『ネギまちっく・ハート〜season of lovers〜』






          第一符『日常という平凡な日々@』




 始業のベルが鳴るまで後十分。いつものように麻帆良学園高等部に向かって多くの生徒が遅刻しないように大慌てで走っている。

そこまで急ぐのなら、もう少し早めに出ればいいのだが、そうはいかないのが高校生。これがお決まりというものである。

「もう!だからいつも早く行こうって言ってるんですよぉ!」

 その高校生の中で、銀髪で長い髪の少女、相坂さよがそう叫んだ。

「仕方ないじゃん!目覚まし時計ならなかったんだから!」

 その隣を走っていた茶髪の男性、鳳鼎が大きな声で返事をした。しかし、最後のほうの言葉はかすれてほとんど聞き取れない。

鼎はそもそも、運動をほとんどしないため、基礎体力というものが皆無に近い。いつもはすでに学校についている時間なのだが、

今日に限って目覚まし時計がならず、朝から走る羽目になったのだ。

「珍しいな、鼎がこんな時間に。」

 と、その二人の隣に全く息を切らせずに一人の男性、高町恭也が追いついてきた。

「目覚ましが・・・・ならなかった・・・・んだよ・・・・。」

 鼎は息も切れ切れに返事をしたが、一方の恭也はまだまだ余裕という表情だ。

「やれやれ。頭はいいが体力がない。体力はあるが頭が悪い。お前ら、本当に両極端だな。」

 と、恭也の体に隠れていた金髪の少女、エヴァがため息をついて一歩先に出た。しかし、こちらも息を切らせていないし、

足は歩いているようにしか見えない。もちろん、地面から少し浮いているが。

「しかた・・・・ない・・・・じゃん・・・・か・・・・」

 鼎は反論しようとしたがどうやら限界が近いようだ。いや、限界だったらしい。言葉も途中で地面に倒れこんでしまった。

「うぇっ!?鼎くん!?」

 さよはさすがに驚いて急ブレーキをかけて鼎を起こそうと立ち止まったが、そこは遅刻すまいと大急ぎで走っている生徒の川の中。

急に立ち止まったさよは後ろから来ていた生徒たちにぶつかった。当然それだけで済むわけがない。

ぶつかったさよも、地面に倒れこんだ、正確には倒れかけた鼎もまるでパチンコ玉が弾かれるかのようにしばらくの間はじかれ続けた。

「まったく、体力不足もあそこまで行くとある意味芸術だな。」

 エヴァは誰に言うでもなくそういった。

「マスターは浮いてますから。実際に走ればわかるかと・・・。」

 その隣にいた茶々丸がエヴァにそういった。確かに、エヴァも自分で走っていない。

(エヴァは浮いてるし、茶々丸にしたって人間じゃないしなぁ・・・。)

 恭也は走りながらそう思っていた。まともに走っているのは恭也だけだ。

ちなみに、恭也はさよと鼎がはじかれていることを気にかけていない。助けに行けば巻き込まれるのも間に見えているし、

恭也とぶつかった場合、相手のほうが大怪我をしかねない。残酷だが、致し方ない。





 麻帆良学園高等部2−A。鼎たちの所属するクラスだ。そして担任はネギ。若干十三歳の子供先生だ。

ネギはエヴァやさよたちが中学のころから先生をしている。

「皆さん、おはよーございまーす。」

 朝のホームルーム。ネギが元気よく教室に入ってきた。生徒もめいめいにネギに挨拶をする。かなり明るいクラスのようだ。

ネギも、教師になってすでに三年と少し。教師という仕事にも慣れてきて、いまや立派な教師だ。

「えっと、今日の連絡はありませんね・・・・って、あれ?相坂さんと、鳳くんは・・・・?」

 ネギは教壇に立って連絡事項がないといった後に、鼎とさよがいないことに気づいた。

「相坂と鼎は今朝方遅刻の波に飲まれてましたから、まだ学校についてないとおもいますよ。」

 運悪く席替えで前の席になってしまった恭也が朝の出来事を詳しく伝えた。

伝えたといっても、生徒の波に飲まれたということでしかないが。

「そうですか・・・。うーん。めずらしいですね、いつも遅刻しないのに。」

 ネギがそういった瞬間だった。その瞬間、教室のドアがすごい勢いで開かれた。生徒もさすがに驚いてその先を見る。

しかし、その先には誰もいない。

「え・・・と・・・・」

 さすがのネギも少し動揺している。と、そのドアの一番近くの席にいたのどかが恐る恐る廊下を覗き込む。

そこには、ドアを開けたものの、そこで力尽きて廊下でへばっている鼎と、生徒の川の中でパチンコ玉の様に弾かれたせいで髪が乱れ、

息を切らせて壁にもたれかかっているさよの姿があった。

「お、鳳くん、さよちゃん!」

 のどかはあわてて廊下に出ると鼎を起こそうとしたが、びくともしない。全身の力の抜けた人間は、さすがに重い。

ネギもあわてて手伝ったが、びくともしない。

「おい、恭也。手伝ってやれ。」

 エヴァがその光景を見てやれやれといわんばかりに恭也に言った。恭也もだな。と相槌を打って廊下にでる。

「おい、鼎。しっかりしろ。」

 恭也は鼎を軽々と持ち上げながら頬をたたいて何とか起こそうとするが、起きる気配がない。

「『へんじがない。ただのしかばねのようだ。』ってね。大丈夫?さよちゃん?」

 いつの間にかさよの元にいた和美がそういった。ある意味、的を得ているかもしれない。

「だ、大丈夫・・・じゃないかもです・・・・。」

 どうやらさよも限界のようだ。まあ、あれほどの人の波、巻き込まれて無事でいられるわけはないだろう。

まして、体力のほとんどない二人ならなおさらだ。結局、鼎は恭也が担ぎ上げたときに何とか目を覚ましたものの、

恭也の手を借りなければ歩くこともままならず、恭也に自分の席まで連れて行ってもらう羽目になった。

さよはというと、和美が手を貸してさよの席まで連れていった。





「でも、災難だったね。さよちゃん。」

 ホームルームも終わり、一時間目が始まるまでの休み時間、美砂がさよの髪の毛を梳きながら言った。

「あうう。鼎くんが起きてくれないからです・・・・。」

 さよはあきれた顔で鼎の方を見た。鼎はだから悪かったってといってさっきから平謝りである。

二人は毎朝一緒に登校するのだが、鼎の目覚まし時計がならず、さよは鼎の部屋の前で30分ほど待ちぼうけをくっていたのだ。

鼎が起きて出てきたころには時すでに遅し。急いでもぎりぎり間に合うかどうかというところまで時間が迫っていた。

「さよちゃん、先に行けばよかったのに。寝坊した鼎くんなんかほっといてさ。」

 さよので頬杖をついていた桜子が一言言った。桜子の言葉にはさよちゃんを待たせるなんてねぇ・・・という鼎への非難も混じっている。

「でも、それじゃあ、鼎くんがかわいそうだし・・・。」

 さよは少し頬を赤らめていった。それを見た鼎もさすがに、何も言えずそっぽを向いてしまう。

二人が付き合っていることは周知の事実であるが、さすがにこそばゆいらしい。

「まったく、ごちそうさま。」

 円は青いねえというような身振りでそういった。まあ、なかなかに青春だ。



「はぁ・・・・。見てるこっちがあつぐるしいな。」

 その光景を後ろの席から見ていたエヴァがいった。

「別にいいじゃないか。人の恋路は千差万別だ。それに、かくいうエヴァも、今日は部屋の中まで入ってきたじゃないか。」

 そう、今日は恭也も寝坊したのだ。恭也は目覚まし時計をセットしていない。ただ、寝坊したというだけだ。

恭也にしては非常に珍しい。エヴァは恭也がしばらくして出てこなかったため、心配になったのか、恭也の部屋まで来たのだ。

しかもかなりあわてて。

「あ、あれは・・・・その・・・・い、いつもの時間になっても出てこないから・・・・べ、別に心配したわけじゃないぞ!!」

 エヴァは顔を真っ赤にして反論したが、

「マスターはあの時かなり取り乱していましたから。さすがの私も驚きました。」

 茶々丸がフォローにならないフォローを入れてしまった。

「んなっ・・・!?ち、ちがっ・・・!!こ、このボケロボッ・・・・!!!」

 エヴァはまさしく頭から湯気が出るほど真っ赤になって茶々丸の後頭部にねじまきを差し込むと、全力で巻き始めた。

「マ、マスター、そ、そんなにまいては・・・・」

 茶々丸は無抵抗ながら、あうあうとあわてていた。恭也はそんな二人を見ながらうす笑みを浮かべている。

「こ、こいつの言ってることは信じるな!!!別におまえなんか・・・・!!」

「おまえなんか?」

 勢いに任せているエヴァに対し、恭也は落ち着いている。恭也はどうやら、ためしに地雷をおいたようだ。

エヴァは気づいたもののそれを思いっきり踏みつけた。

「お・・・・おまえなんか・・・・・おまえなんか・・・・・」

 エヴァは限界を超えて真っ赤になり、ついにはねじを持ったまま固まってしまった。

恭也もさすがにやりすぎたかと思い、はたかれることも覚悟したが、以外にもエヴァははたかなかった。

「し、心配したんだからな・・・・・。」

 どうやら限界らしい。これ以上限界はないというぐらいに真っ赤になってうつむいてしまった。

恭也は少し悪いことをしたなと思って、エヴァの頭をなでながら、ありがとう。と一言、エヴァに感謝の言葉を述べた。

エヴァもバカ、といったっきり、しばらくそのままでいた。

「あのさぁ・・・・さっきから、クラスの注目ひとりじめって気づいてる?」

 その状況をはたからずっと見ていたクラスメイトを代表して鼎が二人に話しかけた。

恭也とエヴァは一瞬で固まり、顔色も湯気がでらんばかりにあかくなった。

「なっ・・・!!お、お前らいつからっ!!!」

 エヴァが大声を出したのに対し、和美が軽い口調ではじめっからと笑顔で答えた。

ちなみに手にはちゃっかりムービー録画可能なデジカメを持っている。つまるところ今までの一切がその中に収められているということだ。

「なんだかんだいって、エヴァちゃんも乙女だねー♪」

「恭也くん、かっこいー♪」

 そんな風に鳴滝姉妹が二人を茶化す。クラスメイトもいろいろと話をしている。大方、青春だーとか言う話題なのだろう。

そんな風景の中、エヴァだけうつむいたまま肩を震わせていた。鼎とさよはそろそろやばいかもと察し、その輪から少し距離をとった。

「き、貴様らぁ!!!!!赦さん!!!絶対に赦さん!!!!」

 ・・・・・エヴァがその後暴れたのはいうまでもない。当然、みんなからは照れ隠しだと思われたのだが。





 時間がたつのは早いもので、放課後。六時間目が終わるのが3時30分。これから後は部活に足を運ぶものもいれば、

教室に残って友達と話をするものもいる。当然、家に帰る生徒も多い。しかし、朝のラッシュを見てわかるように、

帰りにもラッシュがある。基本的に帰り混雑するのは授業が終わってすぐと、授業が終わってから二時間後くらい、

ちょうど部活が終わり始めるころだ。

「鼎くん、今日はどうする?直接帰る?」

 授業が終わってすぐ、さよはかなえの席まで来て尋ねた。

「そうだね・・・・。別に帰ってもやることないし・・・・翠屋にでも行こうか。」

 鼎はそういうと鞄を手に席を立った。恭也たちはすでに帰っているが、恭也は翠屋でバイトをしている。

正確にはバイトというよりも母親の手伝いなのだが。

「あれ?ネギ先生、今日は早いんですね。」

 鼎たちが下駄箱につくとそこにはネギ先生の姿があった。ネギもいまや正職員。早上がりは珍しい。

ネギは鼎とさよに気づくと、今から帰りですかと聞いてきた。それにさよがそうですと答える。

「ネギ先生はのどかと待ち合わせですか?」

 さよは当たり前のことを聞くようにそういった。しかし、ネギはかなりあわてている。

「そ、そそそ、そんなことないですよ!べ、別にのどかさんを待ってるわけじゃ・・・・」

 そのネギの言葉に鼎がすぐに反応する。

「待ってるんでしょ?」

 ネギはついに観念したのか、はいと顔を赤らめていった。

「で、でも、み、みんなには言わないでくださいよ。」

 ネギは生徒にばれていないと思っているものの、実はネギとのどかの関係、2−Aでは気づいていないものはいない。

一人、恭也だけが最近まで知らなかったという事実もあるが、これはまた別の話。

「わかってますよ。皆知って・・・・むぐぅ!!」

 鼎は特に考えることもなく皆知っていることを言おうとしたが、その言葉を最後まで言い切らないうちに

さよに口を手でふさがれてしまった。ネギとのどかの二人は温かく見守ろうというのが2−Aの方針だからである。

「そ、それじゃあ、ネギ先生、また明日。失礼しますー!!」

 さよはこれ以上子の場にいたら、鼎が何を言い出すかわからないと鼎の手を引っ張って、挨拶もそこそこに足早にその場を去った。

「???」

 ひとり残されたネギだけが、不思議そうにその二人の後姿を見送っていた。





「もう・・・。二人のことは気づいてないことにするって言ってるのに、なんで皆知ってるっていおうとするかなぁ。」

 校門を出たぐらいでさよがかなえに言った。鼎はそういえばそうだったねと悪びれることもなく軽く笑っていった。

「でも、別に教師と教え子が付き合ったっていいと思うんだけどさ。」

 鼎はぽつりとそんなことを言った。別にすきあってるんだからいいんじゃないか?ということである。

「それはそうだけど、世の中そんなにうまくはいかないんです。」

 さよがそういって引っ張るためにつないでいた手を離そうとしたが、その手を鼎が握り返してきた。

さよは少し顔を赤らめて横目で鼎のほうを見る。鼎は恥ずかしいのか一瞬だけ目を合わせてそっぽを向いてしまった。

「べ、別にいいだろ?」

 鼎は照れ隠しに何か言わなければと口をついた言葉はまさしく照れていますとありったけに表現していた。

さよはくすくす笑いながら、

「うん。」

 といってその手をいったん解いて逆の手でその手を握ると解いた手を鼎の手に絡めた。

「なら、これもありですよね。」

 さよは悪戯っぽく笑って鼎によりかかった。鼎はああ。と、顔を紅らめて嫌がることも当然なく、

そのまま、翠屋に向かって歩いていった。微笑ましい恋人同士の下校風景である。





「いらっしゃいませ・・・・なんだ、鳳と相坂か。」

 翠屋に入った鼎とさよを出迎えたのは以外にもエヴァだった。鼎とさよはさすがに驚いていた。

まさか、あのエヴァが、闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)と呼ばれ、吸血鬼の真祖(ハイデイライト・ウォーカー)のあのエヴァが、

バイトをしているのだ。

「なんだ、その目は。私だってしたくてしてるわけじゃないぞ。」

 じゃあ、なんのために?と鼎が間髪いれずに尋ねる。まあ、鼎にもさよにも大方の予想はついている。

「そ、それは・・・・。お、お金がなくてだな・・・・。」

 エヴァがどもって答えるが、当然、そんな理由でここにいるわけがない。エヴァ自身、こんなところでバイトをせずとも、

麻帆良学園の学園長から、仕事の依頼があったりしている。それさえこなしていれば少なくともお金に困るわけがない。

鼎はそれを知っている手前、わざと微笑んで沈黙を守っている。さよもバイトの理由にあらかた気がついてはいるものの、鼎同様、

わざと沈黙を守っている。さすがのエヴァも、その沈黙に耐えかねた。

「・・・・・ああ、そうだよ!!!恭也と一緒にいたいからだよ!!!わるかったな!!!」

 客がいなかったからいいものの、エヴァはかなりお冠のようだ。と、奥のほうから恭也が出てきた。

「どうしたんだ、エヴァ。そんなに大声を出して。」

 事情の側からない恭也が尋ねるが、エヴァは返事をしない。

「な、なんでもない!!きゃ、客が来ただけだ!!」

 エヴァはそういうと奥のほうに引っ込んでしまった。かなり恥ずかしいようだ。顔が真っ赤である。

「全く。素直じゃないねぇ・・・。」

 鼎はエヴァの後姿を見てしみじみとつぶやいた。

「でも、それもエヴァちゃんのかわいさのひとつですね。」

 さよもそういってエヴァの後姿を見ている。

「そうだな。」

 恭也もその後姿をじっと見て言った。

「おやおや。のろけてるねぇ。ま、いいや。いつものやつ頂戴。」

 鼎はそういうとさよとカウンター、二人の定席にすわった。

「お前たちも人のことは言えないじゃないか。」

 恭也はそういって水を二人の前に置くと、奥に入っていった。まさしく、鼎とさよも、かなりのろけている。

それに負けないぐらいに恭也とエヴァにのろけてはいるが。

「あら、鼎くんとさよちゃん、いらっしゃい。」

 恭也と入れ替わりに出てきたのは恭也の母、桃子だった。二人とも桃子に挨拶をすると特に話すこともなく、与太話を延々と続けていた。

結局二人は一時間ほど翠屋で話をして帰り路についた。





「今日も何もなかったなかった。平和で良いねぇ。」

 鼎はさよと歩きながらいつもつぶやいている言葉を今日もまたつぶやいた。

「それ、いっつもいってますね。何か起こってほしいとか?」

 さよもいつものことと、お決まりの言葉で返す。鼎は握っているさよの手を少し強く握ると、足を止めてさよを抱き寄せた。

「ぜんぜん。何にもおきなくって良いよ。こうやってさよもそばにいるんだし。」

 鼎はそういってさよの目をじっと見た。

(こういうときは全く照れないんですね・・・・。でも、照れることもないんですけど。)

 さよはいつものように思いながら鼎と唇を重ねた。二人の別れるいつもの場所で。いつもと同じように。

二人は名残惜しそうに分かれるとそのまま二手に分かれて歩き始めた。さよは学園の女子寮に、鼎は自分のマンションに。





「おい、恭也。何をもたもたしてる。いつまで待たせる気だ。」

 翠屋の手伝いも終わり、先に着替えを済ましたエヴァがなかなか出てこない恭也をせかす。

恭也もすぐに行くといってエヴァの元に駆け足でやってきた。恭也は制服ではなく、動きやすい私服に戻っている。

「今日も稽古か?」

 エヴァがあきれたようにため息をつきながら恭也を見上げる。恭也はエヴァの頭に手を置いて髪をくしゃくしゃとなでた。

エヴァは髪が乱れるといっているものの、まんざらではないようだ。

「まあな。こういうのは日々の積み重ねが大切だ。」

 恭也はそういってエヴァの手をとって歩き始めた。エヴァはいつものように照れることもなく、自然に恭也の手を握り返す。

「全く、お前は、私の家に稽古をしに来てるようにしか思えんな。」

 程なくしてエヴァの家に着くと、茶々丸がすでに夕食を用意して待ったいた。恭也とエヴァはその夕食を毎日のように一緒に食べている。

夕食後、エヴァがそんなことを言い出した。

「まあ、ここにくれば、時間を気にせずエヴァの別荘で稽古ができるからな。」

 恭也はお茶をすすりながらそう答えた。ちなみに、エヴァの別荘というのは、

一時間を一日に引き伸ばすことのできる魔法空間のことで、恭也はここで一時間、いつも自主的に稽古している。

「それと、何よりエヴァがいるし。側にいてくれるのといないのじゃあ全く違うからな。

確かに、稽古もここに来る目的のひとつだけど、一番の目的はエヴァと一緒にいることだから。」

 恭也はそういうとエヴァの後ろに立つとエヴァを軽く抱きしめた。

「まったく・・・・。お前は恥ずかしくないのか?」

 エヴァは顔を明らめて恭也のほうを向くことなく恭也に尋ねる。

「恥ずかしいとは思わないな。俺はエヴァへの気持ちをそのまま言葉にしているだけだから。」

 しかし、恭也は簡単にそういってのけた。自分の気持ちをはっきり相手に伝える。恭也のいいところであるが、

エヴァにすれば一言一言、かなり恥ずかしいこともさらりと言われてしまうから、気が気ではない。いい加減慣れようとしているのだが、

なかなかそうはいかないようだ。

「そ、そうか・・・・。ま、まあ、いいんだけどな・・・・。」

 恭也の言葉に照れているエヴァもまんざらではないようだ。エヴァも恭也のぬくもりをじかに感じ、安心しているように見える。

「さて、それじゃあ、そろそろ稽古に行ってくる。」

 恭也はそういうとエヴァの横に立つとエヴァに口付けた。エヴァも、これには慣れているのか、照れることもなく、

それどころか、恭也の首に手を回した。

「まあ、がんばってくるといい。私もしばらくしたら行こう。」

 エヴァはキスをした恭也の後姿にそう話しかけた。恭也は待ってると振り向いて返事をすると

いつものように二本の小太刀を持って魔法空間に向かった。

「さて、それじゃあ、私も準備するか。茶々丸、後片付け、頼んだぞ。」

 エヴァは片づけを茶々丸に任せ、服を着替えに寝室に向かった。本来なら、この一時間後、二人は魔法空間から戻ってくるわけだが、

大体戻ってくるのは二時間ぐらいあとである。





 翌朝。いつもの登校時間に、鼎、さよ、恭也、エヴァ、茶々丸の五人が学校に向かっていた。

別に一緒に行こうと決めているわけではないが、鼎とさよ、恭也とエヴァと茶々丸の家から学校までの距離、

そこまでにかかる時間がうまい具合に一緒なのだ。そのため大体いつも、同じ場所で鉢合わせる。

「さて、今日はどんなどたばたが起きるかなぁ。」

 鼎は伸びをしながらそういった。昨日は自分の遅刻とエヴァの暴走と、朝からかなりどたばたしていたし、大体毎日、

何らかの面白いことが起きている。

「たまには、ゆっくりしたいという気持ちもあるけどな。」

 恭也は鼎のほうを見てつぶやいた。大体騒ぎを起こすのは鳴滝姉妹か報道部の朝倉和美だ。

「もう少し騒がずに一日を過ごせないものなのか?あいつらは。」

 エヴァも大きくため息をつきながら言った。しかし。

「あ、鳳くんに高町くん!エヴァちゃんたちもいるじゃない!!ちょうどよかった!!」

 と、そのとき鼎たちの背後から和美の声が、しかもかなり興奮気味の声だ。

「どうやら、そうも行かないみたいです・・・・。」

 さよも少しあきれ気味に足を止めて振り返る。さよ同様に足を止めた鼎も恭也もエヴァもやれやれと思いながらも、

少しの期待を持っているのも事実だ。





 そうして今日もあわただしい一日が幕を開けるのである。













あとがき



さて、新連載、『ネギまちっく・ハート』第一符をお届けしました。

(フィーネ)あおいねぇ。って言うか、結構エヴァがかわいいかも。

うん。実際エヴァって、結構独占欲強そうだからこんな感じになるかも。

(フィーラ)まあ、確かにそうね。でも、よく書き上げられたわね。食あたりでひどいことになってたじゃない。

ああ。さすがに死ぬかと思った。まあ、早く直ってくれてよかったよ。ほぼ夜通し吐いてたからなぁ・・・。

(フィーリア)ちょ・・・大丈夫・・・?

ああ。何とかな。ほぼ一日近く苦しんだが、死ぬこともなかったし。

(フィーネ)さて。次は何の話になるのかな?

次は当然バタバタ話だ。できれば、のどかとネギの話も書きたいんだが、それは日常という平凡な日々Aで。

(フィーラ)今回の話はあなたの高校生活の希望的観測が元ネタよね。

ああ。とはいえ、こんなこと、全くなかったわけだが。当たり前といえば当たり前だけど、今考えると寂しい高校生活だったな。

(フィーリア)まあ、現実と理想はかけ離れてるって。

そこのとこは割り切ってるつもりだけど、やっぱりあこがれるってもんだよ。

(フィーネ)じゃあ、そろそろ次回予告。

おう。次回『ネギまちっく・ハート』第二符『地図でぱにっく!!!』乞うご期待!!

(フィーネ&フィーラ&フィーリア)まったねぇ〜〜〜〜♪♪♪


いやー、エヴァが可愛い上に、恭也が以外にも大胆だな。
美姫 「これはとても面白いわよね〜」
うんうん。さて、次回はどんなドタバタが待っているのか。
美姫 「次回も楽しみにお待ちしてます」
ではでは。



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