忙しい

 

死ぬほど忙しい

 

これまで中学の頃からの文化祭も数えて実行委員なんてしたことが、ここまで忙しいとは知らなかった

 

委員会と各種の打ち合わせ、クラス間の連絡、文化祭時の委員ごとの役割決め等、目が回るほど忙しい

 

鈴音も慣れないことに手間取ってるようだが、楽しそうにやっている

 

問題は、実行委員はクラスの役割以外にやることがありすぎるので、クラスでやることは最低限程度・・・という風になっているはずなのだが

 

俺は何故かクラスのことも大量に手伝わさせられてたりしている

 

理由は言うまでもない

 

断ろうとすると(仕事を押し付けてくる)男子が怨念をこめた殺気を送ってくるし・・・

 

まぁ、委員で鈴音の一緒にいれるのは構わないんだが、正直疲れるな・・・

 

 

 

 

 

新式日常 第11話「文化祭前夜」

 

 

 

 

 

 

10月29日(木)

 

 

AM 8:00

 

 

通学路

 

 

 

 

 

私はいつもの分かれ道で正をいつものように待っている

 

これがこの頃の私の普通

 

別に待ち合わせをしてるわけじゃないけど、これが普通になっている

 

最近、私は少しでも正と一緒にいたいと思い、できるだけ一緒に行動している

 

でも、時々ふと不安になる

 

結果的に正に付きまとう感じになって、私は嫌われたりしないのかと思う

 

正がそんな人じゃないのは解っている

 

解っているけど、不安だった

 

それに正は私のことをどうゆうふうに―

 

「おーい、鈴音ー」

 

正だ

 

私は一旦考えていることを封印して、正に挨拶をする

 

「おはよう、正」

 

「ああ、おはよう」

 

そしていつもの様に学校に向けて二人で歩き出す

 

もう文化祭も明日に迫り、いよいよ学校中も慌ただしくなってきている

 

私と正も実行委員の名の下に、更に忙しくなってきた

 

正はクラスの出し物もかなり手伝わされてるみたいだけど・・・大丈夫かな?

 

「あ、そうだ。鈴音、明日は待っててくれなくていいから」

 

 

突然のことに心臓がどくり、と動く

 

そんな、まさか

 

「なんかクラスの出し物の製作が遅れてるらしくてな、今日は学校に泊りがけで作業するんだ」

 

ああなんだ、そうゆうことか

 

心の中で大きく安堵すると同時に、余りの早とちりに自分で苦笑する

 

そういえば、正のカバンがかなり大きめのものになっている

 

着替えとかが入ってるんだろう、と推測

 

「でも、そうゆうことで学校に残って良いの?いつもは追い出されるのに」

 

「なんか知らんが、文化祭の前日は学校に泊りがけで作業をして良いという不文律があるらしい」

 

「食事とかは?」

 

「まぁ、コンビニとかで適当に調達ってとこだろう、銭湯も学校の近くにあるのを使うし」

 

「ふーん、それって男子だけでやるの?女子ではそうゆうの聞かないけど」

 

「そりゃあ、女子はそうゆう泊りがけの作業が嫌いな奴が多いし、寝るといってもその辺に適当に雑魚寝とからしいから問題があるんじゃないか?」

 

まぁ、もっともな理由か

 

でも、ちょっと残念だな、と思った

 

 

 

 

 

 

 

昼休みが終わってしまった

 

もっとも、昼休みと言ってももう授業はなく、全時間が文化祭の準備となっているので昼休みになる前から食事をしていた人もいるけど

 

今日も実行委員の打ち合わせなどで時間が押して、お昼ご飯を食べるのが遅れてしまい、まだ食べていない

 

もう購買部は売り切れてると思うから、食堂かな・・・

 

「おい、鈴音」

 

そう思いながら食堂に向かおうとした時だった

 

こちらでも定番になりつつある、一緒に食事に行こうという誘いだと思った

 

だけど、その予想は良い意味で外れた

 

正は手に持ってる包みを振り返った私に見せて、ニヤリと笑う

 

「・・・お弁当?」

 

「御名答。もちろん鈴音の分もある」

 

「やったぁ!早く食べよう!」

 

私は飛び上がって喜ぶ

 

正のお弁当は本当においしいから嬉しい、それに私の分も作ってくれたと言う事実も嬉しい

 

そう考えると居ても立ってもいられなくなり、私は正の手を握って引っ張った

 

「お、おい!鈴音!」

 

「早く屋上に行こう!」

 

私は正が何か言ってるのを一切無視して、屋上に走って引っ張っていった

 

 

 

 

「・・・とりあえず、手を放せよ」

 

「え!?」

 

屋上に付いてから、ようやく私は正の手を握っていることに気付く

 

慌てて手を放す

 

しまった、またお弁当で暴走しちゃった・・・

 

恥ずかしい、正の顔を正視できない

 

でも、チラリと横目で正を見ると、正も顔を真っ赤にしていた

 

「・・・とりあえず弁当食おうぜ」

 

「うん・・・食べよう」

 

正のお弁当は今日も相変わらず美味しかった

 

私は例によって「美味しい美味しい」と言いながら米粒1つ残さずに正のお弁当をたいらげた

 

「ごちそうさまー、美味しかったー」

 

「ああ」

 

返事をした正は優しく笑う

 

思わず動悸が早くなる

 

本当に惚れちゃってるなー、と自分でも思う

 

凄く幸せだった

 

 

 

 

「じゃあ、正また明日ね」

 

「ああ、またな」

 

とりあえず、私の担当の文化祭の詰めの作業は終わったので帰る

 

本当は色々と理由を付けて遅くまで残ってたのだけれど、本当にやることがなくなってしまったので帰るしかなくなった

 

寂しいなぁ

 

1人は寂しい

 

前は慣れてたのか、我慢できていたのかわからないけど、最近は1人がとても寂しい

 

おっと、いけないいけない

 

涙が出てきてしまった

 

最近はよく泣いている気がする

 

昔は全然涙など流さなかったというのに

 

私は心に寂しさを覚えつつ、帰っていった

      

      


あとがき

 

えー、今回は何の脈絡もなく、鈴音視点にしてみました

きりしまでございます、今回はどうでしたでしょうか?

物語世界では日付が結構飛んでますが、その辺はご容赦を・・

見てくださる方は少ないと思いますが、いよいよフィナーレが近付いております

良ければ最後までお付き合いください

ではまた次の話で

       

       


おお、フィナーレが近づきつつあるのか。
美姫 「少し寂しいわね」
うん。しかし、それでも早く続きが読みたいと思ってしまう。
美姫 「でもでも、まだ終らないで〜と言う気持ちも」
まさにジレンマ。
美姫 「うーん。難しいものね〜」
しみじみ。っと、そうじゃなくて!
美姫 「それもそうね。それじゃあ、次回も期待してまーす」
お待ちしております〜。



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