魔剣の消えた地下水路の一室、そこは壁や床、一片の隙間もなく赤に染まっていた。

時間が経っているせいか、黒みを帯びた赤ではあるが、室内を赤く見せるには十分な色だった。

そしてそんな赤い部屋の中心、台座の置かれている場所の前に一人の女性が立っていた。

 

「ふふふ……血の復活、か。 教団の計画もそろそろ第二段階に入る頃ね」

 

妖美な笑みを浮かべつつ台座に視線を向け、誰に言うでもなく呟く。

そして言葉を紡いだ口を閉ざすと、女性は身を翻して歩き出し、部屋を出て行った。

 

「第一段階では、彼らだけでも最低限の被害で済んだけど……さすがに、第二段階に入った今となっては私自身も動かないと駄目ね」

 

女性は笑みを浮かべたまま再び呟きつつ、地下水路の通路を歩き続ける。

ブツブツと呟きながら女性が歩き続けることしばし、ふと女性の頭に声が聞こえてきた。

 

『行動を起こすのは自由だけど……くれぐれも自身の力を表立って使っては駄目だということを、頭に入れておいてね』

 

それは冷たさを感じてしまうような声色であるのに、どこか温かさをも感じる少し矛盾した声。

そして、その声は女性にとって、とても聞きなれた声でもあった。

 

「あら……サブのあの子じゃなくて、メインのあなたが出てくるなんて珍しいわね」

 

『力の封を破ってしまった今、ランドグリスだけでは荷が重過ぎるわ。 そうでなくとも、元からあなたはあの子の言うことをほとんど聞かないんだから』

 

「ふふ……そう。 確かに今の私は、あの子じゃ怖がっちゃうかもしれないわね」

 

『いや、別に怖がってはないわよ? むしろ、以前より性質が悪くなったって泣いてたくらいなんだから』

 

声がそう言うと、女性は妖美と言えた笑みを少しだけ苦笑という形に変える。

だが、すぐに笑みそのものを消して、女性は正面を向いたまま声に対し再び口を開いた。

 

「じゃあ、これからはあなたが私のパートナーになる……ということでいいのかしら?」

 

『いえ、確かに力の制御全般は私が担当するけど、主に表へ出るのはこれからもあの子ということになるわ』

 

「そう……でも、それだとなぜあなたは今、表に出てきたのかしら?」

 

『別にこれといった理由はないわ。 まあ、敢えて言うなら、力を取り戻したあなたの様子を少しだけ見たかっただけね』

 

「ふふふ……心配性ね。 あの子も、あなたも……」

 

『それだけ、本来のあなたの力は危ない力だということよ、ヘル。 じゃあ、私はもう引っ込むから……これからもあの子をよろしくね。 あと、あまり勝手な行動であの子を困らせないように』

 

女性―ヘルがその言葉に再び苦笑し、声は同時に聞こえなくなった。

しかしその後、先ほどの声とはまた別の声がヘルの頭の中に聞こえてきた。

 

『あ、あの……えっと……お久しぶりです、マスター』

 

「久しぶりね……だいたい、一週間ぶりかしら? 今まで声を掛けてこないから、てっきり愛想を尽かされたと思ってたわ」

 

『そ、そんなことありませんよ!! 私がマスターに対して愛想を尽かすなんて、そんなことありえません!!』

 

「ふふ……そんな必死に否定しなくても、ただの冗談よ。 ほんと、ランちゃんはからかい甲斐があるわね」

 

『か、からかうって……はぁ、本質はやっぱり前と変わらないんですね。 しかも、またランちゃんって言うし』

 

最初こそ緊張が見られたものの、ヘルが前と同じだということを知った途端にそれはなくなった。

そのことにヘルは小さく笑みを浮かべながら、地下水路をコツコツと歩き続け……

 

「まあ、とりあえずこれからもよろしくね……私と、あなたたちとの契約が続く限りは、だけど」

 

『そ、そんな怖いことさらっと言わないでくださいよぉ……』

 

そう言い合って、通路の先の暗がりへと姿を消していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メンアットトライアングル!2〜永久に語り継がれし戦士たち〜

 

【第二部】第一話 光の帰還と魔眼の封印

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

吸血鬼事件から一週間後の昼、その時間に昼食を終えた恭也、ミラ、裂夜、セリナの四人は中庭にいた。

いつもなら講義の準備をするなり、学園内の掃除を(ミラに命じられて)しているのだが、この日はある理由で中庭に集合していた。

その理由というのは、スレイプニルを使用して海鳴に行っていたアーティがこちらの世界に戻ってくる日だということ。

十数年前の事件が終わり元光の主である美由希と別れた後、アーティは一年に数度、定期的に美由希に会うため海鳴へと行っていた。

これは毎年恒例のことなので本来なら出迎えることはしないのだが、今回ばかりは四人とも中庭でアーティの帰りを待ち望んでいた。

なぜ、アーティの帰りを待ち望んでいるのか……それは、アーティにしか頼めないことが四人にはあったためである。

 

「はぁ……アーティ、まだかしら」

 

「ふむ……確かに、いつもの時間よりも少し遅いな」

 

あからさまにミラはそわそわし、恭也は反して冷静に時間を見つつそう言った。

だが、表面上は冷静さを保ってはいても、内心では恭也もミラ同様落ち着きはなかった。

そう……アーティの帰りを特に待ち望んでいるのは、この二人なのだ。

というのも、アーティにしか頼めないことの一つで、綾菜の魔眼を再封印というものがある。

魔眼の齎す苦しみに晒される綾菜を、親である二人は正直見ていられないと言うのが心情。

故に、その苦しみから早く解放させたいという思いから、二人はアーティの帰りを心待ちにしているのだ。

 

「あ、転移反応だ……そろそろ、かな」

 

不意に一定の場所の魔力が強まったことに、セリナは小さくそう呟く。

それとほぼ同時に、強まった魔力は粒子となって現れ、一箇所に収束し始める。

そして粒子が収束し終えると、時空の渦のようなものが現れ……

 

「よい、しょっと……」

 

なぜか多大な荷物を持ったアーティが、渦―ゲートの中から姿を現した。

ゲートから出てきたアーティは重そうな荷物を地面に置き、正面に目を向けると同時に驚きを浮かべる。

 

「おっかえり〜っ!!」

 

「私の帰りを出迎えるなんて、珍しいですね。 何か、問題でも起こったのですか?」

 

「ええ、その通りよ……帰ってきた早々で、悪いんだけど」

 

「いえ、お気になさらずに、ミラ様。 私を待っていたということは、少なくとも私がいなければならないことが起こったということ……なら、私が疲れていようとも、休んでなどいられません」

 

不器用ながらも、小さく微笑みながらアーティはミラにそう返す。

それにミラは小さくお礼を口にし、恭也と共にアーティを連れて綾菜のいる自室へと向かっていった。

ちなみに……

 

「ねえ……この荷物、私たちが運ばないといけないのかな?」

 

「この流れだと……そうなんだろうな」

 

一体あの小柄な体のどこにそこまでの力があるのか、そう言えるくらいの多大な荷物。

そんな物を前に、裂夜とセリナの二人はただ呆然とするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恭也たちの自室、そこに連れてこられたアーティはミラに言われるままに、綾菜の前へと座った。

アーティの目の前で同じく椅子に座る綾菜は、少しだけ落ち着かない様子で不安そうな目を恭也とミラに向けていた。

それは、綾菜が恭也とミラが傍にいるときに人見知りを発揮するときと少しだけ似ている。

本来、綾菜が物心ついたときから傍にいるアーティは綾菜にとってはセリナや静穂と同じお姉さんといった存在だ。

しかし、同じお姉さんのような存在であっても、セリナと静穂の二人と、アーティでは違うところがある。

それは、アーティの纏っている空気が、この二人とは決定的に違うという点だった。

いつも冷静で、笑みをいうものを浮かべることがほとんどなくて……傍目から見たら、心の冷たい人というふうに見られかねない。

だけどそれはただ不器用なだけで、本当はとても温かくて優しい子。

それを綾菜も知ってはいるけれど、どうしてもアーティの纏う空気に苦手意識を抱いてしまうのは止められなかった。

 

「う、うぅ……」

 

落ち着きなさは次第に強くなっていき、あからさまにそわそわし始める。

それに気づいた、というより元々気づいていたアーティは安心させようと不器用な笑みを浮かべ声を掛ける。

だが、それでも綾菜は苦手意識を拭うことなどできず、ただ不安そうな目でそわそわし続けるのだった。

 

「綾菜……アーティは酷いことなんて何もしないから、そんなに怖がったりしなくていいわよ」

 

「っ……うん」

 

やはり母親……ミラが優しくそう言った後、少しだけ落ち着いた綾菜を見るとそう思わざるを得ない。

そして、ミラの言葉で若干の落ち着きを取り戻した綾菜に、アーティは少しだけ苦笑しつつ、眼帯の付けられた左目にそっと手を当てる。

 

「……」

 

眼帯越しではあるが左目を触られることにビクビクしながらも、綾菜はじっとしつつアーティの成すがままになる。

恭也とミラも、アーティが左目を診断している最中、少しだけ落ち着きがない様子ながらもじっと結果を待っていた。

 

「……ふぅ。 なるほど……そういうこと、ですか」

 

しばし左目を当てた後、小さく息をついてアーティはそう呟く。

その後、アーティは左目に当てた手に白い魔力の粒子を収束させ、僅かな光がその手を包む。

そして左目に当てた手を包んだ光が収まると、アーティはゆっくりと綾菜の眼帯を外す。

すると、魔眼の開眼によって朱色に染まっていた左目は、元の黒い瞳に戻っていた。

 

「はい、治療完了です」

 

再び綾菜に安心させるように不器用な笑みを浮かべ、アーティは恭也とミラのほうを向いてそう言う。

それに二人は頷きつつ礼を言い、同時にタイミングを見計らったかのように部屋の扉が開かれた。

 

「ああ〜……疲れた〜」

 

「たくっ……なんなんだ、このくそ重い荷物は」

 

開かれた扉から入ってきたのは、アーティの荷物を持った裂夜とセリナだった。

荷物を持った二人はそれを部屋の中に運び、かなり疲れたような表情で部屋のベッドに腰掛ける。

そんな二人と、二人の持ってきた荷物を見て、アーティは少し申し訳なさそうな表情を浮かべる。

 

「すみませんでした、裂夜様、それとセリナも。 荷物を運ばせてしまって……」

 

「ん……いや、気にすることはない。 確かに大変だったが、それなりに運動にもなったしな」

 

アーティの謝罪に裂夜はそんな風に返し、セリナに本気で疲れたのか、ベッドでグッタリしたまま返事は返さなかった。

そんな二人にアーティは笑みを浮かべつつもう一度謝罪を口にし、荷物の傍へと歩み寄っていった。

 

「そういえば、その荷物は一体なんなの? すごく気になってたんだけど」

 

ミラの問いにアーティは言葉で答える代わりに、荷物の口を開いて中を見せる。

すると、中に入っていたのは……

 

「これは……刀?」

 

覗き込んだ荷物の中には、鞘に納められた刀が数本入っていた。

一体なんで刀なんて、と思いつつミラはその中の一本を取り出し、鞘から抜いて驚く。

なぜなら、鞘から抜いた刀の刀身には、刃がついてはいなかったのだ。

 

「ふむ……ちゃんと言った通りの本数をもって帰ってきてくれたみたいだな」

 

「はい、恭也様。 それと、小刀、飛針、鋼糸はこちらの鞄に」

 

「ああ、わかった。 すまなかったな、こんなことを頼んでしまって」

 

そう言いつつ、恭也はミラの横にしゃがんでミラと同じく刀を一本取り出す。

そして同じように鞘から少しだけ刀を抜くと、やはりそれの刀身には刃はついてはいなかった。

それに、ふむ、と満足そうに頷くと、ミラの持つ刀と共に鞄の中へとしまう。

 

「ねえ、恭也……これ、なんで刃がついてないの?」

 

「ん? ああ、これは刃落とし刀といって、鍛錬などに使われる刀なんだ」

 

「そう……じゃあ、これは蓮也と綾菜の鍛錬用に使うの?」

 

それに恭也が頷くと、ミラは少しだけ不安そうな顔を浮かべる。

ミラも知ってはいた……刃落とし刀も真剣も二人が鍛錬や冒険で使っていることを。

だが、実際に実物を見ると、やはりあんな子供にこんな物を使わせるのは危ないのではと思ってしまう。

しかし、だからといってこれを使うな、鍛錬をするなとは言うことはできない。

前も思い知らされたが、これは蓮也と綾菜の二人自身が望んでやっていること。

それを危ないからと、危険だからと一方的に止めさせるのは今のミラにはもうできなかった。

 

「止めてとは言わないけど……あまり、無茶なことはさせないでね、恭也?」

 

「分かってるさ……二人はまだ、成長途中。 変に無茶させても、昔の俺の二の舞いなるだけだからな」

 

無茶な鍛錬を繰り返して、膝を壊した……そんな過去を経験しているからこそ、恭也は無茶な鍛錬に意味はないことを理解している。

今でこそ、魔法による治療を年単位で繰り返して膝は完治するに至ったが、二人を無茶させて自分と同じく治るような怪我で済むという保障はどこにもない。

そうでなくとも、ミラほど過保護ではないが自分の子供が可愛い恭也としては、自分と同じになどさせたくはない。

その思いを、昔恭也自身から聞いているからこそ、ミラは恭也の返したその言葉に完全ではないが不安感を拭うことができた。

 

「こほんっ……恭也様、それら以外で頼まれていた物なのですが」

 

「あ、ああ」

 

何か甘い雰囲気が周りを取り囲もうとしている中、アーティの言葉で二人は少し慌てたように我に返る。

我に返った二人が自身のほうを向いたのを確認し、アーティは荷物の中から小さめのダンボールを取り出す。

そして、ダンボールの封を開け、中からそれを取り出して恭也へと差し出した。

 

「さすがに全部は無理でしたので、これだけですが……」

 

「いや、十分だ……にしても、何年もほったらかしだったから凄いことになってるな」

 

アーティがダンボールから取り出した物、それは……恭也の盆栽だった。

何年もほったらかしだったため、以前までの姿は見る影もないが、盆栽だということは見た感じでわかった。

しかし、盆栽というものを見たことがないミラと綾菜はそれを不思議そうに見詰めていた。

 

「お父さん……これ、何?」

 

「ああ、これは盆栽といってな……まあ、簡単に言えば芸術の一つ、だな」

 

「芸術……こんなただの木が?」

 

「む……確かにこれは何年も手入れをしていないからそう見えるかもしれんが、手入れをしていたらこんなものじゃないんだぞ?」

 

「そう……でも、私には理解できそうもないかも」

 

海鳴にいる家族だけでなく、愛する妻にまで言われて恭也は少しだけ凹む。

そしてそんな二人を見つつ、ベッドの上に座っている裂夜と疲れから復活したセリナが小声で話す。

 

「ねえ、あんたも一応は元お兄ちゃんの半身だから聞くけど……あんな木の何がよかったの?」

 

「さあな。 一つだったときは何がいいのか分かっていたと思うが、今となっては俺にもわからん」

 

「そ……あ、そういえば思ったんだけど、蓮也はどこに行ったのかな?さっきから全然姿見えないけど」

 

「学園長室じゃないか? 魔眼のことは蓮也に知られなくないようだし、おそらく何か理由をつけて一人だけアイツのところに行かせたんだろ」

 

裂夜の言葉に、セリナはなるほどというように頷いて納得する。

そんな会話が成されている間も、凹んでいた状態から復活した恭也は盆栽の良さを理解してもらうため、あれやこれやとミラに説明をしていた。

まあ、結局のところその説明を受けても、ミラが盆栽の良さを理解できなかったのは言うまでもないだろう。

ちなみに、先ほどから静かだった綾菜はというと……

 

「……」

 

何も言葉を発さず、じっと盆栽に視線を向け続けていた。

その視線は、ミラと違って明らかに興味を持ちましたと言えるような視線。

ある意味ヤバイ傾向なのだが、恭也の説明に意識を向けているミラは気づくことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、恭也様……」

 

「ん……なんだ?」

 

盆栽の説明を終え、やはり理解されなかったことに恭也が再び凹んだ後、アーティは口を開いた。

まあ、凹んだ後ということもあって聞き返す声に少し覇気がないのは仕方のないことだろう。

 

「あちらに行ったときなのでけど、桃子様が大変嘆いておりましたよ?」

 

「は?」

 

「確か……結婚して、孫も生まれたにも関わらず、なんで自分のところに顔を出さないのか……と、おっしゃってました」

 

その言葉で、恭也は今になって思い出す。

ミラと結婚し、蓮也と綾菜が生まれたにも関わらず、自分が海鳴の家族のところに報告に行ってないということに。

まあ、講師という立場上、不用意に遠出することなどできないというのも理由ではあるのだが。

 

「ということですので……近いうち一度、お帰りになられたほうがよろしいと思います」

 

「いや、だがな……講師という立場上、講義を疎かにするわけにも」

 

「あら、それなら心配する必要はないと思うわよ?」

 

「む……どうしてだ?」

 

「だって、代わりにちょうどいいのがあそこにいるじゃない」

 

そう言って指差す先にいるのは、当然の如く裂夜だった。

戦闘術講師代理として指定された裂夜は、これまた当然の如く反発の言葉を口にしようとする。

まあ、当然だろう……ミラによって(強制的に)任されている学園内の掃除に加えて、そんなものまで増えれば、自分の時間など皆無になる。

だから反発しようとしたのだが、その口が開かれるよりも前に雷撃によって黙らされる羽目になった。

 

「それで、これなら恭也が外出しても問題じゃないでしょ?」

 

「ふむ……まあ、代理がいるなら確かにそうだが」

 

「じゃあ、帰省することで決まりね。 あ、当然だけど、私もついていくからね?」

 

「ミラもか? だが、ミラも講義があるだろ?」

 

「大丈夫よ……私にも、優秀な代理がいるから」

 

まあ、ミラがそう口走った時点で、この場にいる全員がその代理がセリナであると悟る。

そして、それに反対の意を唱えたのは意外にも本人ではなく……

 

「あの……さすがにセリナをミラ様の代わりにするというのは、無理があるかと思います」

 

セリナの性格を誰よりも把握している、アーティだった。

把握しているからこそ、講義を任せたセリナが一体何をしでかすかというのがアーティには容易に想像がつく。

しかし、それは提案したミラとて同じなのか、若干の笑みを浮かべつつ口を開いた。

 

「大丈夫よ……いつも通りの講義ができるように講義内容を書いたメモを渡しておくし、それに……」

 

言葉を一旦切って、ミラは笑みを浮かべたままセリナを見る。

その視線は、笑っているはずなのにどこかぞっとするような、そんな視線だった。

 

「もし、言ったとおりのことをせずに講義を滅茶苦茶になんてしたら……当然、セリナもわかってるわよねぇ?」

 

「っ……も、もちろんだよ! 講義は私に任せて、お兄ちゃんとミラお姉ちゃんは安心して帰ってくるといいよ!」

 

「そう? じゃあ、頼んだわね、セリナ」

 

ミラの怖い視線と言葉に、セリナは首を勢いよく縦に振りつつ返す。

それに、ミラは短くそれだけ返して、決定事項となった帰省の計画について恭也と話し合う。

その間、暇を持て余している綾菜は……

 

「裂夜叔父さん……大丈夫?」

 

「……」

 

ほぼ物言わぬ屍状態になっている裂夜と思しき黒コゲの物体。

それに声を掛けたり、指先でつんつん突っついたりしているのだった。

 

 


あとがき

 

 

あ〜、なんか、海鳴帰省フラグが立ってしまった。

【咲】 予期せずに立てたわけ?

【葉那】 だったら馬鹿だよね〜。

うぅ……ま、まあ、立ってしまったものは仕方ない。頑張って書くさ。

【咲】 当然ね……ところで、こちらの世界とあちらの世界は時間の流れが違うのよね?

そうだな。 こっちが十年経っている間、あちらでは二、三年程度しか経ってはいないということになっている。

【葉那】 じゃあ、1のときから計算してあちらではどのくらい経ってることになるの〜?

そうだなぁ……だいたい、こちらでは総合計二十年くらいだから、あちらでは五年くらいかな。

【咲】 じゃあ、とらハ3でオールエンド後の時間軸からだから、なのはとかはだいたい中学三年、もしくは高校一年くらいかしら?

くらいかなぁ。

【葉那】 それって結構書きにくくない〜?

まあ、正直書きにくい。 だが、フラグを立てた以上、書かないわけにはいかんだろ。

【咲】 まあそうね。 にしても、海鳴に帰省するのって恭也とミラ、それと蓮也と綾菜の四人でしょ?

だな。

【咲】 ミラが初めて会った恭也の家族にどう接するのか、人見知りをする綾菜を高町家の面々はどう接するのか、っていうのが見物かしらね。

まあ、他にもないわけじゃないが、めぼしいのはそんなところだなぁ。

【葉那】 だね〜。 じゃ、そろそろ次回予告のほう、いってみよ〜♪

次回はだな、教団側の話が半分、学園側……というより、蓮也と綾菜のお話が半分だな。

【咲】 教団側はまあ意味不明な会話がさせるとして、蓮也と綾菜のお話ってのは?

ふむ、それはだな、前にあった蓮也と綾菜の一日というのと似たようなお話ってことだ。

【葉那】 ふ〜ん……じゃあ、登場人物は主にその二人だけって事?

いや、そうとは限らない……思わぬ人物が出てくる可能性もあるぞ?

【咲】 思わせぶりな発言ね〜。

ま、とりあえずだ……次回、「迫り来る争いの予兆」をご期待ください!!

【咲】 タイトルは決まってるのね。

まあな。 じゃ、今回はこの辺で!!

【咲&葉那】 また次回ね〜ノシ




綾菜が盆栽に興味を……。
美姫 「やっぱりそこに食い付くのね」
いや、つい。このまま、親子二代に渡って、盆栽マスターを目指せ!
立ちはだかるは、長き経験に裏打ちされた実力を持つ盆栽人間。
恭也の何倍もの時間を掛けて磨いた技を前に、恭也と綾菜はどうする!?
美姫 「いやいやいや、全然違う話になっているから」
これは、盆栽に見せられた父娘の、長い長い盆栽マスターへの道のりを綴った物語である!
……ぶべらっ!
美姫 「勝手に話を捏造するな!」
す、すみません……。
美姫 「ヘルの方にも動きがありそうだし、二部になってから色々と動き始めたわね」
だな。海鳴への帰還もありそうだし。
しかし、こっちと海鳴とで時間の流れが違うと言う事は、いつの間にか恭也の方が桃子よりも年上、なんて事も?
美姫 「あー、あるかも。なのはなんて、自分よりも年が上の甥っ子、姪っ子の誕生よ」
それはそれで面白そうだが。
美姫 「って、また話が逸れてるわよ」
おおう! さてさて、本格的に始まった二部。
どうなるのかな〜、と楽しみにしてます。
美姫 「次回も待ってますね〜」



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