第二十八話「ロアの最後」






 
「あぎゃぁぁぁぁぁぁっ」
 ロアの身体はまだ焼け続くている。
「炎で焼かれ続ける気分はどう?」
 ロアは身体が炭に変わっていく。
「一寸焼きすぎたかな? 消火しないと……」
 火だるまのロアを消火しようとするさつき。
「水系で消すと私たちが感電させられるからなにで消そうか?」
 消火方法を考えるさつき。
 その間もロアは焼け続ける。
「う〜ん。氷付けにしてあげるのもいいかな」
 氷付けにしようというさつき。
 そしてそれを無詠唱で実行してしまった。
 ロアを猛吹雪が襲い氷付けにしていく。
「ぐぉぉぉぉおぉぉおぉぉぉっ」
 凍り付いていく為、身体が動かない。
「身体が凍り付いてゆく!!」
 見る見る間にロアは氷付けにされてゆき完全に氷に閉じ込められた。
 ロアの氷付けの完成である。
 カチンコチンに凍った氷の中にロアはいる。
「氷付けにされた気分はどう?」
 氷付けのロアに聞くさつき。
 だがロアから返ってくる言葉はない。
 ロアは氷付けにされている。
「ロア、さっちゃんに氷付けにされた気分はどう?」
 だが、ロアから返ってくる言葉はない。
「そんなに気持ちいいのならそのままでいなさい」
 氷付けにされたロアは『後で再生できないくらいバラバラにしてやる』と思っていた。
「ロアさん。今『後で生成できないくらいバラバラにしてやる』と思ったでしょ?」 
 さくらがロアの考えている事を言った。
「ロア、氷から出たら私たちをバラバラにするつもりだったんだ」
 アルクェイドたちの目つきが変わる。
 氷の中で何か言っているが聞こえない。
「でも、この氷は簡単には溶かせないわよ。クロウ・リードの魔法効果付加されているみたいだから」
 ロアでもクロウ・リードの魔法は簡単に破れないと言うアルクェイド。
 その身体で体験した者は、そう多くないはずである。
「ロア、言いたいことがあるのなら今のうちに言っておいてね。志貴に殺されたら何も言えなくなるから」
「ロアさんにもう一つ良いものを見せてあげるね」
 そう言ってさつきは今の杖を小さくしてポケットにしまった。
 そして別の何かを取り出す。
「ゴールデンバウム!!」
 さつきが言うと刀のミニチュアが何かを言って日本刀に変わった。
「さっちんソレ……」
 さつきにアルクェイドが聞く。
「之ですか? 之はさくらちゃんから貰ったものなんです。異世界の品らしいんです」
 それは、デバイスという代物だ。
「それでどんな事ができるの?」 
「じゃあ、一寸見せてあげるね」
 そう言って刀を構えるさつき。
 構えた刀に銃弾のようなものを入れる。
≪Explosion.≫ 
 刀が喋る声に驚くアルクェイド。
「刀が喋った」
「ロアを斬るよ」
≪Jawohl.≫
 氷付けのロアを一思いに斬るさつき。
 その切り口は恐ろしいほどのものだ。
 氷ごとロアの左腕を斬りおとしてている。
「次は何処を斬りおとしてあげようか?」
 次は何処を斬りおとして欲しいかと聞くさつき。
 斬りおとした箇所は使い魔の混沌に処理させる。
「次は、右足を斬ってあげるね」
 さつきにどんどん身体を斬りおとされていくロア。
 ロアの身体はどんどん小さく刻まれてゆく。
「回復させるのなら今のうちだよ? 志貴くんが来たら回復できなくなるよ」
 ロアに残された時間は少ない。
「俺に肉体を修復させる時間を与えたことを後悔するがいい」
「まだわからないの? わたしがその気になったら彼方の肉体を転生寸前まで吹き飛ばすぐらい簡単だよ」
 ロアの身体を吹き飛ばすのは簡単というさつき。
 何処まで化け物に進化すれば気が済むのか?
 炎に焼かれた身体とさつきに斬りおとされた部分を修復するロア。
「許さんぞ小娘!!」
「でも、もう遊びはお終い」
 遊びは終わりというさつき。
「今まで散々遊んでおいてイキナリ終わりだぁ!? ふざけんな!!」
「だって、直ぐ其処まで志貴くんが来たから……」
 直ぐ其処まで志貴が来ていると言うさつき。
「早く来い志貴!! 今度こそ完全に息の根を止めてやる」
 志貴の息の根を止めるというロア。
「そろそろかかな?」
 タイミングを計るさつき。
 校門に人影が見えるのを待つ。
「じゃあ、ロアさん。志貴くんに殺されてね」
 さつきが手をロアにかざす。
 ロアにかざした手から魔力が噴出してロアを校門付近まで吹き飛ばした。

「あの小娘に遊ばれるとは……」
 ロアは地面を這いつくばって動く。
「おのれ、身体が思うように動かん」
「ロア、何処へ行こうといのですか?」
 ロアに掛けられる声。
「エレイシア!! 何故貴様が此処に……」
「真祖に成った弓塚さんを甘く見て痛めつけられましたか?」
「町の人どもを襲って失った力を回復させねば」
「彼方を町には行かせません!!」
「第七聖典も持たずに来るとは愚かな」
「いえ。貴方を殺すのに第七聖典は必要ありません。遠野くんがいますから」
「二人まとめて殺してやる」
 シエルと志貴を殺すというロア。
「志貴、何故生きている? 俺は、オマエの死の線を斬ったんだぞ」
「お前と俺が見ているものは違う。俺が生きているのがその証拠だ!!」
 見ているものが違うという志貴。
「お前が見ているものは死ではない」
「もう一度、殺してやるよ」
「本当の死って言う奴を教えてやるよ、吸血鬼」
 そう言って志貴はメガネを外しロアを見る。
 ポケットから取り出したナイフでロアに見える死の点を突いた。
「身体が、身体が崩れていく!!」
「之が死というものだ!!」
 ロアの身体が灰に変わっていく。
 灰は風で何処かへ飛んでいった。
 ミハエル・ロア・バルダムヨォンは17回に及ぶ転生に幕を閉じた。
「遠野くん、ロアに奪われていた生命力は戻ってきましたか?」
 生命力が返ってきたかと聞くシエル。
「前より身体が少しだけ楽になった気がします」
「それは、ロアに奪われていた生命力が戻っていた証拠ですよ」
「そうですか?」
「そうですよ。それに会いに行かないのですか?」
「今日はいい。日にちを変えて会います」
 そう言って帰っていく志貴。
「さて、私も一旦ロアの消滅を報告しに戻りますか」
 ロアの消滅を報告しに戻るというシエル。
「それにしても弓塚さんまた強くなっちゃいましたね。私は、不死じゃなくなっちゃいましたし、困りましたね」
 シエルは、ロアの消滅で不死じゃなくなった。


「ロアさん、消えたのかな?」
 校門付近まで殴り飛ばしたさつきが聞く。
「志貴が来ていたのならもう居ないでしょうね。それに、ロアの気配が感じられないから」
「アルクちゃん、ロアに奪われていた力は戻ってきた?」
「私の奪われていた力が戻ってきたみたい」
 アルクェイドには力が戻ってきたようだ。
「わたしたちも力が戻ってきたし」
 アテネ達も奪われた力や生命力が戻ってきていた。
「ロア退治も済んだし戻ってやすもうや!!」
 早くやすみたいというケルベロス。
「んで、明日はパーティーや」
 何故か涎を垂らすケルベロス。



 そして三咲町の別の場所では……
「死ね! 遠坂凛」
「死ぬのはあんたよルヴィア!!」
 凛とルヴィアは、まだバトッていた。
 此処まで派手に暴れて何故警察が出動しないのか謎である。
「いい加減にくたばりなさいよ」
「ソレは此方の台詞ですわ」
 その時、ルヴィアの携帯がなる。
「はい。もしもし……」
『オマエ等は、ロアの退治に行かないで何をしている?』
 電話の主はゼルレッチだ。
「それは、遠坂凛のせいで……」
『オマエ達が派手に喧嘩している間にロアは倒されたぞ』
「今、なんって……」
『だから、ロアは、もう倒されたと言っておるのだ』
 二人が喧嘩をしている間にロアは倒されたようだ。
「いったい誰が倒したのですか?」
『喧嘩をしていたお前達に知る権利はない』
 当然の結果である。
 戦闘に参加していないのだから知る権利はなくて当然だ。
『とりあえずお前ら、倫敦に戻って来い!! タップリ絞ってやる』
 ガタガタ震えだす凛とルヴィア。
「大師父!!」
『理由は倫敦で聞いてやる。早く戻ってこんか馬鹿共!!』
 倫敦に強制召喚される凛とルヴィア。
 二人の運命は如何に?
 

 ロアを倒して凱旋するアルクェイドたち。
 戦士たちは暫しの休息をとった。
 翌日は盛大に『ロア消滅記念パーティ』と題打って大いに盛り上がった。
 ケルベロスはと言うとアンゼロットと激しい争奪戦を繰り広げた。
 その結果は……。
「なんでや!? なんでワイだけ没収なんや」
 なぜか泣くケルベロス。
「それは、ケロちゃんが一番ご存知のはずでは?」
「知世まで……」
「自業自得ですわ」
「そんなぁ〜」
 落ち込むケルベロス。
「そろそろ、わらわは帰る」
 帰るというアルトルージュ。
「リッゾとフィナに任せた城が心配じゃ」
「黒の姫さん、きいつけてな」
「こんかい、助けてもらった対価は用意しておく。今度、わらわの城に遊びに来るが良い。歓迎するぞ」
「飛行機のお時間は大丈夫なのですか?」
「心配ない。全てゼルレッチが手配しておる」
「プライミッツさんは如何するのですか?」
「プライミッツか……」
「プライミッツさん、出国の検疫大丈夫なんですか?」
「それなら、さくらに頼んで城に送ってもらった」
「そうなんですか」
 既にプライミッツは城に帰っているらしい。
「もう少しゆっくりしていかれても宜しいんですよ」
 引き止める知世。
「では、空港まで送って差し上げましょう」
 車で送ると言う知世。



 N空港
「あんたのせいで召還を受けたじゃない」
 空港でも喧嘩を繰り広げる凛とルヴィア。
「騒がしいぞ!!」
 凛とルヴィアに声をかけるアルトルージュ。
 アルトルージュの姿を見て固まる。
「倫敦までわらわと空の旅を満喫してもらうぞ」
 凛とルヴィアは倫敦まで地獄のフライトを味わう羽目になった。



 月姫篇 完



 ケロちゃんにおまかせ
「こにゃにゃちわ〜ケロちゃんにおまかせのコーナーの時間やで」 
「前回エスケープしたスピネルです」
「前回、何所へ行っていたんや?」
「ちょっとした所要です」
「なら、スッピー!! 姫さんの相手してな」
「何時まで待たせるき!?」
 待ちきれないアルクェイドがやってきた。
「アルクェイドさん、ロアが消滅したわけですが気分はどうですか?」
「どうかって? もう、最高の気分よ」
「ロアが消滅した今、今後は如何されるのですか?」
「そんなの決まっているじゃない。毎日、志貴と遊ぶの」
「遊ぶのは勝手ですが、さつきさんの教育はしなくていいのですか?」
「いいの、いいの。アテネがやってくれるから」
「ヤハリそうですか、志貴と言う人と遊びたいから丸投げと言うわけですか」
「さっちんはもう真祖なんだから時間を気にする必要ないんだし……」
「仮にも自分の血を分けた孫なんでしょ。自分が教育を受けていないから押しつけるのですか?」
「マトモな教育を受けていないからどう教えたらいいかわからなくて……」
「分からなければ、分からないと素直に言えばいいのに」
 何時の間にかアテネまで話しに加わっている。
「アルクちゃんもさっちゃんと一緒に教育を受けてもらうわ」
「そろそろ、終いの時間や!!」
「もう、お終い?」
「残念ながらその様です」
「もっと話した〜い」
「貴女の態度がよければレギュラーコーナーをもらえるかもしれません」
「えっ 私がレギュラーコーナーに……?」
「次から本編は倫敦篇に突入や!!」
「それでは、この辺りで……」
「ほな!!」



ロアも完全に倒されたな。
美姫 「結局、凛たちの参戦はなかったわね」
確かに。まさか、喧嘩しているとは。
美姫 「その事で大目玉だったけれどね」
それじゃあ、今回はこの辺で。



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