第十六話「第六次聖杯戦争」






 
 衛宮邸
「衛宮くん居る?」
 凛が衛宮邸で声をあげる。
「何時帰って来たんだ!? 遠坂」
 衛宮が遠坂に聞く。
「直ぐに聖杯戦争の準備をしなさい!!」
「バカ言うなよ。聖杯戦争は、もう終わったんだぜ」
「凛、聖杯戦争がどうかしたのですか?」
 セイバーが遠坂に聞いた。
「よく分からないけど、また聖杯戦争が始まるらしいのよ」
「聖杯戦争が始まるのですか?」
「えぇ。如何いうわけか始まるみたい……」
「見たいって、分からないのか?」
「シロウ。こうしては居られません。直ぐに道場へ……」
 セイバーに引きずられていく士郎。
「一寸、待て!!」
「士郎がんばってね」
 凛は、ハンカチで見送る素振りをする。
 士郎がセイバーに連行されて行った直後。
「凛!!」
「アーチャ!!」
「お前は、無論参加するのだろう」
「当然よ。でも、今回は戦わずに時間切れになるのを待つつもりよ」
「時間切れを待つまでもなかろう」
「如何しても時間切れを待たないといけないのよ」
「何故、時間切れを待たねばならんのだ!!」
 凛は、アーチャに事情を説明する。
「ある死徒を始末しろと命じられたのよ。大師父に……」
「其の始末をする死徒の名は?」
「確か、“アカシャの蛇”と呼ばれているらしいわ」
「そんなの放っておいて、聖杯戦争のみに集中しろ!!」
 アーチャは、ロアを放っておけと言った。
「放って置けるわけないでしょ。あんたも知らないわけじゃ……」
「お前が手を出さずとも誰かが始末をするだろう」







 アインツベルン城
「そうなんだ。また、聖杯戦争が始まるんだね」
 イリヤは、何処か嬉しそうだ。
「バーサーカー、準備はいい?」
「 ̄ ̄――__――― ̄ ̄ ̄__―――」
 バーサーカーは雄たけびを上げる。
「シロウ、リンにサクラには、負けないんだから」



 冬木教会
 冬木教会では、聖杯戦争の参加者を待っている人が居る。
 前回の聖杯戦争で死亡した言峰の後任が来るまでの代理人だ。
「ようこそ。冬木教会へ……」
「貴女が、今回の聖杯戦争の監督役ですの?」
「えぇ。カレン・オルテンシアですわ」
「サーヴァントが召喚できないのは如何いうことですの?」
 ルヴィアがカレンに聞く。
「既に定員が揃ってしまいました」
「定員が揃ったて、もう七体召喚されてしまったと言うのです?」
「そう言ったのです」
「アサシンを召喚して遠坂凛を暗殺しようと思ってましたのに」
 本音を吐くルヴィア。

 その時、バーンっと戸を開けて入ってくる人影……。
「ルヴィア、アサシンを召喚して私を如何するつもりだったの?」
「遠坂凛!! 貴女、サーヴァントを召喚できない事を知ってましたのね」
「あんたにはあえて言わなかったのよ」
「遠坂凛、覚悟なさい!!」
 ルヴィアは、遠坂にガンドを放とうとする。
「此処で争う事は許しません」
「カレン。止めないで!! コイツには、どっちが上かハッキリさせておかないといけないのよ」 
 此処で決着をつけるという遠坂。
「望むところですわ」
 二人の間に険悪な空気が流れる。
「凛。戻ってきたのなら私のところに来なかったのです?」
 カレンが凛に言う。
「色々とあって忘れてたのよ」
「忘れてたじゃすまない事態が起こっているのです。何処にいたのですか? 電話をしても出ないから心配しましたわ」
「ごめん。士郎のところに居たから……」
 悪そうに謝る凛。
「其れで、私に何か用があったの?」
「先程、三咲町で任務中の第七司祭から連絡がありました」
「なぁ、遠坂」
「何よ!!」
「第七司祭って何なんだ!?」
「あのねぇ、衛宮くん!!」
「何だよ」
「何度言ったら覚えるのよ!!」
 遠坂が士郎に雷を落とした。
「話を続けてもいいです? 遠坂凛」
「えぇ。続けて」
「第七司祭の連絡で、この冬木に可也力のある死徒が入り込んでいる可能性があるとの事です」
「一寸、其れ本当なの?」
「間違いありません。聖堂教会と凛、貴女の大師父からの情報です」
「不味いわ。管理不行き届きって事になれば、管理者辞めさせられるかも……」
「其れは、ありません。私が連絡を受けたのが1時間ほど前でしたから」
「よかった。管理者辞めさせられたら実入りが無くなる所だわ」
 安心する遠坂。
「カレン。もう一人女の子が来ていない?」
「いいえ来ていませんが、如何かしたのですか?」
「其の子も聖杯戦争に参加する予定なのよ」
「凛。聖杯戦争の参加定員は一杯です。貴女が言う子が参加する事は不可能です」
「其の子ならサーヴァントが居なくても勝っちゃううかもしれないわよ」
「其れは、如何言うことですか」
「其の子、真祖を味方につけているのよ」
「凛。其れは、本当なのですか?」
「ええ。本当よ。しかも、ビックネームをね……」
「ビックネームですか。いったい誰なのですか?」
「誰だと思う? 真祖の王族、アルクェイド・ブリュンスタッドよ」
「アルクェイドですか!?」
「セイバー知っているの?」
「はい。直接会ったことはありませんが、名前くらいは知っています」
 唯一人、緊張感のない者が一人。
 衛宮士郎である。
「真祖って何なんだ!?」
「いいですか、士郎。真相とは受肉した精霊種なのです」
 士郎に説明を始めるセイバー。
「セイバー、そいつに説明しても理解できないわ」
「しかし、知識があるのと無いのでは生存率が違います」
「私も、セイバーの意見に賛成です」
 賛成と言うライダー。
「イリヤは?」
「私もセイバーやライダーと同意見よ。今のシロウじゃ簡単に殺されるわ」
「俺って、真っ先に殺されるのか?」
「当然です。幾ら前回の聖杯戦争を生き残れたからって今回も生き残れるとは限りません」
「お兄ちゃんは、私が守ってあげるから」
 士郎を守ると言うイリヤ。

 ギィィィっと教会の戸が開き誰かが入ってくる。
「リン、顔色が悪いですが如何したのですか? あの魔術師の事を知っているのですか?」
「知ってるもなにも……」
 嫌な記憶が蘇る凛。
「なあ、遠坂。アイツの事を知っているのか?」
 此処で無能な衛宮が聞いた。
「あの魔術師は、クロウ・リードの後継者よ」
「クロウ・シードの後継者!?」
「クロウ・リードの後継者って何!?」
 話しの流れを折る男、衛宮士郎。
「士郎。この聖杯戦争が終わったら骨の髄まで教え込むから覚悟しておいてね」
 遠坂の死刑宣告が士郎に言い渡される。
「其れより、カレン。死徒のことを話して」
「冬木に潜入した死徒は、二代目“混沌”と名乗っているそうです」
「“混沌”って、ネロ・カオスの通り名じゃないの」
「第七司祭からの連絡で死徒二十七祖のネロ・カオスは殲滅された事は、確認できています」
「其れで、侵入した死徒の詳細は分からないの?」
「残念ながら分かりません」
 詳細は分からないと言うカレン。

「あんた達には、死徒退治に協力してもらうわよ」
「貴女は、誰ですか? 此処は、吸血鬼が居ていい場所ではありません」
「私? 私は、アテネ・クライシス・ブリュンスタッド。吸血鬼の真祖よ」
 アテネの名に凍りつくイリヤとカレン。
「何で、真祖の王族が私の管理地にやってくるのよ」
「何って、この地に入り込んだ死徒を倒しに来たのよ。それが、厄介な固有結界を持っている奴なの」
「固有結界ってなんなんだよ」
「衛宮くん。貴方も使えるのにそんなことも分からないの!!」
 衛宮は、固有結界が使えるらしい。
「其れで、どんな固有結界ですの?」
 カレンが、固有結界の詳細を聞く。
「エリオルが言っていたけど、なんだったかな? ねぇ、さくらちゃん。分かる?」
 アテネがさくらに聞いた。
 同じ名前に間桐桜はキョトンとする。
「貴女は知っているのですね、クロウの後嗣。話してくれますね」
 少しの間をおいて話し始めるさくら。
「この地に居る吸血鬼の固有結界の名は、“都喰らい”と言うの」
「其れで、“都喰らい”が使われたらどうなります。名前からして冬木のマナやオドは根こそぎ食べられるわね」
「一寸、冬木のマナとオドを根こそぎって冗談じゃないわ」
「今、私たちは別件も抱えているのよ。“アカシャの蛇”って知っている?」
「“アカシャの蛇”。第七司祭が対応に当たっている死徒の名ですね」
「遠坂。“アカシャの蛇”って何?」
 此処で遠坂がキレた。
「衛宮くん!! 彼方って言う奴は……」
 遠坂は、怒っている。
「衛宮くん!! 話が終わるまで、そこで正座していなさい!!」
「話は、たって聞くものじゃ……」
「返事は!?」
「は、はいっ!!」
 遠坂に命じられて正座をする士郎。
 之から二時間も正座をする事になった衛宮士郎であった。





 ケロちゃんにおまかせ
「こにゃにゃちわ〜ケロちゃんにおまかせの時間が来たで」
「イキナリ始まった聖杯戦争。今回、遠坂の小娘はランサーを召喚したんか。言う事、聞きそうに無かったもんな前回のサーヴァント。ランサーにしといて正解や」
「其れにしても、あの兄ちゃんの無知っぷりには呆れるわな。遠坂の小娘が怒るのも当然やな」
 遠坂が怒るのも頷けるというケルベロス。
「真っ先に脱落するのは誰なのか!? 其れは、次回以降のお楽しみや」
「ワイの主、さくらのサーヴァントが誰なのかはまだひつや。その代わり召喚されたサーヴァントを紹介するからしっかり聞くんやで」

「先ず、無能な兄ちゃんのサーヴァントはセイバーや。何や、まだ正式な英霊じゃないらしいな」
「んで、遠坂の小娘はアーチャや。コイツも前回から残ってた奴や」
「アインツベルンのガキのサーヴァントはバーサーカーや。ギリシャの英雄らしいわ」
「ワイの主と同じ名前の小娘のサーヴァントはがライダーや。コイツも前回の聖杯戦争から現界し続けとるらしいで」
「まだ登場しとらんがギルガメッシュにランサー、キャスターにアサシンも出るらしいで。ギルガメッシュとランサーのマスターは、言わんでも分かるやろう」
「おっと、もう終いの時間や。次回からは聖杯戦争が本格化するからしっかりついてくるんやで。ほな!!」



いきなり始まった聖杯戦争に混沌を名乗る死徒。
美姫 「色んな事態が起こりすぎて凛も右往左往ね」
それにしても、死徒が居る状態で聖杯戦争なんて出来るんだろうか。
美姫 「どうなるのかしらね」
それじゃあ、今回はこの辺で。
美姫 「また次回を待っていますね」
ではでは。



美姫 「……あと、あとがきでちょっと不思議に思ったんだけれど」
ああ。凛のサーヴァントはアーチャで良いんですよね?
遠坂の小娘はランサーって言っているけれど。
美姫 「もしかして、二体召喚したとか」
どうなんだろう。次回に分かるかな?
それじゃあ、本当にこの辺で。



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