An unexpected excuse

    〜蓉子編〜





「俺が好きなのは・・・」

恭也の言葉に集まった人皆が息を飲む。

「・・・さんだ・・・」

「えっ、誰ですか?」

恭也は小さく答えたが、聞こえなかったらしく、前にいたFCの女の子が聞き返す。

「蓉子さん・・・と言う人だ」

その言葉にあたりにどよめきが起こる。

皆少なからずショックを受けていたようだった。

「高町先輩に好きな人がいるなんて・・・」

さしあたってFCの女の子達の落ち込みようは半端ではない。

「お師匠はその人とどこでおうたんですか?」

レンが恭也に尋ねる。

「ああ、リスティさんと一緒に行った護衛の時に知り合ってな・・・」

恭也が軽く出会った経緯を説明する。

「・・・れてきてください・・・」

「ん?」

その途中、FCの一人の少女が震えながら言い出す。

「その人を連れてきてください!!!」

その言葉に再びどよめきが起こる。

「この目でちゃんと見ないと信用できません!!高町先輩が嘘を言う事はないと思いますが・・・念の為連れて来て下さい!!!」

その言葉に沈静化していたFCの少女達がそうだそうだとはやし立てる。

「連れてこいと言われても・・・蓉子さんも学校があって、しかも東京に住んでいるわけで・・・」

恭也はFCの少女達の気迫に押されて、少し弱腰になっていた。

「やっぱり嘘なんですねっ!!?」

それを見て、先ほどの少女がまた言い出す。

「いや・・・そんなことは・・・「私がどうしましたか?」な・・い・・・?」

恭也の声を遮って、恭也の後から声がする。

それに気付き、皆がいっせいに恭也の後の人を見る。

「よっ、蓉子さん!!?」

恭也が驚きの声を出す。

「はい、そうですよ恭也さん」

蓉子はそう言ってニッコリと、微笑む。

「あ〜〜・・・」

その笑顔に、FCの少女達の何人かは見惚れる。

「蓉子さん、どうしてここに?」

恭也は尋ねる。

今日は平日だし、何より東京からここまで結構かかる。

「前に言ってませんでしたか?恭也さんのご両親にご挨拶に行くと」

微笑みながら、蓉子は言う。

「ああ・・・確かに、言ってましたね」

恭也は思い出しながら言う。

「では、行きましょうか・・・今の時間だとまだ働いていますから翠屋に直接行きましょう。美由希、俺の鞄を頼んだ」

そう言って恭也は蓉子の手を取り、学校を出て行った。

 

 

 

「今のが・・・高町先輩の・・・」

その場に残された皆は呆然としていた。

「えっと、そろそろ授業も始まるから、皆教室に行ってね」

美由希が皆の前で遠慮がちに言う。

それを聞いて皆はぞろぞろと教室へと帰っていった。

「しかし、高町君にあんな美人の彼女がいたとは・・・きぃ〜〜!!内縁の妻に内緒だなんて!!」

そう言ってハンカチを噛む真似をする忍。

「まぁまぁ、忍さんも抑えて」

それを那美が宥める。

「今日は・・・宴会かな?」

その美由希の言葉を・・・青空は吸い込んでいった。

 

 

 

「しかし驚きましたよ、急にあらわれるんですから」

臨海公園を手を繋いだままで歩く恭也と蓉子。

「あら、これでも聞きながら来たんですよ。風ヶ丘としか聞いていなかったですから」

苦労しました、と言って微笑む蓉子。

「言って下されば迎えに行ったのですが・・・」

恭也は申し訳ないといった表情をする。

「いえ良いですよ・・・歩いていて、ここが恭也さんの住んでいる町なんだなぁって、感じてましたから」

そう言って少しあたりを見る。

「それに少し前から恭也さんを見ていましたから」

そうニッコリとして、蓉子は言った。

「・・・・どのあたりからでしょうか・・・?」

恭也は恐る恐る聞く。

「詰め寄られて、好きな人がいるんですかって言われたあたりからですね」

そう言って蓉子は苦笑する。

「少し心配になってたんです・・・私は恭也さんとずっと一緒にいられない・・・こんなにも遠く離れている」

だんだんと語尾が小さくなっていく蓉子。

「だから・・・私がいない間に・・・もし恭也さんが誰か他の人を好きになっていると思うと・・・」

その続きを言う前に・・・蓉子は恭也に抱きしめられていた。

「俺は・・・言葉にするのがどうも苦手でして・・・だから、行動であらわしました」

そう言って抱きしめる手に力を込める恭也。

「俺のこの気持ちは・・・変わりません・・・蓉子さんを愛している・・・この気持ちに、偽りはありませんから」

その言葉を聞いて、蓉子も恭也の背中に手を回す。

「ありがとう・・・その言葉を聞いて、安心したわ・・・」

心から安心したような声で・・・蓉子は言った。

「それに、あんな公衆の前でも、私の名前を出してくれたのは、嬉しかったです」

そう言って蓉子は微笑む。

「自分の心を偽ることはできませんから・・・」

そう言って恭也も苦笑する。

「蓉子さん・・・」

「蓉子って、呼んでくださいませんか?」

間髪いれず、蓉子は言い返す。

「蓉子・・・」

恭也はそう言って蓉子に口づけをする。

「んっ・・・」

一瞬が永遠にも感じた・・・。

そんな中、二人はどちらからともなく、離れる。

「では、母さんに会いに行きましょうか・・・早く蓉子さんのことを報告しないと」

そう言って恭也は蓉子の手を握る。

「ええ、参りましょう」

優雅に・・・そして華麗に、蓉子は恭也の手を取る。

そして二人は翠屋へと向かった。

 

 

 

「いらっしゃいませ・・・って、恭也学校は?」

店に入ると、フィアッセがそんなことを聞いてくる。

「フィアッセ、母さんは?」

恭也は手短に用件を言う。

「桃子?厨房にいるけど・・・」

「すまないが話がある。呼んでくれないか?」

恭也は真剣な表情で言う。

「うん・・・じゃあ、奥の席で待ってて」

そう言ってフィアッセは厨房に入る。

「蓉子さん、こちらに」

そう言って恭也は奥の席に行く。

「驚きました・・・まさかあの歌手のフィアッセさんに会えるなんて」

本当に驚いた、という表情でいう蓉子。

「昔からの付き合いでして・・・姉のような存在ですよ」

そう言って恭也と蓉子は席に座る。

「恭也〜どうしたの?」

そこに、桃子がやってきた。

「母さん、紹介する。こちら水野 蓉子さん・・・」

「はじめまして」

そう言って頭をさげる蓉子。

「あっ、この子の母の高町 桃子です」

そう言って桃子も頭を下げ、恭也の対面に座る。

「母さん・・・俺は蓉子さんと・・・結婚したいんだが・・・」

その瞬間、桃子は止まる。

「母さん・・・?」

それを見て恭也も蓉子も不安になる。

「蓉子さん・・・でしたよね?」

桃子は真剣な顔で蓉子を見る。

「はい・・・駄目・・・でしょうか?」

蓉子は悲しそうな顔で見る。

「鈍感で朴念仁で、盆栽が趣味な息子ですけど、よろしくね」

その言葉に、蓉子の目から涙が溢れ出す。

「ありがと・・・ございま・・・す」

泣きながらも、蓉子はそう言った。

「母さん・・・ありがとう」

恭也も桃子に頭を下げる。

「蓉子さん、お義母さんって、呼んでね」

「はい!」

その言葉に、蓉子は力強く答えた。

「じゃあ先に帰っててね。今日は早く帰るから」

そう言って桃子は厨房へと戻っていった。

「では蓉子さん・・・行きましょうか」

そう言って二人は出ていった。

これからは幸せな毎日になるだろう・・・。

距離なんて関係ない。

お互いが愛し合っていれば・・・愛は距離を・・・時間を超えるのだ。

そして、恭也が高校卒業後、蓉子はこちらの大学に進学。

恭也も進学し・・・結婚をした。

 

 

 

「蓉子に似て・・・強い子になる」

一人の赤ん坊を、恭也と蓉子が見守っている。

「いいえ、あなたに似て・・・優しい子になりますよ」

蓉子は子供の手を握りながら言う。

「お前は穏かな女の子か・・・強い剣士か・・・なんになりたい?」

恭也は穏かな顔で言う。

「何にでもならせてやる・・・俺達が、ならせてやる」

「早く大人になって・・・一緒に遊ぼうね・・・」

二人はお互い穏かな顔をして言う。

そして三つの影は・・・ゆらゆらと・・・だけど離れることなく・・・歩いていった。

 

 

 

 

 

終わり

 

 


あとがき

どうも、アハトです。

An unexpected excuse〜蓉子編〜いかがだったでしょうか?

氷瀬 浩さまの作品An unexpected excuseを私が勝手に借りて書いたものですから。

蓉子と恭也の性格、言動が違うところもあるでしょう。

そこのところは、力量不足ですので・・・勘弁してください。

ではでは、また次回で・・・。





アハトさん、ありがとう!
美姫 「ございます!」
蓉子さま〜!!
美姫 「はい、どうどう。落ち着いて」
俺は馬か!
美姫 「ううん、どっちかと言うと鹿よね」
鹿?
美姫 「うん。正確には合成獣?馬と鹿の」
そ、それって……。
美姫 「うん♪ウマシカ(馬鹿)って事♪」
やっぱりか……。
美姫 「はいはい。落ち込まない。でも、蓉子編良いわね」
おお。次は聖編とか?
美姫 「おいおい。いっその事、浩が書けば」
いや、確かに音夢編とか、ことり編とか、秋葉編とか考えたけどよ…。
美姫 「いっそのこと、マリとらからこっちに繋げるとか?」
いや、時代が逆だし……。
美姫 「とりあえず、アハトさん、ありがとうございました!浩も狂喜乱舞しております」
わーい、わーい。
美姫 「ではでは、ごきげんよう」
俺はほったらかしか……。





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