白夢の二人が何か隠していることに彼は気づき始めた。
内容まではわからないだろうけどそれでもまずいことに変わりは無い。
もしそれでこの世界に歪みが生じればあれがこの世界を壊しにきかねない。
それだけはあってはならない。
彼の世界を壊させることなんて絶対にさせない。
でも、だからといって私が出て行くことはできない。
それは逆効果になるから。
だから今はあの白夢の二人にまかせるしかない。
彼女たちだってこの世界を壊されるのを黙って見ているわけ無いと思うから。
なんとなく癪だけど壊されるくらいなら我慢する。
そう、彼の世界が壊されるくらいなら……。
彼の望んだ世界
第九話 意地の張り合いの果てに
恭也はその日の放課後、恵都に呼ばれ保健室へといった。
そこには恵都の他に灯夜や夏希、リンの姿もあった。
「それで、用とはなんですか?」
「少しおまえたちに話さないといけないことがあるんだ」
「はあ…」
「ただここでじゃないけどな」
「どこでですか?」
「病院だよ」
「……なぜ病院なんですか?」
「手っ取り早く集まるのにそこが一番だから」
「はあ…」
恭也は曖昧な返事をする。
その後、恭也を含めた五人は病院へと向かった。
病院のロビーでユリエルと合流し、一同は六階へと上がる。
なにやら恵都の話では強敵が現れたらしい。
ただそれ以上はわからないらしく夏希やひいろを狙ってくる可能性があるため病院に泊まることになった(夏希、恭也限定)。
その際に許可を取るため恵都が看護婦に何かやっていたが恭也はあえて見てないということにした。
エレベーターで上に上がっている中、灯夜とユリエルの間にギスギスした空気が流れていた。
どうやら昨日のことがまだ尾を引いているようだった。
その空気に耐えられず紛らわすように恭也は恵都に質問する。
「なんで俺も泊まる必要があるんですか?」
「ん? まあ、なんだ……念のためだよ」
「はあ……念のため…ですか?」
「そ。 昨日、恭也も狙われたんだろ? だったら用心に越したことはないからな」
「そうですか…」
恭也は納得したように頷く。
そこで会話が切れまた沈黙が流れてしまう。
結局空気が拭われぬまま(一応恵都が注意はした)六階の病室につくまで居心地の悪い空間に佇む羽目になった恭也だった。
病院で寝泊りするようになってから時間が流れ、数日がたった。
桃子たちに病院で寝泊りすると言ったときにはいろいろと聞かれたが恭也はなんとかごまかした。
そして恭也は今、やることも無く外を散歩していた。
その途中の公園で学校の制服を着た見たことのある女性が膝の上に猫を乗せてベンチに座っていた。
恭也は誰だったかとしばし考えているとその女性から声がかけられた。
「座らないのか…?」
恭也はいきなり声をかけられすぐに反応できなかった。
しかしすぐに我に帰ると失礼しますといって少し間を空けて座る。
女性は恭也に目を向けることも無く膝の上にいる猫を撫でていた。
「何か用でもあったのか?」
「いえ…ただ見たことがあるので誰だったかと考えていたんですよ」
「見たことは……あるだろうな。 私もあるからな」
「そうなんですか……それで、えっと…」
「御堂愛だ……」
「御堂さんですね。 自分は高町恭也です」
「それで…何を言いかけたんだ?」
「いえ、何をしていたのかなと思いまして…」
「猫を撫でていた…」
愛にそう返され恭也は聞くことを間違えたなと思った。
今度は逆に愛が質問をしてきた。
「お前はあいつとどういう関係なんだ?」
「あいつ?」
「新城灯夜だ…」
「どういう関係……ただの友人ですよ」
「そうか……」
質問の意図がわからず恭也は首を傾げる。
そしてなんとなく時計に目を向けたところで恭也の携帯が鳴る。
失礼といって恭也は携帯のディスプレイを見るとそこには恵都の名前があった。
もしものための連絡手段として登録したのだ。
恭也は携帯を開き通話を押して電話に出る。
「もしもし…」
『きょ、恭也か?』
「はい、そうですが…どうかしたんですか?」
『すぐ病院に戻ってきてくれるか?』
「はあ……なぜですか?」
『ついたときに話すから急いでな』
恵都がそういった同時に電話が切れる。
恭也は恵都が慌ててることからただ事ではないと思い急いで病院に向けて走り出した。
なぜかついてきた愛も一緒に病院のひいろの部屋に入る。
愛はついてきたにも関わらず病室には入らなかった。
病室の中には恵都やひいろの他に夏希や灯夜、そして泣きじゃくるリンの姿があった。
恵都はリンが十分に落ち着くのを待ってから話を促した。
「さ、もう一度最初から話して」
「はい…」
リンは元気なく返事をすると話し始めた。
リンが語るにはユリエルとリンが明るいうちにクリープの足取りを掴もうと残留負粒子を辿っていた。
そして残留負粒子を辿っていくと公園の辺りでそのクリープを発見したのだ。
その場で灯夜に連絡をよこせばよかったのだがユリエルが意地を張ったためユリエルとリンで戦うことになったのだ。
そして返り討ちにあってしまった。
その際ユリエルが最後の力でリンを逃がし自分は捕まってしまった。
「う…っ…」
話し終えるとリンはまた泣き出してしまった。
「馬鹿だよ、ユリエルは……僕に連絡をくれればいいのに」
「……お前も馬鹿だよ」
「え?」
灯夜は呟くようにいった恵都の言葉に反応しそっちを見る。
恵都はそれを無視するようにリンに話しかける。
「それよりリンちゃん、どんなクリープだった?」
「人型です。 黒いマントみたいなのを着けて……あと」
「あと?」
先を促すように恵都は聞く。
するとリンは灯夜のほうをちらりと見てこう言った。
「ご主人様のような鎌をもっていました…」
あとがき
ちょっと短いですが九話終了です。
【咲】 短い上に中途半端よ。
うう……無理やり書かされて文句まで言われた。
【咲】 それが私の仕事だしね〜。
だからって連続で二話書かせることないじゃないか!?
【咲】 私にこんなにさせるほどあんたがこの作品を書かなかったからよ。
いや、他のが忙しいくてですね……。
【咲】 言い訳しない!!
ぴぎゃ!!
【咲】 あ、いい考えが浮かんだわ。
と、突然な上に脈絡がないけど……一応聞こう。
【咲】 疲れなんてものがあるからいけないならいっそ改造しちゃいましょう。
ま、まて、激しくまて!! なぜそうなる?!
【咲】 疲れもなく逆らうことも無いマシンにしちゃえば私も楽だしね〜♪
え、えっと……冗談ですよね?
【咲】 そうと決まればさっそく私のラボに行きましょうか?
いや〜やめて〜ていうか何時の間にそんなもんができたんだ〜!!
【咲】 執筆マシン♪ 執筆マシン♪
い〜や〜だ〜!!!!
攫われてしまったよ!
美姫 「一体どうなるのかしら」
意外な急展開!?
次回は、次回はどうなるんですか〜!?
美姫 「次回も楽しみにして待っていますね」
どうなるんだ〜〜!!
美姫 「それじゃ〜ね〜」