剣士と守護の楯 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三話 「依頼承諾〜恭也side〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、ここは翠屋。

 

海鳴の駅前商店街でトップの売り上げを上げている喫茶店である。

 

なんでも、ここの店のシュークリームは海鳴に来たら一度は食べてみないといけないと雑誌にも載せられているくらいである。そして、店長である高町桃子の作る洋菓子類は絶品であるが、それとは別にドリンク類を作っている寡黙で美形の翠屋唯一の男性従業員、高町恭也の笑顔によって女性のリーピターが後をたたない。

 

今はランチタイムも終わり、空席が目立って一休みが取れそうなとき、高町恭也はカウンターの中でドリンク類の在庫整理をしていた。

 

そんな恭也の目の前のカウンター席がブレ始める。

 

ブレたと思った瞬間にはカウンターには銀髪の小悪魔、またはさざなみの魔王後継者であるリスティ・槙原がタバコを片手に座っていた。

 

そんなリスティに思わず、恭也は声を掛けた。

 

 

「リスティさん、人が大勢いる場所でテレポートしてこないで下さい。周りの人達にどう説明するんですか。」

 

 

「ちゃんと、周りの状況を確かめてから転移してきたよ。今いる客で視線を向けていたのはいない……はずだ。」

 

 

「お願いしますから断言できるような状況にしてください。」

 

 

「ちぇ、わかったよ。」

 

 

「注文は何にしますか。」

 

 

「恭也がボクのために入れたコーヒー。」

 

 

リスティが恭也から返答で注文の内容を答えた際、周囲の空気が変わった気がした、

 

しかし、朴念仁である恭也にはその視線の意味がわからずにいた。

 

 

「なぜ、俺限定なんですか。」

 

 

「ボクは恭也が入れたのを飲みたいからだよ。」

 

 

さらにリスティが答えた瞬間には、さらに空気が一変。

 

温度が少し下がったような感じを受ける。

 

そんなことには気付かない恭也は答えた。

 

 

「そうですか、ありがとうございます。」

 

 

恭也スマイル発動。

 

翠屋で最近になって笑顔が頻繁に出るようになった恭也の笑顔。実は桃子と忍の特訓のおかげだったりする。

その笑顔が自分に向けられていない者でも見慣れていない他の客には即効性の麻薬のような効果が得られる。

 

その笑顔を見たものは顔が赤く、中には倒れる者も出てくる。

 

そして、またここに破局を迎える恋人たちがいた。

 

 

「ごめんなさい、あたしと別れて。」

 

 

「おい、いきなりなに言い出すんだ。」

 

 

「もうあたしにはあの人しか見えないの。だから、今すぐ目の前から消えて。」

 

 

「うあぁぁ〜。」

 

 

カランカラ〜ン、無常にもベルの音だけが鳴り響く。

 

男は走って店を出て行き、女はうっとりとした表情でカウンターを見つめている。しかし、その視線の意味に気付いているのはリスティのみ。

 

恭也はなにがあったのだろうとしか思っていない。

 

 

「相変わらず、すごいね。」

 

 

「なにがですか。」

 

 

「いんや、こっちの話だよ。それより、急ぎで仕事の話があるんだけどいいかい。」

 

 

「いいですよ。今回は誰を護衛するんですか。」

 

 

「今回行ってもらう場所はセント・テレジア学院。長期による潜入の護衛になるんだけどもいいか。」

 

 

「美由希も皆伝済んでいますし、今は美沙斗さんに支持したり、自らが考えなければいけない時期ですから長期でも構いませんよ。……それよりもセント・テレジアって俺の記憶が正しければ女子校ではありませんでしたか。」

 

 

「よく知っているね。確かにあそこは由緒正しきお嬢様学校だ。・・・なんで知ってるの?」

 

 

恭也は淹れたばかりのコーヒーをリスティの目の前に出して答える。

 

その後は、先ほどの在庫整理を行ないながらもリスティの質問に答える。

 

 

「こういう仕事をしていれば、自ずと情報が必要になってきます。それで、随分前に小笠原での護衛とつい最近に鏑木瑞穂の婚約パーティーでSPをやらせていただいたときにセント・テレジアの事を少しばかりですが話を聞きましたので。」

 

 

「……ふーん。」

 

 

恭也の話を聞いたリスティはなんだか面白くなさそうな感心したような微妙な表情を見せながら、コーヒーに口をつける。

 

 

「それで俺はどういう名目で行くことになるんですか。」

 

 

「それは女装して生徒としてかな。」

 

 

「……は?」

 

 

その言葉を聴いた瞬間に恭也は止まった。

 

周囲で雑談していた人達も「恭也」、「女装」という言葉だけが聞こえた。

 

そこで連想されるのはただ1つ。

 

恭也が女装する。

 

雑談していく人が浮かびあがる恭也の女性像。

 

ウィッグをつけてサラサラの髪。

 

すらりとした佇まい。

 

凛とした凛々しい女性らしくも男性的な中世的な顔。

 

想像しただけで雑談していた女性陣は鼻血ものだ。

 

何人かは鼻を押さえてうずくまっている。

 

その様子を恭也はわかっているが、どうしてそうなったのかがやはり理解できていない。

 

リステイは雑談していた話から恭也の女性像を思いついてしまい、恭也の笑顔に耐性があってもさすがに頬がほんのりと赤い。

 

 

「リスティさん、どうかしましたか。」

 

 

「……はっ、なんでもない。なんでもないんだ。」

 

 

「しかし、俺が女装して潜入なんてムチャですよ。どんなに形を繕っても俺のことは男性ってわかってしまいます。真一郎さんや鏑木瑞穂なら可能でしょうですけれども。」

 

 

恭也は苦笑しながら答える。

 

 

「確かに可能だけれども護衛の潜入だからね。恭也に頼みたいんだよ、それにどうやら大分大掛かりな組織が関わっているみたいでさ。ただの護衛なら美由希や美沙斗でもいいんだけども、美由希じゃ護衛するにしてもまだ心もとない。美沙斗は警防隊で任務中だから呼べない。それに美沙斗は護衛に関しては自分より恭也の方が上って言ってるしね。」

 

 

「美沙斗さんがですか?まだ俺はあの人に追いついたつもりはないですよ。あのコンサートの時は美沙斗さんが迷って躊躇したおかげで勝てたんですから。」

 

 

「美沙斗がこの場にいたらそれは否定するだろうね。」

 

 

リスティがくくっと忍び笑いを漏らす。

 

恭也は少なくなったリスティのカップにコーヒーを注ぎながら、笑みをこぼす。

 

 

「恭也には行ってもらいたいってのはアイギスと先方からの依頼だ。内容も破格の値段で交渉してきた。本当は女装して生徒として潜入してもらいたんだが、忍の薬が間に合わなかったんで教員として行ってもらいたい。確か大学で教員免許取っていたよね?」

 

 

「確かに持っていますが、その前に忍に何を頼みましたか?」

 

 

「簡単に言うと一時的な性転換薬。」

 

 

「……それを飲ませて行かすつもりだったんですか?」

 

 

「うん、忍は満面の笑みで作成するのに了解してたよ。」

 

 

恭也は内心、完成しなくてよかったと心の中で溜め息をついた。

 

 

「それで恭也は教員の体育教師として潜入、それと警備をお願いしたい。中に警備員はあまり多く配置されていないようだから。で、後もう1つは……えっとなんだっけ?。」

 

 

「わかりました。けどまだあるんですか?」

 

 

「ああ、これが一番重要なことかもしれない。向こうは完全寮制らしくて、寮長がいないのでこれを恭也にやってもらいたい。」

 

 

「はい……ん、まさか俺に女子寮の管理人をやれと言うんですか?」

 

 

「管理自体は専門がいるからいいらしい。寮長という立場なら中に入っても構わないだろ。なにかあったときに中に入れませんじゃ護衛できるものもできなくなるからさ。」

 

 

「なるほど、建前はわかりました。しかし、教師という立場ではなにかあったときに動けないのでは?」

 

 

「その点なら問題はないと思う。アイギスから生徒として潜入することが決まっている。名前は如月修史。この前仕事をしたシールド9だ。」

 

 

「彼ですか。……今、生徒として潜入と言いました?」

 

 

「そうだよ、さっき女装させてきたとこだよ。名前は山田妙子として潜入。護衛対象者の一人と同じクラスに転入予定だ。」

 

 

リスティのなにを当たり前なことという表情を見て、恭也は心の中で合掌した。

 

 

「修史とは学園長室ではじめに顔あわせすることになるから、二人で協力してくれ。」

 

 

「わかりました。それで護衛対象者は誰ですか。」

 

 

「一応この二人が最重要護衛対象者だ。一人は春日崎グループの後継者、春日崎雪乃。もう一人が父親が弁護士をしている椿原蓮だ。」

 

 

「椿原弁護士の娘と春日崎雪乃の二人ですか。」

 

 

「恭也は二人を知っているのか。」

 

 

「椿原弁護士は最近テレビによく出ていますから覚えてしまっただけで面識はありません。春日崎雪乃はこの間の鏑木瑞穂の婚約パーティーにいました。」

 

 

話はしていませんがね。と答える恭也にリスティはライバルが増えていないことに安堵した。しかし、これから行く場所が場所だけに不安が付きまとう。

 

 

「そうか、それならいい。後は資料を渡すから読んでくれ。出発は明日の朝食後でいいかな?」

 

 

「随分と早いですね。構いませんが準備が必要ですね。」

 

 

「着るものに関してはアイギスが既に置いてある。スーツも普段使うもののようにポケットが付けられているから今回は必要な装備だけでいいよ。」

 

 

「そうですか、しかし万が一ということもありますから何着かは持って行きます。」

 

 

「そうだね、それじゃボクは帰るけど、なにか聞くことは?」

 

 

恭也はしばらく考えた後、

 

 

「今は特にないですね。」

 

 

そう。とリスティは返して、翠屋を出て行った。

 

その背中を恭也は ありがとうございました。と一礼して業務に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、高町家での夕食が間もなく終わるかというときに恭也は仕事のことを話すため、食事の箸を止めた。

 

 

「明日から仕事で家を空けるから。」

 

 

恭也らしい簡潔とした言葉で締めた。

 

他の面々は恭也が発した言葉に固まってしまい、動けないでいる。

 

その中でいち早く動いたのが末娘であるなのはだった。

 

 

「おにーちゃん、どのくらいで帰ってくるの?」

 

 

涙目で見上げてくるなのはに少しばかりの罪悪感を持ちながらも恭也はなのはの頭を撫でながら目線を合わした

 

 

「今回は少し長い間になりそうなんだ。終わったらすぐに戻ってくるから待っててくれるか。」

 

 

「……うん。」

 

 

この言葉だけ聞けば恋人が遠距離になってしまう構図に見えなくもない。

 

それになのはの頬もほんのりとだが、赤みが差している。

 

それを見ていた他の面々も硬直が解けたようで喋りだした。

 

 

「まぁ、あんたが帰ってくるって言ったら帰ってくるよね。」

 

 

「そうだよね、恭也なら大丈夫だよ。」

 

 

「安心してください、師匠のいない間は俺が守ります。」

 

 

「アホか、お猿が。あんたなんかに守れる訳ないやろ。ということでおししょーのいない間はうちが守ります。」

 

 

「なんだと、この亀が。」

 

 

「やるか、お猿。」

 

 

「晶ちゃん、レンちゃん、けんかはやめなさーい。」

 

 

「「はい。」」

 

 

上から順に桃子。フィアッセ、晶、レンが恭也を応援するようなことを述べる。

 

そこでいつもどおりケンカになりそうなところなのはが止める。

 

恭也はその行為がいつもと同じく微笑ましく見ていた。

 

二人のケンカがなのはの声で止まったところで、声を掛けなかった美由希がここで恭也に質問する。

 

 

「家は大丈夫だよ、ところで恭ちゃんはどこに行くの?」

 

 

「ああ、セント・テレジア学院というとこだ。」

 

 

さらっと答える恭也。

 

それにいち早く反応したのは美由希。

 

 

「そこって超がつくほどのお嬢様学校の女子校じゃなかったっけ?」

 

 

「そうだが?」

 

 

なにか問題でもあるのか?といった感じで平然と答える恭也に対して周りは再度硬直。

 

 

どのくらい時間がたったのだろうか。

 

恭也はお茶がなくなったのでお湯を沸かし、入れ直して湯飲みに注ぐ。

 

そこで一口、口に含み、ほっと息を吐く。

 

そこでようやく全員再起動を果たした。

 

 

「えぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。」

 

 

「うるさいぞ、夜なんだから近所迷惑だろう。」

 

 

至極当たり前のことなのだが、やはりどこかずれている恭也である。

 

桃子はおもむろに恭也の手を取り、言い放った。

 

 

「やったわね、玉の輿よ、恭也。これで夢の三十代で孫が出来るわ。やっほーい。」

 

 

「なにを言ってる、母よ。仕事なのだからそんなことがあるわけないだろう。」

 

 

「そうだよ、桃子。恭也はただ仕事で行くだけで終わったら私のもとに戻ってくるんだものね、恭也。」

 

 

「フィアッセもなにを言ってるの、恭ちゃんは私と御神の名を共に継ぐんだから。」

 

 

「美由希ちゃんもなに言ってるんや。うちとの約束を果たすために戻ってくるに決まっているんや。」

 

 

「亀も何が言ってやがる。師匠は俺のもとに戻って、俺の料理を食べてくれるんだ。」

 

 

いつの間にか、高町家のリビングは阿鼻叫喚の図が出来上がっていた。

 

なのはは巻き込まれないためと大好きな兄の隣をちゃっかりと確保していた。

 

そこへ新たな乱入者が現れた。

 

 

「はいはい、恭也はこの忍ちゃんとノエルと一緒に暮らすって決まってるんだよ。」

 

 

「失礼します。ご無沙汰しています、恭也さま。」

 

 

忍とノエルだ。

 

二人、主に忍が入ってきたことによりさらに場は悪化。

 

そこに恭也がひとまずこの場を沈静させる言葉を放った。

 

 

「ああ、ノエルは久しぶりだな。ところで忍、二つほど聞きたいことがある。いいか。」

 

 

「なになに、恭也のためなら何でも答えちゃうよ。」

 

 

嬉しそうな顔をして近づく忍に対して、他の面々は不機嫌な顔をして恭也を睨みつけていた。しかし、そこは恭也。

 

睨まれていると分かっていても理由が全くわからない。

 

とりあえず気にしてもしょうがないので、聞くべきことを聞いた。

 

 

「まず、どうして会話に参加できた?また盗聴器が付けられている気がするのだが。」

 

 

「や、やだな〜。盗聴器なんて付いてるわけないじゃない。」

 

 

「ほんとか。今から調べてあったら・・・」

 

 

「あったら……なに?」

 

 

「美由希の手料理を食べさせる。」

 

 

「ごめんなさい。付いてます。」

 

 

「はぁ、美由希。端でいじけるな。」

 

 

「うぅ、恭ちゃんも忍さんも酷いよ。私の作る料理がそんなに嫌なの?」

 

 

「ああ。」「うん。」

 

 

「うぅ、二人がいじめる。」

 

 

「美由希はほっといて、もう1つはまた作ったらしいな。」

 

 

「なにを?」

 

 

美由希は部屋の端でいじけて、それをなのはが慰めている。

 

どちらが姉だが、わからんな。

 

他はこちらの話に興味があるようだ。

 

 

「リスティさんが言ってたぞ。なんでも性転換薬を作って俺に飲ませようとしたとか。」

 

 

「うっ……あれはリスティさんに作れないかって聞かれて、つい作れるって言っちゃったの。結局、成分の配合がいまいち合わなくて期限までに間に合わなかったの。ちなみにこれが試作品なんだけど、まだ人に飲ませられるものじゃないのよ。」

 

 

「そうか、よかった。」

 

 

「よくないよ。」

 

 

恭也は完成しなかったことに溜め息を。

 

忍は完成できなかったことに溜め息を。

 

恭也は聞きたいことを終えたのでいじけている愚妹に声を掛けた。

 

 

「美由希、今日の鍛錬だが俺は道場で軽くやることにする。明日の準備もあるからな。」

 

 

「わかった。私はいつもの場所でいつものでいいよね。」

 

 

「ああ、それでいい。」

 

 

「母さん、俺は明日の準備に取り掛かる。朝食が終わってから行く予定だ。家のことをよろしく頼む。」

 

 

「まかせなさい。恭也に言われなくても分かっているわよ。」

 

 

「ああ、そうだな。」

 

 

そういうと恭也は静かに部屋に戻っていった。

 

 

 

 

出発の朝。

 

朝食を終え、リスティを待っているのも暇なので盆栽の手入れを行なうことにした。

 

まず、全体を見て、次に近くから見て、丹念に枝を整えていく。

 

少しばかり直して納得がいったのか、恭也は手を止めて、再度遠くから眺めていたとこで、玄関からなにやら何人かの気配を感じるようになった。

 

 

「この気配はリスティさんと……那美さんとフィリス先生?」

 

 

なぜ、二人がリスティと一緒にいるのか。その理由がいまいちわからない。が、客人として迎えねばならないということで玄関に向かった。

 

 

「おはようございます。今日はどうしたのですか、那美さん、フィリス先生。」

 

 

「恭也さん、おはようございます。リスティさんから聞いて今日からまた仕事で海鳴を離れるって。」

 

 

「おはようございます、恭也くん。私もリスティから聞いてきました。行く前に病院に来て欲しかったです。恭也くんの場合、なにかあってからじゃ遅いんですからね。」

 

 

「悪い、恭也。遅くなった。」

 

三者三様の挨拶を返す三人の言葉に納得する恭也。

 

他のものは恭也が出発することを知って、見送りに来たのだろうとわかっているだろうが、わざわざライバルに塩を送る必要はないとのことで誰もそのことは恭也には伝えない。そして、リスティが来たということは恭也とのしばらくの別れを意味することを誰もが理解している。

 

恭也が自分の荷物を持ち、靴を履いて立ち上がって玄関を出て、向き直り、今ここにいる皆の顔を見渡す。そして一人一人の顔を見渡して、一人一人に言葉を掛けた。

 

 

 

 

 

まずは高町家での支え、母である高町桃子に。その顔には士郎が昔、仕事に出かけるのを見送るように微笑んでいた。その姿にはどこも心配していない、きっと無事に戻ってきて、またこの家で一緒にくらしていけるという明確なビジョンがあるから。

 

笑顔で恭也を見ていると向き直られて、声を掛けられた。

 

 

「母さん、俺がいなくても皆を支えて欲しい。」

 

 

「当たり前じゃない。ここにいるのは私の大事な娘たちで大切なんだから。そういうあんたもあたしの自慢の一人息子なんだから、あんたはしたいようにしっかりやりなさい。」

 

 

「ああ、もちろんだ。それではいってくる。」

 

恭也は桃子と言葉を交わした後、次に向かったのはフィアッセに。

 

そこに残された桃子は誰にも聞かれない小さな声で呟いた。

 

「いってらっしゃい、あたしの大事な一人息子。……士郎さん、どうか恭也をお守りください。」

 

 

恭也が次に向かったのは『光の歌姫』と称される恭也の大切な幼馴染の一人、フィアッセ・クリステラ。

 

その顔にはやはり心配されている様子が見て取れる。

 

恭也たちの仕事を間近で見ているフィアッセだからこそ傍にいられないことが心配なのである。けれでも、共にいることが恭也の仕事の邪魔になるとわかっているので恭也が桃子との話を終えてこっちにきたときはその想いを必死に隠して笑顔で送る。

 

 

「恭也、むちゃは絶対しちゃだめだよ。恭也がいなくなるのを心配するのは私だけじゃないんだからね。」

 

 

「ああ、わかってる。必ず生きて帰るさ、帰ったらフィアッセの歌声を聴きたいからな。」

 

 

「もちろん。恭也のためならいくらでも歌うよ。今度、子守唄聞かせてあげる。」

 

 

「……子守唄は勘弁してくれないか。この歳になっても聞くのはさすがに恥ずかしい。」

 

 

「くすくす、帰ってきたらすぐに歌ってあげるね。それと私はいつも歌っているからね、恭也に、みんなに私の魂が、私の想いが詰まった歌が優しい風に乗って届くように。」

 

 

「ああ、わかってる。フィアッセたちの歌に対する想いを一緒に暮らしてきたからわかる。だからこそ、歌が俺たちの耳だけでなく心までに響くことを知っている。」

 

 

「そうだね、恭也の言うとおりだね。いってらっしゃい。」

 

 

「それではいってくる。」

 

 

恭也は美由希と晶、レン、なのはのもとに向かっていった。

 

その後姿を見ながら、両手を握り、強く、強く祈り、歌う。

 

ただ無事に帰ってくるようにと。

 

 

 

恭也が四人のもとに向かっていったときにはなのはは泣きそうな顔で、晶とレンと美由希は任せてくれといった表情で。そしてなのはは恭也に抱きついて泣き出した。

 

 

「ひっぐ、えぐ、おにいちゃん、おにいちゃん。」

 

 

恭也はしゃがみ、泣き出したなのはの背に手を回し優しく抱きしめた。

 

その行為には、なのはにしているのを羨ましそうな目で見ているのが数人いる。

 

抱きしめられたなのははさらに泣き出し、恭也の胸に顔をうずめた。

 

大好きな兄に慰められたなのはは泣き止み、笑顔で恭也から離れた。

 

 

「えへへ、ごめんね。おにいちゃんの服汚しちゃった。」

 

そういうなのはの言葉に恭也はなにも言わず、黙ってなのはの目尻に残った涙を指で拭いた。

 

 

「心配するな。俺は死ぬ気はないし、まだやりたいこともある。それにこの家が帰る場所なのだから、必ず帰ってくる。」

 

「うん、わかってる。おにいちゃんが無事に帰ってくるのを待ってるね。」

 

 

恭也は立ち上がってなのはの頭を撫でながら、美由希たちに向き直った。

 

 

「美由希、晶、レン。三人とも家のことを頼んだ。俺がいない間、母さんを支えて、なのはを守ってくれ。」

 

 

「もちろんだよ、恭ちゃん。」

 

 

「任せてください、師匠。」

 

 

「うちも頑張ります、おししょー。」

 

三人が返事を返して一人一人に言葉を残す。

 

 

「美由希、俺がいないからって鍛錬は怠るなよ。それと料理だけは絶対にするな。」

 

 

「ちょっ、恭ちゃん。それは酷いんじゃない。」

 

 

「晶、レン。美由希を台所には一歩も入れるなよ。もし美由希が料理を作ってしまったら母さんとなのはを連れて逃げろ。」

 

 

「もちろんです。台所には一歩も入れません。」

 

 

「桃子さんとなのちゃんは必ず守ります。」

 

 

「晶とレンも恭ちゃんサイド。」

 

 

「なのは、美由希がなにかやらかしても見捨てたりするなよ。」

 

 

「はぁーい。」

 

 

「なのはまで。この家には私の味方はいないよ。」

 

 

「当たり前だ、あれを料理とすら呼ぶのはとてもじゃないができない。料理に対しての侮辱以外の言葉は思いつかん。」

 

 

恭也の一言により、美由希は撃沈。他の三人は黙って頷いた。

 

 

「それではいってくる。仕事が終わり次第帰るから。」

 

 

「師匠、頑張ってきてください。」

 

 

「おししょー、帰ってきたらすぐにご飯にしますからね。」

 

 

「おにいちゃん、必ずだよ。約束だからね。」

 

 

「必ず護って来てね。御神の剣が護るときは負けはしないんだから。」

 

 

恭也は ああ。とだけ答えて那美のもとに向かった。

 

残った四人だが、離れた途端になのはが泣き出した。

 

やはり恭也が仕事に行くときは心配なのだろう。

 

本当はずっと我慢していた。

 

大好きな兄の手前でこれ以上泣いてしまえば、きっと迷惑がかかってしまう。

 

大好きな兄を困らせたくなくて、離れるまで我慢していた涙が溢れてきた。

 

泣き出したなのはを優しく美由希が抱きしめる。

 

晶とレンも優しい眼差しでなのはを見つめ、ただ、ただ恭也が無事に帰ってくることを願った。

 

 

次に向かったのは那美と久遠のもと。

 

久遠は眠たいのか、子狐のままで那美に抱かれて寝ていた。

 

恭也が近づいてくると顔をあげて、くぅーんと泣いた。

 

 

「行ってしまわれるんですね。恭也さん。」

 

 

「ええ、俺の剣で護れるものがあるのなら護ってみせます。それが俺が剣を使う理由ですから。」

 

 

「……そうでしたね。恭也さんはいつだって、誰かを護ってきました。私も久遠の封印のときに護ってくれました。薫ちゃんは覚醒する前に久遠を倒そうとしたのに、恭也さんは最後まで久遠に声を掛け続けて、私に最後の一歩を踏み出す勇気をくれました。私はいつも護られてばかりです。恭也さんのためにできることはないですが、無事に海鳴に戻ってくることを祈っています。」

 

 

「……俺のほうこそ、那美さんには護られています。俺が剣を捨てたとき、那美さんがいなかったら俺はあのまま剣を捨てたままで誰も護れませんでした。久遠のときでさえ、俺はただ声を掛けることしかできなかった。けれども、那美さんがそう言ってくれるのならそう思います。ありがとうございます。」

 

 

「いえ、私のほうこそお礼を言わなければいけないんです。ありがとうございます。」

 

 

お互いにお礼を言いながら頭を下げる二人。

 

はたから見ればおかしな光景である。けれども、二人にとってはいつもどおりの光景。

二人は互いに微笑んで、ただ言葉少なく別れた。

 

 

「いってきます。」と「いってらっしゃい。」の一言だけで。

 

このとき、お互いが微笑んだだけで恭也の笑顔を直視した那美だけが顔を赤くしていたのは言うまでもない。

 

 

那美はただ優しく見守った。

 

自分は恭也みたいな戦う力をもってはいない。ただ、神咲に属している限りは霊と対峙しなければならない。

 

私には薫ちゃんみたいな力はない。久遠のときは久遠を助けたいと思ったから。両親の敵でもあるけれども、それ以上に初めての友達で一緒にいたいと思った。

 

久遠の封印が暴走しない限り、もう二度とあの力は使えないだろう。あの『真威・桜月刃』は私が唯一放てる奥義。あのときみたいな想いはきっと仕事で行なう鎮魂や除霊ではきっと出会えない。

 

だからこそ、恭也や親友の美由希、姉である薫ちゃんの力を羨ましくなるときもある。けれども、ただそれだけ。戦う力が欲しいわけじゃない。

 

護るために力を振るえる恭也たちが羨ましい。

 

自分では同じことはできないから。

 

私たちは違う道を歩む。道としてきっと交わることなんて少ない。

 

今、こうやって知り合えたことさえ奇跡なのではと思ってしまう。けど、道は違えど、志はきっと同じだ。私の仕事も護れているとは言えないけれども、誰かを護っているのだと思う。

 

恭也さんはどこか危険なひとだ。護って帰るときは大怪我をしてくることが多く、無傷で帰ったことは数えるほどしかない。

 

今は高町の家が帰る場所だけども、いつか私が帰る場所になってあげたい、恭也さんのそばにいられるように。だから今は大好きな人のために祈ろう。久遠を腕の中に抱きながら、手の中に握り締めた式符に霊力を込め始めた。

 

 

 

次に向かったのは忍とノエル。

 

忍は夜の一族として、他人とは関わらないと決めていた。

 

ノエルに至っては忍を通して恭也と知り合わなければ忍や叔母であるさくら以外とは誰とも知り合うこともなかったろう。けれども、その枠を取り払ったのが恭也。

 

さくらが風高時代に真一郎が夜の一族であることを取り払ってくれたように。

 

恭也が忍の壁を取り払い、ノエルを自動人形としてではなく人として認めた。

 

忍と恭也、違うようでどこか似ている二人。だからだろうか。恭也が忍を護るために動いたのは。もしかしたらIFの世界であり得た自分を見ているようでもどかしかったのかもしれない、ほっとくことができなかった。

 

いや、恭也はただ忍と知り合ってから目の前に起きたことを見過ごすことができなかった。自分の手で護れるのならば、護りたい。ただそれだけなのだ。

 

 

「結局、昨日は家に泊まっていったみたいだな。盗聴器は全て外したか。」

 

 

「うん、全部外したよ。けど、恭也も意地悪だよね。」

 

 

「……どこがだ。」           

 

 

「なのはちゃんとまではいかないけれど、内縁の妻であるこの忍ちゃんにももう少し甘えさせてくれてもいいじゃないかなぁって。」

 

 

「誰が誰の内縁の妻だ。……まったく。家族を俺と同じように実験台にするなよ。特になのはにした場合は……いや、ここで言う必要はないか。」

 

 

「ねえ、最後のは何?した場合はなんなの。教えてよ、恭也。」

 

 

「……ノエル。忍が変なことを起こさないように見張ってくれ。」

 

 

「はい、かしこまりました。」

 

 

「ちょ、ノエルもなに言ってるの。」

 

 

「では、いってくる。……そうそう、家族には手を出すなというが、弟子である美由希ならば俺の代わりを見事務めてくれるだろう。美由気を好きにしていいから。」

 

 

「恭也がそういうなら美由希ちゃんを実験台に。……もういっちゃうんだ、絶対帰ってきてね。」

 

 

「いってらっしゃいませ、恭也さま。」

 

 

「ああ。」

 

 

恭也が立ち去る後姿を見ながら忍は笑顔で見送り、終わった後はしばらくの間は動くことはなかった。

 

ノエルは忍に付き添うだけで一言も話さない。しかし、今の忍にはそれだけでよかった。

 

好きな人がまた誰かを護るために自分が護ってもらえたときみたいにきっとムチャをするだろう。けれど、私には恭也に止めて欲しいとは言えない。

 

きっと恭也が自分自身の口から止めると言い出さない限り、見知らぬ誰かを護り続ける。それが恭也だから。そんな恭也を好きになったのだから。だから私は帰ってくるのを待ってる。恭也は必ず戻ってくる。夜の一族である私と自動人形であるノエルと共に生きることの誓いをたててくれたのだから。

 

 

 

恭也が最後に向かったのはリスティ・槙原とフィリス・矢沢の銀髪姉妹。

 

今でこそ姓が違うが、姉妹といえる二人。リスティは女性としては短髪でボーイッシュな感じを受けるが容姿やスタイルを見れば女性、しかも並みの女性ではもったいないくらいの美人だ。対してフィリスは身長の低さ、腰まで伸ばしたロング、そして女性としての慎ましさといっていいのか胸が小さい。けれども本人はそのことを気にしているようだ。けれども、姉のリスティと同じく美人だと言われてもおかしくはない。

 

本来ならば、恭也は出発の前にはフィリスに整体を受けていたのだが、今回はリスティからの依頼が急だったために行きそびれたのだ。

 

 

「恭也くん、どうしてちゃんと病院に来てくれないのですか。ただでさえ恭也くんと美由希さんの内容はハードなものばかりなのに。美由希さんはまだ大きな怪我らしいものはしてないから多少のムチャは平気ですけれども、恭也くんの場合、右膝は治療中なんですよ。那美ちゃんとの霊力治療とHGSと現代治療によることで完治の見込みはあるのにこれではいつまでたっても治りませんよ。」

 

 

「……はい。わかっています。ですが、あの待ち時間が病院に行くのを躊躇ってしまって。あの時間があれば鍛錬の1つや2つ、もしくは盆栽の世話が出来るのですが。」

 

 

「言い訳は聞きません。待ち時間ぐらいゆっくり待っていてください。」

 

 

「だめだよ、恭也。フィリスは頭が固いからそういうことは通じないよ。栄養が頭ばかりにいってしまうから体が幼児体型のままなんだろ。」

 

 

「なっ……リースーティー。あなたはもう一度あのマッサージ受けてみたいのかしら。」

 

 

「いや、冗談だって。話の流れからしてあれが普通だろ。」

 

 

「どこが普通ですか。リスティにはまた特別なマッサージをしてあげますね。うふふ。」

 

 

「断固拒否するからな。」

 

 

「「うぅ〜。」」

 

 

いつのまにか姉妹喧嘩に発展していた。けれども、恭也の仕事がすぐ控えているのですぐにその雰囲気は霧散した。そこへ恭也が声を掛ける。

 

 

「あのーそろそろいいですか。時間は大丈夫なんでしょうか。」

 

 

「ん、えーと……ああ、そろそろ向こうについてないとまずいね。それじゃあテレポートで行くからボクを抱きしめてくれないか。」

 

 

「は……今なんと言いました?」

 

 

「抱きしめてって言ったのさ。」

 

 

リスティからの爆弾発言。

 

発言したリスティも先ほどとは違い、真っ赤なりんごのような顔をしている。

 

周りでは恭也との別れをした者達が叫んだ。

 

 

「「「「「「「「「だめぇーーーーー。」」」」」」」」」

 

 

周りの声に驚くもとりあえず恭也はリスティを抱きしめようとするが、他の女性陣に引き剥がされる。

 

 

「なんだ、これから仕事行くというのに。」

 

 

「なんだじゃないよ。恭ちゃん、なんで抱きしめようとしたの。」

 

 

「リスティさんがテレポートするのに、途中で離れてはいけないから抱きしめないといけないと以前聞いたぞ。」

 

 

「そんなことはないでしょ。リスティもなに教えてるのよ。」

 

 

「そうだよ。恭也もそんなこと間に受けないで。」

 

 

「むぅ、そうなのか。」

 

 

「そうですよ、恭也くん。HGSのテレポートは手を繋ぐだけで十分できます。リスティの言うような方法じゃなくてもいけます。」

 

 

「そうなんですか。そういうことならリスティさん、手を差し出してもらえますか。」

 

 

「ちっ、仕方ない。」

 

 

「『ちっ』じゃありませんよ。恭也さんに変なことを教えないでください。」

 

 

舌打ちしたリスティだが、すぐに口の端をいやらしく吊り上げた。

 

 

「しょうがない、手で我慢するか。」

 

 

「我慢?なんの我慢ですか。」

 

 

「ん、なんでもないよ。それじゃいこうか。」

 

 

「ええ。」

 

 

そう言うとリスティは恭也の手を取り、自身のHGSであるリアーフィン、金色の羽根、トライウイングスを背中に広げる。

 

テレポートをし始める二人の体が徐々に薄くなる。

 

後もう少しでテレポートが終わるというところでリスティがおもむろに恭也の腕を掴み、抱きしめた。そして、全員が唖然とした表情をしているのを見てしてやったりという満足顔のリスティと顔を赤くしてうろたえている恭也がその場から消えた。

 

残されたのは唖然とした表情の恋する乙女と母娘だった。

 

 

 

 

 

 

             続く

 

 


あとがき

できたぁ。

時雨「おっそーい。今までなにしてたのよ。」

なにってレポートの類をたっぷりと

時雨「わかってるわよ。でも、予定としては年末までか年始には出せるはずだったでしょ。」

いや、修史のとこはすぐ終わったんだが、恭也の部分を書いてたら気付いたらいつのまにか量が増えていった。

時雨「そうね、途中で鏑木瑞穂とか他の作品の名前が出てるのはなんでかな。かな。」

お嬢様学校を舞台にしたもので一度プレイをしたものがあれしかないからだ。

時雨「アホかぁー。あんたは。『遥か仰ぎし』や『春恋』とかあるでしょ。やりなさいよ。」

無理だ。『遥か仰ぎし』は確かにやりたいが、買ってまだ一度も手をつけてないものをクリアしなければ。しかもどれも時間かかりそうだ。

時雨「じゃあどうして出したの。オリジナルでもよかったんじゃないの。」

最近オムニバスで小説でたからが外伝できるのではないかと思って。

時雨「ふふふ、この作品が全然進んでいないのに手を出すの。これはお仕置きが必要ね。」

お仕置き、待て。その手の物はまさか今回の作中に出てた忍の性転換薬。

時雨「ご名答。ただし改良して1日だけちゃんと異性になれるという試験薬よ。」

試していないのか、そんな恐ろしいもの飲めるか。ここは撤退あるのみ。

時雨「待ちなさい。あっ、遅くなって申し訳ないです。浩さんと美姫お姉さまのおかげで投稿できてなんとかここまできました。やはり駄作者に書かせるには美姫お姉さまのような愛のムチが必要なんでしょうか。今回の忍の性転換薬をお詫びとしてお姉さま宛に送りますので、よかったらお使いください。美由希の料理と一緒だと効果が変質するらしいです。それでは失礼します。」




こうして恭也と修史は護衛の任務に。
美姫 「さーて、どうなるかしら」
にしても、美由希が可哀想だよ……。
美姫 「まあ、弄り易いキャラだしね。仕方ないわよ」
とりあえず、今回は任務につく直前か。
いよいよ次回からは舞台がテレジアに。
美姫 「一体何が待っているのかしらね」
次回も待っています。
美姫 「それじゃ〜ね〜」
ではでは。
美姫 「……ちっ。一瓶全部飲ませたのに、何の変化もしないわ。相変わらず、変な耐性だけは持ってるのね」
何か言ったか?
美姫 「ううん、なんにも♪」



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