死神の過去を知る者が現れた。

 

そいつの狙いは死神を助け出すこと。

 

ただそれだけ。

 

そう……それだけ。

 

だからそいつは彼が何もしないなら危害を加えることはないと思う。

 

でも、彼が何もしないということはありえない。

 

彼は捕えられた白夢の女を助けようとする。

 

これは確実と言っていい。

 

だからそうなればそいつも黙ってはいない。

 

もしそいつと彼が戦うことになったらおそらく彼は負ける。

 

そうなれば彼の命はない。

 

死神を助けたいなら助ければいい。

 

白夢の女を傷つけるなら傷つければいい。

 

でも、彼の命を奪うことは絶対許さない。

 

そう……絶対。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の望んだ世界

 

第十一話 思わぬ介入、出会う二人

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「白き者……白夢のことか?」

 

そいつが放った言葉を灯夜なりに解釈してそう聞く。

 

「白夢……そうか。 この世界ではそう呼ばれているのか」

 

(この世界……どういうことだ? 他にも世界があるというのか?)

 

そいつの言った言葉に恭也は疑問が浮かぶ。

だがいくら考えても答えなど見つかることない。

そもそも恭也には情報不足なのだ。

 

「外来だな…おまえ」

 

恵都は確信したような口調でそいつに尋ねる。

 

「……」

 

「やっぱりか」

 

無言を肯定ととった恵都はそう呟く。

 

「「外来?」」

 

恭也と灯夜は同時に疑問を抱いたのか思わず声がはもる。

だが二人の疑問に答えるものはいなかった。

 

「お〜い、元死神〜。 こいつに用があるってことはこっちの三人には用はないんだな?」

 

「マスターか……そもそもそれが目的でここにいるわけだしな。 ……ん? そいつはなんだ? マスターは一人のはずだ」

 

「私たちにもよくわからん。 ただこの子と同じだってことだけだ」

 

ひいろを指差しながら恵都はそう言う。

 

「ふん、どちらにしろ用があるのはそいつだけだ。 だがこの衝動を抑えられる自身はない。 そうそうにこの場から立ち去るんだな」

 

「だとさ、御堂。 三人を連れてはやくここから離れな〜」

 

「ひいろさん、行きましょう」

 

「え、でも……」

 

ひいろは自分たちだけ逃げることに戸惑いを見せる。

 

「ここにいても邪魔になるだけだから。 はやく離れな」

 

少し冷たい言葉で恵都は言う。

その言葉にひいろはまだ若干の戸惑いを抱きながらも夏希、愛と共に屋上から出て行く。

だが、恭也だけは一歩もその場から動かずにいた。

 

「ほら、恭也もさっさと行きな」

 

「……お断りします」

 

「は?」

 

「目の前で知り合いが傷つけられてるのに自分だけ逃げることなんてできませんよ」

 

「でも、ここにいたらお前にまで危害が及ぶんだぞ?」

 

「構いません」

 

「こっちが構うんだけどな〜」

 

いくら言っても恭也がその場から立ち退かないため恵都は説得を諦める。

説得を諦めた恵都はそいつ―外来に視線を戻す。

 

「で、こいつを助けるって言うのはどういう意味だ?」

 

「言葉通りだ。 俺のようなものが増えるのを黙ってみているわけにはいかない」

 

「どういうことだ?」

 

「お前はこいつらに利用されているんだ」

 

「そんなわけ」

 

「事実だ。 そもそもお前の記憶を消したのは白き者なんだからな」

 

「!!?」

 

外来が放った驚愕の事実に灯夜は言葉を失う。

黙ってしまった灯夜と見ながら外来は言葉を続ける。

 

「このままだとお前も俺のようになる。 俺のようになりたくないなら白夢と手を切れ」

 

「だめよ……こいつの言うことを聞いては」

 

「黙れ! それは夢を食らって生きているお前たちにとって都合の悪いことだろうが!」

 

先ほどよりも強い口調で外来は言い放ち、ユリエルを持ち上げる。

そして勢いよく地面に叩きつける。

 

「「ユリエル(さん)!!」」

 

「動くな!」

 

手に持つ鎌を向け、動こうとした恭也と灯夜に静止をかける。

 

「いくらマスターと言えど邪魔をするならただではすまさん」

 

「く……」

 

動こうとした足を止め、恭也は外来を睨む。

外来は恭也に向けていた鎌を灯夜に向ける。

 

「俺のようになりたくなければ俺と共にこい」

 

その言葉は本当に灯夜を助けたいという感情が見て取れた。

だが、灯夜は動く気配を見せずにそのまま口を開く。

 

「お前の言っていることは正しいのかもしれない」

 

一言一言……

 

「こっちにいたら本当にお前のようになるのかもしれない」

 

迷いを見せながらも……

 

「でも……」

 

力強く……

 

「お前は僕の仲間を傷つけた……それだけでお前は僕の敵だ!!」

 

灯夜は言い放った。

 

「ならばお前の迷いの元を断ち切ってやる!」

 

灯夜の言葉に外来はそう叫び返し鎌を振り上げる。

そしてユリエル目掛けて振り下ろす。

 

「っ!」

 

誰もがユリエルが真っ二つにされる未来を見た。

だが、この男によってその未来は覆された。

 

「大丈夫ですか?」

 

「え?」

 

ユリエルは閉じていた目を開ける。

すると目の前に恭也の顔があった。

よく見ると自分が恭也に抱きかかえられていることに気づく。

その事実に不謹慎ながらも頬が赤くなってしまう。

 

「貴様っ!!」

 

邪魔をされたことに怒りを隠さないまま外来は鎌を構えなおす。

そして凄まじい速さで恭也との間合いを詰める。

 

「っ!?」

 

咄嗟にユリエルを横に放り、二度目の神速の領域に入る。

モノクロの世界でも多少の速度を見せる外来の鎌をかろうじて避ける。

そして領域を抜ける前に背中に隠し持つ小太刀抜き外来へ向かって振るう。

その途中で神速が解ける。

 

「なに!?」

 

外来は恭也の動きに驚きを隠せずにそう叫ぶ。

だがその動揺もすぐに拭い去り恭也の斬撃を鎌で受ける。

 

「ちっ……」

 

恭也は軽く舌打ちをする。

そして鎌を小太刀で受けながら軽く灯夜に視線を向ける。

灯夜は恭也の視線に気づき、すぐに鎌を指して外来に切りかかる。

 

「でやっ!」

 

振り上げた鎌を外来に向けて振り下ろす。

だがそれは空を切ることになる。

恭也に接近したときのような速度で後方に避けたのだ。

 

「く……」

 

「お前を傷つけるのは本意ではない。 おとなしくしていてもらおう」

 

そう言うと同時に外来は鎌の刃のついてないほうを灯夜の腹に打ち込む。

咄嗟のことと外来の速度に反応できなかったためかそれを受けた灯夜はぐっと呻きをあげて膝をつく。

恭也はそれを見てすぐさま斬りかかるがそれは当たることはなく空を切る。

そして斬撃を避けた外来は避けたと同時に恭也の小太刀を足で弾き飛ばす。

恭也の手から離れた小太刀は音を立てて地面に転がる。

 

「しま、ぐっ……」

 

飛ばされた小太刀に視線を向けてしまった恭也は外来に首を捕まれる。

そして上に持ち上げられ苦しげな声と表情を浮かべる。

 

「ぐ……が…」

 

「邪魔をしやがって……」

 

どんどん首を掴む力を強めていく。

 

「ぐっ…先輩……」

 

「動くな」

 

外来は苦しそうにしながらも動こうとする灯夜に言い放つ。

そして外来の言葉は灯夜だけでなく恵都とユリエルにも向けられていた。

灯夜と同じく動こうとした二人も脚を止める。

 

「おまえ、そいつを殺したらどうなるか」

 

「知ったことか!」

 

完全に我を忘れているのか恵都の言葉が終わらないうちにそう叫び返す。

その間も恭也の首を掴んでいる手は力が加えられていく。

誰もが恭也が苦しむのをただ見るしかない中、その声はどこからともなく聞こえた。

 

『恭也を傷つけることは……許さない』

 

許さない、という部分にはかなりの意志が込められていた。

そして声が聞こえてから一秒と経たずそれは起こった。

 

「ぐあっ!」

 

恭也の首を掴んでいた外来の腕がどこからか放たれた白い閃光に撃たれ、ぼとりと落ちる。

首の絞めつけから解放された恭也は地面にどさりと落ち、げほげほと咳き込む。

 

「あなたたちがついていながら……何をやってるの」

 

「なっ!?」

 

恵都は驚き、声のしたほうを見る。

いや、恵都だけではなくその場にいた全員がそこに視線を向ける。

皆が視線を向けた先には前からそこにいたかのように一人の少女が立っていた。

その姿は全身純白といってもいいような姿。

そしてそこにいた恭也以外の面々はその姿に覚えがあった。

その少女は皆が驚いている中、恭也の元へ歩み寄る。

そしてすぐ側まで来ると恭也の目線に合わせるようにしゃがみこみ柔らかい笑みを浮かべる。

 

「こうして会うのは初めてね…恭也」

 

「君は……」

 

その声には覚えがあった。

それは夢の中で自分に話しかけてきた声。

 

「私はリル。 今まであなたをずっと見守っていた者よ」

 

心が落ち着くような、そんな笑顔を浮かべながら少女はそう名乗った。

 

 


あとがき

 

 

恭也を助けたのはなんと今まで恭也を見守ってきた少女!

【咲】 リルと名乗るその少女の正体はいったい!?

というわけで、十一話が終了しました〜。

【咲】 やっと前から出てた少女の名前が出たわね。

いや〜、後々になるとどう出していいのか迷いましたよ〜。

【咲】 後回しするからよ。

だ、だって、そういうのは引っ張ったらおもしろくなるだろ。

【咲】 あんたがやってもならないと思うわよ。 自分の腕を知りなさい。

うう……いつも以上に手厳しい。

【咲】 で、次回のネタはもうまとまってるの?

まあ、一応ね。

【咲】 そ……ならちゃっちゃと仕上げちゃいなさい。

わかってるよ。 じゃ、今回はこの辺で〜。

【咲】 また次回も見てくださいね〜ノシ





遂に恭也の前に少女リルが現れる。
美姫 「これによって、事態がどう動くのかしらね」
うーん、一体どうなるんだろうか。
美姫 「うーん、次回が待ち遠しいわね」
次回も待ってます。
美姫 「待ってますね〜」



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