「それで、これからどうするかだけど。」

 

遠坂がそう言って切り出す。藤ねえに電話した後、俺達は今後の事について話し合う事にした。

 

「そうね。とりあえずは現在の状況について確認しときましょうか。ただでさえ今回の聖杯には色々とイレギュラーが多いんだから。」

 

「ああ、わかった。」

 

遠坂に言われ、互いの情報を交換し、纏めると次のようになった。

 

 

 

セイバー       真名:アーサー    マスター:バゼットさん

ランサー       真名:クー・フーリン マスター:不明

アーチャー      真名:不明      マスター:遠坂 

バーサーカー     真名:ヘラクレス   マスター:イリヤ

ライダー(脱落)   真名:本郷      マスター:慎二

キャスター      真名:不明      マスター:葛木

アサシン(脱落)   真名:佐々木小次郎   マスター:未確認(ただし、キャスターに仕えていた模様)

真・アサシン(脱落) 真名:不明

ギルガメッシュ(脱落)

 

 

 

「まったく、どうなってるのかしら、サーヴァントが通常より2名も多いだなんて。いえ、多いのはサーヴァントだけじゃないか。聖杯もそうね。」

 

「聖杯?それって、確か桜が・・・。」

 

「ええ、そうよ。桜は聖杯に改造されていた。けど、聖杯の欠片を埋め込んで作られた贋作。そんないびつなものが本来の聖杯である筈はないわ。おそらくは他に本物の聖杯がある筈よ。」

 

俺は遠坂のその物言いが桜を物扱いしているようで思わず顔をしかめてしまうが、口には出さず疑問を問いかけてみた。

 

「本物の聖杯って、それもやっぱり桜と同じように“人”なのか?」

 

「ええ、断言はできないけど、その可能性は高いでしょうね。そして、聖杯である以上、必ず魔力を秘めている。つまりは魔術師って事。桜のように何らかの方法で魔力の放出を抑えている可能性もあるけど、素直に考えたらこの聖杯戦争のマスターの中にいる可能性が高いわ。」

 

「それって・・・・。」

 

一体誰なのかと問いかけようと俺に対し、それよりも早く遠坂は答えた。

 

「状況からして、該当者は一人ね。聖杯戦争は遠坂、間桐、アインツベルンの御三家が開いたもの、そして、私と桜を除くなら答えは一つしかないわ。」

 

「!! イリヤが聖杯って事か・・・・・。」

 

俺の言葉に遠坂が頷く。

 

「ええ、おそらくはね。だとすると、一度、彼女に会って話しをした方がいいかもね。少し休んだ後、行って見ましょう。」

 

「直ぐに会いに行かないのか?そういうのは少しでも早い方がいいと思うんだが。桜も早く目覚めさせてやりたいし。」

 

遠坂の言葉に疑問を挟んだ俺に対し、しかし、彼女は呆れた表情を返した。

 

「衛宮君、確かに急ぐに越したことは無いわ。けど、考えても見なさい。アーチャーはぼろぼろ、あなただってかなり疲れているように見えるわ。この状態で敵陣に乗り込むのは利巧じゃないわ。こっちに争う気が無かろうと、向こうにして見ればそうじゃないんだから。」

 

「あっ。」

 

その言葉に俺は気付かされる。

向こうには“あの”バーサーカーが居るのだし、他に何か罠が仕掛けてあるかもしれない。万全と言わないまでもある程度体勢を整えていく必要はあるだろう。

 

「わかったかしら?そういう事だから今は休むわよ。それじゃあ、アーチャー3時間位たったら起こしてね。」

 

「って、遠坂、何、寝ようとしてるんだよ!!」

 

「サーヴァントは目覚まし時計ではないのだがな。」

 

俺が納得の意を示したとたん、いきなり寝ようとする遠坂に俺とアーチャーがそれぞれ突っ込む。

それに対し、遠坂は何を言っているのかと馬鹿にした表情になると俺に指差して答えた。

 

「何、言ってる、休む事に関してはさっきあなたも納得したでしょ?」

 

「だからと言って、桜が大変な時に、のんきに寝てるなんて・・・・。」

 

「休む時はしっかり休む。別に起きていたって、どうにかなる訳じゃないんだから。そんな事をしたって唯の自己満足にしかならないわ。それよりもしっかりと力を蓄えて何とかすることが、桜を救う事につながるんじゃなくて?」

 

「むぐっ・・・。」

 

遠坂の言う事は完全に正論なので、押し黙る俺。そして遠坂は今度はアーチャーに向かって指を指す。

 

「それから、あなたはさっき、私を裏切った償いに尽くす事を決めたんじゃなかったかしら?」

 

「んっ、了解した、マスター。地獄に落ちろ。」

 

今度はアーチャーの奴が押し込められる。そして、遠坂は再び俺に向き合って言った。

 

「それじゃあ、士郎。今度こそ納得してもらった所で私は寝るわよ。」

 

「あ、ああ、わかったよ。って、士郎?」

 

俺は遠坂の言葉に受け応えしようとして、その呼び方が変わっている事に気付いた。

 

「あっ、まあ、一時かもしれないけど、一応同盟組んだ仲間だし、別にいいでしょ。」

 

「あ、ああ。別にいいけど。」

 

何か、遠坂、ごまかしたみたいだなと思いつつ、俺は頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「士郎、士郎ってば!!起きなさい!!」

 

俺は誰かに肩を揺らされ、眼を覚ます。すると、目の前には遠坂の顔があった。

 

「う、ううーん、遠坂?なんで、俺ん家にいるんだ?」

 

「寝ぼけてんじゃないわよ!!まったく、人には文句言おうとした癖に自分で熟睡するなんて。」

 

その言葉に俺は意識をはっきりさせる。俺は今、遠坂の家に居て、協力関係を結んでいるのだった。

 

「わ、悪い、遠坂。」

 

俺は謝罪する。

遠坂にはああ、いわれたものの寝る気にはなれず、ソファに腰掛けていたのだが、そのまま眠ってしまったらしい。

どうやら、自分でも気付かないぐらいに自分は疲れが溜まっていたようだ。

考えてみれば、昨日の夜から小次郎、キャスター、“ぬえ”、アーチャー、真・アサシン、“蛆”と短い時間に6戦もしているのだから当たり前の話である。

 

「未熟だな。衛宮士郎、もし、私がお前の寝首をかくつもりなら簡単にやれたぞ。」

 

「ぐっ、お前まだ、俺の事狙ってんのか!!そこまで恨まれる筋合いはないぞ!!」

 

アーチャーの嫌味に対し、叫んで返す。

言動からして、どうもこいつは俺、というか“正義の味方”というような生き方に強い嫌悪感を抱いているような気がする。だが、だからと言ってそれで命を狙われるなどお門違いもいいとこである。

 

「ちょ、ちょっと待って!!アーチャーが士郎を狙ったってどう言う事よ!?」

 

そこで、遠坂が叫んだ。

何故、今頃そんな事を・・・・・・あ、そうか、遠坂は俺とアーチャーが戦った事をしらないのか。おそらくはアーチャーの傷も遠坂が気絶している間にサーヴァントや“蛆”との戦いで受けたものと今まで思っていたのだろう。

 

「ああ、何か、知らないが襲ってきたぞ、こいつ。」

 

俺が遠坂に答えると彼女はアーチャーを睨みつけた。

 

「アーチャー、どういう事?何故、士郎を襲ったの?」

 

それに対し、アーチャーはすました顔で答える。

 

「ふむ、それについてはだな。私は衛宮士郎を世界にとって害悪な存在と判断したからだ。」

 

「害悪?」

 

アーチャーの言葉に遠坂は訝しげな顔をする。そしてそれは俺にとっても聞き捨てならない言葉だった。

 

「俺が害悪ってどう言う事だよ!?」

 

俺の怒声にもまったくアーチャーはまったく気にした様子を見せない。そして、答えた。

 

「生前、お前のような男は何人か会ったが、偏った正義感で動く奴や周りも自分自身も必ず不幸にする。そうなる前に殺してやった方が世界の為にもおまえ自身の為にも言いと思ってな。だが、お前は俺が知るものとは少し違うところが見られるようだからしばらくは見逃して置いてやる。お前が害悪かどうか、たっぷり見定めさせてもらうことにしよう。」

 

「・・・・って、事は、また、俺の命を狙ってくる事もあるかもしれないって事だな。」

 

「そう言う事だ。おまえもそれを、承知で見逃したのだろう? 最も、その割に私の前で熟睡するあたり、良し悪しを論ずる前に単なる馬鹿なのかもしれんがな。」

 

「ぐっ。」

 

流石にその点については反論できず押し黙る。

だが、そこで遠坂が割って入った。

 

「あー、もう、そんな言い争いで時間を浪費しないで頂戴。それから、アーチャー、私のサーヴァントで居る限り、そんな理由で士郎を襲う真似は許さないわ。いいわね。」

 

「わかった。例え、衛宮士郎がどれほどの愚か者であろうとも、君が命じぬ限り、聖杯戦争が君の勝利で終わるまでは手出しをせぬ事を誓おう。」

 

アーチャーがそう宣言する。

そして、イリヤの居場所に向かおうしたその時、ふと疑問に突き当たった。

 

「そういえば、遠坂、イリヤが何処にいるのかは知ってるのか?」

 

「当たり前でしょ。少し離れた郊外の森の中にアインツベルンの屋敷があるわ。確実とは言えないけど、昼の間なら高確率でそこにいるでしょうね。」

 

その言葉に俺は納得し、次の疑問を投げかける。

 

「それから、桜はどうするんだ? まさか、一人でこの屋敷に置いとく訳にはいかないだろう?」

 

「あっ。」

 

そこで、遠坂はしまったという顔をする。

それは多分、遠坂が桜の事をちゃんと考えていないという訳でなく、薄々気付いて着ていたが、多分彼女には少し抜けた所があるのだろう。

 

「そうね。桜は贋作とは言え、聖杯なんだから、あの蟲じじいが死んだとはいえ、襲われる可能性があるわ。となると、だれか、一人残すべきね。けど、一体誰に残ってもらおうかしら・・・・・。」

 

遠坂はしばらく考え込んだ後、答えた。

 

「アーチャーここに残って頂戴。」

 

遠坂はアーチャーを残す事に決めたようだ。

だが、そこで、アーチャーがまたもや口を挟んできた。

 

「私はかまわんが、君の方はそんな男と一緒で大丈夫かね?」

 

俺はその物言いにムカっと来て言い返す。

 

「そっちこそ、桜の事しっかり守れよ!!」

 

「無論だ、貴様に言われるまでも無い。」

 

やっぱり、こいつとは合わない。

だが、実力に関してはそれなりに信頼している。ここは奴に任せる他ないだろう。

 

「それじゃあ、行くわよ。アーチャー頼んだわ。」

 

「ああ。」

 

そこで、遠坂がまとめ、俺達はイリヤのところへと向かった。

 

 


(後書き)

少し投稿に間が空いてしまいました。それから最終回までは少し伸びそうです。しかし、20話までには終わると思います。後、少しですので、できればお付き合いよろしくお願いします。




最終回まで少し伸びたんだって。
美姫 「それは嬉しいお知らせね」
うん。最後がどうなるのか知りたいが、もっと読みたいという究極のじれんま!
美姫 「こればっかりはどうしようもないわよね」
うんうん。次回を楽しみに待つとしよう。
美姫 「そうね。次回も楽しみにしてますね」



頂きものの部屋へ戻る

SSのトップへ



          


inserted by FC2 system