『大河の誓い』
私の名は藤村大河。昔は「冬木の虎」なんて呼ばれたりもしていた。
虎竹刀を振るえば天下無敵。一度振るえば総てのものを破壊する。
学生時代はその方面で名声を誇ったが私も乙女なので卒業した。
最近は教員免許を取って高校教師をやっている。
最初のうちは生徒たちも優しく接してくれたのに、
最近はタイガーと呼んでは私の心を荒ませてくれる。
実家は仁義なき戦いを地で行く藤村組。
親ももちろん仁義なき組長である。
そんな私の唯一のオアシスは可愛い弟分の衛宮士郎とのひと時である。
士郎は優しい。
文句を言ったりもするが、その言葉の節々からは優しさがにじみ出ている。
そしてなにより士郎の作る料理は天下一品なのだ。
士郎との出会いはもう10年も前のことだ。
父と祖父の知り合いであった士郎の養父である切嗣さんが連れて来たのだった。
会った頃はいつも何かに怯えているような子供だった。
私はそんな士郎にありったけの愛情を注ぎ込んできた。
養父である切嗣さんも私を家族のように扱ってくれた。
なんと言っても家がそういう方面だっただけに新鮮な世界だった。
次第に私は切嗣さんに心惹かれていった。
でも、切嗣さんは重い病にかかっていた。
私にはどうする事も出来なかった。
士郎もそれがわかっていた。
日々衰弱していく切嗣さんを目にしていくは辛かった。
ある日切嗣さんに呼び出された。
家に行くと庭に切嗣さんが立っていた。
「僕は今日死ぬ。」
私が来たことに気づいたのか振り返らないまま切嗣さんは言った。
「大河、君は僕が魔法使いだって言ったら信じるかな?」
やはり振り返らないまま切嗣さんは言葉を続ける。
私は虚をつかれて何もいえなかった。
「士郎はアッサリ信じちゃったんだよ。おかしいだろ?」
切嗣さんはなおも言葉を続ける。
「10年前の火事は知っているね。僕は士郎をその火事から魔法を使って助けたんだ。
正義の味方を志していたのに、結果救えたのは士郎一人だった。
みんなを救う正義の味方っていうのは幻想なんだよ。
でも、士郎はそれを実践する気でいるんだよ。
そうなったら絶対に士郎は現実にぶつかって絶望するだろう。
大河、勝手な頼みだけど、士郎は君を姉のように慕っている。
士郎が間違った方に行こうとしたら怒ってあげて欲しい。
他でもない家族である君が・・・」
私はただ黙って聞いていた。
魔法使いなんて子供のようで信じられないはずの言葉、。
人をからかうことが得意でよく騙されて士郎にも笑われた切嗣さんの言葉なのに、
私は無条件に信じて受け入れてしまっていた。
だって、これはまぎれもなく私への遺言なのだから。
切嗣さんの体が揺れるようにして倒れた。
「切嗣さん!」
私はわれにかえって叫びながら急いで駆け寄り抱きかかえる。
「最後の最後なの・・・に、女の子を・・・泣かせるなんて失敗したかな・・・」
そう私の目からは涙が溢れていた。
そして高揚した精神は理性の堤防を越えてずっと秘めていた言葉を伝えた。
「切嗣さん、私は貴方を愛しています」
それに対して切嗣さんは困った顔をして答えてくれた。
「困った・・・ね・・・本来女の子に好意をもたれることは・・・嬉しいんだけど。
僕には・・・それに・・・応える資格もないし、何より・・・もう死んでしまう。
だから答え・・・はごめんなさい・・・しか言えない。
だけど・・・大河・・・君はそんな事で・・・納得・・・
してくれる・・・性格・・・じゃない・・・事も知っている。
だから・・・さっき・・・頼んだ・・・事に・・・
1つだけ・・・加えること・・・で勘弁・・・して欲しい。」
切嗣さんの息が荒くなってきた。
本当ならすぐに布団に寝かせてあげないといけないのに
私はそうせずに切嗣さんの答えをただ聞いていた。大粒の涙を流しながら。
「士郎・・・の・・・姉として・・・だけ・・・でなく、
母親・・・として・・・も・・・支えてやって・・・欲しい。
勝手・・・な・・・言い分・・・だけど・・・ね・・・」
私にはその答えで十分だった。
だから私もすぐ答えた。
「わかりました。藤村大河は、衛宮士郎を家族として、姉として、母親として支えます」出来る限りの笑顔で。
すると、切嗣さんは満足したような笑顔を見せて言ってくれた。
「安心した」
それから私は切嗣さんを布団に運んで寝かせてあげた。
すると息の荒さも暫くするとおさまってきた。
切嗣さんの寝顔は穏やかすぎて怖かった。
見ていられなかった。
だから士郎が帰ってくると早々に私は逃げるように帰ってしまった。
そして翌日の朝切嗣さんが亡くなった事を知った。
私は自分の弱さに腹が立った。
家族として、姉として、母親として士郎を支えると誓ったのに、
士郎が一番悲しんでいる時に支えてあげられなかった。
だから私はもうこれ以上間違わない事を空を見上げて誓った。
「今日を限りに藤村大河の乙女心は封印します。
士郎が立派な一人前になるまで、家族として、姉として、母として支えます。」
あれから数年が経ち、気がつくと私は士郎を随分困らせる姉になってしまっていた。
食事をたくさん食べ、我がままを言い、散々からかっている。
元来あのような家に育ったせいで人付き合いは極端だった。
そのせいか士郎にも随分と極端な形の愛情になってしまった。
でも、もう引き返す気持ちも無い。
何故なら藤村大河の手段と目的がすり替わってしまったから。
だから今日も私はこう言うのだ。
「士郎御飯まだー?」
<タイガー道場-出張版->
弟子一号:師匠の純愛ものですね。
師匠:やっと私が陽の目を見るときが来たのよ!
弟子一号:師匠質問です!
師匠:よろしい許可します。
弟子一号:これは師匠の初恋の話でありますね?
師匠:その通り!切嗣さんに恋した乙女な私のお話。
弟子一号:という事は別にこの後士郎とくっつくというお話ではない・・・と。
師匠:そ、それはどうかな。この後あま〜い生活が待ってるかもしれないよ。
弟子一号:師匠、それは希望的観測であります!
師匠:じゃあ作者にこの後のお話を書いてもらえばいいのよ。
弟子一号:師匠それは危険であります!
師匠:それは何故かな弟子一号。
弟子一号:はい。実は作者は無類のセイバー好きとの事です。
師匠:むむむ!それは聞き捨てなら無い情報。
だけど、じゃあなんで私が栄えあるデビュー作なのかしら。
弟子一号:噂によると、どうやら片手間の練習で書くにはもってこいのキャラだとか・・・
師匠:ガオォォォォォォォォォォォォォ!
弟子一号:師匠!あそこの草陰から作者の気配がします!
師匠(宝具虎竹刀発動中):私を虎と呼ぶなーーーー!
衛門:だ、誰も言ってません〜〜〜!
ガシ!ベシ!ドゴ!ボコ!ドドドドドドドドド!!!!!
弟子一号:作者が虎竹刀百烈剣をくらってるのでこれでお開きです。
次回は私がヒロインよね?
衛門:...............(ヘンジガナイタダノシカバネノヨウダ)
ガァァァーー!
第一回、PAINWEST道場〜。
美姫 「うんうん。良く言えたわね、弟子」
……へっ? 俺が弟子なのか?
美姫 「当たり前じゃない。それとも、私が弟子なの?」
いや、普通はそうじゃないかと。
美姫 「ふーん。別に変わっても良いけど、師匠は弟子を殴るかもしれないんだよ〜」
俺が、美姫を殴るのか?
美姫 「そうよ」
(やってみたいが、後が怖いし……)
う、う〜〜〜ん。
美姫 「師匠、悩んでいる場合ではないです」
え、え?
美姫 「まずは、初投稿をしてくださった衛門さんにお礼を!」
あ、そうだった。
衛門さん、投稿ありがとうございます。
大河の視線でのお話でしたが、ちょっと切ない感じがして、良いですね。
美姫 「師匠は、しんみりとしたのが苦手ですからね」
うんうん。これを少しは参考に出来れば……。
美姫 「師匠、次回のSSの催促もしなければ…」
いや、それは流石にまずいだろう。
美姫 「いえ、そんな事はありません。何故なら、言うのはあくまでも師匠であって、私ではないからです」
こ、こ、こ、この馬鹿弟子ぃぃぃぃぃ!!
鉄拳制裁!
美姫 「甘いであります!」
ぐげぐろぼがぁっ!
美姫 「流石、師匠。弟子の為に手加減をしてくれるとは」
そ、そうだろう。で、弟子相手に本気を出すのは忍びないからな……。
美姫 「師匠、ではもう一度手合わせをお願いします」
い、いや、今日はもう止めておこう。
ほら、怪我したし。
美姫 「大丈夫であります。丁度良いハンデだと思います。
それに、師匠。既に治りつつあります」
う、うぅぅぅ。く、喰らえぇぇぇぇ!!
美姫 「ふっ。甘すぎます!」
がっ、ぐげ、ぐぅぅ。
ちょ、ま、待て…ガハッ!
美姫 「まだまだであります」
ぐげろびょみょにょなにょぉぼがああああぁぁぁ!
ピクピク……。
で、弟子よ……。か、皆伝だ……。
美姫 「ありがとうございます。
………………。
……さ〜て、つまり、これで師匠を倒した私が師匠で、アンタが弟子よね?」
え、な、何で?
美姫 「だって、二人しかいないんだから。さて、弟子。
何時まで寝てる! さっさと起きろ」
それは、ちょっと酷いんじゃ…。
まだ、当分は立てません、師匠。
美姫 「えーい、弱音を吐くな。足が駄目なら、手で立て」
そ、そんな無茶な。
美姫 「口答えする気?」
い、いえ、そんなつもりはありません、師匠。
美姫 「そうだわ。さっきまでの弟子に対する酷い仕打ち。
今こそ、仕返しをする時だわ」
……そ、その意見には、甚だ疑問があります、師匠。
美姫 「受け付けません! と、言う訳で、飛んでけ〜〜」
Nooooooooo!! 師匠だろうが、弟子だろうが、普段と変わらないやん〜〜。
美姫 「さて、衛門さん、これからもどんどん書いてくださいね。
それじゃ〜」
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