ぴん、ぽん、ぱん、ぽ〜ん♪










※えまーじぇんしー

 この話において、とらハ側の時間軸は美由希兄妹エンド後です。

 美由希は皆伝しており、恭也に彼女はいません。










ぴん、ぽん、ぱん、ぽ〜ん♪











SoUプレゼンツ・クロスSS




『D.C.U〜ダ・カーポU〜』 × 『とらいあんぐるハート3 〜Sweet songs forever〜』




D.C.L.H. 〜ダ・カーポ〜 リリカルハート

第05話:体育ノ星





(ううう……色々解ったのはいいけど……)



 昼休みも終わり、授業中。

 あまり勉強が好きではないななかは、授業などそっちのけで先ほど屋上で恭也に言われたことを思い返していた。



 “枯れない桜が、願いを叶える魔法の木である”こと。

 “ななかと枯れない桜(他にいるかは不明)が研究者たちに狙われている”こと。

 “恭也と美由希が殺人剣の使い手である”こと。

 “さくらに依頼され、護衛の為にこの島に来た”こと。



 それらは、既にななかの日常を超えた事であった。



(恭也先輩と、美由希が……私たちの、護衛……)



 伝えられた事実は、ななかの心を激しく振るわせる。

 確かに、自分が狙われているという事実は衝撃的だった。

 だが……なぜか、それを上回る思いがあった。

 それは――



(恭也先輩たちが、そんな世界にいるなんて……)



 普通の人はまず見ることもない、日常とは違う闇の世界。

 命を取り合うのが当たり前の世界に、恭也と美由希がいる。

 ずきん、と、心が痛む。

 自分のことではないし、恭也自身も「自分で選んだ道だから、悔いも後悔もないし、これからもしない」と言っていた。

 でも、それでも……



(怖く、ないのかな……)



 自分は今、狙われている立場だ。

 が、もしこの件が解決すれば、余程のことがない限り狙われることはないだろう。

 このような事件とは一期一会。

 出来れば遭いたくないというのが本音だが、遭ってしまったものはどうしようもない。

 ……が、恭也たちは違う。

 今の護衛対象を護りきれば、次の護衛対象を護る。

 まして逃げ惑うななかと違い、恭也たちは最前線でその悪意と戦うことになる。

 それが……何故か、ななかには辛かった。

 自分が狙われていること以上の恐怖だったのだ。



(死ぬような目にも、遭ったことあるのかな……私の護衛で、そんなことになったりしないよね?)



 恭也の話を聞いて、一番の心配事はそこだった。

 ……ななかは気づいていない。

 自分が考えていることの意味を。

 それを知るのは、まだ先の事……。







◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇







「次は体育か……」



 本日最後の授業は体育。

 本校2年の教室は、どこも嫌そうな空気が漂っている。



「最後に体育かよ。面倒だな〜」

「本当。もう少し気楽な授業がいいよ」



 そんな周りの言葉を無視して、恭也は体操服に着替えた。



「高町、長袖なんか着て、暑くないか?」



 クラスメイトの一人が声をかけてくる。

 体の傷を隠すための長袖だが、まだ夏の暑い最中である。

 周りから見れば正気の沙汰ではない。

 というより、見ている方も暑苦しい。



「いや、俺はなんともない……というか、肌が弱いんだ」



 そういう恭也の言葉を否定するものはいなかった。

 女子にも数人、肌が弱いために長袖を着ているものがいるからだ。

 とはいえ女子の場合、下はブルマなのであまり解決策にはなっていないのだが。



「まぁとりあえず体育館だな」

「外じゃないのが救いだよな」

「バスケだって」



(ふむ、バスケか……岡本さんに何度か、させてもらった記憶があるな)



 大阪親日生命という日本屈指の女子社会人チームのレギュラーである岡本みなみとは、縁があって何回か会った事がある。

 その際、背が高くて運動神経がいい恭也は、暇な時間にバスケの相手をしていたのだ。

 流石に勝てるわけもなかったが、最後の方にはみなみが恭也を抜くのにかなりの時間を要するようになっていた。

 彼女曰く、「私にもこの身長と運動神経がほしい……」だそうだ。



「いつも通り、気楽にやろう」



 そう言って、一足先に体育館に向かった……。







◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇







「あれ? 男子もここなの?」



 普段、男子と女子の体育は分かれて行われている。

 が、今日はグラウンドで何かやることがあるらしく、男子も女子も体育館で授業、ということになっていたのだ。



「あぁ、どうやらそうらしい。俺達はバスケだが……まゆきたちは?」

「跳び箱だって。あ〜あ、あたしもバスケだったらいいのに」



 話しかけてきた相手、まゆきが言う。

 もともとスポーツが好きなまゆきである。

 まして自分達は跳び箱。

 男子はバスケだと聞いて、余計に気持ちが傾く。



「俺は逆に、ゆっくり出来る跳び箱のほうがいいんだが」

「じゃあ交代する? あたしが恭也くんの体操服着て、恭也くんがあたしの体操服を着るの」



 一瞬想像するが、途端に恭也が顔色を変える。



「勘弁してくれ、吐き気がしそうだ」

「そうかな、綺麗な顔してるし、案外似合うかもよ?」

「ブルマが似合う男なんて嫌だ」

「あはは、それはそうだね」



 疲れた顔をする恭也を見て、まゆきが笑った。



「も〜、まゆき、道具出すの手伝ってよ〜」



 と、横から音姫の声が飛んできた。

 どうやら準備中にまゆきが話し込んでしまったようだ。



「む、すまん音姫、話し込んでしまった」

「あれ、恭也さん?」



 体育用具置き場から姿を見せる音姫。

 跳び箱に必要なのは、もちろん跳び箱そのもの、そしてマット、踏み切り板。

 かろうじて踏み切り板は持ち出せるものの、基本的に残りはどれも、女子一人で持ち出せるものではない。



「音姫、ごめ〜ん」

「もぉ……流石に踏み切り板以外は一人じゃ無理だよ〜」

「なら、俺が手伝おう」



 そう言って、恭也は用具置き場に向かう。



「へ? で、でも、男子にも準備が……」

「もう終わってる。バスケだから準備は殆ど必要ないからな」



 あっさり用具置き場に向かい……



「え、た、高町くん!?」



 用具置き場にいるクラスメイトの女子に遭遇。

 恭也はマットが積んである前に立ち、訊ねる。



「何を出せばいいですか?」

「え、え? えっと、跳び箱を3つと、マットを6枚……」

「解りました」



 ひょい



 軽々とマット6枚を一度に持ち上げる。



「ぇ……え〜〜〜〜〜っ!?」

「これは確かに、女子には重いですね」



 実際、マット6枚の重さは男子でもそうそう持ち上げられるものではない。

 まして運ぶとなると、なおさら厳しい……というより、無理に近い。



「では、え〜と、輝月きづきさん、でしたか? 踏み切り板をお願いします」

「え、あ、は、はぃ……」



(すごい力持ち……それに、優しいし……)



 この瞬間、恭也の隣を狙う海鳴メンバーに、ライバルが一人加わった。



「で、音姫、まゆき、これはどこにおけばいい?」

「えっ――」

「えっと、それは――」



 言いかけた二人は言葉を失った。

 まさか、6枚のマットを全て一度に持ってくるとは思いもしなかったのだ



「――うそ」

「――に、人間業じゃないわね……」



 素直に驚く音姫と、素直に失礼な言葉を吐くまゆき。



「失礼だな」

「そんなのまとめて持てる方がおかしいわよ。普通の人はせいぜい2枚」

「男の子って、こんなに力あるんだね〜」



 全ての男が恭也のようだと思われてはかなわない。

 そこはまゆきが釘を刺しておく。



「音姫、弟くんに同じようなことさせたら、間違いなくグレるわよ」

「そうかなぁ? 弟くんならやってくれそうな気がするんだけど……」

「……弟くん、大変だね」



 この言葉に、教室の義之がくしゃみした……というのは後でわかるお話。







◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇







 授業が始まり……気がつけば恭也のチームの出番。



「高町、頑張るぞ!」

「ああ。……それにしても気合が入ってるな」

「女子が見てるだろ? 皆、いいところを見せたいんだよ」



 それにうなずくチームメイト。

 まゆきと音姫を筆頭とした女子一同が見ている……それは、男子達の力を引き上げる増強剤だった。



「ふむ。ならば……折角やる気になっているメンバーもいる事だ。久々に全力でやろう」

「? なんだ高町、バスケ部でも入ってたのか?」



 チームメイトである笹原にいや、と首を振りながら中央へ。

 高い身長などもあり、ジャンプボールは恭也に委ねられていた。



「知り合いにバスケの選手がいてな……たまに相手をさせてもらった」

「バスケの選手?」

「ああ……っ!」



 返事と同時にホイッスル、その後ボールが舞う。

 それに合わせ、恭也は勢いよく飛んだ。



「高ぇっ!」

「すご……」



 180を越す相手とのジャンプボールを制するほどの大ジャンプ。

 ボールをはじき、仲間に渡す。



「おい高町、その選手って誰だ?」



 笹原が続けて言う。

 別に隠す必要はないと思い、恭也は答えた。



「あぁ、岡本みなみ選手だが……知ってるか?」

「大阪親日の!? マジかよ!」



 どうやら彼女は有名人らしい。

 その言葉に、彼女を知る者達が声を荒げる。



「ふっ!!」



 パスを受け取ったもう一人の仲間、相沢のシュート。

 ボールは弧を描き……惜しくもリングの手前部分にあたる。

 そのままボールは跳ね返り――



「お前の居場所は、リング内そこと決まっている――」



 ――トップ(※1)から飛び込んできた恭也の手に収まり――



(恭也くんは背が高いしジャンプ力もあるから、もしバスケをすることがあるならこれを覚えておくと便利だよ)



 ――みなみに言われたことを思い出していた恭也は、教わった通りにそのボールを――



「――おとなしくそこ・・にいろ」



 ――リングに叩き付けた。



「ロ……ロングリバウンド(※2)を空中でつかんで、そのままダンク……!!」

「マジ……かよ……!」



 一瞬体育館が静まり返る。

 そして、次の瞬間。



『きゃ〜〜〜!! 高町くんすご〜い!!』

『あんなところから飛んで、ゴールに届くの!?』

『信じられない!』



 女子の黄色い声が飛んだ。



「うわぁ……恭也さんすごい……」

「う、運動神経が半端じゃないわね……大体何メートル飛んだのよ……」



 音姫もまゆきも絶句状態だ。



「高町、お前すごいな……」

「いや、みなみさんからゴールを奪う手段がこれしかなかったんだ」



 相手はプロだ。

 当然小手先のテクニックで打ち勝てる相手ではない。

 だから、恭也は相手が出てこれない土俵での一方的な攻撃を狙うことにしたのだ。

 ……それでも結局みなみに勝利することが出来なかったのだから、彼女の実力がいかに高いかという事だろう。



「改めて、恭也くんは人間じゃないわね」

「まゆき、失礼だよ……否定できなくなってきてるけど」



 何気に酷いまゆきと、それにやっぱり何気に酷い音姫の言葉はさておいて。

 これで勢いづいた恭也のチームが負けるはずがない。

 結果、大差をつけて恭也のチームが勝利した。

 もともと運動神経の高い恭也が、プロのバスケット選手に実技指導してもらったのだ。

 並の相手では勝負にならない。



「お疲れ、高町!」

「すげぇよ!」

「あ、あぁ、ありがとう」



 はしゃぐ男子に返事し、バスケのコートを見る。

 別のチームが試合に入るのを確認して、恭也はようやく壁を背に座る。

 そして女子の方へと目をやる。



「ほっ!」



 5段を飛び越える音姫。

 授業態度は真面目なようで、普段の柔らかい感じの目とは違う。



(白河ななか同様、最重要護衛対象、朝倉音姫……)



 備考欄には、“枯れない桜の守護者、魔法使い”とあった。



(魔法使い、という人たちがどれほどの力を持つかはわからないが……護衛が必要ということから考えても戦闘には向かないようだな)



 魔法とは想いの力をエネルギーとし、願いを具現化する手法。

 なのでもし音姫が何者かに襲われるようなことがあっても、危険から逃れたい、という想いを元に、ある程度身を護る方法を具現化するだろう。

 だが、それでは一時しのぎだ。

 昨日今日と話してみたが、音姫は相手を傷つけるということを考えない優しい女性だ。

 襲撃者を排除したい、などと考えることはないと思われる。

 彼女の力は大きめの盾、そう考えていいだろう。



(だが、所詮は移動も攻撃もしてこないただの壁だ。いずれは打ち破られる)



 そうなれば、彼女は襲撃者の手に落ちる。

 それは避けなければならない。

 それに――



(枯れない桜の守護者、ということは……密接な関係がある、と踏んでいいんだろうな。当然相手もこれぐらいの情報はつかんでるはずだ)



 さくらの話では、「今はボクの魔法でガードしてるから、悪意ある人は枯れない桜を触れないようになってるよ」だそうだが……



(結局、悪意のない第三者に枯れない桜の移送を頼まれてしまえばそれまで……)



 その為、恭也たちは早く襲撃者を明らかにしなければならない。

 だが――



(情報が足りない……狙われていること以外はほぼわからないと言っていい状況だ。これは……思った以上に辛いな)



 どうしても後手に回らざるを得ない。

 情報を得る方法は、相手が動き出すのを見てから。それも彼女たちの身を囮にして相手を動かす以外に、こちらは敵を知ることが出来ない。

 枯れない桜を囮に使うのは、彼女達を囮にするよりも危険すぎる。

 こういう言い方は好きではないが、どうしても重要度は彼女達より枯れない桜のほうが上なのだ。

 そちらを先に奪われ相手に制御されてしまえば……相手の願いが叶ってしまう事になりかねない。

 その内容次第では、彼女達だけではなく世界が危険にさらされる。



(だが……だからといって彼女たちを見捨てるわけには行かない……う〜む……)



 そこで、チャイムが鳴り響く。



「む……」



 授業が終わった。

 とりあえず考えを振り払い、恭也は着替えに戻る。



「え、え〜と……音姫?」

「ぷしゅ〜…………」



 恭也が去った後。

 そこには10分以上もの間恭也に見つめられ続けられ・・・・・・・・・・・・・・・・・、真っ赤になり、ついにはふやけてしまった音姫がいた……。 








SoU「な、難産だった……」

彩音「お疲れ様です、ようやく5話ですね」

SoU「辛かった……最初はななかと恭也のやり取りだけでこの話が終わる予定だったんだが……」

彩音「延々と説明のみの1話でしたからね」

SoU「それは避けたいと思ったんだ」

彩音「で、5話完成後に書き直し……今度は逆に、内容を殆ど説明せず、ななかに説明したことを箇条書きで記した、と」

SoU「読者さんには、じらす結果になったかも知れんが……少なくともずっと説明文よりはいいと思ってな」

彩音「そうですね。あとは……体育の授業ですね。センターライン付近からジャンプしてダンクですか」

SoU「一般人のジャンプ力は超えてるが、気にしないでくれ」

彩音「まぁ、彼ならば、と納得してしまう辺りがまずいですね」

SoU「あぁ、恭也は確かに剣術家だが人間だ。あまり化け物にはしたくないんだが……鍛え上げた体で出来るギリギリの範囲ということで」

彩音「まぁ、これを実行できる人もいるでしょうし」

SoU「そういう事だ。でもとりあえず今回は……ななかに関する反響がちょっと怖い」

彩音「下手をすると……っていう書き方ですからね」

SoU「寛大な心に期待しよう」

彩音「それから……今回の新キャラさんは?」

SoU「あぁ、昔KanonSSを書いた際のオリキャラだ。現在無期限凍結中だからな、こうしてチョイ役ででも出てもらおうと思って」

彩音「キャラの名前を思いつかなかっただけじゃないんですか?」

SoU「う、うるさいうるさいうるさ〜〜い!!」

彩音「あはは、図星みたいですね。そう言えばマスターはSS書いて何年になります?」

SoU「そうだな、うちにはワープロがあって、小学生の高学年には書き始めてたから……15年ぐらいか」

彩音「歳がバレますよ。それに、15年も書いてこんなレベルですか……」

SoU「うっさい。お遊び気分で書き続けてたのもあるが、やっぱり才能だろうな。そもそも駄文ばかりだし」

彩音「否定しません」

SoU「(泣」

彩音「というわけで(?)、次回もよろしくお願いしますね〜♪」




(※1)トップ……トップ・オブ・ザ・キー(フリースローの半円の外で、ハーフライン側のエリア)の場所。

(※2)ロングリバウンド……リングから遠いエリアに落ちるルーズボール





いやいや、素晴らしい作品をありがとうございます。
美姫 「今回は恭也体育編」
また勝手な名称を…。
美姫 「それにしても、どんな連中が狙っているのかしらね」
確かに。まあ、今は平穏な日常を過ごして欲しいよ。
美姫 「次回も気になるわね」
ああ。次回が楽しみだ。
美姫 「次回も楽しみにしてますね〜」
ではでは。



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