そういえばリスティさんあなたもHGSでしたね。」

 

そのリスティの様子を特に気にした様子もなく愉快そうに言うアルフレッド。リスティはその態度にさらなるいらつきを覚えるが、そのまま平静を装って続ける。

 

「へえ、僕の事も知ってるんだ。」

 

「もちろんです。世界最高のHGSと言われる槙原知佳を別格とすれば、最高クラスのHGSですからね。実際あなたを研究材料と欲するものは多いんですよ。いや、あなただけでなくこのさざなみ寮は興味深い対象が多い。最もそれを過去にやろうとした魔術師はそこにいる槙原耕介さんやらに撃退された挙句、神咲や警防隊、果ては夜の一族やらを敵に回して徹底的に殲滅されたなんて事があって、ここ数年、手を出そうとするものもいないようですが。」

 

その言葉に驚いてリスティが耕介の方を見る。耕介は少し決まりの悪そうな顔をしていた。特殊な住民が数多くいるさざなみ寮の住民を狙う輩をたびたび彼は住民にも隠しながら退けていたのである。そんな耕介に対する追及は後にすることにし、再びリスティがアルフレッドに視線を戻した時、彼は思い出したように手を叩いた。

 

「ああ、そういえば最初の質問に答えていませんでしたね。一言で説明するのは難しいのですが、頭の中をいろいろいじらせていただいたり、投薬や魔術をかけて反応を見させていただきました。」

 

その言葉にリスティは勿論、皆の殺気が高まる。

 

「ふふ、それではそろそろ始めましょうか。」

 

それに対しアルフレッドは不敵な笑みを浮かべ続け、そして彼が始めようか、と言った次の瞬間、前鬼と後鬼が飛び出し、それに対してアルクェイドが迎え撃つ為に飛び出す。そして残りの8体の鬼が耕介達の方に飛び掛ってきた。

 

「耕介さんは後ろに下がってください!!」

 

消耗の激しい耕介に対して恭也がそう言って前に飛び出す。そして同時に他のメンバーも彼をかばうように前に立った。

 

「サンダーブレイク!!」

 

先手を取ったのはリスティ。鬼たちの中心に特大の電撃を放った。

 

「この威力・・・。私との試合の時はまだ、全力ではなかったということですね。」

 

シオンがそれをみて感嘆する。だが、鬼達はその攻撃を喰らってなお、前に進んできた。身の丈3メートル近くある鬼。そのうち一体が爪を振るう、狙われたのは恭也。

 

ビュン

 

鋭い爪を紙一重でかわし、反撃で八景を振るう。しかし、鬼の腕を切り裂くつもりだったその一撃は表面に浅い傷をつくるのみ。耕介が叫ぶ。

 

「恭也君!!鬼には普通の刀は通らない!!霊力を付与した刀を使うんだ!!」

 

言われて、刀を持ち換える恭也。その前に再び爪を振る鬼。

 

「フルバースト!!」

 

その鬼の腕をシオンの銃が吹き飛ばした。しかし、さらに別の鬼が彼女を襲う。

 

トス

 

だが、その鬼は呆れるほど軽い音と共に崩れ落ちた。いつのまにか眼鏡を外していた志貴が死点をついたのである。

 

「線も細く、点も小さいが、見えないわけではないな。」

 

 

―――――御神流・奥義の肆・雷徹―――――――

 

 

恭也が腕を切り裂かれた鬼の首を突く。首の骨を折られ、頚動脈を傷つけられ、大量の出欠をする鬼。

 

「止めだ!!」

 

そこにさらにリスティの電撃が浴びせかけられる。傷口に電撃を流され、絶命する鬼。だが、残った6体の鬼が今度はまとめて飛び掛ってきた。

 

「くっ!!」

 

神速を使い後方に逃れる恭也。それに対し、志貴は一体の鬼の視線を切り裂いたものの、次の鬼の爪を肩に受けてしまう。

 

「ぐっ。」

 

さらに3体目の鬼の攻撃、それをかわそうとした瞬間、さっきの模擬戦で痛めた筋が痛み、動きが遅れた。

 

「志貴!!」

 

シオンが叫ぶ。だが、彼女の方にも鬼が一体向かってきていた為、援護の暇がなかった。恭也もリスティも気づくのが遅くフォローが間に合わない。

 

「真威・洸桜刃!!」

 

だが、その鬼は霊力の光に飲み込まれ、完全に消滅する。それは御架月から放たれたものだった。

 

「俺だけ観戦してる気はない・・・・と、言いたいところだけど、いまので完全に力を使い果たしてしまったみたいでね。これ以上、技を使おうとすると倒れてしまうだろうから、すまないが、少し休ませてもらう・・・・。」

 

そう言ってその場に座りこんでしまう耕介。その表情を見れば彼がどれほど消耗しているのかは明らかだった。

 

「任せて。耕介はゆっくり休んでいてよ。」

 

答えたのはリスティ。だが、他のメンバーもそれを行動で示すように鬼に攻撃を仕掛けていった。

 

 

 

 

 

 

「くっ!!信じられない!!」

 

アルクェイドが叫ぶ。戦いながら少し離れた場所に移動していたアルクェイドは2体の鬼に対して、彼女の予想に反する苦戦を強いられていたのだ。ある程度のダメージは与えられているがそれはアルクェイドも同じ。彼女の身体には鬼の爪で傷つけられたいくつもの傷があった。

 

「どうしました?この程度の相手楽勝というようなことをおっしゃっていたようなきがしましたが。」

 

そんな様子を見て鬼の後ろで嘲るように言うアルフレッド。その表情を見て彼女は今すぐにでも叩き潰してやりたくなりながら、自制する。

 

「これからよ。それにしても、これほどの鬼はあなたごときが使役できるとは思えないわ。シエルにしたって、よっぽど油断したりしない限りそうでしょう。あなたの後ろに誰かいるわね?」

 

「さあ、どうでしょう?聞きたかったらまずはその鬼どもを片付けてはいかがですか。」

 

鋭く睨むアルクェイドの瞳にもアルフレッドは気にせず、嘲笑するように答えた。

 

「くっ。」

 

歯噛みするアルクェイド。そして鬼達との戦いが再開された。

   

   


後書き

柿の種:今回のゲストは琥珀さんだ。

琥珀:あはー、こんにちは。ところで、柿の種さん、話に警防隊とかが動いたみたいな内容がありましたけど、死徒や魔術師相手に警防隊が動くなんて事あるんですか?

柿の種:うむ、月姫なんかを見ると、基本的に魔術師は他者に干渉せんようだから、魔術師が問題を起こしても、他の魔術師がどうにかしてくれるわけじゃない。そうなると表社会の住民に対して危害を加える輩にはやっぱりどこかが対処せねばならんだろう?で、魔術師に対抗できる人間なんていうのは限られているから、警防隊のような強力な連中が所属している組織が動く事もある・・・・と、いうことだ。ちなみに死徒相手だと神咲が動くな。月姫原作では魔術師はその存在を表社会に対し隠しているから、問題もそう起こらんのだろうが、とらハの世界観ではそれはにありえんだろうからな。

琥珀:あははー、非現実的な人が一杯いますもんねー。

柿の種:うむ、霊力や超能力の存在も認められているからな。

琥珀:それでは夜の一族はどうしてなんですか?

柿の種:これは簡単に言うとコネがあるからだ。ま、それだけではないがな。

琥珀:コネですか?

柿の種:まあ、警防隊や神咲も半分はそうなんだが、耕介が夜の一族のお偉いさんと縁故があるのだ。

琥珀:もしかして、前回言ってた8股の一人とか?

柿の種:さすがに鋭いな。そのとおりだ。

琥珀:そんな人を愛人にしちゃうなんて志貴さん並の女殺しですねー♪

柿の種:そうだな。ちなみに霊力の増加であっちの方も志貴並の耐久力を持っている。

琥珀:あら、それではお相手をする方は大変ですね。それとも、一度に複数とか・・・

柿の種:このサイトは18禁ではないのでこれ以上はNGだ。で、話は戻るが、耕介がいくらお偉いさんと縁があるとはいえ、それだけが理由じゃない。それでは公私混同だからな。

琥珀:それでは一体どういうことなんですか?

柿の種:そのお偉いさんは魔術師なのだ。で、彼女は魔術師殺しと言われている。身内の恥は身内がそそぐという信念に基づいて非道な魔術師に対し制裁を加えたりしている。これに反発するものもいるが、彼女が権力者な上に本人が強すぎるのでほとんどのものは太刀打ちできない。それに、制裁と言ってもそれほど無茶な事をする訳ではないので黙認されている状態だ。そして彼女はそれ専用の組織というか派閥のようなものを持っている。耕介に頼まれた時、相手が魔術師や死徒ならそれを動かすのは正当な業務になるからな。

琥珀:なるほど。ところで、話は変わりますが、私の出番はいつになるんですか?

柿の種:えっ?

琥珀:まさか無いなんておっしゃるんじゃないでしょうね?

柿の種:あの、それは・・・・・・。

琥珀:そんな事を言う方には。ふふふ。

柿の種:や、やめろー。注射器はやめ・・・・・・・・・・・あっ。

琥珀:あら?寝てしまわれましたね。それでは、私が変わりに挨拶を。次回をよろしくお願いします♪

 




なるほど〜。そう言う事情があるのか。
美姫 「さて、裏事情がわかった所で、本編の法はと」
いやー。予想外に苦戦してるなー。
美姫 「まあ、手合わせした後で、皆疲れているっていうのもあるとは思うけどね」
だね。
美姫 「果たして、無事にこの危機を乗り越える事が出来るのかしら」
そんなこんなで次回も楽しみ〜。
美姫 「では、また次回をお待ちしております」
ではでは〜。



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