『An unexpected excuse』

〜夜明け前より瑠璃色な さやか編〜









「俺が、好きなのは………」

恭也は昼の月を見ながら、言う。
どこか、切なげに、そして、懐かしげに両方を合わせたような表情を浮かべていた。

「どうしても言わなきゃ駄目か?」

そんな表情を向けられたら、誰も何も言えなくなる。

(恭ちゃん・・・)

(恭也・・・)

(恭也さん・・・)

(お師匠・・・)

(師匠・・・)

(高町君・・・)

(高町先輩・・・)

何となく声を掛け辛い雰囲気を恭也が纏っていたので、FCたちは顔を見合わせると、
物音を立てないように注意しつつ、その場を去って行く。

そのFCたちの行動と、目の前の恭也の様子を見て、忍たちもまたその場を立ち去る。


その場に一人残される形となった恭也はその事にも気付かず、月をまだ見ていた。
どのぐらいそうしていたのだろうか、授業が始まり、学校内に独特の静けさが戻る。

それまで月を見ていた恭也は、ふと、背後に気配を感じて振り返る。
背後には、荷物であろうトランクを地面へと置き、こちらにとびっきりの笑顔を向けている女性が立っていた。
恭也はその光景を見て、既視感を感じ、思わず目の前の人物を注視する。
そんな恭也に向い、一歩だけ恭也へと近づく。

「お久しぶりですね。恭也くん」

「・・・・・・さやかさん?」

「どうしたの?私の顔を忘れてしまったの?」

冗談めかして言ったさやかの言葉に、恭也は力一杯首を振り、否定の意を示す。

「覚えてますよ。忘れる訳がないじゃないですか」

「そうですか?」

「ええ。久し振りです」

恭也はそう言うと、懐かしそうに嬉しそうにその女性を見る。

「さやかさん。突然どうしたんですか?」

「恭也くんを驚かそうと思って、あえて連絡しなかったの」

にこにこしながら、答えるさやかに近寄って、抱きしめる。
そして、恭也がそっとつぶやく。

「おかえり。さやか」

「ただいま。恭也」

「さやか。月にいるはずのあなたがどうしてここに?」

「しばらく、休みが取れたから、帰ってきたのよ」

「そうですか」

「それに恭也に報告が出来たから」

「報告?」

「実は私のお腹に新しい命が宿っていたの」

「・・・・・・・」

「恭也?」

「え?」

「私と恭也の・・・・」

さやかは顔を真っ赤にして言う。

「赤ちゃんか。それで、月から帰ってきたのか?」

「フィーナ様がね、恭也に報告の時間と休暇をくれたのよ」

「フィーナには感謝しないといけないな」

お腹を触りながら、さやかが言う。

「そうですね」

「さやかはどうしたい?俺はまだ、学生だし」

「恭也。私はもちろん、生みたいです。だけど、恭也に迷惑を掛けたくないから・・・・」

「一人で生んで一人で育てよう。さやかのことだ。こんな考えだったのだろう?」

「・・・・・・・。その通りです」

「そんな事言ってほしくない。俺とさやかの子供なんだから、俺たち二人で育てれば良いだろう」

「そうですね。私の考えが浅はかでした」

「報告は終わりですか?」

「まだ、あるの」

さやかの顔がかあさんやティオレさんが恭也に対していたずらを思いついたときのような顔になる。

それを見て、恭也は嫌な予感がよぎる。

「・・・・・・・・・」

「恭也。私と一緒に月留学しない?」

「・・・・・・・・・。ハイ?」

「フィーナ様からこれを預かっているの」

さやかは月のスフィア王国の書状を取り出して、恭也に渡しました。

「こっ、これは・・・・・」

さすがは一国の王女さま。
恭也の月留学の書類がすでに準備してあったのである。

恭也は絶句している。


さらに追い討ちをかけるように放送がなる。

『3年G組、高町恭也君、至急、校長室まで来てください。
 繰り返します、3年G組、高町恭也君…』

「!!!!!」

「あら、さすが、カレンね。仕事が早いわね」

「行ってくる。さやかはどうする?」

「私はカレンと一緒に来たのよ。もちろん、行きますよ」

恭也とさやかは校長室に向う。


校長室にはカレンさんと校長先生と担任が待っていた。

そして、校長から発せられた言葉。
さきほど、さやかに言われた事がそのままだった。
月留学のことだった。


「ここまでされて行かなかったら、フィーナ達に悪いか」

恭也が月留学に承諾する。



恭也の月留学が決まってから、一ヶ月が過ぎようとしていた。
そして、出発の日が来た。

ここは、満弦ヶ崎中央連絡港。

「かあさん、なのは。それにみんなも見送り、ありがとう。それじゃあ、俺は行くが…。
その、皆も気をつけるように……」

「お兄ちゃん。ううぅぅぅ。頑張ってね」

「なのは。ありがとう」

なのはを抱き上げるとほっぺにキスする。

「えへへっ。お兄ちゃん」

「もお、あんたの方が心配よ。大丈夫なの?」
「そうだよ恭也。ちゃんとご飯食べたりできるの?」

「母さん、フィアッセ。そう心配するな。さやかがいてくれるから大丈夫」

「師匠、こっちに帰ってくるときは連絡くださいね……」
「お師匠、お体には十分気をつけてください」

「昌、レン。確かに俺のことは心配かもしれんが、ケンカをしたりするなよ。」

「「っう。はい、気をつけます」」

「恭也、そのうち遊びに行くからよろしく」
「恭也様、お気をつけて……。」

「忍、それは無理だと思うが。それとノエル、ありがとう。」

「恭也さん、頑張ってください」

「神咲さん。ありがとう」

「高町」

「赤星」

握手して「お互い頑張ろう」とつぶやく。

「高町くん。頑張ってね。赤星君のことは、私に任せてね」

「藤代さん。ありがとう。赤星や忍のことは頼む」

そして、放送が入る。

「高町恭也様。月連絡船へお急ぎください」

「それじゃ、行ってくる。自分なりに頑張ってくるつもりだ」

そして、連絡船へと歩いていく。
皆がこちらに手を振り続けていたので軽くこちらからも手を振っておいた。

そして、連絡船は空に飛び立った。

高町家の住民や友人達はいつまでも空を見上げていた。



そして一年後・・・。

二人は結婚し・・・三人で幸せに暮らしていた。

ここは月のスフィア王国にある小さな家・・・。
居間のテーブルに並んで座るのは恭也とさやかとさやかの腕に抱かれている子供だ。

「恭也・・・愛してる・・・」
「さやか・・・俺も愛してる・・・」

その言葉は二人を繋ぐ言葉・・・。

三人の未来に・・・幸多からんことを・・・。







あとがき


・・・・・・・・・・・・・・・・。
小鈴「京梧?」
さやか編、終了。
小鈴「最初の間は何?」
あはは。意外に難産だったので疲れました。
小鈴「一回、書き直しているからだよ」
うむ。途中でおかしなことに気が付いたから
小鈴「最初はさやかが月概論の特別講師としてくるやつね」
うむ。
小鈴「それで書き直した結果がこれなわけね」
うっ。ヒドイ。
小鈴「また、口答えしたね。お仕置きだ」
今度は負けないぜ!!!!!
木刀を構える。

小鈴「ふっふっふっ。美姫さんに弟子入りしてきたから」
同じく木刀を構える。

法神流奥義 霞雪嶺!!!!
小鈴「離空紅流、鳳焔舞!」

ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。
小鈴「・・・・ふぅぅぅ。美姫師匠、勝ちましたよ」
京梧「ば、馬鹿な・・・。弓使いなのに・・・・グフッ」
小鈴「感想は掲示板に書いてね。じゃあ、またね」




美姫 「うむ、よくやった」
って、やったらまずいだろう!
美姫 「何で?」
いや、そこで素で聞いてくるところが怖いな、おい。
美姫 「紅流に敗北はないのよ!」
いや、力説されましても…。
美姫 「うーん、特別講師のパターンもちょっと面白そうよね」
って、いきなり話題を変えるなよ。
だが、確かにな。
美姫 「でも、これはこれで良いわね」
恭也、月に。ってか。
美姫 「ハッピーが一番よね」
まあな。京梧さん、ありがとうございました。
美姫 「ありがとね〜」



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