ぴん、ぽん、ぱん、ぽ〜ん♪










※えまーじぇんしー

 この話において、とらハ側の時間軸は美由希兄妹エンド後です。

 美由希は皆伝しており、恭也に彼女はいません。










ぴん、ぽん、ぱん、ぽ〜ん♪











SoUプレゼンツ・クロスSS




『D.C.U〜ダ・カーポU〜』 × 『とらいあんぐるハート3 〜Sweet songs forever〜』




D.C.L.H. 〜ダ・カーポ〜 リリカルハート

第11話:再度襲撃





 

「ふむ、屋台か……チョコバナナ屋とは、祭りの出店でしか見たことがなかったが、こうして普通に営業しているところもあるようだな」



 土曜、早朝……義之、音姫、由夢の護衛を美由希に任せ、恭也は桜公園を見ていた。

 別に遊んでいるわけではなく島内を探索していたのだが、なぜか見覚えのある帽子が目に入り、一時的に予定を変更したのだ。



「うぅ……」

「……どうした美夏?」



 美夏は登校時間はそれほど早くないと聞いていたのだが、時間まだかなり早い。

 しかも、うずくまってうなっているその姿は普通ではない。



「む、恭也先輩か……い、いや、別に……」



 ピコン、ピコン、と鳴り響くアラート音。

 美夏の事情を知っている恭也は、咄嗟に声をかける。



「……バナナミン切れか」

「! な、何故それを!」



 天枷美夏はロボットである。

 動力源はバナナの主要成分であるバナナミン、そして、ゼンマイ。

 ゼンマイは一日一度、バナナミンは一日三回程度摂取しなければ活動不能になってしまう。

 その辺の事情を事前に聞いていた恭也は、美夏の状態を見て一発でバナナミン切れと看破したのだ。



「話は後だ、チョコバナナでもいいか」

「くっ…………すまない……」



 営業準備中の屋台からチョコバナナを買ってきて、美夏に渡す。

 それを受け取った美夏は何かに取り付かれたかのように、猛烈な勢いで食べてしまった。



「……ふぅ。助かった、礼を言うぞ」

「いや、気にするな」



 震え今にも倒れそうだった美夏だったが、バナナを食べただけで普段どおりの元気な姿に戻る。



「美夏の事情を知っている理由はさくら先生に聞いたからだ。それ絡みで学園内でいざこざがあっても困るからだろう」



 もっともらしい嘘をさらっと言う。

 美夏もこの言葉に対して特に疑問に思わなかったらしく、



「そうだったのか……」



 とあっさりその言葉を信じる。

 美夏がロボットであるという事実は、現在親しくしているメンバー+さくら、すなわち全護衛対象者しか知らない。

 美夏たちに備わっている機能の一つが問題になっており、世間一般ではロボットへの風当たりが強い。

 そんな状況で学園にロボットが通っているなどということになれば、大事件に発展しかねない。

 その為美夏は己の正体を隠している。



「恭也先輩は、美夏がロボットであることに対してどう思っている? 世間同様、汚らわしいと思うか?」



 簡単に言うと、“人間の女性同様に性行為が可能”という機能……それが世間を賑わす問題の機能だ。

 だが、恭也はその言葉に首を左右に振る。



「いや、俺はそうは思わん。俺から見れば美夏は人間と区別がつかないし、つける必要も見当たらん。十分立派な人間だと思うぞ」

「……何故だろうな。最初は身勝手な人間が嫌いだったはずなのだが……桜内や杏先輩、由夢、いろんな人に会って人間にもいろんなやつがいることを知った。恭也先輩の言葉は……そんな大事な人たちがくれた言葉の中でも、一番嬉しい」



 素直な感想。

 恭也の言葉を、美夏は非常に嬉しく感じていた。



「そうか。俺としても、人間を嫌わないでいてくれて嬉しい。美夏の仲間たちに、散々酷い事をしておいて言うのもなんだが……」



 一部の人間によって始められた打ち壊し。

 デモと称して街中でロボットを破壊する映像がテレビで流れたのを思い出す。

 忍のメイドにして自動人形であるノエル・K綺堂・エーアリヒカイトを良く知る恭也にとっては、尚更心が痛む映像だった。



「いや、恭也先輩がやったことじゃないだろう。それに何より、人間全員がそういう考えを持っているわけじゃないことを美夏は知っている。だから、気にしないでくれ」

「それならよかった。……ところで美夏は、これから何か予定があるのか?」



 予定がないのなら護衛ついでについて行こうと思い、声をかける。



「いや、今日は一度研究所でメンテナンスだ。本当はバナナを補充するつもりで来たのだが、間に合わなかった。……バナナ嫌いな美夏にはつらいものがある」



 どうやらバナナが嫌いな美夏。

 それが生きるために必須だというのだから、そのつらさは察して余りあるものであろう。



「そうか……今度母に、美味しいバナナ菓子はないか聞いておこう。少しでも食べやすいほうがいいだろう?」

「母? 恭也先輩の母親はお菓子作りが得意なのか?」

「あぁ、得意というか、職業だ。うちの母はパティシエだ」

「パティシエ……あぁ、お菓子の料理人、みたいなやつか……すまない、迷惑をかける」

「気にするな……と、お迎えか?」

「む?」



 話し込んでいた二人に向かってくる人影。

 その人物に、恭也も見覚えがある。

 確か、風見学園の保健医だった。



「ここにいたのね。時間になってもこないから探しちゃったわ。……と、一緒にいるのは交換生徒の一人ね。確か、高町恭也くん」

「はい、確か……水越先生、でしたか?」

「ええ、正解。……学園長先生にある程度事情は聞いてるわ。一応自己紹介しておこうかしら。保健医、水越舞佳まいか、HM-Aシリーズの開発担当よ。美夏の製作者ではないけどね」



 どうやら彼女も美夏側、研究所の人間らしい。

 HM-Aシリーズというのは、話から察するに美夏の型番のようだ。



「そうでしたか。……じゃあな美夏、気をつけて帰れよ」

「あぁ、面倒をかけたな」



 その言葉に恭也はやさしく微笑むと、きびすを返し、ゆっくりと去っていった。



「……っと、美夏、帰る……」



 その笑顔に一瞬魅せられた舞佳だったが、何とか気を取り直し、美夏に声をかける。

 が……



「〜〜〜〜〜〜っ!!」



 美夏は舞佳以上に至近距離であの笑顔を見てしまった。

 しかも今回の笑顔は、転入時のような営業スマイルではなく、心からの笑顔だ。

 その破壊力たるや、計り知れない。



「あらあら……美夏、もしかして惚れちゃった?」

「!! なっ!? そ、そんなわけがないだろう!!」



 あわてて声を上げる美夏だったが、舞佳は逆に、あまりに予想通りな反応に笑いを堪えるのに必死になるのだった。







◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇







 散歩も終わり、部屋に戻った恭也はリスティからの電話を受けていた。



「結果、どうでしたか?」

「あぁ、とりあえず、連中に資金提供している組織があることはわかった。だけど、その先が中々手強くてね。現在調査中さ」



 これで、ただ単に襲撃者を倒して終わり、というわけにはいかなくなってしまった。

 この問題は、すでに恭也たちだけで対応するには規模が大きすぎる。



「だけど、かなり大きな組織と見て間違いなさそうだ。それこそ、世界規模で動くほどの巨大な、ね」

「世界規模、ですか?」



 日本という小さな国の、その中でもさらに小さい島にある桜の木を狙ってくる相手。

 それが世界規模で動くほどの組織だと言われても、さすがにピンと来ない。



「あぁ、何しろ提供された資金が10億、20億の世界だ。自分たちの活動資金を残しつつ、それだけの資金を提供するんだ。その規模は半端じゃないはずさ」

「なっ!?」



 さすがの恭也も絶句する。

 いくらなんでも、資金提供・・・・の規模を超えている。

 それだけではない、相手はこれだけの資金を提供することができるほどの資本の持ち主である。

 確かに世界規模といわれても不思議ではない。



「ミツルギやカブラギ、ハドウ、クルスガワじゃあるまいし、これほどの資金を提供できる企業はそうないはずだ。そして何より、資金の足取りが巧妙に隠されている。これはもう、表立った企業じゃないと証明しているようなもの」

「確かに……」



 が、結局恭也たちは今はまだ何もできない。

 襲い来る敵を撃退しつつ、少しでも前に、真相に向かって進むしかない。



「俺たちはとりあえず、今まで通りということですか?」

「悪いね。でも、恐らく次に来る相手は研究チームのパトロン直属の連中なはずだ。少なくともまだ、研究チームが潰れるのはまずいだろうからね」

「ですね、いくらなんでも、ただの隠れ蓑に20億くれてやるような余裕はないでしょうし」



 所詮この研究チームは、隠れ蓑に過ぎない。

 いくら金がある組織でも、ただの隠れ蓑にこれだけの金額を使うことはできないはずだ。

 これは連中が枯れない桜に近づくための大義名分なのだ。



「とはいっても、“資金繰りについて不透明な点がある”ということで、今日中に一時的な業務停止命令が下るはずだ。そうなると、連中も本腰を入れて動き出す」

「そのときこそ俺たちの出番、というわけですね」

「あぁ、頼むぞ」



 隠れられなくなってしまえば、もはや直接動く以外にない。

 リスティの狙いは正にそこにある。

 ただし、これは護衛対象の身を危険に晒すことになりかねない、いわば諸刃の剣である。

 出来れば使いたくなかった手段だが、この際仕方がない。

 ……恭也たちは結局今まで通りの護衛をするということで話がついた。



「……ふぅ」



 電話を切り、一息。

 が、先のことを考えると、どうしても相談しなければいけない相手がいる。

 恭也は再び電話を取った――。







◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇







 1時間目の休み時間。



「パンでも買うか……流石に腹が減る」



 今日も義之の寝坊で朝食が取れなかった恭也は、一時しのぎのために購買に来ていた。



「う〜……おなかすいたぁ……」



 と、後ろから非常に聞き覚えのある声がした。

 美由紀と同類のドジッ娘、その名は――



「小恋か。購買に用事か?」

「! あ、きょ、恭也先輩……その……ね、寝坊、しまして……朝、何も食べてなくて……」



 真っ赤になって言う。

 だらしなく見られるのが恥ずかしいようだ。



「そうか、なら俺と同じだな……もっとも、寝坊したのは俺ではなく桜内だが」

「う……幼馴染みがご面倒をおかけします……」



 思わず謝罪の言葉を口にする小恋。

 それを見て、恭也は何かに気づいたらしい。

 なんでもないような顔で言葉を発した。



「ふむ……夫の失態は妻の失態、か。案外古風な考えだな、小恋は」

「ぇ……!?」



 一瞬何を言われたのか理解できなかった小恋は、ゆっくりと言葉の意味を考える。

 そして……一気に赤くなった。



「な、きょ、恭也先輩!? お、夫とか妻とか、私たちは別にそんな関係じゃ……!!」

「そうなのか? 随分と仲がいいように見えたんだがな」



(やはりか……桜内はかなりの数の女性に好意を持たれている様だな)



 自分の事に関しては非常に鈍い恭也だが、ここ1年ほどの間に、自分を含まない部分での人の感情に敏感になっていた。

 それでも未だに鈍いと言われるため、内心恭也はかなり落ち込んでいたのだが、それはそれとして。

 指摘されてうろたえる小恋を見て、恭也は満足そうに笑みを浮かべる。



「それはともかく、早く買わないと休み時間が終わって結局空腹のまま過ごすことになるぞ?」

「ともかくじゃないです……」



 そう言いつつも、とりあえず購買でパンを一つ買う。

 恭也もパンを二つほど買い、そのまま二人並んで教室へ向かう。



「そういえば……小恋は軽音楽部と聞いたが?」

「あ、はい。一応部活内でバンドを組んでいて……私と、渉くんと、もう一人いたんですけど、あまり真面目じゃなかったので渉くんが辞めさせちゃって。……それと、時折手伝いに来てくれるななかとですね」



 大人しめな外見、性格からは想像できないが、小恋は軽音楽部であり、現在バンド活動をしている。

 担当はギター。

 これまた普段の小恋からは想像できない。



「小恋がギターなのか……想像できなかった」

「稀にボーカルもやりますけど、基本的にはギターですね。あと、作曲と」

「そうか……今度ぜひ聞かせてくれ」

「え? あ、はい、いいですけど、私、そんなに上手じゃないですよ?」



 言葉を並べる小恋だが、ゆっくりと恭也は左右に首を振る。



「いや、小恋は素直で、気持ちが言葉に出やすいからな。ラブソングでも歌えば、きっといい歌になるだろう」

「ラブソング……ですか?」

「あぁ、桜内への気持ちでも乗せて歌うと、なお良しだな」

「ふえぇぇぇぇっ!?」



 更にからかう恭也。

 小恋はもう真っ赤だ。



「うぅ……由夢ちゃんが言ってた意味がようやくわかった気がする……」

「由夢が何か言ってたのか?」

「“恭也先輩は意外と意地悪です”と……」

「そんなことはないと思うのだが……」

「絶対意地悪です……」



 断言される。

 恭也も解っていて言っているので、強く否定はしない。



「まぁ、冗談はともかく、本当に楽しみにしている。歌を聞くのは好きな方だからな」

「あ、は、はい」



 こうして、二人は教室へと戻っていった。







◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇







 放課後、屋上。

 ここには非常に珍しい組み合わせの二人の姿があった。



「もうじき、本格的に……そう言ってましたね……」

「ええ……“白河さんと、それとなく全員が一緒の行動をとるように仕向けて欲しい”……そう言ってたわ」



 秘密の一部を知る者、白河ななかと雪村杏。

 二人は早朝恭也からの電話で、“連中がもうじき本格的に動き出すので、それぞれ協力してほかの護衛対象をひとまとめにして欲しい”と頼まれていた。

 が、それは――



「でも……それって、美由希と恭也先輩が私たちを守るために戦う……ってことだよね」

「そうね。確かにあの二人は私たちなんか比べ物にならないぐらいに強いと思うけど……正直、不安はあるわ」



 武器を持った十人以上の不良を無傷で倒す実力を持つ恭也と美由希。

 が、当然二人は人間であり、連中の持っていた武器――バットやナイフ――が当たれば当然怪我をする。

 当たり所によっては死んでしまう恐れもある。

 あの状況でさえ十分恐怖だった二人にとって、本格的な動きの内容はまったく想像が付かない。

 強いて考えるとすれば――



「拳銃とか……向けてくるのかしら」



 ――拳銃……それは、携帯用としては最強クラスの射程と殺傷能力を持つ武器。

 いくら恭也が強くとも、いかに美由希がはやくとも、銃弾を受けても無傷であったり、銃弾を超える速度で移動するような姿は想像できない。

 しかし護衛という立場上、襲撃は決して避けきれるものではなく、その手段という意味で拳銃が使われる可能性はかなり高い。

 最悪、恭也や美由希が自分たちを守るための盾になる可能性だってある。



「そんなの、イヤ……恭也先輩も、美由希も、私たちを庇って……も、もしかしたら死んじゃうかもしれない……そんなのイヤ!」

「私も嫌よ……だから、少なくとも私たちは、美由希や恭也先輩に庇われなくてもいい位置にいなくちゃいけない」



 心配するななかと杏。

 だからこそ……杏は不意に強攻策を口にしてしまう。



「いっそのこと、みんなに事情を説明できれば早いのに」

「でも、“このままおとなしくなってくれるなら、不安を抱かせる必要はない”って言ってましたよ。確かに、何かが起きていることを知らずに、そのまま終われば何も問題はないけど……でも、それって美由希と恭也先輩の負担になりますよね?」

「そうですね……と、待って」

「?」



 会話の途中で、杏がそれを止めた。



「お互い共通の秘密もあるし……お互い小恋の友達で共通点もあるわ。……もう少し、気楽に話すことを提案したいのだけど」

「つまり……」

「まずは名前で呼び合うところから。どうかしら?」



 杏の提案。

 簡単に言うと、もっと仲良くなろう、そういうことだ。



「……そう、だね。えっと……杏、でいいのかな?」

「ええ、改めてよろしく、ななか」



 そして、握手。

 その後話は弾み、大事な真剣な話から小恋をいじることの楽しみの共感まで、延々2時間近く話し続けるのだった。







◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇







 杏とななかが話をしていたせいで、帰りは結局午後2時近くになっていた。

 いつものメンバーが勢ぞろいし、学園を出ていた。



「すみません恭也先輩……」

「いや、二人がより仲良くなったのなら、それはそれでかまわないからな。……まぁ、事前に連絡してくれればなおよかったが」

「うぅ」

「まぁ、とりあえずこれで、この先少しやりやすくなるわけだし」



 周りに聞こえないように小声で話す4人。

 恭也と美由希は周囲を警戒するのをもちろん忘れない。



「でも、こうやって毎日みんなで帰れると、楽しいね」

「そうですね。兄さんやお姉ちゃんと一緒に、というのも悪くはないですけど、皆で一緒に、というのは、これはこれで楽しいです」



 音姫も由夢も、この状況に喜んでいるようだった。

 もともと忙しい見である音姫だ。

 中々まゆき以外のメンバーと一緒に帰ることはない。

 それだけに、特に音姫はこの状況をかなり楽しんでいる。



「ふむ、しかし珍しいな。こうも普通に生徒会の仕事がないとは」



 杉並が言う。

 生徒会の業務に追われていないということは、まゆきは余裕を持って杉並を監視できる。

 毎回変な事をする杉並にとっては、意外にやりにくいのかもしれない。



「うん、それは私たちもちょっとびっくり」

「まぁあたし達は誰かさんと違って日ごろの行い良いからね」

「本来はもっといいことが起きるはずなのにね〜」

「日ごろの行いが悪い人が混じってるからかな〜?」



 そう言ったななかをはじめ、全員が周囲を見渡す。



「俺は別にそこまで悪くないぞ。この二人と杏、茜に巻き込まれなきゃな」

「私たちはいいのよ。普段は善良だし、多少茶目っ気がある方が萌えるでしょ?」



 義之の言葉に杏が答える。

 流石は自他共に認めるロリ担当、萌えに関するこだわりがあるらしい。



「私もね。むしろそこの二人じゃないのかな〜、って思うんだけど」

「む、失敬な。俺はただ学園を楽しくしようとしているだけだ。この天然悪と一緒にしないでもらいたい」

「酷っ!」

「あはは……て、天然悪……」



 やはり渉はオチ要員としての立場にあるようだ。

 天然悪、という杉並の物言いに、美由希も苦笑するばかり。



「それより……っ!」



 恭也が口を挟もうとした瞬間。

 警戒して意識を飛ばしていた範囲内に侵入者を感知する。

 それも、足音を消し、気配を殺し、その上でかなりの速度で迫っている。

 明らかに昨日の不良とは質が違う。



「美由希……」

「うん。前方から一人、後方から四人、挟まれてるね。どうするの?」



 正面、背後、両方から相手が迫っていることを感じ取った美由希が尋ねる。



「俺が数が多いほうに当たる。美由希は前を頼む。……それなりの実力者だ。気をつけろ」

「恭ちゃんもね」



 そして二人はそれぞれ集まりの中から前後に抜け出す。

 それを見て、杏とななかが気付いた。



「!」

(来た、みたいね)

「!」

(本当に……本格的にとは言ってたけど、こんなに早く……!)



 今朝話を聞いたばかりだというのに、まさかこんなに早く敵襲があると思っていなかったのだろう。

 流石の二人も戸惑いを隠せない。



「……すまない、忘れ物をした。取りに戻るので先に行っててくれ」



 そう言って、恭也は駆け出した。



「あ、え、恭也先輩!?」

「……皆、もう少しこっちに寄って」



 恭也が戻っていったのを見て、今度は杏が動いた。

 他のメンバーを集め、より人の密度を高めようとする。



「杏?」

「うんうん、もっとこっち〜」



 ななかも義之や小恋の手を引っ張り、引き寄せる。



「お、おいおい、なんだよいきなり」

「何、何〜?」



 解らないままに引き寄せられる一同。

 現実として敵が向かって来ている以上、細かい説明をする暇はない。

 そして……



「来た……!」



 真正面、ゆっくりと歩いてくる一人の男。

 背は170程度、ぼさぼさの金髪、青い無地の長袖のシャツにジーパンというラフな格好。

 普通の人から見れば何の変哲もない一人の男。

 だが、武道に秀でたもの、そして裏の世界、死と隣り合わせの世界に身をおくものなら、一目で見破れる。

 あれは普通の存在ではない、と。



「来た……って、何が?」

「杏、ななか、お願い」



 まゆきの言葉を無視するように美由希が言う。



「うん。皆、このまま固まってて」

「絶対に離れないで」



 真剣な顔、真剣な言葉で言う二人に、他のメンバーは何も言うことが出来ない。

 それを肯定と取った二人もまた義之たちに寄り添う。



「……ほぉ、俺が来るのが解ったか。中々できるようだが……何者だ」



 男の視線の先にいるのは、当然先頭に立つ高町美由希。



「さぁ、何だと思います? ……どうして、こんなことをするんですか?」



 相手の問いには答えず、質問を返す。



「……俺には俺なりの誓いがある。どんな悪行だろうと、誰に恨まれようと。己のすべてを賭けるべきものがある……故に」



 両腕を振るう。

 袖口から飛び出した何かを掴み、それを組み合わせる。

 その工程を3度繰り返し……目の前に現れたのは――



「問答は無用。そこの連中全員を貸せ。それが出来ぬなら……百舌もず早贄はやにえになってもらうぞ」



 ――漆黒の、男の身長を超える長さの獲物。

 身を捻り低く構え……その武器、長槍を向ける。



『――ッ!?』



 美由希以外の全員が息を呑む。

 今にも飛び出しそうな男の構え。

 昨日のチンピラとは格段に違う、相手を殺すことに躊躇ためらいを持たない目。

 自分が下手に動けばそのまま成す術もなく刺し殺される……そんなイメージが脳裏に焼きつく。



「槍、か……」



 そう言うと美由希は体を横向きに。

 左手を前に突き出し、後はすべて体に隠れる感じに構える。



「無手で槍に勝つつもりか……まずはその見積もりが甘かったことを示してやろう」



 瞬間、男が飛び出した。










「この辺で十分か」



 舞台は変わって恭也。

 後方にいる仲間たちの姿は、もう見えない。

 そして、前方に迫る気配――その数、3。



「気付いてたみたいね……」

「それはすごいとは思うけど……」

「私たち相手に素手で出てくるのは、無謀としか言えません」



 現れたのは女性三人。

 全員髪が長く、それぞれ髪型がストレート、ツインテール、ポニーテールと異なる。

 身長に大差はなく、155程度。

 ミニスカート、短めのTシャツ、そしてベスト……三人とも色こそ違うが服装は一緒だ。

 凹凸が少なくスレンダー、戦闘行為に関しては適した体型といえる。



「ふむ……その立ち位置、間合い……獲物は銃か」

『!!』



 恭也の言葉は三人の認識を一瞬で改めさせた。

 この男は強い。

 並の人間では決して太刀打ちできないほどに。



「とりあえず、中々の実力者のようね」

「そうですね。……一度聞いておきますが、素直に彼女たちを渡す気はありませんか?」



 ポニーテールの娘が問いかける。

 だが、恭也は当然とばかりに首を振る。



「お前たちにどんな理由があるかは知らないが……あいつらを渡すわけにはいかない」

「……何故です? 少なくとも、あなたは最近転入してきた人間なはず。彼女らに、命がけで肩入れする理由などないはずですが」

「そうだな……俺は、理不尽な暴力が嫌いなんだ。あいつらにとって、お前たちの行為はそれに該当する。だから……ここは譲らない」



 両足を開き、重心を下げる。

 右にも左にも飛び出せるように、そして、相手を真正面に据えることによってその挙動すべてを見逃さないようにするために。



「そう……残念です」

「美形の方は、嫌いではないのですが……」

「私たちにも引けない事情があるのです」



 そう言って、三人はそれぞれ懐に手を入れる。



(感じた気配はもう1つ……もう一人はどこだ?)


 一瞬、強い風。

 恭也の疑問を無視するかのように舞い落ちる木の葉。

 それがゆっくりと……空中で何度もひるがえる。

 そして、地に付いた瞬間……彼女たちが動いた。








SoU「SoUと〜」

彩音「彩音の〜」

二人『あとがきラジオ・リリカルハート放送局〜♪』

彩音「二回目、やっちゃいましたね」

SoU「こうなりゃ最終回まで……と言いたいが、話が重くなったら自主休業で」

彩音「そうしてください、変にテンション高いですから、このあとがき」

SoU「そうだな。じゃあ早速……まずは前回の公約通り、本作よりゲストを!」

恭也「……高町恭也だ」

彩音「じ、地味な登場ですね……それに、気配がない……流石は剣士さんですね」

恭也「なぜ俺がこんなところに来なければならないかはともかく……SoUよ、執筆活動が遅すぎはしないか?」

SoU「すんまそん……いまだに手間取っている部分がありまして……何よりPCが一度壊れたのが痛かった……一気に執筆意欲を持っていかれてな」

彩音「まぁまぁ、とりあえずゲストさんの紹介も終えたところで、このコーナー!ふつおたコーナー!」

SoU「な、ななななな、なんと、今回はこのコーナーに投稿いただけました!」

彩音「というわけで、恭也さん、読んでいただけますか?」

恭也「仕方ない、ゲストとしての勤めは果たそう。……月詠さんから。“今、SoUさんが一番欲しいモノは何ですか?”だそうだ」

SoU「欲しいもの……何だろう」

彩音「ゲーム系は大体持ってますよね?」

恭也「機械の山だな、この部屋は。今度美由希を連れてくるか」

SoU「いるだけで壊れると思ってる!?」

彩音「それはともかく、MD、SS、DC、PS、PS2、PSP×2、FC、SFC、GC、GB、GBポケット、GBカラー、GBA、GBASP、DSLite、WSカラー、Xbox360、PS3(60G)、Wii……無駄にゲームありますね」

恭也「で、パソコンも持っているわけか……これだけあると、部屋に人が入りきらないんじゃないか?」

SoU「……というわけで、今欲しいものは“広い部屋”です(泣」

彩音「押入れ込みでやっと6畳ですからね……テレビは大きいし(38型)、ディスプレイ大きいし(19インチCRT)……大きすぎです!」

恭也「本も目に付く限りで1200冊程度あるしな」

SoU「うぐぅ、ほっといて」

彩音「マスターがやっても可愛くないのでやめてください」

恭也「……もう一通あるな。“マスターの妹その2”さんから」

SoU「今度は次女か_| ̄|○」

彩音「“新調したPCのスペックを教えてください”です」

SoU「スペックか……面倒なので、“Microsoft(R) System Check Tool for PC Games”を使って出た情報を少々加工して公開」

彩音「以下の通りです♪」

 OSMicrosoft Windows XP Professional(5.1, Build 2600 Service Pack 2)
 CPUIntel(R) Core(TM)2 CPU 6600 @ 2.40GHz (2個のCPU)
 メモリ1022MB RAM
 HDD300GB + 120GB + 160GB + 160GB + 80GB + 120GB +1TB
 ディスプレイプラグ アンド プレイ モニタ  1600×1200(32bit) (60Hz)
 グラフィックNVIDIA GeForce 7900 GS(ビデオメモリ:256MB)
 サウンドRealtek HD Audio output

恭也「さっぱりわからんぞ」

彩音「あ、あはは……とりあえず、サウンド以外は結構ハイスペックです」

SoU「5年買い換えない、をコンセプトにした結果こうなりました。これでも実は、メモリは壊れた旧PCの方が上でした(2048MB RAM)」

彩音「旧式で使用不能のためやむなく、ですね」

SoU「CPUが変わると動作がぜんぜん違う……快適なのはとてもいいことなのだ!」

彩音「一番突込みがくるのはHDDだと思いますが……なんですか、この容量は。およそ2TBですよ」

SoU「ちなみにCドライブを除くと、空き容量は30GB程度しかない。……Cを除くと総容量は約1.65TBあるのに

彩音「使いすぎです……と、PCネタはこの辺で。もう一通きてますよ? リアルのお知り合いからですね。“バニング大尉萌え”さんから」

SoU「いやなHNだな……内容は……“家族構成を教えてください”……知ってるはずなのに_| ̄|○」

恭也「まぁ、一応知りたいと思う人がいただけでも喜んでおけ」

SoU「だなぁ、うん。というわけで、我が家は、祖母、自分、妹1、妹2、妹3、嫁、嫁の妹、で暮らしてる」

彩音「マスター以外みんな女性なんですね」

SoU「2006年の4月に祖父が逝ったからな……ちなみに両親とは暮らしていない。いろいろ事情があるんでそこは割愛で」

恭也「珍しく本気で深い事情だからな……これを見ている方も察してくれると有難い」

SoU「さ、ではようやく本編について、だな」

彩音「今回はまず、美夏ちゃんと小恋ちゃんのお話ですね」

恭也「美夏も大変だな。人間と違い、摂取し忘れればすぐに行動不能に陥るとは」

SoU「まったくだ。予備電力といった形を多少でも取れるのなら、より人間に近いと思うんだが……なにせ美夏は、今となっては旧世代の技術で作られたロボットだからな」

彩音「ロボットだというのが信じられませんけどね」

SoU「で、小恋」

恭也「いじり甲斐のある、面白い娘だな」

SoU「否定はしない。そこが小恋の魅力の1つだし。しかし、やっぱりこの娘は義之ラヴか」

彩音「そうしたのはマスターでしょうに」

恭也「確かに桜内はもてるようだからな」

SoU「……知らぬは本人ばかりなり、か」

彩音「ですね」

恭也「む?」

SoU「いやいや。……で、杏とななかが仲良くなったところで、ついに襲撃第二弾」

彩音「杏とななかの話は原作にもないですよね」

SoU「まぁ、能力者同士の親近感、というのもあるだろうしな」

恭也「そして襲撃か」

SoU「ようやく物語が大きく転がるよ」

彩音「槍使い、そして銃使い×3+見えないもう一人……二人は勝てるのでしょうか」

恭也「……御神流に負けはない」

SoU「恭也の格好いい台詞が出たところで、今回はこの辺で」

彩音「お相手は、美月彩音と」

恭也「高町恭也と」

SoU「SoUでした。ではまた〜♪」





美姫 「美姫ちゃんの〜」
ハートフル……って、ないないない!
美姫 「え〜。私たちもやろうよ、やろうよ〜」
出張版はありません。
美姫 「ケチー」
はいはい。
遂に始まる襲撃。
美姫 「前回とは違い、今回は手強そうな相手」
一体、どうなるんだ。
美姫 「このピンチを乗り切れるのかしら」
次回も、次回も待ち遠しい〜〜。
美姫 「急展開を迎えた次回を楽しみにしてますね」
待っております。



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