第十五話「アルクェイドとクロウ・リードの過去 後編」






 
王族の庭園ロイヤルガーデン
 一同は、食事を摂っていた。
「之、美味しい!!」
「あっアンゼロット、ワイが狙ってたのを喰いおったな!!」
「油断している方が悪いんですわ」
「喧嘩をする方には食後のデザートが出ませんわ」
 知世が二人をコントロールする一言を言う。
「それだけは堪忍して」
「私もいやですわ」
「私始めてみた。唯の人間に真祖と魔獣が抑え込めれるところ」
 アルクェイドも始めて目にする光景だった。
「知世ちゃんが作るデザートは、最高だからね」
「有難うございます。アテネさん」
 


「それじゃ、さっきの続きを話すね」 


 回想
「彼ならヨーロッパにいますよ」
「今代のロアはヨーロッパか!!」
「はい。魔術協会、聖堂教会、死徒の二大勢力も動くでしょう」
「我の髪を奪ったアルトルージュも動くか……」
「貴女の奪われた髪は、今回取り戻す事は出来ません」
 クロウは、アルクェイドがアルトルージュに髪を奪われた事をしている。
「汝は、我がアルトルージュに髪を奪われ時に生を受けていなかったのであろう」
「はい。その時に私はこの世にまだ生を受けていません」
「その時、生を受けていなかった汝が我が髪を奪われた事を知る!?」
「先程、話したとおり私は巨大な魔力の為、他人が知りえないことを知ってしまうのです」
 同じことを言うクロウ・リード。
「では、汝に問う。“真祖創生”で何をするつもりか?」
「如何するつもりも在りません。今は、まだ使う時ではないのですよ」
 使う時ではないのなら何時使うのか?
「汝は、使う為に編み出したのであろう。魔術を使わぬ魔術師は、魔術師にあらず」
「私の編み出した“真祖創生”は、魔術でも魔法でもありません。しいて言うと神代の時代の魔法級の秘術なのです」
「神代の魔法級か……。久しく聞かぬ言葉だ」
「そうですか? 貴女は神代の時代に生まれていないはずでは」
「我がこの世に産み落とされたのは600年ほど前だ。神代の時代の事は、詳しくは知らぬ。聞きたくば、ゼルレッチにでも聞くが良かろう」
「では、そうすることにしておきましょう」
 ゼルレッチに聞くというクロウ・リード。
「其れより“真祖創生”について説明せよ」
「私が編み上げた“真祖創生”には、幾つか欠点があります。満月の夜に抑止力も認める可能性のある死徒に真祖の血を飲ませて長い呪文を何段かに分けて唱えなければなりません」
「欠点がある術を秘術とは言わぬ。秘術とは、欠点のない完璧な術の事を言う。汝の編んだ“真祖創生”は秘術にあらず」
「いいえ。私の編んだ“真祖創生”は、れっきとした秘術です。残念な事に私には改良する時間と使う時間は残されていません」
「今代最高の魔術師が弱気な発言だな。まるで死ぬと言っているようだぞ」
「はい、そう言ったのです。まもなく私は、この世を去ります」
「汝が死ねば、永遠に使われる事もなく闇に葬れる。我にとっては、朗報だ!!」
 クロウの死が近いことを聞いて喜ぶアルクェイド。
「私が寿命で逝っても私が編んだ“真祖創生”は、この世に残ります。向こう200年は、使える者が現れません」
「向こう200年はと言う事は、200年後には使える者が現ると言うのか?」
「そう言うことです。残念な事に貴女は、術を使う場所に立ち会うことは出来ません」
「立ち会うことが出来んとは如何言う事か!?」
「何故なら貴女は、殺されて体を再生させる事で手一杯だからですよ」
「我を殺すことが出来る者などこの世に居ない事は貴様も知っておろう?」
「はい。今は、貴女を殺せる者はこの世にいません。200年後、貴女はイキナリ十七分割に殺されます」
「我を十七分割に殺すだと!? 貴様でも我を殺せぬというのに……」
「信じるも信じないも貴女の自由ですよアルクェイド・ブリュンスタッド」
「汝の言う事を信じてやろう」
 クロウ・リードの言う事を信じると言うアルクェイド。
「先日、私の元に蛇が訪ねてきましたよ」
「あ奴、此処に来たのか!? 通りで奴の気配を感じるはずだ」
「貴女は、直ぐに向かうのでしょう」
「当たり前だ!! 奴を殺すまで何度も追いかける」
「では、がんばってください」
「ロアを殺したら貴様を殺すから待っていろ!!」
「期待せずに待っていますよ」
(貴女が次に訪れる時には私の寿命は尽きているでしょう)
「では、運命の交差路で逢いましょう……」
 其れを聞いてアルクェイドは去っていった。


 
王族の庭園ロイヤルガーデン
「ヨーロッパでロアを殺した後、城で眠ってロアが現れるたびに殺したわ」
 過去を語るアルクェイド。
「やっとの事で日本に来てクロウが住んでいた場所は、遊園地になっているし如何なっているのよ」
 アルクェイドは、クロウ・リードの屋敷があった場所へ行ったようだ。
「本当にクロウ・リード死んじゃったのかしら?」
「確かにクロウは死んだ!!」
「本当に死んだんだ」
「でも、生まれ変わりはこの世に二人いるわよ」
「生まれ変わりが二人もいる分けないないじゃない。魂は一つなのよ」
「クロウは、実際に魂を二つに分けたんや」
 魂を二つに分けたと言うケルベロス。
「じゃあ、クロウ・リードは私に嘘を言ったんだ。あの陰険メガネ今度あったら殺してあげるわ」
「無駄や。手の内を読まれてあしらわれるだけや」
 クロウの性格を知り尽くしているケルベロスが言う。
「アルクちゃんは気づいていないでしょ」
「何に気づいていないと言うのよ」
「クロウの血縁の存在に……」
「アイツ子孫を残してたんだ。それ以前に子孫がいたの?」
「アルクちゃんの目の前に居るじゃん」
 アルクェイドに目の前に居るって言うアテネ。
「目の前って、此の娘!?」
「そう」
「如何考えてもあの陰険メガネからこんな可愛い娘が出来るなんて信じられないわ」
 さくらを見て信じられないと言うアルクェイド。
「之で性格が似ていたら最悪よ」
「性格は似ていないわよ。でも、怒らせたらクロウより怖いわよ」
「じゃあ、怒らせようかな?」
 怒らせようかなと言うアルクェイド。
「アルクちゃん、止めておいた方がいいわよ。さくらちゃんがキレタら私たちでも止めるの大変なんだから」
 アテネ達でも止めるのが大変というキレタさくら。
 そのことを知っているのは当事者達だけである。
「じゃあ、弱っている私じゃあ止められないわね」
「当たり前じゃん。さくらちゃんは、異世界を含めて最強の魔力の持ち主なんだから」
「平行世界じゃなくて異世界? 冗談はやめてよね」
「冗談じゃないわよ。ゼルッチは、平行世界にしか行けないけど、さくらちゃんは次元の魔女と同じように異世界へ行き来、出来るんだから」
「其れが、本当だとしたら悪夢だわ。異世界へ渡るなんて魔法使いも真っ青じゃない」
「そう。だからさくらちゃんを怒らせるようなことをしない事ね」
「クロウが言ってた通りの子ね。何とかロアを葬る目処がたちそうだわ」
 ロアとの戦いの目処がたちそうと言うアルクェイド。
「アルクちゃん体力が回復したら手伝ってもらうよ」
「手伝いって何を?」
「さっちゃんを鍛えるのを」
「鍛えている最中で殺してもいいんだね」
「殺したいのなら殺してもいいわよ。殺せたらの話だけど……」
「いいわよ。さっちんに私の血もあげて鍛えてあげるわ」
 そう言ってアルクェイドは、爪で自分の手首を裂いた。
「さっちゃん、アルクちゃんの血を飲んで」
「血は、嫌」
「如何して嫌なの? アルクちゃんは、私と違って真祖の王族よ。何処が不満なの」
「其れでも血は飲みたくない」
「血が嫌いなところはアルクちゃんと同じね」
「嫌でも飲んでいただきますわ」
 アンゼロットは、さつきの襟元を掴むと地面に叩き付けた。
「いたぁ!! アンゼロットさんイキナリ何するのよぅ」
「これ以上、叩きつけられたくなかったら大人しくアルクェイドの血を飲みなさい」
「アルクちゃん、早く飲ましちゃって。其れで、さっちゃんは王族縁の真祖に成れるから」
 王族縁の真祖に成ると言うアテネ。
 押さえつけられているさつきにアルクェイドは血を飲ませた。
 アルクェイドの血を飲まされたさつきに異変が起こる。
 さつきから発せられる気配がアルクェイドと似た気配に変わったのだ。
「じゃあ、明日から特訓を開始するね」
 アルクェイドを加えた特訓が翌日から始まる事となった。



 冬木市
「大師父……」
『友枝町と三咲町の死徒を倒せなかったようじゃな』
「友枝町の死徒は、既に倒された後でした」
『では、“クロウの後嗣”には遭ったか?』
 其れを聴いた瞬間、思い出したように震えだす。
「あんな化け物と一緒なんて聞いていません」
「そうです。今でも思い出すたびにトラウマになってしまいそうです」
『如何だ!? 二度と関わりたくないと思っただろう?』
「世界を消せるなって聞いたら関わりたくはありませんわ」
「地面を溶岩に変えるなんて悪夢以外の何ものでも在りません」
『少しは、世界が見えたか?』
「見えたとは如何いう事ですか?」
『世界最強クラスの魔術師の力を肌で感じただろう』
「もう嫌と言うほど肌で感じましたわ」
『その程度で実力差を感じて如何する!?』
「その程度とは、アレが全力じゃないのですか?」
『本来の力の一部らしいの』
「本来の力の一部って、本来の力はどのくらいなのですか?」
『ワシでは分からぬ。古い知り合いに聞いた話だと全次元最強とか言っておった』
「其れを誰が言ったのです!?」
『確か柊沢エリオルとか言う魔術師じゃ』
「聞いたことの無い名前ですわね」
『奴が言うに異世界と自由に行き来出来ると言っておる』
「異世界って、大師父の平行世界の運営と同じ魔法ですか?」
『いいや違う。平行世界の運営の上位に存在する魔法じゃ』
「大師父、その人が魔術に目覚めたのは何時なのです」
『小学校4年の頃と奴は言っておった』
「奴とは誰の事なのですか?」
『柊沢エリオル。クロウ・リードの生まれ変わりじゃ』
「じゃあ、あの変な魔獣を従えた子が……」
『“クロウの後嗣”じゃよ。今では、“太陽と月の支配者”“星の魔女”と呼ばれはじめておる』
「……」
「その子が魔術に目覚めてまだ数年ですよね。目覚めて数年で魔法使いに至れるものなんですか?」
『先ず、有り得んな。魔法へ至る事の難しさは、お前達も知っての通りだ』
 魔法へ至る難しさは遠坂もルヴィアも知っている。
『“クロウの後嗣”は、規格外の魔術師だったと言う事だ。気を落とすことはない』
 慰めるゼルレッチだが、二人が受けた心の傷は大きい。
 自分達が何代もかけて積み重ねて目指した物に魔術に目覚めてたった数年の魔術師に至られたからだ。
『言い忘れることがあった。実はな、“クロウの後嗣”はクロウ・リードの子孫じゃ』
 ズガーンと二人に雷が落ちる。
『落ち込んでいるところで悪いがお前達に新たな指令を与える』
「新たな指令ですか?」
『あぁ。そうじゃ』
「その指令は、何ですか?」
『“無限転生者”、ミハイル・ロア・バルダムヨォンの殲滅……』
「“無限転生者”と言えば、教会でも殲滅できない奴でしょ。そんな奴、私たちで如何こう出来る相手じゃありません」
『そんな事は、始から分かりきっておる。だから……』
「だから?」
『“クロウの後嗣”と行動を共にせよ。必要とあらば、サーヴァントを使っても構わん』
 サーヴァントを使ってもいいと言うゼルレッチ。
「また、聖杯戦争を始めろと言うのですか?」
『誰も聖杯戦争を始めろとは言っておらん。聖杯が無い今では、お前達の力では召喚は出来んじゃろう』
 二人の力では、聖杯なしにサーヴァントを召喚出来ないと言う。
『新たな聖杯の出現が観測されれば、話は別じゃ』
「新たな聖杯の出現が観測されたのですか?」
『まだ、観測されておらん。だが、柊沢の奴は聖杯の出現時期を知って居るようだ』
「新たな聖杯って、前回の聖杯戦争から一年も経っていません」
『じゃが、第六次聖杯戦争が起こることは事実じゃ』
「遠坂凛。第六次聖杯戦争は、私が勝利しますわ」
「勝つのは私だから……」
『第六次聖杯戦争には、クロウの後嗣にも参加してもらう予定じゃ』
 クロウの後嗣にも参加してもらうと言うゼルレッチ。
「其れでは、私たちに勝ち目が無いではないですか。その上、真祖たちをも見方につけているのですよ」
『その時は、自分達で如何かするんだな……』
 どうしようもない戦力差を如何しろと言うのよと思う凛とルヴィアだった。


 王族の庭園ロイヤルガーデン
「そろそろ、此処での一年が経つころね」
 王族の庭園ロイヤルガーデンでの一年が経とうとしていた。
「数百年に一人の逸材だっただけあって成長が尋常じゃなかったわね」
 そう語るアルクェイド。
 さつきは、数百年に一人と言う逸脱した才能の持ち主であった。
 倒すべき敵、ロアは自分の娘が真祖の力を自由に操れる事を知らない。
 そして、第六次聖杯戦争の兆候が現れ始めていた。







 ケロちゃんにおまかせ
「こにゃにゃちわ。ケロちゃんにおまかせのコナーの始まりや」
「クロウとアルクェイドの昔話はどうやったか?」
「作者も相当、クロウしているようやな」
「何と、ロアとの戦闘前に聖杯戦争をやるつもりらしいわ。所詮、ワイの主さくらの勝ちは確実や!! 他の奴らは、脱落せんようにがんばるんやで」
「聖杯戦争と言うたら監督役が居らんで。言峰とか言う神父は前回の末期に殺されとるからなぁ」
「後処理しに来たと言う後任が監督役でも勤めるんやろうか?」
「其れは、次回以降のお楽しみや」
「そろそろ終いの時間や。ほななぁ」



何かややこしい事になりそうな。
美姫 「ロアの件だけじゃなく、聖杯戦争の兆しまでだものね」
一体、何が起ころうとしているのか。
美姫 「事態が悪化しない事を祈るのみ、ね」
それでは、この辺で。
美姫 「それじゃ〜ね〜」



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