第二十四話「ロア粛清作戦開始!!」






 
 遠坂邸
 ネオ・カオスを倒した翌日の朝、目覚まし代わりの電話が鳴った。
「何よ……」
 眠い目を擦ってベットから起きる遠坂。
「はい。もしもし」
『ワシじゃ。ネオ・カオスの処理ご苦労じゃったな』
 電話の声を聞いて目が覚めた遠坂。
「だ、大師父!!」
『“クロウの後嗣”と真祖の力を借りて何とか倒せたようだな』
「あんな化け物が私の土地に入り込むなんて聞いてませんよ」
『もう一人は、如何した!? 殺されたか?』
 ルヴィアの事を聞くゼルレッチ。
「ルヴィアのヤツは吸血鬼に受けたダメージが大きくまだ意識が戻りません」
『そうか……意識が戻り次第、サーヴァントを連れ三咲町に行き“アカシャの蛇”を倒せ!!』
 凛にゼルレッチの指令が下る。
『“クロウの後嗣”の力、骨身に沁みたか?』
「嫌と言うほど沁みました」
『骨身に沁みたのならワシの指令を片付けロンドンに戻って来い!! お前たちへの指令はまだ山ほどある』
「山ほどって、私たちは何時休めばいいのですか?」
『お前たちがワシの指令を片付けるまで無いの……早く片付けないとどんどん増えていくぞ』
 ゼルレッチの指令は、今も増え続けているようだ。
『無駄話している暇があったら三咲町へ行かぬか!!』
「はいっ!!」


 大道寺邸
『今日も三咲町でバラバラ死体が発見されました』
「バカシエルたら、役立たずなんだから」
『尚、バラバラの遺体は鋭利な刃物で斬られていたとの事です』
 テレビは猟奇殺人事件を続報を伝えている。
「アルクちゃん、力は? ネオ・カオスとの闘いで消耗した?」
 アテネがアルクェイドに聞いた。
「一寸、力を使わされたかな」
「今夜からロアの手下を狩り始めても大丈夫?」
「問題ないわ」
「じゃあ決定ね。其れで戦力を二つに分けようと思っているんだけど」
 アテネが提案する。
「第一部隊がアルクちゃんとさっちんとアルシャードで第二部隊が私とアンゼロットでいい?」
「問題なしっ!!」
 問題なしと言うアルクェイド。
「今夜からロアの手下を減らして引きずり出すでいいわね」



 三咲高校
「今日、遠野は休みか?」
 担任が出席をとる。
「乾、知らないか?」
「昨日、家で貧血でぶっ倒れて起き上がれないそうです」
「そうか……」
(遠野のヤツが目を覚まさないなんて言えるわけねえ。まして死に掛けていると)



 私立星條高校
「お前ら、休校中に素行が乱れたりしていないだろな?」
 素行調査をする担任。
「友枝町での事件は、形を潜めたが隣町の三咲町では事件が続いている。今朝も若者が殺されたらしい」
 担任は、ホームルームで事件の事を話している。
「隣町の三咲高校の女子生徒が数日前から家出しているそうだ。お前たちは見ていないか?」
 星條高校にも連絡が来たようだ。
 先日は、星條高校の生徒が殺されているのだ。



 遠坂邸
「ルヴィア、起きろ!!」
 だが、ルヴィアは起きない。
「ルヴィア起きんかぁ!!」
 そう言ってルヴィアの顔を殴った。 
 殴られたルヴィアは、やっとの事で目を覚ました。
「此処は何処ですの? 其れに吸血鬼は……」
「此処は、私の家よ」
 其れを聞いたルヴィアは激昂する。
 其れに自分の格好を見た。
「私の服は如何しました?」
「あんたの服は、血でベトベトだったから捨てたわ」
「遠坂、何を言い争っているんだ!?」
 タイミングが悪い事に其処へ士郎がやって来た。
 ルヴィアの姿を見て士郎は固まった。
 ルヴィアは一糸纏わぬ裸だったのだ。
「シェ、シェロ……」
 ルヴィアも固まった。
 我に返ったルヴィアは毛布で裸体を隠した。
「如何してシェロが此処に居ますの!?」
「士郎の家は、吸血鬼を倒す時に吹き飛ばしちゃったの」
「電話を借りますわよ」
「あんた其の格好で電話の所まで行く気?」
「私の服を持って来てもらわないと身動きが取れません」
「ルヴィア、携帯持って居なかった?」 
「そうでしたわ。携帯……」
「あんたの携帯、使い物にならないわよ。あんたの携帯は原型をとどめない位に粉々になっていたわよ」
「遠坂凛、電話を借りますわよ」
 ルヴィアは、遠坂から電話を借りて連絡をとった。
 連絡を受けてやってきたのは彼女の執事のオーギュストだ。

 オーギュストが持ってきた服を着るルヴィア。
「オーギュスト!!」 
「何でしょうか!? お嬢様」
「今すぐにシェロの家の再建を手配して」
「畏まりました。当家御用達の業者で宜しいでしょうか?」
「えぇ、直ぐに進めて頂戴」
「では、その様に手配します」
 そう言ってもろもろの手配をするオーギュスト。



 三咲高校地下
「志貴は、死んだも同じ。邪魔な真祖は、冬木とか言う地に吸血鬼退治に行っている」
 ロアは、三咲高校の地下に居る。
「其のお陰で力を蓄える事が出来た。エレイシアに削られてもお釣りが帰ってきたからな」
 ロアは、アルクェイド達が留守の間に力を蓄えていたようだ。
「流石のエレイシアも自分の足元に城があるとは思ってもおるまい」
 ロアの城は三咲高校の地下の空洞にあるのだ。
「あの魔力は何が何でも手に入れてやる。あの巨大な魔力が手に入れば、姫君ですら瞬殺出来る」
 ロアは、策謀を巡らせる。
「危険を冒して出て行く必要も無いな……向こうからやって来るのを待っていれば良いだけだ」



 三咲町
「早くしないと志貴が持たないから一刻も早くロアを引きずり出すわよ」
「遠野君、危ないんですか?」
「ロアに生命力の大半を奪われていたからね。持って後二日ぐらいだったわね」
「急がないと……」
「私たちが死者を狩りつくすとロアは、さくらちゃんを狙うと思うわ」
「さくらちゃんが襲われちゃうんですか?」
「さっちんも実感したでしょ。あの巨大な魔力……」
「はい」
「さくらちゃんに手を出したらどうなるかロアも判るでしょうね」
「確かアルトルージュさんでしたっけ」
「ロアの死者を狩りつくしたらエリオルに電話をして送ってもらおうかな? 本当は嫌なんだけど」
「アルトルージュさんと仲が悪いんですか?」
「さっちん、話は後。ロアの死者を狩るわよ」
「はいっ!!」
 ロアの死者を狩り始めるアルクェイドとさつきとアルシャード。

 三咲町の別の場所でもアテネとアンゼロットが死者を狩っている。
「目障りですわ!!」
 爪で死者を引き裂いていく。
 死者を見つけては処刑という事を繰り返す。
 ロアの死者を狩っていくと変化が現れた。
 街中から死者の姿が消えたのだ。
「死者の姿が急に消えましたわ」
「何処かに集まっているのかな?」
 アテネとアンゼロットは、死者を探して街中を歩く。


 アルクェイド達のほうも死者を大方狩りつくしていた。
「もう居ないんですか?」
「目に入った死者はね……」
「今日は、終わりじゃな」
「まだ、力が有り余っているんですけど」
「さくらちゃんの膨大な魔力が私たちにも流れ込んでいたからね」
「今宵は撤収してアルトルージュを呼び寄せるとしよう」
 今宵の死者狩りは終了となった。


 三咲高校地下
「死者達が複数個所で同時に消された」
 ロアは、異変に気づいた。
「まさか、真祖とエレイシアに……」
 自らに流れてくるエネルギーが急に途絶えたのだ。
「我が盟友との連絡もない」
 ネロは既に倒されている。


 大道寺邸
 ロアの死者を狩っていた真祖たちが帰ってきた。
 既に時計は深夜の2時を回っている。
 知世を起こさないように家の中に入る。
 入るのは予め知世が鍵を開けておいてくれた場所だ。
「電話如何する? エリオルの電話番号知っているの知世ちゃんとさくらちゃんだけよ」
「気持ちよく寝ている知世ちゃんを起こしちゃうのもかわいそうよね」
「構いませんわよ」
 寝ている筈の知世の声に驚く真祖たち。
「起こしちゃった?」
「エリオル君の所に電話をすれば宜しいのですね」
「ごめんね」
 知世は、携帯電話を操作してエリオルに電話をかけた。
「エリオルくんですか? アテネさんが用があるそうで……」
「エリオル、明日の夕方にこっちにアルトを寄越してくれない!?」
『其方の夕刻に送ればいいのですね』
「ロアがさくらちゃんにチョッカイを出したといったら引き受けてくれる筈だから」
『アルトルージュさんには私から言って行って貰いましょう』
「頼んだよ」
 伝言を終えるとアテネは、知世に携帯電話を返した。
 知世は、電源ボタンを押して通話を切った。
 ロアの包囲網は狭まってく。
「明日は、ロアの城に乗り込んで処刑してやるんだから」
「アルクちゃん、もう日にちが変わっているんだけど」
「まだお日様が昇っていないんだからいいの」
 相変わらずお天気なアルクェイド。





 アルトルージュの城
「姫様、城に侵入者です」
 リィゾが姫に報告した。
「リィゾ。此の気配、懐かしいと思わぬか?」
「確かに懐かしい気配ですな」
「わらわの城に入ってきたのはクロウ・リードじゃ」
「ですが、クロウ・リードはずいぶん昔に死んだ筈では」
「だが、此の気配は如何説明する!?」
 プライミッツが警戒する。
 足音はだんだん近づいてくる。
 玉座の近くにまで来ると挨拶をした。
「お久しぶりですね、アルトルージュ・ブリュンスタッド!!」
「やはり、そなたであったか」
「プライミッツ、もう警戒せずともよい。あの者は、わらわの客だ」
 警戒していたプライミッツが大人しくなる。
「わらわに何のようだ!?」
「私が此処へ来た理由も判りませんか?」
「理由じゃと」
「はい」
「その方がわらわの城に来た理由は何だ!!」
「ロアが、さくらさんを吸血のターゲット選びました」
 アルトルージュから一瞬黒いオーラが発せられた。
「リィゾ、わらわは日本へ行かねばならぬようじゃ」
「姫様、我らもお供しましょう」
「リィゾとフィナがわらわについて来たら誰が城を守るのじゃ」
 城の警備を手薄にする事は出来ないのだ。 
「わらわの護衛はプライミッツだけでよい。彼の地にはアルクェイドも居るからな」
「姫様が留守と知られたら一気に攻め込まれてしまいますぞ」
「其れなら心配いりませんよ。ロアとの決着がつくまで私は此処に居るつもりですよ」
「其の程度力で護衛勤まるの?」
 フィナがエリオルをからかう。
「やめておけフィナ!! エリオルは、元世界最強の魔術師クロウ・リードの生まれ変わりじゃ」
「じゃあ、其の実力を見せてくれへん?」
「無駄じゃ。クロウ・リードの性格を思い返してみるんじゃ」 
 クロウ・リードの性格を知り尽くしているアルトルージュ。
 リィゾとフィナも知っている筈である。
「リィゾ、フィナ!! 留守を頼んだぞ」
「お任せを姫様!!」
「エリオル!! 何時でも転送させてよいぞ」
「日本が夕方になる頃に送ってくれと頼まれてたのですが……」
「わらわは、早くても構わんぞ」
「では、送ってもいいですね」
「プライミッツ、行くぞ」
 エリオルは、転送の呪文を唱え始める。
 呪文の詠唱が終わるとアルトルージュとプライミッツの姿が消えた。
「姫様、怒っていなかったか?」
「さくらちゃんの事を姫様気にているからな」
「之でアカシャの蛇も消滅したな」




 大道寺邸
 日本は朝を迎えたばかりだ。 
 吸血鬼は、日の入り込まない暗い所に身を隠している時刻だ。
 そんな時刻にアルトルージュとプライミッツは大道寺低の庭に立っていた。
 いや、転送されてきたといったほうが正しい。
「流石エリオル。仕事速いわね」
 聞こえた声に振り返るアルトルージュ。
「そんな所にっ立って居ないで家の中に入ったら? 少しは日光から身を守れるよ」
「わらわを誰と思っている!? ブリュンスタッドの名を名乗る事を許された身だぞ!!」
「一応、私もブリュンスタッドの名を名乗る吸血鬼よ」
「そなたの場合は便宜上名乗っているだけであろう」
「そんな所で話さなくても家の中で話せばいいですのに」
 アンゼロットまで出てくる。
「アルトルージュさんいらしたのですか?」
 言い争う声を聞いて知世が出てきた。
「今、エリオルに送ってもらったばかりじゃ」
「プライミッツも元気そうですわね」
「ワオン!!」
「ガイアの化け物がヒトに懐いているのはじめて見た」
「プライミッツが触れる事を許す人間は此の世に数人しかおらぬ」
 知世は数少ない一人のようだ。
 其の証に知世の足に擦り寄っている。
「其れより知世ちゃん学校は?」
「アルトルージュさんは我が家でくつろいでいてくださいな」
 そう言うと知世は家の中に消えていった。


 大道寺邸の中に移動して話を続ける。
「さくらは、無事なんじゃろうな!?」
「さくらちゃんはピンピンしているわよ」
「さくらが襲われたというのは嘘だったのか?」
「あんたに来てもらう為の口実よ」
「わらわを呼び寄せたのは其れだけではないのであろう」
「アルクちゃんの孫に当たる娘が居るのよ。アルトちゃんは、其の娘の叔母って事になっちゃうわね」
「アルクェイドのヤツ、また血を吸ったのか?」
「アルクちゃんは血を吸っていないわよ。其の娘の血を吸ったのはロアよ」
「ロアに血を吸われたっという者は何処じゃ。死徒ならば日光も克服してはおるまい」
「さっちんのこと? さっちんなら既に日光も克服しているわよっと言うか、さっちんは真祖よ」
「馬鹿な事を言うではない!! 死徒が真祖に成れるわけが無いであろう……」
 アルトルージュは、一つの秘術の事を思い出した。
「“真祖創生”を使ったのだな」
「正解!!」
「だが“真祖創生”は、クロウ・リードが死んでいる今使える者はいないはず」
「クロウ・リードがいない今、あんな術を使えるのは一人しかいないじゃん」
「そうか、“クロウの後嗣”であるさくらが行ったのか」
「其れより相談なんだけど……」
「相談!?」
「さっちんの名前の事よ。さっちんにブリュンスタッドの名を名乗らせるかと言う相談」
「直接あわせるがよい」
「さっちん、こっちに来て」
 さつきを呼ぶアテネ。
「何ですか? アテネさん」
 呼ばれたさつきの姿を見てアルトルージュは目を疑った。
 さつきから本来なら臭うはずの死臭がしなかったからだ。
「そなた、血を吸われて蘇るのにどれくらいの時間がかかった?」
「数分から数十分だったと思います」
「ありえん。蛇に吸われて、其の時間で復活できる筈がない」
 アルトルージュもありえない出来事に驚く。
「其れが事実なら原初の死徒二十七祖に匹敵する逸材じゃぞ」
「でも、さっちんの体は真祖に作り変えられちゃったから」
「真祖と言うのなら教育はしているのだろうな?」
「教育はしよるよ。短時間じゃ教えきれないから、別の場所で」
「時の流れから切り離された空間を用意して教育をしたというところか」
「正解!!」
「其れの存在を知られたら欲しがる者が群がってくるぞ」
「此の世であって此の世でない場所に保管してあるから奪われる事は無いと思うけど」
「ならば、わらわも教育してやろう」
 アルトルージュも教育すと言う。
「ロアさんとの血戦が終わるまで待ってくれませんか?」
「わらわの教育を受けないとブリュンスタッドの性は名乗らせぬぞ!!」
 今すぐにでも教育を始めようとするアルトルージュ。
「今すぐですか?」
「不満でもあるのか!? ロアとの血戦の時に名乗りたいと思わぬか?」
「それは、名乗りたいですけど……」
「では、決まりじゃ」
「さくらちゃんがいない時でも使えるように教えてもらっといてよかった」
 アテネは、異空間への扉を開いた。
 アテネとアルトルージュ、プライミッツ、さつきが異空間へ消えていった。
 さつきに待っているアルトルージュの教育とはどんな物なのか?


 ケロちゃんにおまかせ
「こにゃにゃちわ〜ケロちゃんにお任せのコーナーの時間やで!!」
「幻の月姫2のヒロイン、アルトルージュ・ブリュンスタッドが登場や」
「なんや、怒っているみたいやが……」
「当然でしょう」
「スッピー、来てたんか?」
「来て悪いですか」
「悪いわい!!」
「そろそろ、司会を変える必要がありそうですね」
「司会を変えるやと!?」
「貴方は司会のくせにゲストも呼んでいないではありませんか」
 ケルベロスは、此のコーナー開始されてから一度もゲストを呼んでいない。
「呼ぶ機会が無かっただけや」
「貴方が司会だと誰もゲストを呼ばないので私が呼んでおきました」
「誰を呼んだんや?」
「後数話で退場するヒトです」
「俺って後数話で消えるのか?」
「スッピー、何でロアなんか呼んだんや!!」
「MBAAでも影の薄いヒトですから」
「ぬいぐるみ共、そんなにも俺は影が薄いのか」
「はい。薄すぎます」
「デバンティーノ!!」
 ロアは、雷の魔術を使った。
「そろそろ終いの時間や」
「おい!! まだ俺、ほとんど話していないぞ!!」
「其れは不遇キャラだったと諦めてください」
「次回も楽しみにしててな。ほなっ!!」
「ヒトの話を最後間で聞け!!」
「出番が終わったのなら早く帰ってください」
 ケルベロスとスピネルのダブル炎に焼かれたロア。


今回はロア退治の準備という感じ。
美姫 「ゆっくりと確実に包囲網が整いつつあるわね」
だな。凛も三咲に行くように言われていたみたいだし。
美姫 「さて、どうなるかしらね」
ではでは。



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る


inserted by FC2 system