「白薔薇と黒剣士」



  
   第2話「転校初日」







   
   12月24日の早朝、東京のとあるマンションで高町恭也は早めの朝食をとっていた。

   (今日は転校初日だし、道順も知らないからけっこう余裕をもって出たほうがいいな。

    しかし、かあさんにも困ったものだ。学校までの地図だけ渡して、転校先について何も教えてくれないのだから。)

   恭也はお茶を啜りながら、学校の情報について、笑顔ではぐらかしまくった母・桃子の事を考えていた。

   (さて、そろそろ出ないと電車に乗り遅れるな。)

   風芽丘の制服に身を包んだ恭也は時計を確認してマンションの部屋を出た。

   





   


  
   「ここか、意外と早く着いたな。」

   桃子に渡された地図を頼りにリリアンに辿り着いた恭也はそう呟いた。

   「さすがにこんなに早い時間では誰も登校していないな。」

   そう言い恭也は学園長室を目指した。

   
   コンコン。

   「どうぞ。」

   「失礼します。」

   学園長室の前まで来た恭也はノックをしてドアを開けた。

   「はじめまして、私が学園長の上村佐織です。」

   「はじめまして、高町恭也です。」

   「ティオレさんのおっしゃってた通り、カッコイイ男の子ね。」

   「はあ、ティオレさんが何と言っていたか知りませんが、俺はカッコよくなんかないですよ。」

   それを聞き、驚いた表情をしたあと笑顔になり、

   「ふふっ、本当に話の通りの人みたいね。少々不安だったけどアナタなら大丈夫そうね。
  
    ようこそ、リリアン女学園へ。歓迎するわ。」

   「・・・・・・・は?申し訳ありません、もう一度言っていただけませんか?」

   何を言われたのか分からず思わず聞きなおした恭也。それに対して学園長は笑顔で、

   「リリアン女学園にようこそ、高町恭也君。」

   その言葉に、しばし呆然としていた恭也は、

   「リリアン・・・・女学園!?」

   恭也の叫びは廊下の方にまで響き渡っていた。
     
   「そうそう、アナタのお母様から伝言を預かってるわ。”逃げたらどうなるか分かってるわね?”だそうよ。」

   その言葉に、今まさに逃げようとしていた恭也は踏みとどまった。

   (俺に拒否権と言う物は存在しないのだろうか。)

   「とりあえず今日は終業式だけよ。アナタのクラスは三年藤組だから。後で担任が来るから、それについて行ってね。」

   「分かりました。でも大丈夫なんですか?いきなり男子が現れたら、みんな混乱するのでわ?」

   「たしかにね。でも大丈夫よ。別の事で騒ぎ出すかもしれないけど、少なくともみんなアナタを受け入れてくれるわよ。」

   (下心丸出しの男子なら敷地すらまたがせないけど、この子はまったくそう言う物ないものね。

    さらにモデル並みの容姿と来れば誰も拒絶なんかしないでしょうね。一体何人の生徒が落とされるのかしら?)

   「そうですか。しかし転校初日が終業式とわ。こっちに来たと思ったら明日から冬休みだなんて。」

   (かあさんのことだから冬休み中も帰って来るなと言うんだろうな。)

   深い溜め息をつきながらそんな事を考えていた恭也。

   「さて、そろそろHRが始まるころね。第一印象が大事だからしっかりね。」

   「はい。」

   恭也は、苦笑いを浮べながらそう答え恭也を連れに来た担任の後について行った。









   
   「はあ〜。」

   明日から始まる冬休みに浮き足だっている生徒達の中で、一人窓の外を見ながら溜め息をついている聖。

   昨日の一件から、あの青年の事が頭から離れずずっと上の空の聖。そこで担任が来てHRが始まった。

   「それでは終業式に行く前に転校生を紹介します。入ってきて。」

   その言葉に生徒達がざわめきだす。それはそうだろう、三年のこの時期に転校するなんて聞いたことが無い。

   
   ガラッ

   
   その変わり者の転校生が入ってきた途端騒いでいた生徒達が沈黙した。その様子に聖が不思議に思い視線を前に向けると、
   
   「高町恭也です。」

   他校の制服を着た ”男子生徒” が挨拶をしていた。

   (あっ!!)

   そこで聖は目を瞠った。目の前にいる男性は誰あろう昨日ナンパから助けてくれた青年だったからだ。

   (なっ、何で彼が此処にいるの?っていうか高校生だったの!?)

   「席は・・・佐藤さんの隣が空いているわね。・・・佐藤さん?」

   「あっ、は、はい!?」

   頭の中が混乱していた聖は、名前を呼ばれたのに驚いて声が大きくなってしまった。

   だが、他の生徒達は全く反応が無い。不思議に思い周りの様子を伺うと、全員が恭也の容姿に見惚れていた。

   そこに席に着こうと恭也が向かってきて、聖の隣の席に着席した。そこで恭也も聖に気が付いた。

   「また会いましたね。」

   「そうだね。昨日は御礼言う前に消えちゃったからちゃんと言わせて。助けてくれてありがと。」

   「いえ、大したことはしてませんから。昨日は、あれから大丈夫でしたか?」

   「うん、大丈夫だったよ。」

   「よかった。」

   そう言って恭也は微笑を浮べた。二人の様子をチラチラと見ていた生徒達は、それを目撃し顔を真っ赤にしていた。

   その様子を横目で確認した聖は、

   (確かにこれはちょっと刺激が強いかな。)

   聖も目の前でそれを直視してしまい、多少頬を紅らめていると、

   「顔が紅いようですが熱でもあるんですか?」

   そう言って心配そうに聖の顔を見つめる恭也。

   「大丈夫、何でもないから。」

   「そうですか。」

   「そういえば自己紹介まだだったね。私は佐藤聖。」

   「高町恭也です。よろしくお願いします。」

   「うん♪よろしくね恭也君♪」

   「それでは終業式に向かいます。みなさん順番に教室を出てください。」

   担任のその言葉に我に返った生徒達は教室を出始めた。





ぐわ〜、続き、続きをーーー!

美姫 「五月蝿いわよ!」

だ、だって無茶苦茶気になるよ〜。

美姫 「はいはい。キレンジャーさん、ありがとうございます!
     浩もこんなに喜んでおります」

ぬぐぉぉぉ。早く続きが読みたいよー!

美姫 「確かに面白いわよね〜。誰かさんにも見習って欲しいもんだわ」

その誰かさんってのは?

美姫 「言わなくても分かっているでしょう」

やっぱり、俺かよ!

美姫 「当たり前じゃない。それでは、次回も楽しみにしてます」

無視するなー!



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