悲鳴を聞いた四人はすぐさま聞こえた方向へと駆け出した。

声からするとそこまで離れていないため、急げばまだ間に合うと思い持ちうる最大の速度で走る。

その途中で、同じく声を聞き駆けつけたと思われるフィリスと合流する。

 

「フィリスさんも悲鳴を聞いて?」

 

「そう言うってことは、美由希さんたちもなんですね……」

 

「話してる暇はないわよ! 急がないと間に合わなくなるわ!」

 

ミラの叫びに二人は頷いて駆け出す。

合流してからすぐにその悲鳴が聞こえた場所にたどり着いた。

悲鳴が聞こえた場所だというのは見てすぐに分かった。

ドアが打ち抜かれているのだ。

それだけでも明らかにただ事ではないということはわかる。

 

「「「『『っ!?』』」」」

 

すぐにその部屋の前に駆け寄った五人の目には驚くべき光景が映った。

昨夜対峙した影が生徒の首を掴み持ち上げ、黒く輝く刃を胸に突き刺す瞬間という光景が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メンアットトライアングル!〜対なる心、継承せし二刀の剣〜

 

【第二部】第五話 闇より聴こえし声

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突き刺された生徒の胸からは血が流れることはない。

血はすべて影が持つ魔剣が吸い取っているからだ。

その目の前で行われている事実が信じたくはなかったあのことが真実だと言っていた。

 

『やっぱり……』

 

『魔剣……ダーインスレイヴ』

 

呟く二人の声にいち早く我に返った美由希は一瞬で影との距離をつめ、生徒の首を掴んでいる影の腕を斬る。

斬られた腕は黙散するように消え、生徒はずるりと剣から抜け落ちる。

 

「見つけた……」

 

影は自信の腕を斬り落した美由希に視線を向け、昨夜と同じ事を言う。

だが、美由希はそんな呟きに気を向けるでもなく絶え間ない斬撃で影を切り裂いていく。

 

「フィリスさん! 彼女を早く!!」

 

攻撃の手を緩めず、美由希は叫ぶ。

それでフィリスは我に返り、倒れている生徒へと近づき、抱えるように持ち上げてすぐに退避する。

フィリスが生徒を連れて退避したのを見て、ミラは魔法を影に向けて放つ。

 

「アイスニードル!!」

 

美由希の援護をするように放たれる鋭く尖った氷は影を貫いていく。

二人の攻撃で影は元の姿が想像もつかないほどぼろぼろになる。

だが、それでも攻撃は意味を成していないことは二人にはわかった。

なぜなら体をぼろぼろにされているにも関わらず、影のあの朱色の目が美由希を捉えたままだからだ。

その目からは激しい憎悪の感情が窺えるためか美由希はぞくっとした感じを覚え、後方へと下がる。

 

「逃げてください!」

 

「え?」

 

突然の美由希のその言葉にフィリスは目を丸くする。

それもそうだろう。

昨夜の影との戦闘を見ていないフィリスには圧倒的に美由希たちが有利に見えているのだから。

 

「早く!!」

 

だが、切羽詰ったようなその声にフィリスはすぐに生徒を抱えて部屋から走り出る。

それに続くようにミラ、そして美由希も部屋から出て、少しでも遠くに逃げようと走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで、逃がさないとでも言うように……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

影は、五人の進行方向に現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「『『っ!?』』」」」

 

突如、目の前に立ちふさがった先ほどの影に五人は驚きを隠せなかった。

影は驚く五人を、いや、美由希とその朱色の目で捉えながら近づいてくる。

 

「くっ…」

 

美由希はすぐに二刀を構え、影を迎撃する。

だが、影は美由希が繰り出す斬撃をまるで見えているかのようにあっさりと捌いていく。

先ほどまで何もしなかった影とは思えないにあっさりと。

 

「はっ!」

 

右で、と見せかけて左での斬撃というフェイントを繰り出す。

だが、それすらもわかっていたかのように捌く。

 

「フレイムダガー!!」

 

ミラの魔法が影の体を捉え、襲い掛かる。

影はそれを美由希の剣を捌きながら目で捉える。

瞬間、影の眼は禍々しいほどの赤い光を放ち、飛来する炎の刃を黙散させる。

 

「な……」

 

それにはさすがに驚くしかない。

魔法を魔法で相殺するのではなく、眼光だけで散らせるなど普通なら誰にもできはしない。

しかし、目の前の影は事実それをした。

その事実が、ミラだけでなく、その場にいた者たちを驚愕させる。

 

『あれは……魔眼!?』

 

『魔眼って……だとしたら、魔法は逆効果だよ!』

 

二人の声が響くと同時に影の動きが変わる。

先ほどまでは斬撃を繰り出してきても簡単に捌ける速度だった。

だが、今は美由希ですら捌ききれないほどの斬撃が繰り出されている。

そんな変化に動揺し、若干押され始めている美由希を援護しようとミラは魔法を放とうとする。

 

『だめです!! 魔法を放っては!!』

 

「え……」

 

『魔眼がある以上、魔法を使えばこいつの力を増幅させることにしかならないの』

 

「それって…どういう」

 

『放たれた魔法を魔力に還元し、吸収するんです……』

 

それが影の動きが変化したの原因。

簡易な魔法はこの魔眼にて魔力に還元され、自身の力として吸収される。

還元されない魔法があるとすれば上級ぐらいなものである。

だが、今、この場所で上級の魔法を使うわけにはいかない。

使えば、美由希ならばともかくフィリスはおそらく防ぐことが出来ないからだ。

 

「ぐっ」

 

早くなった剣速に集中するあまり、不意をついたような蹴りを避けられず横腹に食らう。

そして若干、体制を崩した美由希の首を影の手が掴み持ち上げる。

 

「「美由希(さん)!」」

 

首を掴まれ苦悶の表情を浮かべる美由希。

それを見るだけでどうすることもできない四人。

そんな四人の目の前で、美由希の胸に剣先が迫る。

 

『主様!』

 

『やめてぇぇぇぇぇぇ!!』

 

美由希が殺されるところを間近で見せ付けられる二人は叫ぶ。

苦悶に歪む表情、徐々に迫る剣先。

四人は、もうだめだ、と思い顔を背ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やめろ……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聞こえたその声は、誰もがよく知る声だった。

 

 


あとがき

 

 

切のいいところで終了で〜す。

【咲】 また中途半端ね。

そ、そそそそそそんなことないって!

【咲】 なんでどもってんのよ。

なんとなく?

【咲】 とりゃ!

ぐへっ!!

【咲】 で、いきなりだけど今の段階は全体でいうとどの辺くらいに位置してるわけ?

けほっ……もうすぐ中盤に差し掛かるあたりだな。

【咲】 ふ〜ん、二部は結構長いのね。

まあね。

【咲】 次回の構想とかはもうできてるの?

タイトルとか話の筋とかはな。完全じゃないけど。

【咲】 ちなみに次回のタイトルは?

「学園という名の檻」だな。

【咲】 そうつけたからには何かしらの意味があるんでしょ?

あるね。

【咲】 そ…ならいいわ。 じゃ、今回はこの辺でね♪

次回もまた見てくださいね〜♪




今回の敵はかなり手強いぞ。
美姫 「闘いながら成長するような奴ね」
ピンチに陥った美由希。
美姫 「そこに聞こえてくる一つの声」
一体、それは何!?
美姫 「次回も気になるぅぅぅ」
続きが待ち遠しいぃ。
美姫 「次回も待ってますね」
待ってます。



▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る


inserted by FC2 system