「晶ぁっ!! レンっ!! まぁたお姉様に料理教えてもらってたでしょーーー!!!!」

とある昼下がり……高町家から、そんな叫び声が響き渡った。

「うわっ、ノイン!! 少しぐらいいいじゃねぇかよ!!!」

「そやそや!!! フィーアちゃんをあんた一人で独占すんのはよぅないでー!!」

ノインの叫びに、晶とレンが言い返す。

「何言ってんのよ!! お姉様は私のお姉様なんだから私が何時何処で何時も一緒にいても構わないでしょ!!」

それに対して、ノインがまた言い返す。

最近は頻繁に高町家……目下、フィーアの知り合いのいる場所では頻繁に行われているやり取りである。

「はぁ……」

その光景を見て、恭也は胸を……正確には胃の辺りを押さえる。

「父様、胃薬です」

そんな恭也を見て、フィーアが胃薬を水と一緒に渡す。

「すまんな、フィーア……」

恭也はそれを受け取って、一気に飲み込む。

「あああああああ!!!!! 父さん!! 何お姉様に看病してもらってるのよっ!!!」

その光景を見たのであろうノインが、恭也にも言いかかる。

「ノイン、父様はお疲れなのよ……そっとしておいて上げなさい」

「でも、父さんには母さんがいるんだから何もお姉様がお世話しなくても……」

フィーアの言葉に、ノインはちょっとうつむきながら答える。

「父様の事を心配をしない娘はいないわ。 あなたも父様のことを少しは労わってあげなさい」

しかし、有無を言わせぬフィーアの言葉に、ノインは頷いた。

「フィーアの言う事だと素直に聞くんだよなぁ」

「せやな、うちらやったら絶対聞かんで」

それを見た晶とレンは隠れてぼそぼそと言う。

高町家は今日も……たぶん、にぎやかです。

 

 

 

 

 

 

日常スパイス

 

 

 

 

 

これは私が書いた【Twilight】の一ヶ月後のお話です。

ノインはフィーアと一緒に恭也とフィリスの子供になっています。

フィーアは前と少し話し方などが変わっています。

これはオリキャラメインですので、あしからず。

ではでは〜〜〜〜

 

 

 

 

 

フィーアが帰ってきてから早一月。

皆にも徐々に笑顔が戻り、日々のにぎやかさが増していっていた。

 

ドォォォォォォォォンッ!!!!!!!!!

 

そして、高町家では最早名物となった大爆音が響き渡った。

 

某女子寮の管理人は語る。

「いやぁ、ここまで聞こえてくるから何事かと思ったけど、もうあれがないと一日が終わらないんだよねぇ」との事。

 

「けほっ!けほっ!」

「今日は……一段と激しいなぁ」

大爆音の大元である高町家のリビングでは、晶とレンが咳き込んでいた。

「父様、大丈夫ですか?」

「ああ……なんとかな」

それと、フィンを展開してシールドを張るフィーアとその後ろにいる恭也。

そして、今日も元凶……

「晶ぁ……レン……一回死んどくかしら……?」

同じくフィンを展開したノインだった。

「てめー!! いい加減にしやがれ!!」

「そやそや!! やってええことと悪い事の区別もつかんのかい!!」

晶とレンは叫び、構えをとる。

「それくらい判っているわよ……だから、やるのよ」

ノインが手を翳すと、そこに光の粒子で出来た剣が現れる。

「今日という今日はぜってぇゆるさねぇ!!」

「いまさら泣いて詫びても許せへんでー!!」

晶は拳を握り、レンは棍を構える。

そして、きりきりと痛む胃を再度押さえる恭也。

3人の間の緊張が高まり、弾けようとした……その時。

 

「喧嘩はダメーーーーーっ!!!!!」

 

「ぐぅっ!!?」

「あうっ!!」

「うぎゃっ!!」

上から順に晶、レン、ノインの順番である。

「三人ともまた喧嘩してー!」

プンプンと怒りながら、なのはが現れる。

その隣には、ノインと同じような光の粒子で出来た剣を持ったフィーアが立っている。

その剣で、3人を軽く小突いたようである。

「ノイン、晶姉様、レン姉様……なのは姉様の言う通りよ。 喧嘩はよくないわ」

「でもお姉様っ!」

「ノイン……」

反論しようとするノインを、フィーアは一瞬だけ見る。

「ご、ごめんなさい……」

その眼を見た瞬間、ノインはシュンとなって謝る。

「いい娘ね」

それを聞いたフィーアはノインの頭を軽く撫でてやる。

実は、この一瞬の間だけフィーアの目があの頃の眼に戻っていたのだ。

あの、擦れた赤色に……

「晶ちゃんとレンちゃんは?」

「うぅ、ごめんなさい」

「かんにんやでー」

なのはに言われてはこの二人も大人しく謝るしかない。

こうして、毎回この二人によって騒動は鎮圧されるのである。

 

 

「で、今日の被害は台所の机と椅子が4つね」

そして夜……仕事から帰ってきた桃子とフィリスの尋問が始まる。

リビングには正座させられている晶、レン、ノインの3人。

その前にまるで仁王のごとく立っている桃子とフィリスの保護者組。

別段怒っているわけではないが、注意しないわけにはいかないのでこういう形になっている。

「三人とも元気なのはいいけど、あんまり家のもの壊さないでね」

桃子の言葉に、3人は頷く。

「でもお義母さん、これでもう何回目でしたっけ?」

「そうねぇ……えっと」

フィリスに言われ、桃子は指折りに数えていく。

その指が折られるたび、3人は居た堪れない気持ちになる。

「今回で7回目かな」

その言葉に、3人は項垂れた。

「被害総額は……言わない方がいいみたいですね」

フィリスの言葉に、うんうんと頷く3人。

「直せるものは何とか直して使っているが……これでは直してもきりがないし意味がない」

「そうですね、根本的に解決策を練らないと」

今回壊されたものを修理しながら、恭也とフィーアが言う。

(父さん、お姉様に近づきすぎよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!)

それを見たノインはそう思うが、口には出せない。

「ノインも、子供みたいなわがままで皆を困らせないでね?」

「でも母さんっ、晶とかレンがお姉様にベッタリくっ付くから!」

フィリスの言葉に、ノインは反論する。

「ベッタリって、料理を教えてもらってただけでしょ?」

フィリスが晶とレンに尋ねると、二人は頷く。

「でもっ、必要以上にベッタリしてたし……お姉様も何だか嬉しそうだったし……」

「つまり、やきもちね?」

その言葉にノインは顔を赤くしながら頷いた。

「ノイン…」

それを聞いたフィーアはノインを抱きしめて、頭を撫でてあげる。

「気付いてあげられなくてごめんね……でも、私にとってあなたは大事だけど、晶姉様やレン姉様も同じくらい大事なの……判って?」

「うん……」

易しく諭すように言うフィーアに、ノインはうなずく。

「だったら、仲良くしてね……3人が喧嘩なんてしてると、私も悲しいわ」

そして、ノインの額に軽く口付ける。

「お姉様ぁぁ……」

嬉し涙を流して、ノインはフィーアに思いっきり抱きつく。

「じゃあ、早く机と椅子を直して、ご飯にしましょっか」

桃子の言葉に、皆は頷いた。

 

 

「…………となる訳です、父様、美由希姉様」

深夜、皆が寝静まった頃、フィーアと恭也、美由希はリビングで話をしていた。

「戦術的に一対複数の場合、やはり見渡しが広く尚且つ狭い路地のような場所……もしくは、囲まれた場合にも有効な技が必要かと」

「俺達の場合は走りながら追いついて来るものから順番に倒すという手もあるな……」

フィーアの言葉に、恭也が付け足す。

「でも恭ちゃん、それだと護衛対象がいた場合離れちゃうんじゃない?」

「美由希姉様の意見はもっともです、護衛対象を連れながら走っていくのは少々無理があります」

「そうだな、だが細い路地などの一直線で相手が銃器を持っていた場合もまずいな……」

恭也の言葉に、フィーアは頷く。

「対峙していても複数発撃たれれば逃げ場はないですからね……」

うーんと、3人は考える。

「飛針で牽制していくって言うのは?」

思いついたように美由希が言う。

「それにも無理があるな……飛針も絶対的に牽制になるとは限らんからな、鋼糸も同様だろう」

美由希の意見を、恭也が否定する。

「正確に言うとな、御神流にはそう言ったときに使える奥義が幾つかある」

恭也の言葉に、美由希は驚く。

「が、この技は封じられた技だ。 守るべき御神が振るう技ではない」

恭也が指す封じられた技とは、恭也が嘗て【斜陽の剣士】といわれていた頃に使っていた技。

御神無戒流(みかみむかいりゅう)御神無葬流(みかみむそうりゅう)御神無尽流(みかみむじんりゅう)御神無慟流(みかみむどうりゅう)御神無限流(みかみむげんりゅう)御神無刀流(みかみむとうりゅう)6つである。

その余りの残忍性・残酷性・残虐性により、当時の御神流当代はこの六奥義を外道の技とし、固く封じた。

しかし、この6つの奥義は廃れることなく細々と受け継がれていき、今この時代に恭也がその奥義の後継者になった。

いや……正確に言うと、恭也以外にも、この六奥義を使えるものがいた。

恭也にこの六奥義を教えた恭慈……そして、その恭慈の弟子:ラビ・シャル……

しかし、恭慈も、ラビも恭也の手によってすでに帰らぬ人となっている。

そして恭也はすでにその体を壊しており、後世へと伝える事はない。

よって、この奥義は完全に失伝した技なのだ。

「恭ちゃんは、使えるの……その技?」

美由希は真剣な目で恭也に尋ねる。

「使える事には使えるが……今の俺の体では無理だ」

剣士として、自分の知らぬ技を見て上を目指すのは良い事だが、この血生臭い技は美由希にはあわない。

だから、こんな技は知る必要がない。

「お前はこんな技を知らなくても強くなれるさ、真っ直ぐに正しい御神の剣椀を振るえ。 美沙斗さんも、静馬さんもそう願っているはずだ」

今は遠い香港にいる美沙斗と、幼い頃にテロでなくなった静馬……

この二人も、美由希にはこんな技はいらないというだろう。

「うん……そうだね」

恭也の気持ちを察したのか、美由希は強く頷いた。

「…………で、父さんと美由希とお姉様は一体何をしてるのかしら?」

突然の声に、フィーアは勿論の事、恭也も美由希も驚く。

「ノインかぁ……脅かさないでよぉ……」

美由希は涙目になりながら溜息をつく。

そこには、42対のフィン:Phantomを展開して立つノインがいた。

「ノイン、むやみにフィンを出しては駄目でしょう?」

「だって、普通に近寄ったら父さんや美由希が気付いちゃうから……」

むーっと、ノインは反論する。

「すこしな、フィーアの戦術眼の観点から色々と話を聞いていたんだ」

「フィーアちゃんの戦術知識って凄いから」

そんなノインに、恭也と美由希が何をしていたかを話す。

「そりゃぁ、お姉様は私達の作戦指揮担当を目的に調整されてたんだから、殆どあらゆる戦術書は圧縮学習で覚えさせられたからね」

「ノイン」

話すノインに、フィーアは少し非難めいた目で見る。

「そう言う事は軽々しく言わないで、改めて……自分が人間とは程遠いって感じちゃうから」

ちょっと困ったように、フィーアは言う。

「フィーア……気にするな」

そんなフィーアの内面を感じ取ったのか、恭也は優しくフィーアの頭を撫でてやる。

「お前がたとえ何者であれ、俺達の娘であることに、なんら変わりはない」

そっと優しく、慈しむ様に恭也はフィーアの頭を撫で続ける。

「うん……お父さん」

少し眼に涙を浮かべ、フィーアは恭也に抱きつく。

ノインが来てからフィーアは話し方や行動が大人びたが、恭也やフィリスの前では昔のように子供のように甘える。

妹が出来たのだから、自分は余り甘えてはいられない、というのがフィーアの考えなのだ。

「勿論、ノインも大事な娘だからな。 気にせずに甘えてくれ」

「…………馬鹿、父さん」

言うが、ノインは嬉しそうな顔をして恭也に抱きつく。

ノインも、初めてフィーア以外に自分を大事にしてくれる人が出来た嬉しいのだ。

それに、初めての自分を愛してくれる両親というものにも感謝しているのだ。

「恭ちゃん、知らない人が見たらただのはんざ……」

そこまで言いかけて、美由希に鋭い眼光が向けられる。

フィーアとノイン、二人の頭を撫でながら、恭也が美由希を軽く睨みつけているのだ。

「さて、もう遅いから今日は寝ようか……」

「うん、そうだね」

「お姉様、一緒に寝ましょ」

恭也の言葉に、2人は頷く。

「では、お休みなさい美由希姉様」

「また明日ね、美由希」

そう言って二人はリビングから出て行った。

「さてと、美由希……覚悟は良いか?」

後に美由希は語る……言うんじゃなかった……と。

 

 

そして次の日……

「晶ぁっ!! レンっ!! あんた達はまたぁっ!!!」

凄まじい叫び声が、高町家に響き渡る。

「だぁぁぁっ!! ノイン!! てめぇ昨日の事で懲りたんじゃねぇのかよっ!!!」

おたまを持った晶がノインに向かって叫ぶ。

「それとこれとはまた話がべつよっ!!!」

ぎゃあぎゃあぎゃあぎゃあと、朝の言い合いは終わらない。

「昨日の反省はなんだったんだ……」

恭也が呟くと、フィリスとフィーアが恭也の肩をポンと叩く。

高町家は、いつだって賑やかです。

 

 

 

 

 

 

 


あとがき

  

斜陽第8弾 日常スパイス終了。

フィーア「何だか騒がしい日々ね」

まぁ、ノインみたいなキャラってあんまりとらハにはいないから新鮮かと。

フィーア「ノインって、ツンデレよね」

ツンデレだな……主にフィーアに対してだけど。

フィーア「お姉様っ子って感じだものね、恭也も大変そうね」

まぁ、子供を生まなくても2人も娘が出来たんだからね。

フィーア「そういえば、本編で名前のあがったラビ・シャルってだれ?」

これは、一様アンケートかな、知りたい人がいればそれを使った番外編を書くけど。

フィーア「クスクス、来るかしら?」

………………まぁ、どっちでも。

フィーア「ではでは〜〜〜〜」




あはははは〜、騒がしい毎日を送っているようだな。
美姫 「ええ、本当に。でも、楽しそうで良いじゃない」
恭也は大変そうだけれどな。
美姫 「でも、可愛い娘だもの」
だな。さて、ラビとは一体、誰なんだろうか。
美姫 「うーん、私は番外編を読んでみたいかな〜」
俺も読んでみたいな。
美姫 「じゃあ、これで読みたいに101票ね」
いや、2票だろう。
美姫 「何を言っているのよ。私は100票持ってるのよ!
おいおい…(汗)
美姫 「とまあ、それはさておき、今回はこの辺で〜」
ではでは。



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