第96話「タタリの夜再び!!」






 紅魔館……。
 霊夢と魔理沙は、雑用として扱き使われていた。
「何かぶっ飛ばしたいぜ」
 ストレスが溜まっているようだ。
「ぶっ飛ばせる物、落ちていないかな?」
 そう、都合よく落ちている筈もない。
 逆にある物が降ってきた。
 そして……。

 グヮーン!!

 魔理沙の頭にそう、アレが直撃した。
「痛った!! 何すんだよ、霊夢」
「私は、何もしていないわよ」
「じゃあ、その足元に落ちているのは何だよ」
 涙目の魔理沙。
「それで、私を殴ったんだろ?」
 霊夢を疑う。
 魔理沙の頭にはタンコブができている。
 そんな魔理沙の頭上にそれは姿を現す。
 今度は、霊夢の頭上にも……。

 そして……。

 グヮーン!!
 ゴヮーン!!

 タライが直撃した。
 二人の足元には、頭に直撃したタライが落ちている。
 3つも……。
 しかも銀のタライである。
 だが、降ってきたタライは3つではなかった。



 グヮーン!!
 ゴヮーン!!
 ボヮーン!!
 ゴン!!


 何個もタライが降ってきて二人を直撃し続ける。
 既にタンコブは、何段にも積み重なっている。
 振り続けたタライによって白目を剥いて気絶した。



「こよみ!! タライ以外の物を召喚できないのですか!!」
 弓子が言う。
「出来ないものは、出来ないんだよ」
「言い訳は、宜しくてよ」
 こよみに剣のコードを放ち続ける弓子。
「ひゃう」
 悲鳴を上げなら防ぐこよみ。
 いや、タライに変換し続ける。
 そのタライが霊夢と魔理沙に降り続いたのである。



 そして霊夢と魔理沙は……。
「霊夢、魔理沙。それを如何するの?」
 タライの海で気絶している霊夢と魔理沙に言う。
 だが、白目を剥いている為、返事は帰ってこない。
「霊夢、魔理沙、何時まで寝ているつもり!?」
 殺人メイドがナイフを投擲する。
 切れ味が良いのか、タライを切り裂く。
 まるで飴のように……。
 コードで召喚されたタライを……。

「魔理沙、霊夢!? 何時まで寝ているつもり?」
 
「は? もう、朝か?」
「仕事をほったらかしで昼寝とは言い御身分ね。私は、死ぬほど忙しいと言うのに……」
 咲夜は、魔理沙にナイフを投擲する。
 魔理沙は、タライでナイフを防ぐ。
 ナイフは、タライに突き刺さる。
「それ、本当にナイフか!?」
「唯のナイフよ」
「唯のナイフなわけないぜ!!」
「其れより、そのタライ、片づけておいてね」
 咲夜は、大量のタライの処分を命じた。
 その数、数百個。
 処分も大変だ。
 重量もある。
 だが、二人は知らない。
 時間が来れば消えるという事を……。

 捨てずに、一か所に集める。
 タライだけで山が出来る。
 積み重ねるだけで……。
 魔理沙は、適当に積み上げていく。
 積み上げられたタライは、不安定だ。
 いつ崩れるかわからない。



 そして、霊夢は……。
「これ売ったら幾らになるかしら?」
 眼がお金になっていた。
 タライを売ってお金に変えるつもりのようだ。
 だが、数が数の上、時間が経てば消えるのだ。
 お金に換えることは出来ない。
 それ以前に紅魔館から出ることが出来ない。
 殺人メイドが時間を止めて監視しているからである。
「其れ、売るのか? 私は、運ぶの嫌だぜ」
 運ぶのを拒否する魔理沙。


 そして、タタリ魔理沙は……。
「今日も暴れるぜ」
 タタリ魔理沙は、今日も暴れるようだ。
 そう言って、暴れ始める。
 無差別に偽恋符『マスタースパーク』を撃つ。
 再びタタリ魔理沙とタタリ霊夢の凶行が繰り広げられる。
「力がみなぎっているぜ」
 偽の紅白巫女も暴れる。
 だが、それは自分達の存在を教えることを意味する。



 幻想郷のある場所では、劇を開演しようとしている影があった。
「私の端末は、劇を始めたようだ」
 貴族風の装束の男。
「流石に此処までは真祖も来れまい」
 この男、安心しきっている。
 幻想郷に真祖であるすずかが来ている事を知らない。
「夜まで、まだ時間がある。開演の準備をするとしよう」
 シナリオを書き始める。
「劇と言うからには、悲劇でなくてはならない。主演は、私としてヒロインは、どうしたものか……」
 自分が主演を張るようだ。
「ヒロインが居ないな……。ヒロインには、悲劇が似合う」
 何が何でも悲劇のシナリオにこだわる。
「血まみれのヒロインってのもありだな」
 自称、脚本家兼演出家兼主演俳優だ。
 そして、今回の異変の犯人だ。


 紅魔館……。
 こよみが召喚したタライは姿を消していた。
「魔理沙、私のタライどこへやったのよ」
 守銭奴の霊夢。
「私は、知らないぜ」
 知らないと言う魔理沙。
「此処には、私と魔理沙しか居なかったのよ」
 魔理沙を犯人と決め付ける霊夢。
「やっと。消えてくれた」
 こよみが言う。
「あのタライ、あんたが出したんでしょ。もう一回出しなさい!!」
 某、紅い悪魔と性格が似ている。



 その当の本人たちは……。
 ミッドで強制労働をさせられていた。
 凶悪犯のアジトに捨て駒扱いで投入された。
 その殲滅戦でも悪魔っぷりを発揮した。
 そして、始末書を書かされていた。
 強制動労の為、功はない。
 逆に失点は、そのまま失点である。
「レジアスの野郎にガンドをお見舞いしてやりたいわ」
 レジアスで鬱憤を晴らそうと言う凛。
「そうですわね」
 ルヴィアも憂さを晴らしたいようだ。
「そんな時間は、卿等にはないぞ!!」
「あんた誰よ」
「ラインハルト・フォン・ローエングラム」
「フォンってことは貴族ですわね」
「貴族ではない。皇帝だ!!」
「今の時代に皇帝なんかいるわけないでしょうが!!」
 吼える凛。
「所で、私たちに何の用ですの?」
 ラインハルトに聞くルヴィア。
「余の部隊で働くがよい。始めに言っておくが卿等に拒否権はない。これは命令だ!!」
 拒否権のない命令だ。
「それでどういう部隊ですの?」
「特務部隊『ローエングラム』だ」
 ラインハルトは、僅かな期間で部隊を創ったようだ。
 凜たちは、存在を知らない。
「余の部隊に来れば、武勲をたてる機会も増えるぞ」
 今の凛達には、武勲をあげる機会などない。
 全て横取りされているからだ。
 武勲をあげても彼女たちの功績になることはない。
「ここに居ても面白味はありませんわね」
 地上は、面白くないと言うルヴィア。
「ならば、早速任務に就いてもらうぞ」
 すぐさま、任務を与えるラインハルト。



 ミッド某所……。
「教授!! スカリエッティって人から通信が……」
「スカリエッティからだと!!」
「はい」
「変わろう……」
『教授、元気そうだね』
「ドクターも……」
『最近、活躍が無いようだね』
「ホームズだけではない。金髪の孺子も動き出した」
『皇帝を自称しているようだが良いのかね?』
「いいわけあるか!! 皇帝を名乗っていいのは、このモリアーティだけだ」
『ならば、皇帝に相応しい仕事をしてほしいですね』
「あの金髪の孺子の部下を爆弾で吹っ飛ばしたが、生き返りやがる」
『教授。その話、詳しく聞かせてくれないかね? 実に興味深い話だ』
「良くは分からんが、不死身の化け物みたいだ」
『不死の化け物か……』
 スカリエッティは、笑いだす。
『教授、面白い話をありがとう……。そっちでも捕えることに成功したら私のラボに送ってくれたまえ』
「わかった」
『では、ごきげんよう。教授』



 スカリエッティのラボ。
「ドクター、面白い情報を得られましたね」
「あぁ。面白い情報だ。もし検体が手に入れば不死の戦闘機人も可能になる」
 新しい研究テーマが見つかって嬉しいようだ。
「不死の研究……素晴らしいテーマだ」
「其れには、サンプルが必要ですね」
「血液でも手に入れば良いが……」
 スカリエッティは、吸血鬼をサンプルとして手に入れようとしていた。
「先ずは、吸血鬼についての情報収集だ!! ウーノ、吸血鬼が居る世界はあったかね?」
「いいえ。確認されていません」
「そうか、何としても早く欲しいのだが……」



 幻想郷……。
「まだまだ、暴れるぜ」
 タタリ魔理沙は、暴れている。
「それに、新しいメンバーも加わったしな」
 タタリなのはもメンバーに加わっていた。
 あれだけ暴れれば当然である。
 なのはの噂は、幻想郷中に広まっていた。
 『白い悪魔』として……。
 そう。
 『白い悪魔』である。
「そうだ。紅魔館を破壊しに行こうぜ」
 タタリなのはを加えたタタリ三人は、紅魔館を目指した。
 幻想郷の住人が生む出したタタリなのはは凶悪だ。
 『白い悪魔』の噂は、幻想郷に広まっている。
 観客を巻き込んだ悪魔の所業を見れば当然だ。
「此処から全力全壊の砲撃を撃つよ」
 タタリなのはは、此処から撃つようだ。
「全力全壊……」
 凶悪な魔力が放たれる。
 凶悪な魔力は、木々を吹き飛ばしながら突き進んでいく。
 そして……。
 轟音と共に遠くで土煙が巻き上がる。
 何かに命中したようだ。
「もっと大きいの逝きます」
 タタリなのはの眼は座っている。
 もっと撃つようだ。
「おい。本当に撃つのか?」
 タタリなのはは、本気で撃つつもりだ。
「マジかよ」
 再び凶悪な魔砲が放たれる。
 土煙を巻き上げながら突き進む。
 再び轟音が轟く。


 紅魔館……。
「咲夜!!」
「はい」
「何事!?」
「何者かが弾幕を撃ちこんできているようです」
「そう。霊夢と魔理沙にはお仕置きが足りなかったようね」
 霊夢と魔理沙にはお仕置きが足りなかったようだ。

 そして……。
「霊夢、魔理沙、お嬢様はお怒りよ」
 また、犯人にされる魔理沙と霊夢。
「私たちは、何もしていないぜ」
「じゃあ、その穴は何なのかしら?」
 壁に開いた穴は、二人の犯行を証明している。
「だから、私たちじゃないって」

 ゴン!!

 霊夢と魔理沙の頭にタライが落ちて来て命中した。
 この二人、タライに好かれているようだ。
「何するだよ、咲夜」
「私は、何もしていないわよ」
「天井からわざとタライを落としただろ?」
 タライを咲夜が落としたと疑う魔理沙。
「残念だけど、お話はここまでよ」
「そっちには、無くても、こっちにはあるぜ」
「貴女達に命令よ」
「命令なんかきかないぜ!!」
「すずか様から貴女達に命令よ。『疑いを晴らしたかったら、自分の偽者を自分の手で倒しなさい』って」
「私達の偽者を私達の手で倒せば良いんだな……」
「倒せればね」
 二人には、倒せないと言う咲夜。
「もし倒せたら、私の家を元に戻してもらうぜ!! お宝も」
 報酬を要求する魔理沙。
「マイナス分を上回ることが出来ればね……」
ってやるぜ」
 る気満々の魔理沙。


「ふぅ。こんな所もあったんだ」
「妾達は、タタリに引導を渡すために来ているのだぞ」
 アルトルージュとアルクェイドも幻想郷にやって来ていた。
「タタリ、異世界でも私たちの手を煩わせるだら……」
「それも此度で終わりだ」
「どういう事?」
「すずかが最終兵器を用意した」
「最終兵器!? 何? 何?」
 アルクェイドは聞く。
「タライ召喚師だ」
「なんか、わからないけど面白そう」
 相変わらずお天気なアルクェイド。
「先ずは、合流を急ごう……」
 すずか達と合流を図るようだ。
 吸血鬼の脚力で移動を開始する。
 距離があってないようなものだ。
 景色が飛ぶように流れていく。
「姉さん、千年後の紅い月を具現化するんでしょ?」
「妾がせずとも、すずかも具現化するだろう……」
「前回は、さっちんが具現化したんだっけ?」
「今回、さつきは別件で来ておらぬそうだ」
 さつきは、来ていないようだ。


 そして当のさつきは……。
「卿らに逃げ場はない。降伏せよ!! さもなくば『65年マフィア』筆頭を突入させる」
 ラインハルトの指揮で作戦に従事していた。
「何で、私だけ最前線に来なければならないの!?」
 涙目のさつきの姿があった。



 再び幻想郷……。
「もっと全力全壊……」
「あれが全力全壊じゃないのか?」
「ぜんぜん……」
 タタリなのはの全力全壊は、この程度じゃないらしい。
「之じゃ、あたしの偽恋符『マスタースパーク』が可愛く見えるぜ」
 タタリなのはの砲撃は、悪夢其の物だ。
 破壊と悪夢をばら撒くのだ。
 人々の不安は、タタリの力になる。
 タタリなのはによってタタリの力は増大していた
「配役は、3つに出来たがこれ以上は観客を待たせることは出来ない」
 タタリは言う。
「主役さんよ、これからどうするんだ?」
「当然、悲劇のヒロインに登場していただく」
 悲劇にこだわるタタリ。
「今回の悲劇のヒロインは、真祖に演じてもらおう」
 悲劇のヒロインは、真祖のようだ。
「手ごまが3つでは、さびしいな……」
 戦力が足りないようだ。
「あの者たちをタタリとして加えよう」
 タタリは、誰をタタリとして戦力に加えようとしているのか?
「あの娘たちは、最高のタタリになってくれるだろう」
 そう言って、最凶のタタリを呼び出す。
 タタリが呼び出したのは、フェイト、アリシア、はやて、アリサ、すずかである。
 正しく最悪のタタリだ。
「さぁ、タタリたちよ、悲劇の開幕と逝こう」
 此処に最悪のタタリの幕があがった。


 次回予告

 はやて「ついに幕が開けてしまったタタリ」
 なのは「幻想郷で暴れ始める私達の偽者たち」
 フェイト「そして、各所で繰りひろげられる戦闘……」
 アリサ「タタリによって傷ついていく幻想郷」
 アルクェイド「私たちも混ぜて」
 弓子「こよみ、タライにしちゃいなさい!!」



 はやて「次回『魔法少女リリカルなのは〜吸血姫が奏でる物語〜』第97話『最悪のタタリの夜開演』」



なのはのタタリが登場したか。
美姫 「遠慮なく打ちまくりね」
加えて、フェイトたちのタタリまで出てきたみたいだが。
美姫 「こんなのがぶつかり合ったら、無事ではすまない気もするけれど」
さて、どうなるのやら。
美姫 「それではこの辺で」
ではでは。



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